「Solaria 2nd Stage 第十四話|その先のステージへ ②」

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」
「Solaria 2nd Stage 第三話|はじまりの朝」
「Solaria 2nd Stage 第四話|揺れるスタートライン」
「Solaria 2nd Stage 第五話|見えない距離」
「Solaria 2nd Stage 第六話|すれ違うリズム」
「Solaria 2nd Stage 第七話|雨に溶ける声」
「Solaria 2nd Stage 第八話|雨の再会」
「Solaria 2nd Stage 第九話|重なりはじめる音」
「Solaria 2nd Stage 第十話|東京南地区予選」
「Solaria 2nd Stage 第十一話|覚醒」
「Solaria 2nd Stage 第十二話|君がいるから」
「Solaria 2nd Stage 第十三話|その先のステージへ①」
「Solaria 2nd Stage |顧問紹介」
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「第十四話 | その先のステージへ ②」
—— 少しだけ、時間は遡る。
春休みに入った学園は、驚くほど静かだった。
いつもなら賑やかな廊下も、今日は足音ひとつ響くほど。

その中を、並んで歩く二つの影。
しおりと、ゆい。
けれど——
その姿は、これまでとは少し違っていた。

「……やっぱり変な感じね」
しおりが、自分の服を見下ろす。
慣れない私服。
少しだけ落ち着かない仕草。
「制服を着ないで登校するって……違和感ありすぎない?」
その言葉に、ゆいが小さく笑う。
「うん……わかる」
少し間を置いて、視線を前に向けたまま続けた。
「なんだか、ちょっと寂しいような……複雑な気持ちだよね」
その“寂しさ”は、確かにあった。
昨日まで確かにあった日常が、もう戻らないこと。
でも——
ゆいは、ふっと優しく微笑む。
「でも……」

手に持っていた紙袋を、そっと持ち上げる。
「今の私たちには、これがあるから」
中に入っているのは——
昨日、あの体育館で渡された『新しい制服』。
Solariaとして、これから先も進んでいくための証。
しおりが、その袋をじっと見つめる。
「……そうね」
短く、でも確かな声。
二人は、そのまま歩みを進めた。

更衣室。
人の気配はなく、静まり返っている。
ロッカーの金属音だけが、小さく響いた。
二人は、ゆっくりと袋を開ける。

取り出されたのは、落ち着いた色合いのブレザー。
ネクタイ。
スカート。
どれも、昨日見たばかりのはずなのに——
今こうして手に取ると、少し違って感じる。
「……着てみましょうか」
しおりがそう言うと、ゆいも静かにうなずいた。
着替え終えた二人。
まだどこかぎこちない動き。
「……ねえ」
しおりが、ネクタイを手にしたまま止まる。

「これ、どうやるの?」
「え?」
ゆいも自分の手元を見る。
同じように、ネクタイを持ったまま固まっていた。
「ネクタイって初めてだから……結び方がよくわからないのよね」
しおりが少し照れくさそうに言う。
すると、ゆいも苦笑した。
「実は……私もなんだよねぇ」
「え、意外!」
しおりがぱっと顔を上げる。
「ゆいって、こういうの慣れてるかと思った」
「そう見える?」
「見える」
即答。
二人の間に、ふっと柔らかい空気が流れる。

「……一緒にやってみよっか」
「ええ、そうね」
ぎこちない手つきで、何度かやり直しながら。
少しずつ、形になっていく。
「スカート丈も長くて……」
しおりが、くるりと軽く回る。

「なんだかエレガントなお嬢様って感じ?」
少しだけおどけた口調。
それを見て、ゆいが笑いをこらえきれずに言った。
「しおりも、たまには面白いこと言うね」
「“たまには”は余計よ」
すぐに返すしおり。
でも、その表情はどこか楽しそうだった。
最後に、ジャケットに腕を通す。
袖を整えて、ボタンを軽く留める。

二人は、自然と鏡の前に並んだ。
映るのは——
少し大人びた、自分たちの姿。
しばらく、言葉はなかった。
ただ、見つめる。
昨日までとは違う“これからの自分”を。
やがて、ゆいが小さく息を吸う。
「……うん」
ゆっくりと、うなずく。
「なんだか……気持ちが高ぶってきた」
その声には、迷いがなかった。
しおりも、静かに頷く。
「ええ。悪くないわね」
短い言葉。
でも、その奥にある感情は確かだった。
ゆいが、くるりと振り返る。
少しだけ、いたずらっぽく。
「さっそく——ダンス室、行ってみようよ」
しおりも、同じ方向を向く。
「そうね」
一歩、踏み出す。

「……あの三人、どんな反応するか楽しみだね」
ゆいがそう言うと、しおりはふっと微笑んだ。
「きっと、大騒ぎになるわよ」
静かな廊下に、再び足音が響く。
向かう先は——
高等部棟。
そして、その先のダンス室。
五人が、再び揃う場所へ。

第十四話 その先のステージへ ② (終)
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― その先のステージへ ③ ― へ続く
