【第468回】 Data Cloud : 2026 年 2 月 新機能リリース ハイライト
現在、Data 360(Data Cloud)では 他の Salesforce 製品とは異なり毎月新機能がリリースされています。その数の多さに加え、内容も高度であるため、私自身キャッチアップに苦戦しています。
そこで、毎月の Data Cloud 新機能リリースのハイライトをまとめてあります。日頃の学習に活用してください。
2026 年 2 月リリース ハイライト
2026 年 2 月は、Data 360 にとって大きな変化とともにスタートします。
特に価格体系の変更が注目されており、これにより、顧客はデータ準備の途中工程にかかるステップよりも、Data 360 が実行するアクションを通じてワークフローにもたらす価値に、よりフォーカスできるようになります。
さらに・・・
特定のデータスペース単位でクレジットの消費を追跡可能となり、社内でのチャージバックをより容易にします。
新しい Retriever Playground により、非構造化データのリトリーバーに対するユニットテストやデバッグがより効率的に行えるようになります。
さらに、Transforms や Chunking を独自のカスタムコードで拡張することが可能になります。
標準テンプレートを活用して、カゴ落ち(Abandoned Cart)ユースケースを構築することもできます。
その他にも多数のアップデートがあります。
それでは、今月の主なアップデートを順に見ていきましょう。
価格およびパッケージ変更
本日 2026 年 2 月 25 日より、Data 360 の価格体系およびパッケージが刷新され、以下の 3 つのいずれかのモデル選択する形になります。
① Flex Credits Pricing Model
② Profile-Based Pricing Model
③ AELA(Agentic Enterprise License Agreement)
今回の変更は単なる価格改定ではありません。
Data & AI 時代における「柔軟性」「シンプルさ」「予測可能性」を強化する戦略的転換です。
なぜ今、価格モデルを刷新するのか?
データ & AI 活用は急速に進化
ユースケースはまだ発展途上
企業は価値創出を求められつつも投資リスクを抑えたい
スケールしながら実験したい
という背景があります。
つまり、「固定投資」ではなく「価値に応じた可変モデル」が求められているということです。
選択肢 ① Flex Credits Pricing Model
従来の従量課金モデルを進化させた形で、Flex Credits が提供されます。
1. Agentforce とのファンジビリティ
Data 360 と Agentforce の間でクレジットを柔軟にシフト可能。
従来、
Data 360 予算
AI 予算
が縦割りでした。
Flex Credits Pricing Model では「価値が出る領域にリソースを動かせる」という思想になっています。
2. レートカードの簡素化
複雑だった倍率構造を簡素化
Add-on 削減
価値連動型メーター
運用担当者にとっても予測しやすい設計になりました。
3. ボリュームディスカウント自動適用
月間利用クレジットが以下を超えると自動適用されます。
300,000 クレジット
1,500,000 クレジット
12,500,000 クレジット
大規模顧客向けにスケール設計が明確になりました。
4. コスト削減ポイント
バッチデータ取り込み無料 💡💡💡
Zero Copy 取り込み無料 💡💡💡
バッチ変換/ユニフィケーション/ストリーミング処理コスト削減
従来よりも「処理コスト」に対する心理的ハードルが下がります。
選択肢 ② Profile-Based Pricing Model(復活!!)
価格の予測可能性を重視する顧客向けに、プロファイル課金モデルが復活します。初期の Data Cloud はすべてのこの課金体系でした。
✔ 基本構造:
1,000 プロファイル単位の固定料金
データスペースごとの上限あり
上限制御項目:
セグメント数
Calculated Insights
Transform数
Identity Resolution ルールセット数
リアルタイム機能は利用可能です。
拡張が必要な場合はアドオン追加も可能です。
🔍 どんな顧客に向いている?
予算固定型企業
金融/公共など計画主導型業界
事前にプロファイル数が予測可能なケース
Flexが「成長型」なら、Profileモデルは「安定型」と言えます。
選択肢 ③ AELA(Agentic Enterprise License Agreement)
Unlimited(利用制限なし)モデルになります。
従量課金
シートライセンス
サービス利用
これらを包括しています。
「制限なくAgentic Enterpriseを推進したい企業」向けであり、
超大規模/戦略顧客向け契約形態です。
データスペース別クレジット消費可視化
Data Space を活用してブランド別・地域別に分離運用している企業にとって、「どのデータスペースがどれだけクレジットを消費しているのか?」という点は、長年の課題でした。
今回ついに、データスペース単位でのクレジット可視化が可能になります。
背景:
顧客ニーズとして、次のような要望がありました。
LOB(Line of Business)別に予算管理を行いたい
地域別に消費量を把握したい
ビジネスユニット別にフォーキャストを行いたい
つまり、
透明性の向上
請求の可視化
予算計画の高度化
が求められていました。
対象となる使用タイプ:
データスペースに紐づく利用タイプのみが対象となります。
Batch Profile Unification
Calculated Insights
Batch Activations
Activate DMO(Streaming)
Segments Processed
Sub-second Real-Time Events
Streaming Actions
Unstructured Data Processed
Data Transform
Data Queries
※一部除外される使用タイプもあります。(例:Intelligent Processing)
仕組み:
Digital Wallet テーブルを活用します。
TenantEnrichedUsageEvent(DLO)
TenantUsageAttrDetail(DLO)
これらを Event ID で JOIN し、
「Data Space API フィールド」でグループ化することで分析を行います。
注意点:
Out-of-Box レポートは提供されていません
自作レポートの構築が前提となります 💡
そのため、レポーティング設計も含めた実装が重要になります。
なぜ重要か?
Data Space を以下のような用途で利用している企業にとって、特に大きな意味があります。
グローバル企業(AMER / APAC / EMEA などの地域分離)
マルチブランド展開企業
B2B / B2C 分離運用企業
これまでは、「どの部門がどれだけ利用しているのか分からない」という状態になりがちでした。
今回の機能により、
部門別チャージバックの実現
ROI の可視化
クレジット配賦の最適化
が可能になります。
Retriever Playground
AI / RAG ユースケースにおける非常に重要な機能です。
RAG では検索(Retriever)の品質がそのまま回答品質に直結します。検索精度が悪ければ、たとえ LLM が優秀であっても、回答の質は低下してしまいます。
しかし、これまでには次のような課題がありました。
Retriever 単体のテスト環境が存在しない
LLM を実際に動かして初めて問題に気づく
不要な LLM コストが発生する
デバッグがブラックボックス化している
このように、Retrieval の検証が非常に難しい状況でした。
Retriever Playground とは?
Retriever Playground は、
Retrieval を “observable(可視化可能)” にする環境です。
できること:
フィルタの調整
チャンク結果のプレビュー
スコアの確認
Ground Truth(正解データ)との検証
LLM を呼び出さずにテスト
つまり、Retrieval-only のテスト環境です。
LLM の消費なしで改善を進めることが可能です。
テストフローの手順:
テストデータを選択
DMOレコードを指定、または期待レスポンスを指定
動的フィルタを入力
実行詳細を確認
メトリクスを確認(Source Recall / Response Time)
設定を保存し、新バージョンを作成
体系的に Retrieval を検証・改善できるようになります。
何が変わるのでしょうか?
Before
試行錯誤による調整
本番リリース後に問題が発覚
LLM コストが増大
After
事前検証が可能
チューニングが容易
RAG 品質の向上
コスト削減
AI エージェントを構築する企業にとっては、必須とも言える機能です。
特に重要なポイント:
既存の Retriever もテスト可能
LLM コストの増加なし
Chunk スコアの確認が可能
これは、エンタープライズ RAG 設計において非常に大きな意味を持つアップデートです。
Web Crawler & Sitemap 設定強化
Web Crawler はこれまで「最低限のクロール機能」でしたが、
今回のアップデートで エンタープライズレベルの制御性 に進化しました。
ユーザーからは、以下のようなニーズが寄せられていました。
Web サイトから取り込むデータを、より細かく制御したい
不要なコンテンツを除外したい
クロールの深さを増やしたい
更新日ベースで制御したい
つまり、「AI 用途に最適化されたクローリング」が求められていたということです。
主な強化ポイント:
① HTML 要素単位での制御
以下のような HTML 要素単位での制御が可能になりました。
header
footer
navigation
iframe
advertisement
modal など
さらに、jQuery セレクター指定も可能になっています。
これにより、RAG 用途におけるノイズの除去が可能になります。
② クロール深度の拡張
従来の制限よりも深い階層までクロールを設定できるようになりました。
これにより、大規模サイトにも対応可能です。
③ フィルタ機能の強化
最終更新日フィルタ
ファイル形式除外(.pdf / .png / .wav など)
ドメイン制御
Regex 指定
より柔軟で精度の高いデータ取り込みが実現します。
④ スケジュール設定
Hourly
Daily
Weekly
Monthly
運用に適した頻度でのスケジュール設定が可能になりました。
この機能強化がなぜ重要なのでしょうか?
RAG 構築において最も難しいのは、「良質なデータソースの整備」です。
今回の強化により、
ナレッジベースの品質向上
不要トークンの削減
Retriever 精度の向上
が実現します。
Box コネクタ
ついに Box Connector が GA となりました。
ユースケース:
Box に保存されているドキュメントを Data Cloud に取り込むことができます。
Agentforce のサポートケースなどで活用できます。
フィルタ機能:
対象フォルダ指定
ファイルタイプ選択
ラベルフィルタ
作成日/更新日フィルタ
エンタープライズ向けの細かい粒度で制御が可能です。
YouTube コネクタ
動画コンテンツも Data Cloud に取り込めるようになりました。
できること:
YouTube 動画の取り込み
キャプションの取り込み
プレイリスト指定
作成日フィルタ
FAQ 動画や製品説明動画を、RAG のソースとして活用することが可能になります。
重要性:
多くの企業では、
ドキュメントは十分に整備されていない
動画の方が情報量が多い
という現実があります。
CRM コネクタの改善
① 無効化フィールドの再追加
これまでは、一度無効化したフィールドを元に戻すことができませんでした。
今回のアップデートにより、
「Add Source Field」ボタンから再追加が可能になりました。
標準オブジェクト対応
カスタムオブジェクト対応
API サポートあり
クレジット消費なし
一見地味な改善ですが、非常に重要なアップデートです。
② Confirm OrgID フロー
Sandbox 接続時に、Data 360 OrgID を明示的に入力するフローが追加されました。これにより、誤接続を防止できます。
これは、エンタープライズ環境におけるガバナンス強化の一環です。
なぜ重要なのでしょうか?
Data Cloudでは、
Sandbox
Dev
Production
Multi-org
など、環境が複雑化しています。
今回の改善により、
接続事故の防止
ガバナンスの強化
監査耐性の向上
が実現します。
データ変換:Engagement DMO への書き込み
これまで、Data Transform の出力先には一定の制限がありました。
従来の出力先:
すべての DLO(Engagement / Profile / Other)
プロファイル DMO
その他 DMO
※ これまでは Engagement DMO へ直接書き込むことはできませんでした。
今回の変更で、Engagement DMO への直接書き込みが可能になりました。
しかも、Batch / Streaming の両方に対応しています。
なぜ重要なのでしょうか?
多くの企業では、
Engagement データは DMO に格納している
しかし Transform の出力は DLO に出力している
という「構造の不整合」が発生していました。
今回の改善により、
Engagement DMO → Transform → Engagement DMO
DLO を経由しない設計
データモデルの整合性向上
が可能になります。
ユースケース例:
行動履歴の集約
セッションベース指標の生成
カート分析の事前整形
ストリーミングイベントのリアルタイム加工
Custom Code Extension(パイロット版)
※ こちらは、よりプロフェッショナル向けの機能です。
背景として、顧客ニーズとして、「より高度なカスタム変換ロジックを実装したい」という要望がありました。SQL だけでは対応が難しいケースが増えてきています。
何ができるようになるのでしょうか?
Python ベースのカスタムコードを実装できます。
対応領域は以下の通りです。
Data Transform
非構造データのチャンク処理
実装例:
カスタム復号処理
高度なデータクレンジング
Levenshtein 距離計算
Haversine 距離計算
これにより、地理距離分析や曖昧一致ロジックの実装が可能になります。
エンタープライズ向け設計:
ローカル開発(SDK 提供)
サンドボックステスト
ログ監視
Data Kit によるパッケージング
安全な本番昇格
本格的に Pro-Code 層へ踏み込んできた印象を受けるアップデートです。
Shopping Cart Calculated Insights
ショッピングカートユースケース向けの
テンプレート型 Calculated Insight が提供されました。
できること:
カート DMO の標準フィールドを活用
個人/統合個人単位で現在のカート状況を集約
add / remove / purchase イベント定義
バッチ/リアルタイム両対応
EC企業にとって、
カゴ落ち分析
リアルタイムリマインド
購入予測
パーソナライズ
の基盤が標準化されます。
テンプレート提供は、実装コスト削減に直結します。
Activation Triggered Flows:Batch DMO
Activation-Triggered Flow において、
Batch DMO Activation が利用可能になりました。
※ Batch DMO Activation のスケジュール対応は今回リリースされていません。ロードマップにはあります。
基本パターン:
Batch DMO Activation を手動で実行
Audience DMO に書き込み
Flow を発火
HTTP / MuleSoft 経由で外部送信
ユースケース:
フル DMO データの外部連携
低遅延パーソナライズ
コンプライアンス/監査用途
これにより、Data Cloud → Flow → 外部システムという設計が、よりシンプルに実現できるようになります。
いかがでしたでしょうか。
「価格およびパッケージ変更」のトピックが何と言っても今回の目玉であることは言うまでもありません。
但し、私的には地味に「無効化フィールドの再追加」のようなこれまで何ともならなかった仕様が改善されたのが嬉しいですね。
さらに、データ変換において Engagement DMO への書き込みができるようになったことも喜ばしいですね。活用が進むと思います。
今回は以上です。
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