応用編その13:誰にとっての良い説明?
今日は2026年5月7日です。世間ではゴールデンウィークが終わったり終わらなかったりしているようですね。私は今日もパソコンぺちぺちをメッチャ頑張っています。その分、ご褒美として10日から休暇に入りますけどね。遠出するのは面倒くさいので、自宅から電車で30分ほどの場所にあるビジネスホテルで本を読んだり、お酒を飲んだり、お昼寝したりして過ごす予定です。楽しみー!\(≧▽≦)/ちなみに『龍が如く7外伝 名を消した男』は全然進んでいません(*;´ェ`*)そんな近況報告をしたところで、今回もゆるく行ってみましょう。超不定期連載「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムでございまぁす。このコーナーでは、各用語の説明ページでは取り上げにくいIT関連のネタをテーマに、だらだらと思いついたことを書いていきます。みなさんが「あぁ、なんか役に立ちそうな気もするけど、役に立たないかなぁ。でも、もしかしたら役に立つかも」と思える情報を発信できるように頑張ります!
はじめに
栄えある百三十五回目のテーマは……ピヨピヨピヨピヨ(ぴよぴよ的ドラムロール)……じゃん!
【わわわ説明術】応用編その13:誰にとっての良い説明?
です。
今回もITと関係ないネタですが、どーんまい。
去年『「分かった!」と思わせる説明の技術 知識ゼロの相手にも伝わるようになる本』という本を出版させていただいたのですね。
その本の「はじめに」で、うんちゃらかんちゃら。
その1で書いた内容の繰り返しになるので、やめておきます。
気になる方は「【わわわ説明術】応用編その1:1文字削るな」を、ご覧ください。
コラムの体裁を取っていますが、今回は(も)私の「説明の技術」のご紹介です。
今回ご紹介するノウハウは
それを知らない人(初級者とか非専門家とか)からフィードバックをもらう
です。
フィードバックをもらうのは、多くの場合、自分より上級者からでしょう。
それはそれで有意義なのですが、そこには1つ、罠があります。
今回のコラムでは、その罠について解説します。
本に書いたこと
『「分かった!」と思わせる説明の技術』の中で「身近な他人に言葉を寄せる」というやり方をご紹介しています。
ちなみに、P177に書いてある内容です。
その中で以下のように語っています。
言葉を寄せる「身近な他人」は、家族、友人、恋人などです。あなたがよく知っていて、あなたの専門分野に詳しくない人を選んでください。
※『「分かった!」と思わせる説明の技術』P177より引用
ここでのポイントは、実は「あなたの専門分野に詳しくない」の部分だったりします。
理由は後述します。
また、わわわIT用語辞典の運営において、私は同業者からのアドバイスを基本的に全部聞き流しています。
そのことも本に書いていますけどね。
該当箇所は以下の部分です。
詳しくは7章で触れますが、"わわわIT用語辞典"に書かれている内容について、専門家を名乗る方から、ご意見をいただくことがあります。内容は「この説明は間違っている。正しくは、こうだ」や「この説明は正確ではない。正確には、こうだ」などです。
それらのご意見は、私が「確かに、そうだね。おっしゃる通り!」と思った場合を除いて、すべて聞き流しています。
※『「分かった!」と思わせる説明の技術』P221より引用
たとえば、私は"わわわIT用語辞典"の運営において(明らかな間違いのご指摘ではなく)解釈違いに対しては全無視することにしています。
※『「分かった!」と思わせる説明の技術』P244より引用
その理由は本に書いてありますが、それとは別に、今回のコラムでご紹介する内容も理由だったりします。
本に書いていないこと
私は説明に関して、専門家からの意見よりも非専門家からの意見を重視します。
それは説明のターゲットが非専門家だからです。
……というのもあるのですが、もっと大きな理由があります。
それは
知っている人が「それは良い説明だね」と思う説明と、知らない人が「それは良い説明だね」と思う説明は違う
からです。
そうですね。
まずは実験してみましょう。
以下の説明を読んでみてください。
足が4本あって、物を乗せたりできるよ。基本的な形は同じだけど、個体ごとの差はあるかな。
いかがでしょう。
この説明で分かりましたか?
それでは次に、以下の説明を読んでみてください。
ちなみに、テーブルの説明です。
足が4本あって、物を乗せたりできるよ。基本的な形は同じだけど、個体ごとの差はあるかな。
今度は、どうでしょう?
「『乗せたり』じゃなくて『置いたり』と表現するべきだろ」とか「『基本的な形は同じだけど、個体ごとの差はある』の部分は、いらないだろ」とかツッコミたくなるかもしれませんけどね。
少なくとも「何の説明かサッパリ分からん」ということは、ないはずです。
さらに、説明の内容に注目してください。
そこまで間違ったことは言っていませんよね?
説明の内容は同じです。
1文字も変えていません。
でも、聞き手の理解に差が生じています。
何について説明しているか分からないときは「サッパリ分からん」になりました。
テーブルについて説明していると分かっているときは「サッパリ分からん」になりませんでした。
おそらく全体像を把握できているからでしょう。
「この言い回しは、ここの部分を説明しているのね」と想像できたから「サッパリ分からん」にならなかったのだと思います。
これと同じことが、あなたの説明にも起こっているかもしれません。
あなたには、その説明が理解できます。
説明する対象(何について説明しているか)を知っているからです。
あなた以外の上級者にも、その説明が理解できます。
説明する対象を知っているからです。
でも、初級者・非専門家には理解できません。
説明する対象を知らないからです。
こんなことになる理由は
知っていると、無意識に文脈を補完できちゃうから
です。
言葉足らずだったり論理の飛躍があったりしても、知っていれば「多分、このことを言っているんだな」と文脈を補完できます。
だから、ある程度は説明を理解できちゃいます。
知らないと文脈を補完できません。
だから、言葉足らずだったり論理の飛躍があったりすると、理解できません。
この「文脈の補完」は説明を組み立てるときにも、やりがちです。
例えば、説明する対象を構成する要素が9個あったとしましょう。

この要素のうち、重要度が高いのは要素1、3、7です。
そのように考えました。

おっと、上級者がアドバイスをしてくれました。
ふむふむ、なるほど。
「要素4と9も説明した方が良いよ」ですか。
分かりました。そこも説明しましょう。

ということで、要素1、3、4、7、9を説明しました。

一見すると何も問題なさそうですよね。
重要な部分だけを抜き出して説明しています。

ところがどっこい、説明は失敗しました。
要素3を理解するには(それ自体は重要ではない)要素2の知識が必要だったからです。

この「文脈の補完」は誰でも無意識にやっちゃいます。
避けようがありません。
というか、文脈を補完しないと会話自体が成立しません。
前提の確認だけで日が暮れます。
だから、ある程度は文脈を補完する(してくれる)前提で説明することになるのですが、この「ある程度」が「知っている人」と「知らない人」でズレがちなのです。
それが説明が分かりにくくなる原因のひとつです。
ですから、あなたの説明の分かりやすさをチェックするときは
それを知らない人(=文脈を補完できない人)にチェックしてもらう
ことが必要です。
本番で説明する相手は「知らない人(=文脈を補完できない人)」だからです。
ってなところで今回の話は終わりなのですが、最後に1つ、エピソードトークをさせてください。
実は実話です……が、フィクションということにしておきます。
ある日のことです。
マニュアルを見ながら作業をしていた知人から「先に進めない~」と泣きつかれました。
マニュアルを見ると「登録ボタンを押す」と書いてあります。
知人いわく「登録ボタンがない」のだそうです。
画面を見せてもらうと、確かに登録ボタンがありません。
そうです。
画面が縦長だったため、下にスクロールしないと登録ボタンが見えなかったのです。
あなたは、このエピソードを笑えますか?
マニュアルを作った人は「スクロールすることくらい分かるでしょ」や「全部の項目を入力したら自然と登録ボタンが目に入るでしょ」と思っていたのかもしれません。
しかし知人は「とりあえずデータだけ作っておきたいから(一番上にある項目の)IDだけ入力しておこう」をやっていたのです。
だから、登録ボタンが行方不明になっていました。
「それくらい分かるでしょ!」と思いますよね。
でも、世の中には分からない人がいるのです。
まだまだ私もできていませんが「それくらい分かるでしょ!」が「それくらい分かるでしょ!……と思ったけど、本当に分かるかな?」になると、分かりやすい説明に近付きますよ。やるの大変だけど。
まとめ
今回は
【わわわ説明術】応用編その13:誰にとっての良い説明?
というテーマで好き勝手に語ってみました。
今回のコラムで、ご紹介したノウハウは
それを知らない人(初級者とか非専門家とか)からフィードバックをもらう
です。
上級者からフィードバックをもらうことも大事ですけどね。
それと同じくらい、初級者からフィードバックをもらうことも大事です。
知っている人が「それは良い説明だね」と思う説明と、知らない人が「それは良い説明だね」と思う説明は違う
からです。
上級者は文脈を補完できますが、初級者はできません。
理想形は「初級者が『文脈の補完』を、どの程度できるか」を考慮して説明を組み立てることです。
でも、それは難しいので、まずは
それを知らない人(初級者とか非専門家とか)からフィードバックをもらう
ことを意識してみてください。
【わわわ説明術】応用編シリーズ
応用編その1:1文字削るな
応用編その2:認知負荷を上げる
応用編その3:視覚効果を考える
応用編その4:誤解の許容範囲を設計する
応用編その5:正対しない
応用編その6:相手を憑依させる
応用編その7:説得の技術
応用編その8:その文字、いる?
応用編その9:「1文字削る」の実践例
応用編その10:優先順位を付ける
応用編その11:理解が大事
応用編その12:サンクコストを無視する
応用編その13:誰にとっての良い説明?【このページ】
応用編その14:肩書で殴る
応用編その15:「体験」をデザインする
応用編その16:語らないで語る
応用編その17:説明は毒の沼
応用編その18:「正確な説明」は諦めるVer.2.0
応用編その19:たとえ話について語るよ(1)
応用編その20:たとえ話について語るよ(2)
応用編その21:たとえ話について語るよ(3)
応用編その22:繰り返すVer.1.1
応用編その23:質問に答える
応用編その24:アイを叫べ
応用編その25:補足の入れ方がメッセージになる
応用編その26:前提を決める
応用編その27:予備知識は「薄める」
応用編その28:点を丸に変える
応用編その29:難易度は情報量である
思いつきで始めて惰性で続けている「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムですが、いかがでしたでしょうか。また何かネタがあったら、ちまちまと更新していきます。コンゴトモヨロシク。






