【第385回】 Data Cloud : 2025 年 10 月 新機能リリース ハイライト
現在、Data 360(Data Cloud)では 他の Salesforce 製品とは異なり毎月新機能がリリースされています。その数の多さに加え、内容も高度であるため、私自身キャッチアップに苦戦しています。
そこで、毎月の Data Cloud 新機能リリースのハイライトをまとめてあります。日頃の学習に活用してください。
2025 年 10 月リリース ハイライト
2025 年 10 月に行われる Dreamforce にあわせて、今月も Data Cloud に数多くの強力な機能強化と新機能が登場しました。注目すべきテーマは多岐にわたりますが、特に注目なのは以下の 3 点です。
1. 非構造化ドキュメント対応の大幅強化:LLM を活用した RAG パイプライン(ベータ)、Docling Parser、そして新しいコネクタにより、非構造化データを取り込み、RAG を通じてより正確なインサイトを得ることがこれまで以上に容易になりました。
2. アクティベーション機能の進化:Activation Triggered Flows により、オープン API を持つ外部システムへのアクティベーションが拡大。さらに Batch DMO Activation によって、完全な DMO データをクラウドストレージへエクスポートできるようになりました。また、アクティベーションされたフィールドの並び順が一貫性を持つようになり、順序ベースのフィールドマッピングがよりスムーズに行えるようになっています。
3. セグメンテーションの新ツール:Dynamic Segments と Broadcast Flows により、パラメーターに基づく属性セグメンテーションや、重要なオーディエンスセグメントへの「ジャストインタイム」アクティベーションが可能になりました。
これら以外にも、見逃せないアップデートが多数あります。詳しくは以下のダイジェストで全体の概要をご覧ください。
主な機能概要
Data Cloud One:コンパニオン組織でのセグメント作成
Data Cloud One のコンパニオン組織ユーザーは、ホーム組織に依存することなく、自身でセグメンテーションロジックを構築・管理できるようになりました。
これまでは、コンパニオン組織内ではセグメントを参照または閲覧することしかできませんでしたが、このアップデートにより、ビジネス部門ごとに最適化されたセグメントをネイティブに作成・管理できるようになりました。
これにより、コンパニオン組織内で作成可能なメタデータの範囲が拡張され、計算済みインサイト(Calculated Insights)やその他の Data Cloud アセットと並んで、さらなる分散的なアクティベーションと分析の実現が可能になります。
最終的には、Data Spaces を通じてホーム組織が提供するガバナンスとメタデータ構造を維持しつつ、ビジネス部門チームの自律性を強化します。
サンドボックス環境での Data Cloud プロビジョニング強化
サンドボックス作成後に本番組織へ Data Cloud を追加した場合でも、サンドボックスをリフレッシュする必要がなくなりました。
これまでは、管理者が Data Cloud にアクセスするためにサンドボックスをリフレッシュする必要があり、その結果データ損失や作業中断が発生していましたが、今回のアップデートにより、Salesforce は本番組織のライセンスと一致させる形で、対象サンドボックスへ自動的に Data Cloud をプロビジョニングします。リフレッシュは不要です。
プロビジョニングは、本番組織での Data Cloud セットアップが完了すると自動的に実施され、環境間でのライセンス整合性と機能の一貫性が確保されます。
ジャーニーの履歴情報が Data Cloud に連携
Marketing Cloud Engagement の Winter '26 の新機能リリースとしても掲載がありましたが、Journey Builder の履歴情報が Data Cloud で利用可能になり、マーケターはジャーニーデータを外部にエクスポートすることなく、分析・セグメント作成・アクティベーションを行えるようになりました。
今回のアップデートにより、これらのデータは内部データパイプラインを通じて 自動的に Data Cloud へ取り込まれるようになり(追加コスト不要)、マーケターはより高度なセグメントと分析を実現できます。
非構造化コネクタ:Guru、YouTube、GitHub(ベータ版)
Guru は人気のナレッジマネジメントプラットフォームであり、今回新たにネイティブコネクタを通じて、社内外のドキュメントを直接 Data Cloud に取り込めるようになりました。
この非構造化コンテンツを活用することで、Agentforce におけるサポートケースの解決や、顧客インサイトの強化などに役立てることができます。
認証は「ユーザートークン(ユーザーのメールアドレスとトークン)」および「コレクショントークン(コレクション ID とトークン)」の両方に対応しています。
また、管理者は、以下のような柔軟なフィルタリング設定で取り込み範囲を制御できます。
含めるコレクションやフォルダの選択
検証済みカードのみに制限
タグ、作成/更新日、アクセスレベル(公開・非公開・両方)によるフィルタリング
YouTube コネクタ は、YouTube チャンネルから動画コンテンツとメタデータを直接 Data Cloud に取り込み、Agentforce やその他の AI ワークフローでその知識を活用できるようにします。
チュートリアル、製品ガイド、情報動画などを発信する企業に最適で、非構造化の動画データを顧客データや製品データと統合し、よりスマートなエンゲージメントや文脈に即したサポートを実現します。管理者は、以下のようなオプションでデータストリームをカスタマイズできます。
特定のプレイリストを選択
字幕の有無を設定
ラベルによるフィルタリング
取り込み期間の指定
GitHub コネクタ は、Issues、Pull Requests、Commits、README、Wiki などを直接 Data Cloud に取り込むことができます。
これにより、エンタープライズ検索のユースケースをサポートし、サポートチーム、エンジニア、新入社員などが Data Cloud を検索して、PR のステータス、プロジェクトのオープン Issue、Wiki や README のドキュメント情報などを容易に取得できます。
データストリームは、以下の要素でカスタマイズ可能です。
リポジトリID
コンテンツタイプ
ラベル
ブランチ
担当者
日付フィールド
Marketing Intelligence コネクタ:Kakao Ads、Criteo Retail Ads、LinkedIn Company(ベータ版)
最新の Marketing Intelligenc アップデートでは、Kakao Ads、Criteo Retail Ads、および LinkedIn Company のコネクタが追加されました。
さらに、Data Pipelines を活用したマーケティングデータの取り込み体験が刷新され、複数の Data Cloud コンポーネントを裏で統合し、データの取り込みと整形を自動化します。
これにより、マーケターはサードパーティデータソースを手動設定することなく、すぐに Data Cloud と連携できるようになります。複雑な構成作業を省き、即座にデータ活用を開始できるようになるのが特徴です。
GA4 & GTM コネクタ
Google Analytics(GA4) および Google Tag Manager(GTM) と Web SDK の統合により、Webサイトを Data Cloud に接続する手順が大幅に簡素化されました。
これまで数日から数週間かかっていた設定が、わずか数分で完了 するようになっています。
従来は Web SDK の設定に、スキーマの手動アップロードやカスタムサイトマップ、エンジニアによるサポートが必要でしたが、今回のアップデートにより、GA4 と GTM を利用中の顧客は以下を自動生成できるようになりました。
スキーマ
サイトマップ
データストリーム
ID 解決ルール
これらはすべて Google の標準・推奨イベントに準拠しています。さらに、GTM 経由での自動タグ配信にも対応しており、ユーザーは最小限の手間で Data Cloud のタグをウェブページに適用できます。
LLM インフューズド RAG パイプライン(クローズドベータ)
LLM ベースのパースおよび前処理機能 が新たに登場し、非構造化データソースに対して高度な AI ドキュメント処理を実現します。
この機能は、PDF・DOCX・PPTX・HTML などの複雑で視覚的に豊かなドキュメントを処理するために設計されており、大規模言語モデル(LLM)を活用して、テキスト・表・図・画像の間の関係性を保持します。
従来のパーサーでは、こうした構造的な文脈情報が失われ、RAG ユースケースにおいて不完全な検索結果や精度低下を引き起こすことがありました。LLM ベースのパースでは、ドキュメント全体を包括的に処理し、要素間の関連性を維持することで、より正確で信頼性の高い AI 応答を実現します。
ユーザーはこのオプションを Search Index Builder から直接有効化でき、利用には Flex Credits を消費する見込みです。
Docling Parser
Docling Parser は、新たに一般提供された非構造化データツールで、複雑な表構造や混在コンテンツを含むドキュメントから構造化情報を抽出することに特化しています。
従来のパーサーでは、結合セルや入れ子構造の表、意味的に密なレイアウトなどに対応できず、PDF やレポート内に有用なデータが閉じ込められてしまう課題がありました。
Docling Parser は、レイアウト理解・表抽出・OCR のための複数のオープンソースモデルを組み合わせることで、LLM に依存せずに高精度かつ低遅延のパースを実現します。
対応ファイル形式は PDF、HTML、DOCX、PPTX で、埋め込み画像に対しても OCR を実行可能です。
現在は 英語とスペイン語 をサポートしており、エンタープライズ規模のドキュメント処理向けに最適化されています。
データグラフ:アドホックフィルター
Ad Hoc Filter(アドホックフィルター) が Data Graph に新たに追加され、
ユーザーは各グラフに含めるデータを細かく制御できるようになりました。これにより、更新効率の向上とコスト削減が可能になります。
ユーザーは DMO フィールドレベル でデータの取り込み条件を正確に定義でき、既存の TopK、Recency、Limit Filter と併用することも可能です。
これらのフィルターは、標準データグラフ および リアルタイムデータグラフ の両方に適用できます。
オープンソース Data Cloud Query Model Context Protocol サーバー
Model Context Protocol(MCP)は、Data Cloud に新たに追加されたオープンソースの統合フレームワークで、あらゆる外部サービスが自らの機能を LLM クライアントに公開できるようにします。
これにより、他の会話型 AI ツールから Data Cloud に対して自然言語による分析やクエリ操作 が可能になります。
Model Context Protocol は Data Cloud API と LLM の間に位置する プロトコルレイヤー として機能し、ユーザーのプロンプトを セキュアでガバナンスが効いた API コール に変換します。
OAuth 認証を基盤としており、ユーザー自身の認証情報を使用しながら、Data Cloud の権限設定とガバナンスを自動的に適用します。
これにより、技術的な知識を持たないアナリストでも、自然言語で質問するだけで スキーマ探索、データ分析、SQL 風クエリの実行 が可能になります。
たとえば、
「今年整備された車両の数を教えて」
「Catherine Hancock という名前の顧客の連絡先を表示して」
といった質問をすると、LLM が自動的に Data Cloud のメタデータ API を用いてクエリを生成・実行します。
このリリースにより、Data Cloud は SQL の知識を必要としない 会話型アナリティクスレイヤー として機能するようになりました。
Snowflake、CRM、Service Cloud などのデータソースを横断してアクセスできるため、ビジネスユーザーにとってのアクセス性とセルフサービス分析能力が大幅に向上します。
また、既存の Data Cloud セキュリティおよびデータアクセスルールにも完全に準拠しています。
アクティベーション・トリガーフロー
Data Cloud から、フローを通じてサードパーティシステムにバッチセグメントオーディエンスを直接送信できるようになりました。
アクティベーションが完了するとプラットフォームイベントが発火し、そのイベントをフローが検知して、Audience DMO ペイロード を宛先システムへ送信します。
送信方法としては、
Named Credentials を使った External Services(外部サービス)
クリック操作のみで接続できる MuleSoft コネクタ
のいずれも利用可能です。
この仕組みは、1 組織あたり 1 時間に約 1,500 万件のレコード処理にスケールし、関連属性を最大 2 階層まで含めることができます。
標準のセグメンテーションおよびアクティベーションクレジットが適用され、MuleSoft コネクタを使用する場合はオートメーションクレジットも消費します。
これにより、中間システムを減らしながら多様なアクティベーション先に拡張でき、導入スピードを大幅に短縮します。
動的セグメント/ブロードキャストフロー
Dynamic Segments と Broadcast Flows を利用することで、リアルタイムのオーディエンス生成と大規模なメッセージ配信(運用通知・サービスアラートなど)が可能になりました。
Dynamic Segments は、呼び出されたタイミングで即時に実行され、静的フィルターと動的フィルターの両方をランタイムで活用して、対象グループへ迅速かつ効率的にリーチします。
Broadcast Flows は Dynamic Segment を入力として受け取り、各コンタクトポイントごとに個別の実行をファンアウトし、数分で最大 10 万件のコンタクトポイントに配信します。
また、関連する DMO パスを通じてペイロードを拡張し、Marketing Cloud Journey や Marketing Cloud Next のメールや SMS を介して配信することが可能です。
バランスセグメンテーション:グルーピング、ランキング、制限機能
セグメンテーション機能に Group(グループ化)・Rank(順位付け)・Limit(制限) の新しい機能セットが追加され、マーケターはセグメント母集団をよりバランス良く、効率的にコントロールできるようになりました。
この機能では、
アカウントや地域などのフィールドでグループ化し、
売上高やアクティビティ日などの属性でグループ内の順位付けを行い、
各グループ内で含めるプロファイル数を制限する
ことが可能です。
これにより、特定のアカウントを過剰にターゲティングすることなく、最も価値の高い・関連性の高い顧客層に最適な形でリーチできます。
この機能は プロファイルベースの DMO に対応しており、標準の include / exclude(含む/除外)フィルター適用後にさらに精緻化を行います。
複数のルールセットを順序指定で実行することもでき、よりバランスの取れた・ROI の高い・コスト効率の良いターゲティングセグメントを構築できます。
アクティベーション同期:Data Cloud One
Data Cloud の セグメンテーションとアクティベーション機能 が、マルチオーガナイゼーション企業全体で利用できるようになりました。
多くのグローバル企業では、地域やブランドごとに複数の Salesforce 組織を運用しながら、本社の組織に 集中型 Data Cloud を保持しています。
今回のアップデートにより、これらの コンパニオン組織(Companion Org) は、Data Spaces によって管理されたメタデータの同期を通じて、本社組織で作成されたセグメントおよびアクティベーションを参照・活用できるようになりました。
これにより、ローカルチームが本社管理のオーディエンスを利用して安全にキャンペーンを実行できるようになります。
同期は約 10 分ごと に行われ、現時点ではコンパニオン組織側からは 閲覧のみ(View-Only) が可能です。
グローバル組織における分散運用と中央ガバナンスの両立を実現する重要なステップです。
バッチ DMO アクティベーション
新機能 Batch DMO Activation により、Data Cloud の DMO アクティベーションがストリーミング型だけでなく、バッチ処理によるデータ出力 にも対応しました。これにより、セグメントを作成せずとも Profile・Engagement・その他の DMO 全体を直接アクティベーション対象として送信できます。
たとえば、調和済みデータセットを以下のような宛先に送信し、分析・パーソナライゼーション・監査などに活用可能です。
Marketing Cloud
Amazon S3
SFTP サーバー
Google Cloud Storage
Microsoft Azure
ユーザーは「Batch」をアクティベーションタイプとして選択し、データスペース・DMO・アクティベーション先を指定し、フィルターや属性選択を行うだけで設定できます。
Engagementタイプの DMO は 過去90日分のデータ が対象となり、現時点では スケジュール実行に非対応(手動公開のみ) です。また、Audience・Segment Membership・Unified Link Table などの特殊 DMO は対象外です。
Batch DMO Activation は他のアクティベーションタイプと同様に 処理量ベースの課金モデル が適用され、Data Cloud データを簡単かつ柔軟にエクスポートまたは運用データ化する手段を提供します。
ファイルベースのアクティベーションにおける列順の一貫性
この機能により、S3、SFTP、GCS、Azure 上の Data Cloud からのファイルベースアクティベーションで出力される CSV ファイルの 列順がすべての実行で一貫 するようになりました。
以前は、実行ごとに列順が変わることがあり、ユーザーは列名に依存したり、独自の対応策を取る必要がありました。
今回の改善により、列の順序は安定し、下流システムとの連携が簡素化され、メンテナンス負荷も軽減されます。
LinkedIn Insights
Google や Amazon Ads の Insights と同様に、この新機能では LinkedIn 広告のオーディエンス情報 を Data Cloud に直接統合できます。
マーケターは、アクティベートしたオーディエンスが LinkedIn 内でどのように動作・セグメント化されているかを可視化できます。
レポートでは、最大 100 の LinkedIn “ファセット”(職務、役職、業界、地域など)ごとのオーディエンス構成を確認でき、インデックス値で自分のオーディエンスが LinkedIn 全体とどの程度比較されるかを把握できます。
追加 SKU や課金への影響はありませんが、Data Cloud の利用者はAdvertising Audiences の権限 が必要です。
LinkedIn Conversion API(CAPI)
以前リリースされた META CAPI と同様に、この新しい統合により、Data Cloud ユーザーは Salesforce システムから LinkedIn に 購入、サインアップ、CRM 更新などのコンバージョンイベント を直接送信できます。
これにより、ブラウザピクセルに依存せず、アトリビューション精度の向上 や リアルタイムキャンペーン最適化 が可能になります。
オンラインおよびオフラインのシグナルにも対応しており、
メール開封
電話
店舗でのアクション
などのデータを LinkedIn 広告の成果と連動させることが可能です。
SFR V2-Small Embedding
Salesforce AI Research は、SFR-V2 Small 埋め込みモデル を導入しました。この新しいテキスト埋め込みモデルは 8,000 トークンの拡張コンテキストウィンドウ を持ち、従来の 512 トークン E5 モデルから大幅に進化しています。
長いコンテキストにより、検索精度とマルチターン理解 が大幅に改善されます。現在は英語テキストに対応しており、Search Index のベクトル化設定画面から直接選択可能です。
大規模テキストや会話形式テキストでも、よりリッチで文脈を理解した検索・取得が可能になります。
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