応用編その18:「正確な説明」は諦めるVer.2.0
今日は2026年6月9日です。梅雨入りしたそうですね。雨の日は意外に好きだったりします。雨音を聞きながら優雅に本を読むのが好きです。心が落ち着いて穏やかな気持ちになります。まぁ、外出の予定が入っているときは、雨が降ると「こんちくしょう(-A-)」という気持ちになりますけどね。そんな台無しなことを言ったところで、今回もゆるく行ってみましょう。超不定期連載「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムでございまぁす。このコーナーでは、各用語の説明ページでは取り上げにくいIT関連のネタをテーマに、だらだらと思いついたことを書いていきます。みなさんが「あぁ、なんか役に立ちそうな気もするけど、役に立たないかなぁ。でも、もしかしたら役に立つかも」と思える情報を発信できるように頑張ります!
はじめに
栄えある百四十一回目のテーマは……ピヨピヨピヨピヨ(ぴよぴよ的ドラムロール)……じゃん!
【わわわ説明術】応用編その18:「正確な説明」は諦めるVer.2.0
です。
今回もITと関係ないネタですが、どーんまい。
去年『「分かった!」と思わせる説明の技術 知識ゼロの相手にも伝わるようになる本』という本を出版させていただいたのですね。
その本の「はじめに」で、うんちゃらかんちゃら。
その1で書いた内容の繰り返しになるので、やめておきます。
気になる方は「【わわわ説明術】応用編その1:1文字削るな」を、ご覧ください。
コラムの体裁を取っていますが、今回は(も)私の「説明の技術」のご紹介です……と言いたいところですが、今回は違います。
今回は「説明について語ってみた」の回です。
強いてノウハウっぽい内容を挙げるなら
相手が必要としている分だけ渡す
でしょうかね。
『「分かった!」と思わせる説明の技術』の発売日は2025年8月29日です。
今日は2026年6月9日です。
発売から9ヶ月ちょっと経ちました。
9ヶ月も経つと、どうなるか?
私が成長するのです(--)☆
本に書いたことを否定する訳じゃないですけどね。
より精度の高い言語化ができるようになりました。
ということで今回は、本に書いた内容を、もうちょっと詳細に言語化してみます。
本に書いたこと
本の中に
「正確な説明」は諦める
という節があります。
P74から始まる内容です。
その中で以下のようなことを書いています。
あなたに残念な真実をお伝えします。
「難しいこと」を簡単かつ正確に説明する方法はありません。
「賢い人は難しいことを簡単に説明できる」という言い回しがあります。これを「賢い人は難しいことを簡単『かつ正確』に説明できる」と捉えている人も多いのではないでしょうか。
幻想です。「難しいこと」を「簡単」に説明するのは可能ですが「簡単かつ正確」に説明するのは不可能です。
ちょっと考えてみてください。あなたは、簡単かつ正確に説明できる物事を「難しい」と評価しますか?
きっと、しませんよね。簡単かつ正確に説明できるのであれば、その物事は「難しいこと」では、ありません。「簡単なこと」です。
「難しいこと」は、簡単かつ正確には説明できないからこそ「難しいこと」なのです。
だから、まずは諦めてください。「簡単」か「正確」のどちらかを犠牲にする覚悟を持ってください。「難しいこと」の説明において「簡単」と「正確」は両立できません。
その上で、分かりやすい説明をしたいのであれば、諦めるのは「正確」の方です。
※『「分かった!」と思わせる説明の技術』P74-P75より引用
ここで言いたかったのは
何をどう工夫しても正確性を維持したまま簡単に説明できない状況はあるよ。無理なものは無理だから諦めて割り切ろうぜー
です。
ほんで、今回のコラムでも言いたいことは同じです。
何をどう工夫しても正確性を維持したまま簡単に説明できない状況はあるよ。無理なものは無理だから諦めて割り切ろうぜー
です。
ただし、その理由・理屈を、もうちょっとロジカルに語れるようになりました。
その内容を今回のコラムでご紹介します。
本に書いていないこと
まず、今回のコラムでは「難易度」と「理解度」という表現を使います。
それぞれ
難易度:説明する内容の難しさ、複雑さ
理解度:その説明を理解するために必要な予備知識を、聞き手が、どれくらい持っているか
を意図しています。
例えば「難易度30%、理解度0%」であれば「説明する内容はそんなに難しくないけど、理解するために必要な予備知識を聞き手は全然持っていないよ」です。

「難易度90%、理解度80%」であれば「説明する内容はメッチャ難しいけど、かなりの予備知識を聞き手は持っているよ」の意味になります。

それを前提として、私は
正確性を維持して説明できるのは、10%下まで
と思っています。
ちなみに「10%」というのは適当です。
感覚的には「30%」くらいならいけるかな?と思っていたりもしますけどね。
説明しやすいので「10%」ということにします。
話を戻して、例えば難易度30%の説明を理解度20%の人にするときは、正確性を維持したまま説明できます。

難易度30%の説明を理解度10%の人にするときは、正確性を維持したまま説明できません。
理解するのに必要な予備知識を持っていないからです。
正確性を維持したまま説明すると、聞き手は「難しくて分からないよー」になります。

同じように、難易度90%の説明を理解度80%の人にするときは、正確性を維持したまま説明できます。

難易度90%の説明を理解度70%の人にするときは、正確性を維持したまま説明できません。
正確性を維持したまま説明すると、聞き手は「難しくて分からないよー」になります。

さて、ここで考えてみてください。
難易度90%の説明を理解度10%の人に「正確性を維持したまま」説明するには、どうしたら良いでしょうか?

答えは
無理
です。
無理なものは、どーやっても無理q(--)p

例えば、掛け算や割り算を知らない子どもに「三角形の面積の求め方」を「正確性を維持したまま」説明できますか?
無理でしょ。
どうしてもやりたかったら、まずは掛け算や割り算のやり方から説明する必要があります。
……おや?
今、良いことを言いましたよ。
「まずは掛け算や割り算のやり方から説明する必要があります」です。
そうです。
予備知識から地道に教え込んでいけば、正確性を維持したまま説明できます。
難易度90%の説明を理解度10%の人に正確性を維持したまま説明したい場合、まずは難易度20%の予備知識を教え込みます。
難易度20%であれば、理解度10%の人でも理解できます。

そうやって理解度10%の相手を理解度20%に育てたら、次です。
難易度30%の予備知識を教え込みます。
難易度30%であれば、理解度20%の人でも理解できます。

そうやって理解度20%の相手を理解度30%に育てたら、次です。
難易度40%の予備知識を教え込みます。
……のように繰り返して、理解度40%→理解度50%→理解度60%→理解度70%→理解度80%と育てた後であれば、難易度90%の説明を「元・理解度10%」で今では「理解度80%」まで育った人に正確性を維持したまま説明できます。

ということで、理解度10%の非専門家に難易度90%の専門知識を「正確性を維持したまま」説明したければ
その説明を理解できるところまで理解度を育てる
必要があります。
非専門家には理解できない難しいことを理解してもらうには、専門家に育ってもらうしかないじゃない
です。
実際のところ、非専門家相手の説明が難しいのは、知識のギャップが大きいからです。
そのギャップを地道に埋めていけば「正確性を維持したまま」説明できます。
でも、そんなの大変で、やってられないでしょ?
「そんなの大変で、やってられない」のであれば、言い方を変えると「知識のギャップを埋める過程をショートカットしたい」のであれば
「正確な説明」は諦める
のが現実的だよ、という話です。

あと、身も蓋もないことを言うと、多くの場合、非専門家である聞き手は
別に専門家になりたいとは思っていない
です。
「正確な知識を欲している」のではなく「自分の困りごとを解決したい」だけだったりするのですね。
そんでもって「自分の困りごとを解決」する上で「正確な知識」は必要ない場合も多々あります。
あくまで個人的な考えですが、知識は道具です。
「知識を得る」のが目的の場合もなくはないですが、多くの場合「得た知識を使う」のが目的です。
「得た知識を使う」のが目的な相手は「使うために必要な知識」を渡してあげれば満足しますよ。
必要十分で十分です。
ちょっと趣味で釣りをしたいだけの人に魚群探知機付きの大型漁船をプレゼントしても相手は困るでしょ?
まとめ
今回は
【わわわ説明術】応用編その18:「正確な説明」は諦めるVer.2.0
というテーマで好き勝手に語ってみました。
今回のコラムでは、本で書いた「「正確な説明」は諦める」を、より具体的に言語化してみました。
正確性を維持したまま説明できるのは、せいぜい10%下までです。
理解度がそれより下の人に説明するのであれば
1.10%下まで連れてきた後で「正確な説明」をする
2.「正確な説明」は諦める
のどちらかを選ぶことになります。
多くの場合、
2.「正確な説明」は諦める
で事足ります。
相手が必要としている分だけ渡す
ことを意識してあげてください。
蛇足かもしれないおまけ
今回のコラムでは
正確性を維持して説明できるのは、10%下まで
という立場を取りましたが、実は「〇%下まで」の「〇%」は聞き手次第で変わります。
「聞くのが上手い人」もいるからです。
例えば、システム開発のやり方で「ウォーターフォール」というやり方があります。
ウォーターフォールは、まず設計を全部やって~、設計が全部終わったらプログラムを全部作って~、プログラムを全部作り終わったらテストを全部やって~、テストまで終われば完成!のように、工程を1つずつ順番に終わらせていき(基本的には)工程の後戻りをしないやり方です。
水が高いところから低いところに流れ落ちるように、最初の工程から最後の工程に向かって1つずつ順番に終わらせていきます。

このやり方の肝をITの理解度0%なのに即座に理解する人もいます。
その人は大工さんでした。
「要は家を建てるときと一緒でしょ?実際に建て始めてから間取りを変えるとか無茶だよねー」みたいに別ジャンルの知識を転用して理解しちゃいます。
そんな感じで、物事を抽象化して捉えることで、疑似的に理解度を上げるのが上手い人もいます。
そんな人が相手の場合は、難易度と理解度に結構な開きがあっても説明が通じちゃいますね。
【わわわ説明術】応用編シリーズ
応用編その1:1文字削るな
応用編その2:認知負荷を上げる
応用編その3:視覚効果を考える
応用編その4:誤解の許容範囲を設計する
応用編その5:正対しない
応用編その6:相手を憑依させる
応用編その7:説得の技術
応用編その8:その文字、いる?
応用編その9:「1文字削る」の実践例
応用編その10:優先順位を付ける
応用編その11:理解が大事
応用編その12:サンクコストを無視する
応用編その13:誰にとっての良い説明?
応用編その14:肩書で殴る
応用編その15:「体験」をデザインする
応用編その16:語らないで語る
応用編その17:説明は毒の沼
応用編その18:「正確な説明」は諦めるVer.2.0【このページ】
応用編その19:たとえ話について語るよ(1)
応用編その20:たとえ話について語るよ(2)
応用編その21:たとえ話について語るよ(3)
応用編その22:繰り返すVer.1.1
応用編その23:質問に答える
応用編その24:アイを叫べ
応用編その25:補足の入れ方がメッセージになる
応用編その26:前提を決める
応用編その27:予備知識は「薄める」
応用編その28:点を丸に変える
応用編その29:難易度は情報量である
思いつきで始めて惰性で続けている「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムですが、いかがでしたでしょうか。また何かネタがあったら、ちまちまと更新していきます。コンゴトモヨロシク。






