【病院幹部のための令和8年度診療報酬改定「病院選別」シリーズ】第17回
第17回 DPC標準病院群1・2で何が変わったのか──係数差が収益格差を生む
2026/6/24リライト
令和8年度診療報酬改定が一巡し、多くの病院では新設加算や施設基準の対応が落ち着いてきました。
しかし、病院を訪問して院長・事務長と話していると、今回の改定で本当に影響が大きいのは、
加算でも施設基準でもなく「DPCの見直し」
だと強く感じます。
「係数は昨年とほとんど変わっていない」
そう話す経営者は少なくありません。
ですが、DPCにおける“0.01の差”は、病院経営にとっては数千万円〜数億円規模の差になります。
今回のDPC改定は、単なる係数調整ではありません。
私はむしろ、
「DPC病院の選別が始まった改定」
だと捉えています。
■標準病院群は“1”と“2”に分かれた──ここが最大の転換点
旧III群(標準病院群)は、今回の改定で初めて二つに分かれました。
標準病院群1
標準病院群2
厚労省の資料では、1431病院のうち:
標準病院群1:1141病院(79.7%)
標準病院群2:290病院(20.3%)
となっています。
標準病院群1に入る条件は明確です。
救急搬送入院患者数
全身麻酔手術件数
急性期一般A・B相当の実績
つまり、今回の改定は
「DPC病院=同じ土俵」ではなくなった
ということです。
■まず確認すべきは「基礎係数」──0.03の差は“誤差”ではない
今回の基礎係数は次の通りです。
区分基礎係数 大学病院本院群1.1245 DPC特定病院群1.0769
標準病院群1 1.0583 標準病院群2 1.0283
注目すべきは、
標準病院群1と2の差が0.03あること。
数字だけ見ると小さく見えますが、DPCは包括部分全体に掛かります。
年間DPC包括収入が30億円の病院なら
30億円 × 0.03 = 約9,000万円
(自院の包括収入に当てはめて計算してみてください。)
もちろん単純計算ではありませんが、
「群1に残れるかどうか」で1億円近い差が出る
という規模感です。
■厚労省が本当に評価したいのは「急性期を担う病院」
今回の制度設計を読み込むと、厚労省の意図は明確です。
急性期病院を増やしたいわけではない
急性期医療を“実際に提供している病院”を評価したい
そのため、
救急搬送
全身麻酔手術
地域の急性期機能
が強く評価される仕組みになっています。
これは、今後の病院再編の方向性を示すシグナルでもあります。
■次に確認すべきは「機能評価係数Ⅱ」──実績が収益を決める時代へ
機能評価係数Ⅱは、病院の“実績”を評価する係数です。
構成要素は:
効率性係数
複雑性係数
カバー率係数
地域医療係数
今回の改定では、特に
複雑性係数と地域医療係数の意味合いが強くなった
と感じます。
●標準病院群1のトップ病院
病院機能評価係数Ⅱ
飯塚病院0.1740
大崎市民病院0.1671
徳山中央病院0.1574
一方、標準病院群1の最低値は
0.0233
差は:0.1740 - 0.0233 = 0.1507
包括収入30億円なら:30億円 × 0.1507 = 約4.5億円
もちろん単純比較はできませんが、
病床数ではなく“係数”が収益を決める時代
に入ったことは間違いありません。
■見落とされがちな「地域医療係数」──急性期の“本気度”が問われる
今回の改定で、地域医療係数の意味合いは明らかに強まりました。
救急医療
地域医療支援
地域の中核機能
がより重視される方向です。
つまり、
「患者数が多い病院」よりも「地域で必要とされる急性期機能を担う病院」
が評価される仕組みです。
高齢者救急や地域連携が重視されている背景もここにあります。
■実は「機能評価係数Ⅰ」の方がインパクトが大きいこともある
院長先生と話していると、機能評価係数Ⅱばかり注目されがちですが、
機能評価係数Ⅰの方が収益インパクトが大きい
ケースもあります。
例:項目係数
急性期一般入院料1 0.1252
地域医療支援病院入院診療加算0.0275
紹介受診重点医療機関入院診療加算0.0220
地域医療体制確保加算1 0.0198
合計すると:0.1252 + 0.0275 + 0.0220 + 0.0198 = 0.1945
これは機能評価係数Ⅱトップ病院を上回る水準です。
係数Ⅰは「入院基本料等の既定の点数」
を係数化したものなので、
「病院の構造評価」といえます。
つまり、
「どの加算を取るか」ではなく「どの機能を持つか」
がDPC経営では極めて重要です。
■2028年度改定はさらに厳しくなる──“急性期の絞り込み”が進む
今回の資料で最も気になったのは、厚労省が示した次の方針です。
「急性期一般AまたはBを届け出る医療機関を念頭にデータ収集を行う」
これは言い換えれば、
DPC病院をさらに急性期へ絞り込む方向
とも読めます。
実際、DPC病院は:
2024年度:1527病院
2026年度:1431病院
約100病院が減少しています。
この流れは、今後も続く可能性が高いと感じます。
■院長が今すぐ確認すべき「3つの係数」
今回の改定を踏まえ、私なら次の3つを最優先で確認します。
① 自院は標準病院群1か、標準病院群2か
そして、その理由を説明できるか。
② 機能評価係数Ⅱは前年より改善しているか
特に、地域医療係数と複雑性係数。
③ 係数0.001の変動が年間いくらの収益差になるか
これを試算していない病院は意外と多い。
しかし、ここを把握している病院ほど、
経営判断が圧倒的に早い
という共通点があります。
■最後に──DPCは「計算式」ではなく「病院の存在価値」を測る指標へ
令和8年度改定で変わったのは、DPCの計算式ではありません。
病院を評価する物差しそのものです。
これから評価されるのは、
病床数の多い病院
患者数の多い病院
ではありません。
地域で急性期医療を担い、
救急を受け、
高度な医療を提供し、
その実績をデータで示せる病院です。
基礎係数、機能評価係数Ⅰ、機能評価係数Ⅱ。
この3つは単なる数字ではなく、
病院の存在価値を示す指標になりつつあります。
数年後に振り返ったとき、令和8年度改定は
「DPC改定」ではなく「DPC病院の再編が始まった改定」
として記憶されるのかもしれません。
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「病院選別」シリーズ
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