アフリカのサファリを老後の楽しみに取っておけない理由
1週間のケニア滞在を経て、夫の一行はタンザニアへ移動した。
部屋の窓から送られてきた写真を見た瞬間、私は海だと思った。
ビーチにいるんだ、と。
でも位置情報を確認すると、そこは海ではなく、大きな湖だった。
すぐ目の前を、野生動物たちが当たり前の顔で歩いている。

昨日は、ベルベットバブーンに遭遇したらしい。
「タマタマが真っ青なんだよ!」
夫のその言葉(英語だったが)が想像できずに調べたら、思ったよりも鮮やかななブルー色だった。

目の前で繰り広げられる血生臭いライオンの食事風景や、マサイ族とのジャンプ。空を埋め尽くす星空。すべてが感動レベルの連続だけど、どうやら移動だけは相当にサバイバルな様子。
右ハンドルのトヨタのジープは頼もしくて乗り心地もいいけれど、道がガタガタすぎて、さすがにアトラクション状態。それが1時間以上も続き、あれだけはさすがにキツかったよ、と夫。
なんと、一緒にツアーを回っていた年配の女性は、あまりの揺れに股関節の手術で入れていたボルトが外れてしまったのだとか。 痛みでツアーを断念し、そのまま病院へ運ばれたらしい。
そういう話を聞くと、「旅行は若いうちに」という格言が、笑えないほどの現実味を帯びて迫ってくる。しかも、そろそろ他人事ではなくなってくる。
けれど、私の周りのシニアたちは、驚くほどアクティブだ。 夫婦で世界を巡ったり、一人でツアーに飛び込んだり、二拠点暮らしを満喫したり。 お金と時間があるだけでなく、そのエネルギーが半端ない。ギラギラしたものではなく、純粋な好奇心が伝わってくる。 一方で、旅には興味がなくとも、自分の趣味に深く没頭している知人たちもいる。 そんな風に、自分の世界を心から楽しんでいるちょっと年上の人たちの姿に、私はいつも救われている。
昨晩、ひとりで運転中、とつぜん音楽が途切れて、私の好きな著者の対話が流れ出した。
「子供にも、シニアにも、時間は平等に流れているのです。そこにあるのは、いつだって『今、今、今』という瞬間の連続だけ」
と言っていた。
以前はあまりピンと来なかったその言葉が、今はすとんと胸に落ちる。 遠いタンザニアの青い景色も、真夜中のハイウェイを走る楽しさも、すべては同じ「今」のときめきの中にある気がした。
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