銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(13)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12)
<恋愛編マガジン>
目的地までの航路はモニターに出ている。雪星仕様のブリ・アルは自動飛行機能が優秀だ。なのに、予定ルートを辿るのがこれほど難しいとは。強烈な向かい風で機体がきしむ。水平を保つだけで体力が持っていかれる。

気を抜くと航路をはずれるどころか、一気にきりもみ状態だ。最短で進みてぇのに思うようにいかねぇ。風速に対して船の馬力が足りてねぇな。
ロヤ山へ近づけば近づくほど荒れている。氷のつぶてが激しく船にぶちあたる。新しい機体に傷が付いた。すまねぇ、ティリーさん。
待ち構えているのは磁場嵐だ。あっちこっちフラッシュがたかれてるみてぇに雷が光る。計器がフリーズし始めた。
完全手動に切り替えるか。
視界ゼロの中、アナログの計器だけが頼りだ。レースとは違う緊張感。
ロヤ山が近い。激突したら大笑いだぜ。
風速が上がった。計算しながら体にその情報を降ろしていく。目、耳、手、足、体中すべての細胞が反応しないと、この嵐は切り抜けられねぇ。五感のすべてを船と一体化させる。
見えた。あれが、七合目だ。
吹雪の切れ間に山小屋の屋根が見える。融雪システムは動いてるな。夏には子供たちでにぎわう比較的大きなサービスステーションだ。あいつら、五合目から登ってくれば、ここで必ず休憩をとるはずだ。
着陸態勢に入るが、横風に船が持っていかれる。安定しねぇ。
隣の駐機場には機体止めがあるはずだが、新雪に埋まってやがる。くっそぉ、俺に着陸できねぇはずがねぇだろが。こちとら『銀河一の操縦士』だぜ。操縦棹を思いっきり引っ張る。
ブリ・アル、おまえならできる。
真っ赤な機体を雪がみるまに覆い隠していく。これなら敵さんには気づかれねぇな。装備を確認して山小屋へ向かう。上空より風は弱い。歩けなくはねぇ。
ここで待ちかまえて奴らの動きを封じる。
ドアに鍵はない。銃を握って静かに中へ入る。暖かい空気に体がほぐれる。プロの登山者のために室温が保たれていた。
チッ。心の中で舌打ちした。
床が雪で濡れている。
あいつら、想像以上に早いペースで登ってやがる。間違いなく登山の師匠ケッパードと同じ山岳民族だ。
アーサーの計算通りだ。この吹雪の中、これだけのハイペースで俺は登れねぇ。今から追いかけても間に合わねぇ。
どうする、敵さんが降りてくるのを待つか。あいつらが下山時にここで休憩をとるのは間違いねぇ。俺の任務は敵の正体をつかむこと。テロを止めることじゃねぇ。それが正解だ。だが……。
『住民の九十八パーセントが感染し、四十八時間で死亡する』
アマンダさんを死なせるわけにゃいかねぇんだよ。まだ、ウイルスは撒かれちゃいねぇんだ。
『山は何が起こるかわからん』

ケッパードの声が聞こえた。そうだよな。ここにいたってテロは止めらんねぇ。動けば何かが変わる。行くしかねぇだろ。
(14)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」