【第518回】 Data Cloud : 2026 年 5 月 新機能リリース ハイライト
現在、Data 360(Data Cloud)では 他の Salesforce 製品とは異なり毎月新機能がリリースされています。その数の多さに加え、内容も高度であるため、私自身キャッチアップに苦戦しています。
そこで、毎月の Data Cloud 新機能リリースのハイライトをまとめてあります。日頃の学習に活用してください。
過去の記事
2026 年 5 月リリース ハイライト
2026 年 5 月のリリースでは、
Data Graph のリアルタイム強化
AI / 予測モデル機能の拡張
Enterprise Knowledge の登場
Clean Rooms の強化
開発者向け拡張性の向上
広告アクティベーション機能の拡張
など、Data 360 全体にわたって非常に大規模な機能追加が行われています。
それでは、主な新機能を順番に確認していきましょう。
データ統合・イベント管理・データモデリング
① 標準コネクタで Databricks 連携
Databricks Lakehouse から Data 360 へ、バッチ処理を利用したデータ取り込みが可能になりました。
従来、Databricks を利用した企業では、データパイプラインを個別実装するケースもありましたが、今回の標準コネクタ提供により、Data 360 との統合が大幅に容易になります。
設定方法
Data 360 の設定画面から、「その他のコネクタ」を選択し、「ソース」として「Databricks」を指定します。

※ 設定画面の接続方法に、「バッチ」または「ゼロコピー」の選択画面が表示されている必要があります。
② CRM コピー項目エンリッチメントの管理を簡素化
a. 必要権限の自動付与に対応
コピー項目エンリッチメントに必要な権限を、自動的に付与できるようになりました。
これまでは、必要な権限を管理者が個別に手動設定する必要があり、運用負荷が高いケースがありました。今回の変更により、エンリッチメント有効化時に必要権限を自動適用できるようになります。
また、組織全体権限など追加設定が必要な場合には、Salesforce が手動設定用 UI を表示します。
b. 多次元 Calculated Insight を利用可能に
コピー項目エンリッチメントで、多次元集計対応の Calculated Insight を利用できるようになりました。
これまでは一次元 Calculated Insight のみ対応していたため、高度な集計結果を利用できない制約がありました。今回の変更により、既存の複雑な Calculated Insight を CRM 側へ柔軟に反映できるようになります。
※ ここでいう「多次元集計対応の Calculated Insight」は、簡単に言うと、「1 つのキーだけではなく、複数の軸(ディメンション)で集計された Calculated Insight」を指しています。例えば、顧客+地域 などです。
イベントデータ管理
① Web / モバイル以外のイベントデータ取り込みに対応
新しい「Data from Other Sources」オプションにより、Server-to-Server(S2S)API を利用した柔軟なイベント取り込みが可能になりました。
※ S2S API が新たに「Other」イベントカテゴリへ対応しました。
これにより、
Agentforce の会話イベント
POS トランザクション
IoT デバイスデータ
キオスク端末ログ
など、従来取り込みづらかった Web / モバイル外のイベントを、Profile / Engagement に無理に分類する必要がなくなり、統合できます。
これまで、ブラウザやモバイルアプリコンテキストを持たないイベントは、S2S API で扱いにくい制約がありました。今回の変更により、イベント管理の対象領域が大幅に広がります。
② Time Tracking によるエンゲージメント分析を強化
Data 360 Web SDK の Time Tracking 機能により、
ページ滞在時間
セッション継続時間
ユーザーアクティビティ
などを自動追跡できるようになりました。
また、特定条件到達時にイベント送信を行えるため、ユーザー行動分析やエンゲージメントスコアリングをより高度に実施できます。
重要:本機能はデフォルト無効となっており、SalesforceInteractions.init() の オプションで enabled=true を設定する必要があります。
データモデリングとデータ変換
① OOTB Contact Lookup により Data Graph 検索を簡素化
Out-of-the-Box(OOTB)Contact Lookup により、メールアドレスや電話番号だけでリアルタイム Data Graph を取得できるようになりました。
これまでは、ID 解決ルールに基づく特定識別子(統合個人 ID)が必要でしたが、今回の改善により、より直感的な検索が可能になります。
また、同一メールアドレスが複数 Data Graph に紐づいている場合には、すべての一致結果が返されます。
② Data Graph 上限が 25 個へ拡張
Data Graph の上限数が、従来の 10 個から最大 25 個へ拡張 されました。
これにより、
部門別 Data Graph
AI エージェント専用 Graph
ドメイン別 Customer 360
など、より大規模かつ柔軟なアーキテクチャを構築できます。
特にマルチドメイン構成を採用する企業にとって、設計自由度が大幅に向上します。
③ ストリーミング Data Graph に対応
Data Graph が、基盤 DMO の変更をトリガーとして自動更新されるようになりました。
これまでは、更新頻度を手動管理する必要があり、古いデータが残るケースもありました。今回の変更により、
ほぼリアルタイム更新
SLA 信頼性向上
最新 Customer 360 利用
が可能になります。
また、Agentforce エージェントやパーソナライゼーションエンジンが、常に最新プロファイルを参照できる点も重要です。
AI / 予測モデル
① 新しいデフォルトランタイムによる予測モデル構築に対応
Data 360 の予測モデル構築で、新しいデフォルトランタイムが利用可能になりました。

この新ランタイムは、
クラスタリング(Cluster)
時系列予測(Forecast)
などの新アルゴリズムをサポートしており、今後の長期的な AI モデル基盤となります。今後、予測モデル構築には、新しいランタイムが使用されるため、特別な操作は必要ありません。
従来のバイナリ分類モデルや回帰モデルでは旧ランタイムも引き続き利用できますが、それ以外の新しいモデルは新ランタイム専用となります。
また、旧ランタイムベースの多クラス分類モデルを利用している組織では、一部挙動変更の影響を受ける可能性があります。
旧ランタイムは将来的に廃止予定 となっており、今後の AI 機能は新ランタイムが前提になっていきます。
以前のランタイムを一時的に使用するには、Data 360 Feature Manager に移動し、レガシーモデル構築プロセスの開始時に「レガシーモデル作成」(Legacy AI Model Creation)を有効化してください。

② 多クラス分類モデル(Multiclass Models)が一般提供開始
これまでベータ版として提供されていた、多クラス分類モデルが一般提供開始となりました。
従来のバイナリモデルでは「Yes / No」の 2 パターン しか扱えませんでしたが、多クラスモデルでは、最大 50 種類のカテゴリ分類が可能 になります。
例えば、
価格重視顧客
ブランドロイヤル顧客
新規顧客
離脱リスク顧客
など、より細かな顧客セグメントを作成できるようになります。
また、カテゴリ単位の予測結果を利用することで、
パーソナライズ施策
優先順位付け
高精度ターゲティング
なども実現可能になります。

③ Forecasting(時系列予測)が一般提供開始
Forecasting(時系列予測)が一般提供となりました。
過去データのトレンドや季節性を分析し、将来予測を行うことで、
販売台数を予測する
在庫を最適化する
製品発売や繁忙期に向けた人員配置計画を立てる
などへ活用できます。
手順: Data 360で、「データ変換」タブを開き、バッチデータ変換を作成します。データモデルオブジェクト(DMO)を使用して入力データを追加し、予測 AI 機能を適用して、データ設定を構成します。
変換を実行すると、Data 360 は予測データを DMO に追加します。このデータは、「データモデル」タブで確認できます。
④ Sentiment Analysis(感情分析)が一般提供開始
レビュー、アンケート、メール、チャットなどのテキストデータを分析し、顧客感情を把握できる Sentiment Analysis が一般提供となりました。
これにより、
顧客満足度分析
ブランド感情分析
離脱兆候検知
エンゲージメント改善
などに活用できます。
また、分析結果はレポートやクエリにも利用できるため、Data Cloud 全体で感情データを活用できるようになります。

⑤ Topic Classification(トピック分類)が一般提供開始
事前学習済みモデルを利用した ゼロショット・トピック分類(Topic Classification)が一般提供となりました。
営業メモ、サポートケース、レビューなどの非構造化テキストを自動分類し、意味のあるインサイトを抽出できます。
また、
多言語対応
低コスト
低レイテンシ
を特徴としており、大規模言語モデル(LLM)より軽量に利用できる点も特徴です。

⑥ Clustering(ベータ版)に対応
Data 360 にクラスタリングモデル(ベータ版)が追加されました。
従来の固定ラベル型分類とは異なり、データ内の傾向を動的に検出して、自動的に顧客グループ化を行います。
これにより、
より細かなセグメント分析
動的クラスタリング
スマートプライシング
高度なパーソナライゼーション
などを実現できます。
また、Explainability(説明可能性)やラベル生成にも対応しています。

⑦ Predictive Model Drift Monitoring(ベータ版)を追加
Predictive Model Drift Monitoring(ベータ版)により、本番推論結果が学習データからどれだけ乖離しているかを監視できるようになりました。
これにより、
モデル性能低下の早期検知
分布変化の監視
ドリフト要因分析
モデル再学習自動化
などが可能になります。
特に、本格的な精度劣化が起こる前に兆候を検知できる点が重要です。

※ 新しいランタイムで作成されたモデルのみが、ドリフト監視をサポートします。
ナレッジ管理と検索
① Enterprise Knowledge for Agentforce Service
Enterprise Knowledge により、組織内に分散したナレッジを Data 360 上へ統合できるようになりました。
CRM、マーケティング、サポート、ドキュメントなど、複数システムに散在する構造化・非構造化コンテンツを、統合 HDMO(Harmonized DMO)へ変換して管理できます。
また、Enterprise Knowledge のコンテンツは、
AI エージェント
Service Agent
ケース処理
などにも利用できます。
さらに、
AI 要約生成
Q&A 自動生成
Content Viewer
PDF 専用ビューア
Amazon S3 / Azure Blob Storage 連携
などにも対応しています。
これにより、サービス担当者は Service Console を離れることなく必要情報へアクセスできるようになります。
② Intelligent Context が対応ファイル形式を拡張
Intelligent Context が、より多くのファイル形式へ対応しました。
対応形式:
.docx
.html
.jpeg
.pdf
.png
.pptx
.txt
これらのファイルを Intelligent Context Workspace へアップロードし、検索インデックスを生成することで、検索精度を向上できます。
開発者機能と DevOps
① Code Extension により Data 360 をカスタム拡張可能に
Code Extension を利用することで、独自 Python コードを Data 360 へ組み込み、標準機能を拡張できるようになりました。
例えば、
高度なデータ変換
独自分析ロジック
カスタムビジネスルール
などを実装できます。
また、
Salesforce CLI
Code Extension Plugin
Data Custom Code Python SDK
を組み合わせることで、ローカル環境から開発・テスト・デプロイまで実施できます。
② Data 360 Sandbox のクローン作成に対応
Data 360 が有効化された Sandbox を直接クローンできるようになりました。
これにより、
テスト環境構築
トレーニング環境作成
開発環境複製
などを効率化できます。
なお、クローン対象はデータではなくメタデータです。
③ ガバナンスメタデータ移行に対応
DevOps Data Kit を利用して、
構造化マスキング
レコードレベルセキュリティ
項目レベルセキュリティ
オブジェクトレベルセキュリティ
などのガバナンス設定を Sandbox から本番環境へ移行できるようになりました。
データアクティベーションと広告連携
① Rapid Publish により高速セグメント配信に対応
Rapid Activation を利用することで、1 時間または 4 時間間隔で、Data 360 Target へセグメントを高速配信できるようになりました。
これにより、アクティベーショントリガーフローを利用して、外部 API ベースのさまざまなシステムと迅速に連携できます。
また、MuleSoft コネクタを活用することで、顧客の最新行動に基づいたリアルタイム性の高いエンゲージメント施策を、より広範な外部システムへ展開可能になります。
② Amazon S3 Activation の柔軟性と管理性を強化
新しい推奨 Amazon S3 Activation Target により、ファイル出力や接続管理を柔軟に制御できるようになりました。
対応内容:
カスタムファイル名
任意フォルダーパス
Parquet 出力
CSV 区切り文字指定
最大ファイルサイズ制御
最大レコード数制御
などです。
さらに、IdP ベース認証にも対応し、アクセスキー運用を簡素化しながら、より安全な接続管理を実現できます。
③ Batch DMO を広告プラットフォームへ直接配信可能に
Batch DMO データセットを、
Google
Meta
LinkedIn
などの広告・マーケティングプラットフォームへ直接アクティベーションできるようになりました。
これにより、Marketing Cloud Engagement や Data Cloud Activation Target に加えて、戦略パートナー向けプラットフォームとの統合も強化されます。
④ Streaming DMO Activation のターゲティング条件を強化
Streaming DMO Activation において、Data Graph 上の DMO 属性を利用した条件指定が可能になりました。
アクティブ化対象 DMO から最大 2 ホップ先までのリレーションを利用できるため、
世帯情報
契約情報
商品利用情報
など、既存の Data Graph 関係性を利用した高度なターゲティングが可能になります。
⑤ Code Extension コンポーネント移行を DevOps Data Kit がサポート
DevOps Data Kit を利用して、Code Extension や、それを利用する Data Transform を Sandbox から本番環境へ移行できるようになりました。
また、Code Extension ベースの Data Transform を Data Kit に追加すると、関連する Code Extension も自動的に含まれます。
これにより、Data 360 の DevOps 運用をより効率的に実施できます。
⑥ Clean Room Activation に対応
Clean Room Activation により、マッチ済みオーディエンスを、直接プロバイダーの S3 バケットへ安全に送信できるようになりました。
従来のように完全な顧客リストを共有する必要がなく、
一致したオーディエンスのみ共有
データ露出最小化
高いマッチ率
広告費最適化
を実現できます。
また、監査ログも提供されるため、マッチ件数や処理状況の検証も可能になります。
⑦ Amazon Activation の地域規制対応を強化
Amazon 向けオーディエンスアクティベーションで、国コードマッピングが必須となりました。
さらに、EEA(欧州経済領域)など規制地域向けでは、
業界標準フォーマット
Amazon 独自形式
による同意シグナル送信も必要になります。
これにより、地域規制に準拠した広告データ配信を実現できます。
⑧ Meta Conversions API がカスタム属性送信に対応
Meta Conversions API へ、
ロイヤルティランク
リード品質スコア
独自ビジネス属性
などを送信できるようになりました。
これにより、標準コンバージョン項目だけでは難しかった高度な広告最適化や、精密なターゲティングが可能になります。
⑨ Snapchat Conversion API 連携に対応
Data 360 から Snapchat Conversion API(CAPI)へ、コンバージョンイベントを直接送信できるようになりました。
例えば、
Web 購入
イベント登録
商談成立
オフラインイベント
などを Snapchat 側へ送信し、クロスチャネル広告分析を実施できます。
Clean Rooms と標準データモデル
① Connect API による Clean Room 運用管理を自動化
Connect API を利用して、Clean Room の運用管理をプログラム経由で自動化できるようになりました。
対応する主な操作:
コラボレーション無効化
メタデータ更新
結果データオブジェクト取得
Clean Room Specification 削除
ユースケース別コラボレーション取得
接続テスト
これにより、Clean Room のセットアップ・保守・検証作業を DevOps 化しやすくなります。
② 標準 DMO・Data Bundle・Mapping を提供開始
Salesforce は、新規顧客向けに、標準 DMO(Data Model Object)、Data Bundle、Mapping の提供を開始しました。
これらは新しい標準スキーマを採用しており、従来の DMO は「Legacy DMO」として扱われます。
これにより、
一貫性のあるデータモデル
標準化されたマッピング
環境横断の統一モデリング
を実現できるようになります。
なお、UI 上では既存 Legacy DMO と整合性を保つため、一部フィールド名表示が異なる場合があります。
※ 現在は Developer Preview のため、本番利用は推奨されません。
今回は以上です。
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