風まかせ文芸部 作品紹介【馬】
第38回、「風まかせ文芸部」に参加してくださった作品を随時公開していきます!
「俺の、私の作品が載ってないんですけど!」っていう人がいらっしゃったらおっしゃってください!
気づき次第の更新ですのでご了承ください!
それではどうぞ!
【トガシテツヤさん】
地方都市の高校生が感じる、名もなき重力。
「現実を見ろ」という言葉に足を縛られ、空を見上げることさえ拒まれていた少年の前に、ある夜、思いがけない“存在”が現れる。
この物語は、逃避ではなく、視点が変わることで世界が変わる瞬間を、静かで瑞々しい筆致で描いています。
夕焼けの屋上、夜の森、星に満ちた空――風景の美しさと心の揺らぎが重なり合い、読者をやさしく高みへと連れていきます。
進路、期待、不安。誰もが一度は感じたことのある重さに、そっと翼を差し出すような一編。
読み終えたあと、自分の足元と、少し遠くの空を見直したくなる物語です。
【kazeさん】
記憶の奥に沈んでいた風景が、静かに、しかし確かな重みをもって立ち上がってくる一篇です。
舞台は北海道の記憶の原風景。語り手の眼差しは、雄大さや郷愁だけでなく、人と自然の関係に潜む痛みや矛盾へも向けられています。
本作の中心にいるのは、声を持たない存在――ばんば馬。
語り手は、幼少期の体験や心に刻まれた光景を通して、力を尽くす身体の尊さ、理不尽の中でなお立ち上がる生命の強さを、誇張なく、しかし深い実感をもって描き出します。
怒りや悲しみ、畏敬と謝意。相反する感情が交錯しながらも、語り口は終始穏やかで、読む者に考える余白を残します。
これは糾弾の文章ではなく、忘れないための記録であり、静かな祈りのような文章です。
読み終えたあと、私たちはきっと足元の大地と、そこに刻まれてきた無数の命の重みを、もう一度思い返すことになるでしょう。
【akashiba555さん】
草原を渡る風の感触と、野生の息づかいから始まるこの物語は、人と馬がまだ主従でも道具でもなかった時代を、静かな想像力で描き出します。
語りの視点は一方に偏らず、互いを測り、恐れ、観察し合う時間そのものに寄り添っていきます。
ここにあるのは征服の物語ではありません。
力でねじ伏せることでも、言葉で命じることでもなく、沈黙と反復の中で少しずつ結ばれていく「理解」の気配が、淡々と、しかし確かな熱を帯びて描かれます。
走るとは何か。
共に進むとはどういうことか。
人類史の大きな転換点を扱いながらも、語り口はあくまで静謐で、詩のよう。
読み終えたあと、「乗る」という行為の意味そのものを、あらためて考えさせられる一篇です。
【みみずくの耳さん】
教室の片隅で交わされた何気ない雑談が、長い時間をかけて思考の芯に残り続ける――そんな感覚から始まる随想的な一篇です。
「進化」「美しさ」「生きる役割」といった大きな問いが、馬という存在を軸に、静かに、しかし確かな重みをもって語られていきます。
走るために磨き上げられた身体の美。
その美しさの裏側にある残酷さへの理解とためらい。
肯定とも否定ともつかない揺れを抱えたまま、語り手は自分自身の生き方へと視線を戻します。
途中に挟まれる「片手の音」という禅問答は、答えを提示しないまま、読む者の中にも問いを残します。
明確な結論を急がず、干支が一巡するほどの時間をかけて考えてもいい――そんな余白の姿勢が、この文章全体の温度です。
静かな思索と、ほんのりとしたユーモア。
読み終えたあと、馬の走る姿とともに、自分は何のために、どう走りたいのかをふと考えさせられる作品です。
【水玉さん】
読むことと、読まないこと。そのあいだに漂う、静かな時間を描いた一篇です。
手の上にある本は、知識を摂取するための道具ではなく、ただ共に在る存在として置かれています。
文字を追わず、意味を掴もうともせず、それでもふと視線が落ちる瞬間がある。
馬という言葉、午年という季節感、走るものと走らないもの――そうした連想が、思考をゆっくりと水辺へ導いていきます。
本作が肯定するのは、前へ進む速さではなく、立ち止まる自由。
駆ける馬を遠くから見送りながら、自分は草をはむ。読むことも、眺めることも選べる、その穏やかな選択が、やさしい余韻を残します。
忙しさや成果から少し距離を置きたいとき、
「今日はそれでいい」と静かに背中を撫でてくれるような文章です。
【おぺれーたさん】
幼い語り口の奥に、胸の奥をきゅっと掴む切実さが潜む一篇です。
「だば」という呼び名と、足音の擬音が繰り返されることで、懸命さと報われなさが、リズムとして読者に届きます。
走る速さを基準にされ、笑われ、置いていかれる存在。
けれど語り手は、怠けても、諦めてもいない。ただ一生懸命に走っているだけです。
その素朴な事実が、問いとして静かに突きつけられます。
――遅いことは、本当に「駄目」なのか、と。
終盤に差し出される疑問は、答えを求める叫びではなく、まだ言葉になりきらない違和感。
だからこそ、この作品は強く、やさしい。
誰かの歩幅に追いつけずに傷ついたことのある人へ。
この短い詩は、「それでも走っている」という尊厳を、そっと肯定してくれます。
【鈴蘭さん】
小さな背中にまたがった、あの日の記憶。
嬉しさとも怖さともつかない感情が、幼い心にあふれて、涙になった。
『ポニーの背中で泣いた日』は、子どもの頃にふと触れた「生きもの」の存在感を、静かにすくい上げる短編です。
言葉を持たないものと向き合った瞬間の、まっすぐで正直な感覚。
理由は説明できなくても、心だけが確かに覚えている――そんな記憶の輪郭が、やさしく描かれています。
【しゅうびさん】
湯呑みはふたつ。音も、暮らしも、ふたり分のまま揃えられている。
語りかける相手がいなくても、声は今日も家の中を巡る。
この作品は、失われた「ふたり」の時間と、ひとりになった家の静けさを、細やかな生活音とともに描いていきます。
変わってしまった外の世界と、変えずに守ってきた内側。
その境目で、ふと耳に届いた音が、心の奥にしまわれていたものをそっと揺らす――
静かで、やさしく、そして少しだけ胸に残る一編です。
【カイロウドウケツさん】
地図に載らない湖と、語り継がれる馬と少年の話。
それは遠い土地の伝説でありながら、語り手自身の記憶と静かにつながっていく。
この作品は、事実と伝承のあわいを行き来しながら、「守るために選んだ行動」を問い直します。
日常の中で生まれ、やがて形を変えて残された物語。
特別であってほしいと願いながらも、あまりに現実に近い伝説の手触りが、読む者の胸に長く残る一編です。
【片桐みかんさん】
どれだけ言うても通じへん相手は、案外いちばん身近にいる。
しかも、こちらの言葉をちゃんと聞いたうえで、しれっと否定してくる。
この作品は、飼い猫との何気ない会話を通して、「通じなさ」そのものをユーモラスに描いた掌編です。
言葉は交わされているのに、意味はすれ違う。
そのズレを笑いに変えながら、今日も繰り返される小さな日常が、どこか愛おしく浮かび上がります。
【ふふっさん】
「馬」がつく言葉を並べながら、夜の小屋で交わされる、他愛ない雑談。
笑い声の混じる会話は、どこか気楽で、どこか不用意だ。
この作品は、言葉のあだ名や冗談を通して、「どう呼ばれるか」「どう扱われるか」をさりげなく映し出します。
軽口の裏に残る沈黙や、聞き流された忠告。
湯気の立つ夜の温度とともに、笑っていいのか少し迷う余韻が、静かに残る一編です。
【Ryuさん】
「馬車馬のように働いた」――その言葉が、文字どおりになった朝。
目覚めると世界は少し低く、身体は四本足になっていた。
この作品は、過労の比喩をファンタジーへと反転させながら、「走ること」「逃げること」「帰ること」を軽やかに描き出します。
街を駆け、空を仰ぎ、遠くに残した日常を見つめる視線。
ユーモアと寂しさが交差する先に、読後も静かに残る余韻をもった一編です。
【大島蓮司さん】
十二年に一度、神秘の森に集う「馬」にまつわる者たち。
誇りも伝説も脚の数も違う彼らは、なぜか一つの決断だけができずにいる。
この作品は、幻獣と神話の会議を舞台に、「リーダーとは何か」を軽やかな笑いと勢いで描いたファンタジーです。
正論より声、格式より行動。
場をかき乱す存在が、いつのまにか流れを変えていく――
騒がしくも痛快な一幕が、最後までテンポよく駆け抜けていきます。
【みわからすさん】
「鹿を馬だと言っただけ」
その軽い一言が、何を試し、何を失わせたのか。
この作品は、権力と恐怖、そして正直さの価値を、短い対話の中に凝縮した一編です。
滑稽さと残酷さが紙一重で並び、最後の一言がすべてを照らし出す。
古い寓話を思わせながらも、人の愚かさは今も変わらないと静かに突きつけてきます。
【財布野紐ゆるみさん】
「そなたに、馬を与えよう」
その言葉は、希望であり、選別であり、逃れられない問いでもある。
この作品は、才能・選択・速度をめぐる寓話を、荘厳な語り口で描いた一篇です。
走ることが自由だと信じた先にあるもの、与えられなかった者との景色の違い。
祝福の形をした決断が、読む者自身の足元を静かに揺さぶります。
駆けるとは何か。
止まらないとは、どういうことか。
読み終えたあと、その問いだけが、長く胸に残ります。
【藍出紡さん】
夜の森と月明かり。
絵本を閉じたあとも、白い馬の背中はまだ揺れている。
この詩は、眠りに落ちる直前の感覚を、光と呼吸でそっとすくい取ります。
道になる花、ゆっくりと進む馬の歩み。
安心とまどろみが重なり合う時間が、静かに胸に広がる一篇です。
【ABC共創ラボ|語りとAIの未来設計所さん】
馬房の前で立ち止まり、人と馬が向かい合う。
言葉は少なく、問いだけが静かに増えていく。
この作品は、「乗る/乗らない」という選択をきっかけに、従うこと、信じること、理解しようとすることを見つめた短編です。
温もりに触れながらも、決して分かりきらない他者の内側。
答えを急がず、ただ隣に立つ時間の尊さが、余韻として残ります。
【空音さん】
今年は午年。
それだけで、世界が少し速く、少し明るく見えてくる。
この作品は、天界の馬と蜂の会話を通して、「走ること」と「巡ること」の喜びを描いた心弾む一編です。
無邪気さと小さな使命感が並び立ち、人の世へ向かう一歩が風のように軽い。
読後、背中をそっと押されるような、やさしい勢いが残ります。
【不思議の国のアリスさん】
夜明け前、理由のわからない痒みとともに目覚める身体。
細胞のざわめきと、過去の記憶が、静かに現在へと押し寄せてくる。
この作品は、年齢を重ねること、責任を引き受けること、そして「正しい目」を持ち続ける痛みを、繊細な身体感覚で描いた一編です。
乾燥した肌、緑茶の温度、馬の置物の滑らかな背中。
日常へ戻る直前のわずかな時間に、人が抱え続ける不安と再生の気配が、静かに浮かび上がります。
【足木元望睦さん】
「馬」という言葉から始まる記憶は、やがて一台のメリーゴーラウンドへと辿り着きます。
本作は、かつての遊園地 としまえん と、そこにあった カルーセルエルドラド をめぐる、静かであたたかな回想録です。
きらびやかさよりも、薄暗さの中に浮かび上がる光。
乗ることより、眺めることを選んだ幼い視線。
木々に囲まれ、きしむ音を立てながら回り続ける木馬たちは、時間そのものを抱きしめるように描かれます。
閉園という別れを経て、記憶は後悔とともに現在へとつながり、やがて思いがけない再会の予感へ。
失われた場所と、今も生き続ける美しさを見つめ直す一編です。
懐かしさは、過去に置き去りにされるものではなく、
「また会いに行こう」と思えた瞬間から、未来になる——
そんな余韻を静かに残してくれる文章です。
ちなみに・・・!
もっと自由に創作を楽しめる場所を作ってみたくて、
小さな部室のようなメンバーシップをはじめました。
ふらっと、立ち寄ってもらえたら嬉しいです!
風まかせ文芸部についてはこちらから!
