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【病院幹部のための令和8年度診療報酬改定「病院選別」シリーズ】第5回

第5回 地域包括医療病棟で病院格差が広がる──伸びる病院、苦しくなる病院

2026/6/24リライト


令和8年度診療報酬改定から一定期間が経ち、地域包括医療病棟(以下、地域包括)の“本当の姿”がようやく見えてきました。

制度が始まった当初は、
「急性期と回復期の間を埋める新しい病棟」
「急性期病床の転換先」
といった“病棟そのもの”に注目が集まっていました。

しかし、現場を歩いていると、今はまったく違う空気を感じます。

「病棟をつくれば評価される時代ではなかった。」
「運用してみて初めて、求められるレベルの高さに気づいた。」
「地域とつながっている病院ほど患者が自然と集まる。」

令和8年度改定は、地域包括を“新設病棟”から
「地域医療の中核機能としてどう使いこなすか」
というフェーズへ押し上げました。


■地域包括医療病棟は“第二の急性期”ではない

制度開始当初、急性期病床の転換先として地域包括を選んだ病院は少なくありません。

しかし、実際に運用が始まると、
「急性期の延長線」では通用しない
という現実が見えてきました。

地域包括が担うのは、単なる“中間病棟”ではありません。

  • 高齢者救急の受け皿

  • 急性疾患の短期治療

  • 在宅復帰支援

  • 地域の医療・介護との連携

  • 多職種チームによる包括的支援

つまり、地域包括は
「空いた病床を埋めるための転換先」ではなく、
地域医療を支える“新しい中核機能”

として設計されています。


■令和8年度改定で明確になった“求められる役割”

今回の改定で、地域包括に求められる役割はより具体化しました。

  • 救急搬送患者の受け入れ

  • 在宅復帰を見据えた退院支援

  • 多職種によるチーム医療

  • 地域の医療機関・介護施設との連携

  • 急性期機能の補完

特に、救急医療との接続が強く求められています。

ある病院では、地域包括の救急受け入れ割合が
20% → 35%
に増えたことで、病棟稼働率が安定し、地域からの信頼も高まりました。

一方で、救急受け入れが弱い病院では、
「患者が集まらない」「稼働が安定しない」
という声が目立ちます。


■地域包括は“病棟の問題”ではなく“病院全体の設計”の問題

ここが最も重要なポイントです。

地域包括は、病棟単体で完結する機能ではありません。

  • 救急外来

  • 急性期病棟

  • 地域連携室

  • 退院支援部門

  • 在宅医療

  • 介護事業者

  • リハビリ部門

これらが一体となって初めて、地域包括は本来の力を発揮します。

実際、うまく運用できている病院ほど、
「病棟の改善」ではなく「病院全体の流れ」を見直している
という共通点があります。


■地域包括を使いこなせている病院の共通点

現場で成果を上げている病院には、明確な共通点があります。

  • 急性期病院との信頼関係が強く、紹介が安定

  • 救急搬送の受け入れが地域から評価されている

  • 退院支援部門が“入院当日”から介入

  • 在宅医療・介護との連携が日常的

  • 多職種カンファが機能している

  • 地域包括ケア病棟・回復期との役割分担が明確

こうした病院では、地域包括が“単独で動く病棟”ではなく、
地域医療ネットワークのハブとして機能しています。


■苦戦している病院に共通する課題

一方で、苦戦している病院には、次のような特徴があります。

  • 病棟はあるが、患者の流れができていない

  • 救急受け入れが限定的

  • 退院調整が遅く、在院日数が長い

  • 地域連携室が“紹介受付”に留まっている

  • 在宅医療・介護との接続が弱い

これでは、病床稼働率は維持できても、
制度が期待する役割を果たすことは難しくなります。

地域包括は、
「病床数」ではなく「地域から選ばれる仕組み」
が問われる病棟なのです。


■地域包括を使いこなせる病院かどうかを見極めるチェックリスト

現場で成果を出している病院の共通点を、実務レベルに落とすとこうなります。

【地域包括を使いこなせる病院のチェックリスト】

  • 救急搬送患者の受け入れが安定している

  • 入院当日から退院支援が介入している

  • 在宅復帰率を毎月モニタリングしている

  • 多職種カンファが“形”ではなく“機能”している

  • 地域の医療・介護との連携が日常的

  • 地域包括ケア病棟・回復期との役割分担が明確

  • 地域連携室が“関係構築”を担っている

  • 病院全体の患者導線が整理されている

5つ以上当てはまる病院は、地域包括を“武器”にできる体質に近いと感じます。


■地域包括は2040年への布石

今回の見直しは、単なる制度調整ではありません。

  • 高齢者人口の増加

  • 医療従事者不足

  • 救急医療の負担増

こうした2040年問題に対応するため、
急性期と慢性期の間を支える“第三の柱”として、
地域包括が位置づけられています。

だからこそ、今回の改定では
「病棟を持つこと」ではなく「役割を果たすこと」
が重視されたのだと思います。


■最後に──地域包括を成功させるのは“病棟”ではなく“病院の設計力”

令和8年度改定によって、地域包括医療病棟は新たな段階に入りました。

制度創設期のように、
「病棟を設置すれば評価される」
という時代は終わりました。

これから問われるのは、
地域包括を通じて、地域にどのような医療を提供できるか。

救急患者を受け止め、在宅復帰を支え、多職種が連携し、地域の医療・介護と切れ目なくつながる。

その一連の流れを構築できる病院ほど、改定の恩恵を受けています。

数年後に振り返ったとき、
地域包括を成功させた病院と苦戦した病院を分けたのは、
施設基準の違いではなく、

「地域から必要とされる役割を、どれだけ具体的に描けていたか」

その差だったのではないでしょうか。


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病院幹部のための令和8年度診療報酬改定

「病院選別」シリーズ

第1回 令和8年度改定で始まった「病院の選別」──勝ち残る病院と苦しくなる病院の違い
第2回 初診料は上がった。それでも病院経営が苦しくなる本当の理由
第3回 物価対応料では足りない──病院経営が迎えた静かな限界
第4回 賃上げできない病院から人が消える──令和8年度改定が突き付けた現実
第5回 地域包括医療病棟で病院格差が広がる──伸びる病院、苦しくなる病院
第6回 医療DX加算に目を奪われる病院が見落としていること
第7回 看護師が採れない時代に病院はどう生き残るのか
第8回 AIを使う病院と使わない病院──5年後に開く経営格差
第9回 紙文化が病院を苦しめる──令和8年度改定が求める病院運営
第10回 「手術ができる病院」が生き残る時代へ──外科機能が分岐点になる
第11回 高齢者救急を受けられない病院は取り残される
第12回 地域包括ケア病棟の経営が突然苦しくなる理由
第13回 2040年まで残る病院、消える病院──「特に中小病院の院長に読んでほしい」今回改定はその予告編だった
第14回 急性期病院であり続けることが最大のリスクになる日
第15回 病床は満床なのに利益が出ない──犯人は“出口渋滞”だった
第16回 回復期リハ病棟は「成果」で選ばれる時代へ
第17回 DPC標準病院群1・2で何が変わったのか──係数差が収益格差を生む
第18回 介護連携できない病院は選ばれなくなる──退院先を持つ病院の強さ
第19回 病院完結型医療の終焉──令和8年度改定が在宅へ舵を切った理由

病院幹部のための診療報酬改定完全解説 病院経営の未来を読む

第20回 病院は何で稼ぐ時代になったのか──診療報酬改定より重要な「利益の構造改革」
第21回 「利益が出ない病院」には共通点がある──私が事業再生で最初に見る数字
第22回 病院再生は「赤字になってから」では遅い──危険信号は数字に出ている
第23回「黒字なのに危ない病院」がある理由──キャッシュフローで見る病院経営 
第24回決算書が読めない院長ほど病院は危ない──黒字でも潰れる理由
第25回 院長が知らない「管理会計」の威力──病院経営は部門別採算で変わる
第26回 病院経営に「予算」がないのはなぜか──毎年同じ失敗を繰り返す本当の理由
第27回 その経営会議、本当に必要ですか──数字を報告するだけの病院が変われない理由
第28回 「数字はあるのに決められない病院」──意思決定が遅い組織の共通点
第29回 病院再生で最初に変えるべきもの──削減より「構造」を見る
最終回(第30回) 令和8年度改定後、病院経営はどこへ向かうのか──30回書いて見えた「生き残る病院」の条件



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