【第486回】 Data Cloud : 2026 年 3 月 新機能リリース ハイライト
現在、Data 360(Data Cloud)では 他の Salesforce 製品とは異なり毎月新機能がリリースされています。その数の多さに加え、内容も高度であるため、私自身キャッチアップに苦戦しています。
そこで、毎月の Data Cloud 新機能リリースのハイライトをまとめてあります。日頃の学習に活用してください。
2026 年 3 月リリース ハイライト
2026 年 3 月は「AI × 非構造データ × 可視化」の領域が大きく進化したリリースです。
特に以下のポイントが重要です。
Notebook AI の GA(正式リリース)
非構造データコネクタの拡充(SharePoint / Google Drive)
Power BI 連携の強化
データスペース単位の運用・展開機能の強化
Activation / Segment 領域の実用性向上
2 月が「価格・基盤の変革」であったのに対し、
3 月は「実装・活用フェーズ」に踏み込んだリリースと言えます。
その他にも多数のアップデートがあります。
それでは、今月の主なアップデートを順に見ていきましょう。
プラットフォーム
Custom Tagging(Digital Wallet)
Digital Wallet において、ユーザー定義のタグを使ったクレジット消費の可視化が可能になりました。
部門、コストセンター、プロジェクト、ユースケースなど任意の粒度でタグを定義し、それぞれの利用状況を分析できます。
対象となる使用タイプには、データ取り込み、プロファイル統合、セグメント処理、アクティベーション、データ変換などが含まれます。一方で、ストレージやデータクエリなど一部は対象外です。
これにより、これまで難しかった部門別の利用量把握やチャージバックが現実的になります。特にエンタープライズでは重要な機能です。
このレポートは Consumption Insights のデータモデルを利用して作成しますが、作成自体にクレジットを消費しません。
データキットのデータスペース単位の展開
データキットをデータスペース単位で展開 できるようになりました。
CRM データストリーム、DMO マッピング、Calculated Insights、セグメント、データアクションなどの設定を、複数の Data Space に対して横展開できます。これにより、手動での設定コピーが不要になります。
なお、この機能は Sandbox 環境で利用でき、本番環境への反映は DevOps Datakit を利用します。
マルチブランドや地域別にデータスペースを分けている企業にとっては、運用効率とガバナンスの両面で大きな改善となります。
Notebook AI(GA)
Notebook AI が正式リリースされました。
複数のドキュメントソースを横断して検索し、ナレッジとして整理・活用することができます。ファイルのアップロード、リソースライブラリの構築、質問応答の生成、PDF 出力、共有などが可能です。
従来は、Drive やメール、Slack などに分散した情報を手動で探していましたが、この機能により横断検索と知識の再利用が可能になります。調査時間の削減だけでなく、ナレッジの標準化にも寄与します。
コネクタ
Power BI Connector(GA)
Data Cloud のデータを Power BI から直接参照できるようになりました。
このコネクタはローカル(Windows)にインストールするタイプで、DirectQuery によるリアルタイム参照にも対応しています。OAuth による認証が利用され、Data Cloud 側のセキュリティがそのまま適用されます。
これにより、CSV エクスポートやバッチ連携に依存することなく、最新のデータをそのまま分析に利用できるようになります。Import モードにも対応しているため、用途に応じた使い分けも可能です。
SharePoint Unstructured Connector(GA)
SharePoint 上の非構造データを Data Cloud に取り込むことが可能になりました。
サイト単位でデータを取り込み、PDF やドキュメントなどのファイルを対象に処理します。取り込みは 1 時間ごとに増分同期され、変更内容が反映されます。
構成としては、コネクション作成後に UDLO を作成し、その後データストリームが自動生成されます。そこから検索インデックスや Retriever と連携することで、AI 活用が可能になります。
最大で約 300 GB 程度までの取り込みが想定されており、大規模なドキュメント管理にも対応します。
Google Drive Unstructured Connector(GA)
Google Drive に保存されたドキュメントも同様に取り込めるようになりました。
SharePoint と同じく、非構造データを Data Cloud に統合し、検索・AI 活用につなげるための機能です。社内ナレッジや製品資料などを対象に、エージェントや RAG 用途での利用が想定されます。
Fabric Connector(Beta)
Microsoft Fabric との連携機能がベータとして提供されています。
現時点では詳細な仕様は限定的ですが、今後の Microsoft エコシステムとの統合強化を見据えた機能と考えられます。
Metadata Entities Connect API
メタデータレベルでの接続や取得を可能にする API が提供されています。
スキーマ情報の取得や外部システムとの連携、自動化処理などでの利用が想定されます。詳細なユースケースは資料内では限定的ですが、基盤的な拡張機能と位置づけられます。
Zero Copy Strict Data Type Validator
Zero Copy 連携において、データ型の検証が強化されました。
データ型の不一致によるエラーや不整合を事前に検知することで、データ品質とガバナンスを向上させることが目的です。
Document AI の機能強化
Document AI において、いくつかの機能強化が行われています。
具体的には、FileForce コネクタの対応、Consent 画面の追加、GovCloud 対応などが含まれます。
これにより、ドキュメント処理の対象範囲とセキュリティ面の対応が拡張されています。
データ変換
データ変換のデータスペース単位の展開
Data Transform を Data Space 単位で展開できるようになりました。
これにより、ある Data Space で作成した Transform ロジックを、他の Data Space にそのまま適用することが可能になります。従来は個別に作成する必要がありましたが、この機能によって再利用性と一貫性が大きく向上します。
特に、グローバル企業やマルチブランド運用においては、同一ロジックを各地域・ブランドに展開するケースが多いため、実務上のメリットは大きいです。
Dynamic Retriever Filters
Retriever に対するフィルタを動的に制御できるようになりました。
従来は固定的な条件で検索を行うケースが多く、ユースケースごとに最適な検索条件を調整することが難しい場面がありました。この機能により、状況に応じて検索条件を変更できるようになります。
例えば、以下のような制御が可能になります。
特定の顧客属性に応じた検索範囲の変更
最新データのみを対象とするフィルタリング
特定ドメインやカテゴリの優先度調整
これにより、RAG における検索精度が向上し、結果として生成される回答の品質も改善されます。
Docling + LLM Image Processing(GA)
画像や PDF に含まれる情報の処理能力が強化されました。
これまではテキスト中心の処理が主でしたが、今回のアップデートにより、画像やドキュメント内の構造化されていない情報もより高精度に扱えるようになります。
具体的には、以下のような活用が想定されます。
PDF 資料からの情報抽出
画像に含まれるテキストの理解
ドキュメント構造の解析
非構造データの活用という観点で、基盤的な進化となっています。
セグメントと有効化
Real-time Insights from Non Real-time DMO Fields
非リアルタイムの DMO フィールドをもとに、リアルタイムなインサイトを生成できるようになりました。
従来は、リアルタイム処理を行うためにはストリーミングデータが前提となるケースが多く、バッチデータとの間にギャップがありました。
今回の機能により、
バッチで更新されたデータ
定期処理で生成された指標
といった情報も、リアルタイムの意思決定に活用できるようになります。
これにより、例えば以下のようなユースケースが実現しやすくなります。
前日までの購買履歴をもとにした即時パーソナライズ
バッチ集計データを使ったリアルタイム判定
セグメント条件の即時反映
リアルタイムとバッチの境界を埋める重要な機能です。
Activation Templates が登場
フローから Data Cloud のアクティベーション処理を実行するためのテンプレートが提供されました。
この機能は、Marketing Cloud Next のフロー設計とも密接に関係する重要なアップデートです。
従来は、アクティベーションの設定とフローの連携が分断されており、設定が複雑になりがちでした。今回のテンプレートにより、標準化された形でアクティベーション処理をフローに組み込むことができます。
主なポイントは以下の通りです。
フローから直接アクティベーションを実行可能
標準テンプレートにより設定の簡略化
一貫した構成での実装
特に、Spring '26 で強化された Activation Template と組み合わせることで、フロー中心の設計がより現実的になります。
この機能については、以下の記事で解説済みです。
有効化の出力名が命名可能に
有効化の出力名を柔軟に設定できるようになりました。
これにより、複数のアクティベーション処理を扱う際の管理性が向上します。従来は識別が難しいケースもありましたが、命名ルールを統一することで、運用がしやすくなります。
セグメントのコンテナレベルでのカウント機能
セグメントのコンテナレベルでのカウントが可能になりました。
これにより、セグメントの構造ごとに対象件数を把握できるようになります。複雑な条件を持つセグメントにおいて、どの条件がどの程度影響しているかを分析しやすくなります。
セグメント設計の検証やチューニングにおいて有効です。
ガバナンス
New DLO for Connector Errors
コネクタ関連のエラーを記録する DLO が追加されました。
これにより、データ連携時に発生した問題を可視化し、トラブルシューティングがしやすくなります。従来はログの追跡が難しいケースもありましたが、DLOとして管理されることで分析・監視が可能になります。
運用面での安定性向上に寄与する機能です。
いかがでしたでしょうか。
私個人としては、すでに Marketing Cloud Next としての記事で解説済みの Activation Template が目玉リリースですね。
これにより、以下の 3 つが実現できるようになっていますので、それぞれ確認してください。
補足:Unified Individual ベースの単一送信について
これまで Unified Individual ベースでは、1 人に紐づく複数のメールアドレスすべてに配信されてしまうという課題がありました。
今回の「単一送信」により、1 人 = 1 通 の送信制御が可能になります。
今回は以上です。
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