銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(14)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13)
<恋愛編マガジン>
雪山は久しぶりだ。十年前の雪中行軍やってたころより、登山装備はハイテクになってる。身体もガキのころとは違う。思ったより速く足が進む。とはいえ、いつも俺の前に道を作ってくれてたケッパードがいねぇ。あいつさえいてくれりゃ、もっともっと楽なのに。
『余分なことを考えてる暇はないぞ』師匠の声がまた聞こえた。
小学生が登る山とは言え雪山はあなどれねぇ。
しかも、山頂に近づくに連れて天候がさらに崩れてきやがった。風がきつい。保温機能をハイレベルにしてるのに体温が奪われてく。これだけ荒れてると足を一歩踏み出すにも力がいる。体力の消耗が激しい。
山岳民族の奴らは高地での呼吸が俺たちより楽にできる。筋肉の付き方も違う。悔しいがあいつらはもっと速いペースで登れるはずだ。
とにかく行けるところまでいく。間に合わなくちゃ意味がねぇ。
はあ、はあ、息が苦しい。くっそぉ。
こんなことなら登山を訓練メニューに入れとくんだった。高地に体が順応仕切らねぇ。頭痛と吐き気、手足にしびれ。高山病っぽいな。ハイペースで飛ばしすぎたか。濃縮酸素キューブを口に入れる。
はあ、はあ、自分の呼吸音が頭の中で反響する。何でこんな辛いことやってんだ、 俺は?
はあ、はあ、山があるから山に登る。まぶたが重てぇ。もう何も考えらんねぇ。
**
「お姉ちゃん。何だかだるい」
アマンダは驚いた、ムーアの顔が真っ赤だ。朝ごはんの時は何ともなかったのに。

「大丈夫? 熱、測ろっか」
朝起きると外出禁止命令が出ていた。学校と会社からしばらく休みだという連絡が入り、アマンダは生活必需品の買い出しに出かけようと考えていたところだった。
体温計の赤いアラートランプが点滅した。四十度。ウイルスに感染したのは間違いない。救急車を呼ぼう。
ツーツー。
何度架けても救急センターに繋がらない。
テレビのボリュームを上げると事態は更に深刻になっていた。
「強毒性ウイルスによる感染症が確認され連邦保健機関はロヤ星の警戒レベルを最高のフェーズ6に引き上げました。感染すると潜伏期間はなく、すぐ高熱が出ます。その後、短期間で二次症状へとうつり全身に痛みが広がるのが特徴です。高熱で医療機関にかかる場合は、感染に気をつけて行動して下さい。患者と疑われる人との接触は十分に注意し、病院では事前に受付を済ませて下さい」
救急車は無理だ。タクシーの呼び出しボタンを押す。
「現在、無人タクシーしかご利用いただけません。お待ちになるか、しばらくたってからおかけ直しください」
繰り返す機械音声にいらだちながら、つながるのを待つ。
ドアをノックする音が聞こえた。熱っぽい顔をしたアガタおばさんが立っていた。
「アマンダ。どうも風邪を引いちゃったみたいなんだよ。病院へ連れてってくれないかい」
(15)へ続く
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