為替介入の基礎⑦:これまでの日本における為替介入の特徴

為替介入についてはこれまで下記の通り記載していますが、今回はこれまでの日本で行われた為替介入の特徴について簡単に整理しようとおもいます。以下の内容は随時、修正・アップデイトしていきます。また、下記も参考にしてください。

為替介入の基礎①:覆面介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
為替介入の基礎②:口先介入(レートチェック、3者会合等)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
為替介入の基礎③:協調介入と単独介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
為替介入の基礎④:日銀の当座預金の「財政等要因」と為替介入額の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
為替介入の基礎⑤:為替介入はどのようなときに効果があるか|服部孝洋(東京大学) (note.com)
為替介入の基礎⑥:為替介入は財務省(政府)と中央銀行のどちらが担うか|服部孝洋(東京大学) (note.com)

まず、為替介入の実施については、1991年以降から開示されており、下記が為替の介入額と円ドル為替レートの推移です。

日本の為替介入における第一の特徴は、基本的にこれまでは円高対策のために実施してきた為替介入(円売り介入)である点です。確かに上の図をみてもらうと、円安に対応した円買介入も存在しますが、円買い介入は2022年など、その事例は少ないといえます。日本の介入は、そもそも基本的には円高を問題にしてきたということです。

知りあいの末廣さんの番組(これ)を見ていて、唐鎌さんが「以前は、円安を批判してもよい空気はなく、これまではずっと円安のメリットが指摘されている中、最近になってようやく円安の問題が指摘されるようになった」という趣旨の発言をしていて、それは本当にそうだと思いました。私が学部時代に国際金融の講義を受けたときは「通貨は安いほど良い」とさえ習いました(今は円安の問題点が指摘されていますが、日本は対外純資産国であることやインバウンドが取り込めることなど、従来言われていた通貨安のメリットが軽視されるべきではないとは思うのですが)。

第二の特徴は、基本的に円ドルへの為替介入という点です。実はよくデータをみると、ユーロ導入時にユーロ・円の介入を実施したり、アジア通貨危機時にドル売り・インドネシアルピア買い介入をしていたりします。もっとも、大部分が円とドルに関する介入です(為替介入はドルに対する円高を問題にして実施される円売り・ドル買い介入が太宗だということです)。

第三の特徴は大きな介入があった時期は、これまで、2000年前後と東日本震災時という点である一方、介入を全くしてない時期もあるということです。2005年以前については介入の頻度が多かったとみることもできますが、2006円以降はむしろ介入の機会は少ないとみることができます。

2000年前後は、榊原財務官→黒田財務官→溝口財務官と続く中で大規模な介入がなされますが、溝口財務官の際は、35兆円の介入が実施されました(永易先生らの教科書では溝口財務官の介入気を「大介入期」と整理しています)。介入の過去の分析のケーススタディという意味では、2000年前後の時期が大切といえます。榊原財務官や溝口財務官の介入のスタイルの違いなどは結構面白い点なので、別の機会に記載します。

白川さんの本では、下記の通り、日本では為替介入が多い点を特徴として指摘しています。

1985年のプラザ合意以降は主要国間でいわゆる「協調介入」が行われることもあった。しかし、近年は先進国で為替介入が行われるのは稀である。例えば、米国では為替市場介入は1990年半ば以降減少し、2000年を最後に為替市場介入は行われていない。(中略)日本は為替市場介入という点では先進国の中で例外的な国に属し、比較的最近に至るまで、為替介入が大規模かつ頻繁に行われた。一方、エマージング諸国をみると、現在でも大量の為替市場介入が行われている(p.283-284)。

しかし、白川さんの書籍は2006年に記載されており、再び下記の図をみると、東日本大震災時など、2000年後半以降の介入は危機時のみに限られているとみることもできます(ここから円安介入ということが増えるかもしれませんが)。上記の点については、必要があればアップデイトします。

なお、これまで外為特会について継続して記載しているので、関心がある読者は下記を参照してください。

外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑯:Tビルの大部分はFB(為券)|服部孝洋(東京大学) (note.com)


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