銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(15)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14)
<恋愛編マガジン>
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雪山で暮らす我々にとって、吹雪は生活の一部だ。それでもロヤ星の気流には手こずった。想定の時間を過ぎてしまったが仕方がない。
「あと一息だ」
『白』は後方の仲間に声をかけた。
山頂展望台の中へ入り、身体に積もった雪を振り落とす。ドアを閉めると吹雪の音が静かになった。

夏には多くの人でにぎわう観光地だが、冬の間は閉鎖されている。
五合目から登るところを連邦軍にキャッチされた可能性があるが、ここまでくれば、もう我々の計画を邪魔するものは誰もいない。
「はじめるぞ」
リュックの中から工具を取り出し手順書通りに組み立てる。三人でばらして運んできたが、噴霧装置の重量はかなり重い。ウイルスをうまく気流に乗せるためには仕方がないが、考えていた以上に疲弊した。
磁場が乱れて通信は使えない。『青』にはあとで遅れた理由をうまく説明しなくては。
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アーサーは九つにわかれたモニターをにらんでいた。新しい情報が入るたびに画面が切り替わる。
救急センターの連絡回線はパンクし、強毒性ウイルスによる感染症の発症者が病院へ詰めかけていた。
三人組をロヤ山の登山道で確認してから、発症までの時間が短すぎる。外出禁止命令が間に合わなかったとは考えにくい。
軽い電子音とともに研究所からの分析が届く。雪雲や降雪からはウイルスは未検出。やはり雪とは別のルートか。

救急センターからは患者のカルテが次々と入ってくる。発症者のほとんどが抵抗力の弱い子供と高齢者。外出禁止命令の後、外には出ていないという。室内で感染しているということだ。考えられるルートは限られる。
アーサーは注意しながら簡易試験紙に水道水を垂らした。
白いペーパーが鮮やかな赤色に変わった。ロヤ星大統領へのホットラインをつなぐ。
「全世帯の水道をすぐに止めてください」
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「これで、よし」
『白』は完成した装置を満足げに見た。三人でずっしりとした装置を持ち上げ階段を上る。屋上にある展望台は舞い上がる雪に触れられるというのが売りだ。
その雪と風が、この星を滅ぼす。
ドアを開ける。風の音がしない。吹雪が止んでいた。ロヤ山の上昇気流が止まっている。
「ふむ、気流の間隙か。仕方ないな、一時間待てば済むことだ」
『青』に言い訳をするのにいい理由ができた。もともとテロが同時である必要はないのだ。
柵の隣に装置をセットし、リュックから二十センチほどのカプセルを慎重に取り出す。濃縮ウイルスが入ったこれを差し込めば装置は作動する。だが、気流がなければ意味がない。
「神様が与えてくださった休憩時間だ。下山に備えて、少し休もう」
(16)へ続く
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