マクロレンズの世界 vol.2 集合と配列









マクロ撮影 初級
1)画面を整理する
画面を整理します。
整理する手段は、①ボケ、②明暗、③色差です。
見せたいものに目が行くように整理できたら、初級合格です。
2)中央配置でOK
中央配置(日の丸構図)の写真は、揶揄の対象にされることがあります。
この世には、黄金比のみに美感の反応を有する、単軸型の人もいます。
(実際には色、明暗、形、遠近、質感など、様々な要素に妙があります)
叩く人が現れたとしても、マクロ写真は中央配置で問題ありません。
虫眼鏡で観察するとき、レンズの端で見る人はいないからです。
構図にこだわりがある人も、撮影時は「大体こう」に留めておきます。
後日ではリカバーできない、ピント合わせに集中してください。
・簡単には、ピントは合ってくれないこと
・肉眼で見えにくいものが写れば、それだけで価値になること
このあたりが標準レンズとの差かもしれません。
後日、PCで画像を眺めると、配置を整えたくなります。
そうなることを踏まえて、少し引いて撮っておくことを勧めます。
データにトリミングの余地を含ませます。
3)花の向きを意識する
花写真の特徴は、そこにベクトルがあることです。
花が咲く方向は、その植物の形質のひとつです。
画面内の配置は同じでも、そこで示すことになるベクトルはさまざまです。
配置がほぼ無考で済む代わりに、常にベクトルの吟味を迫られます。
「その花らしいベクトル」には、「左右水平」という前提が含まれます。
初心者は機体が傾きがちです。
著しく傾いた画像を見ると酔いそうです。
画像処理で直すこともできますが、画質が低下しますし、領域も落ちます。
後日、直さなくて済む程度に、水平の安定を心がけます。
4)咲いている方向を空ける
花の写真をトリミングする際は、咲いている方向を少し空けます。
空きがないと、進路を塞がれた感じ、あるいは、窮屈な感じになります。
自分には不快反応が出なくても、事務的に空けてください。
視覚認識には、花を顔面に見立てる仕組みがあるようです。
目の前を手で塞がれると即座に払いのけたくなるように、
花の前が塞がれている絵にも不快な感じを覚えます。
(ミラーニューロンの励起強度には個人差があります)
例外で、科学写真では、範囲いっぱいに説明したい構造を見せます。
しばしば、花はそのままではなく、切り開かれた状態で掲載されます。
科学写真は、研究者の「よく見たい」に応える特殊なジャンルです。
写真解説
① エキナセア園芸種(キク科)
エキナセアには甘酸っぱいよい香りがあります。
しかし、花芯はトゲの塊という。
僕は懲りずに、毎回「いてて」とやっています。
② ダリア園芸種(キク科)
キク科の花の配列には、数学的な規則性が頻出します。
草思社の「自然の中に隠された数学」という本をおすすめします。
著者は、稀代の数学ライター、イアン・スチュワートです。
③ アカツメクサ(マメ科)
ハコベの花は小さいですが、描ける人は結構います。
しかし、アカツメクサの個々の花は描けないようです。
花が密であると一つ一つの花を認識しづらくなる気がします。

④ ブルーレースフラワー(セリ科)
個人的に、数学を花に喩えるなら、ブルーレースフラワーです。
ジョン・ナッシュを描いた映画「ビューティフル・マインド」では、
優れた数学者への表敬として、ペンを捧げるシーンが描かれました。
僕は一輪のブルーレースフラワーを捧げたい。
ジスモンダのポスターのように立てて持って。
⑤ ムスカリ園芸種(キジカクシ科)
平行脈の植物は、通例、3数性の花をつけます。
合着が進んだ花も、細部に3数性が表れます。
(クリック拡大を推奨)
⑥ ヤエクチナシ(アカネ科)
庭にヤエクチナシがあったら、一輪、分解してみてください。
プログラマもびっくりのマトリョーシカ構造です。
⑦ コウホネ(スイレン科)
「ロウでできた模型です」といったら信じてしまいそうな質感です。
柱頭を囲んでいる雄しべは、外側から順に「イナバウアー」します。

⑧ ミツマタ(ジンチョウゲ科)
花にマヨネーズとフローラルを合わせたような香りがあります。
香りは言葉ではうまく伝えられないので、実際に嗅いでみてください。
⑨ ビロードモウズイカ(ゴマノハグサ科)
APG分類による再編で一番わかりにくいのは、シソ目でしょう。
いやいや、僕もわかりません。
ダーウィンが指摘した通り、見てわかる形質は遺伝子の一部でしかない。
系統は、中立遺伝子を含めて総合的に決まります。
とりあえず、ビロードモウズイカは、ゴマノハグサ科に残留です。
[マクロレンズの世界 シリーズ目次]
親しむ編
マクロレンズの世界 vol.1 細部
マクロレンズの世界 vol.2 集合と配列
マクロレンズの世界 vol.3 陰影
マクロレンズの世界 vol.4 光
マクロレンズの世界 vol.5 ワンダー
マクロレンズの世界 vol.6 アーティファクト
マクロレンズの世界 vol.7 色
マクロレンズの世界 vol.8 アート
マクロレンズの世界 vol.9 アーカイブ
マクロレンズの世界 vol.10 トリミング
学ぶ編
マクロレンズの世界 vol.11 視覚認識(1/2)基礎 -視覚認識の3段階
マクロレンズの世界 vol.11 視覚認識(2/2)個人差
マクロレンズの世界 vol.12 作画工程(1/3)基礎 -アートの通学路
マクロレンズの世界 vol.12 作画工程(2/3)マクロ撮影
マクロレンズの世界 vol.12 作画工程(3/3)レタッチ
マクロレンズの世界 vol.13 作例(1)覗くように
マクロレンズの世界 vol.13 作例(2)抽象
