三題噺ショートショート_紙袋
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「紙袋」まいりましょうか。

少年野球をやっていたのに、野球部に入るのを母ちゃんが許さなかった。
勝手に入部したら、学校に乗り込んできて顧問に詰め寄った。
「この子を東京の大学に行かせるのが、私の夢なんです」
顧問も、どうにも勝てなかった。
宏は中2まではエースで四番だったんだ。でも、家族全員が事故で一度に亡くなり。施設に入って帰宅部になった。
俺はその頃から母ちゃんに塾に通わされた。
ふたりとも、同じ高校に上がり。高三の夏、野球部の夏の予選を観戦したことがある。
その帰り道で、宏が言った。
「涙で青空が滲むのも、きっと良い思い出になるんだろうなぁ」
年末、親父の十三回忌に久しぶりに実家に帰って、街のパン屋に立ち寄った。
店奥のテレビでは紅白歌合戦が始まっていた。
お客さんも急ぎ足で。ポツンと焼きたてのクロワッサンが一つだけ残っていた。
レジで店のオヤジが言ったんだ。
「おう、聡じゃねぇか!」
元気かとか、何とか、ちょっと会話して店を出た。
紙袋がやたら、暖かかった。


そんなこんなを家内に語ろうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
先日から家内は、あるプロジェクトで、ローカルのホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
マッサー(注1)は無いが、家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。ムズい。ムズすぎる。笑

