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褒められて、剥がれ落ちたもの

最近、顔見知りが多い場所に行ったりすると、「日本残念だったね!」と声をかけられることが多い。 「でも、すごいよね、日本。すごく頑張ったし、勝ってもおかしくなかったよ」なんて慰められるのだけれど、サッカー好きの人はお世辞抜きでそう評価してくれているんだなと感じる。夫と近所のジェラート屋さんに行ったら、目の前のスポーツバーでFIFAウォッチング集団が盛り上がっていた。アメリカ対戦の時間ではなかったから、どこかの国を応援していたのだ。いかにもこの国らしくてカラフルで面白い(笑)。

アメリカはフットボールの国だからサッカーは今一つなのかといえば、そんなこともない。USL Championshipというプロのサッカーリーグがあり、我が家の近所にもスタジアムがある。 ワールドカップのピッチよりやや小さめで客席も少なめだが、自宅の窓を開けると歓声が聞こえる。試合はナイターだから、ギンギラギンのライトが夜空に輝き、勝てば花火が打ち上げられる。フットボールや野球ほどの人混みではないにせよ、チームカラーの服を着た観客でいっぱいになる。

その昔、有名なスポーツアカデミーに通訳の手伝いに行っていたことがあった。そこでもサッカーはとても盛んで、サッカー場の数と広さが半端ではなかった。アメリカ人はもちろん、世界中からの留学生たちが日々訓練を重ねている。 私もよく見学をしていたのだけれど、中高校生でもキレキレの動きをしていて本当に感動した。

だけど、当たり前ながらそこから誰もがプロになれるわけではなく、その先も厳しい進学とトレーニングが待ち受けている。 私も当時子供だった息子もスポーツに興味がないので、その輝かしいような世界が羨ましいとは思わなかったが、早いうちから海外で自分の好きなスポーツに打ち込む子どもたちの姿は、素直にすごいと思っていた。

夏になると、日本からチームを引き連れて短期留学してくる団体もあった。 日本人のコーチは、こうしたアメリカのアカデミーの様子を見てかなり驚く。 「いやあ、アメリカはやっぱり褒めて伸ばすんですね」と。私の目から見ると、日本はどちらかといえば叱り飛ばして伸ばす文化。今でもそうなのかは分からないし、どちらが良いのかは一概には言えない。もちろん、色々な要素が合わさって、それが国の個性になっているのだと思う。

アメリカの「褒めて伸ばす」というのは、決して甘いという意味ではない。まず良かった点をしっかりと認めて、その喜びを共有してから改善点を伝える。それが基礎になっているのだと、たくさんの練習を見て感じた。

ちなみに、この違いについてAIに聞いてみたら、なかなか人間味のある答えが返ってきた。

「私が感じる一番大きな違いは、日本では『ミスを減らすこと』に重点が置かれることが多い一方で、アメリカでは『良いプレーをもっと増やすこと』に重点が置かれる傾向があります」

AIもそんなふうに「感じて」いるらしい(笑)。

確かにそうかもしれない。昭和に育った私は、先生に褒められることも多かったけれど、それ以上に授業中に間違えることがとても怖かった。どうしてだろう。理由は忘れてしまったけれど、「できて当たり前。できなかったら恥ずかしい」という雰囲気が強かったのかもしれない。日本人が間違いを恐れて英会話が苦手というのも、よく耳にする話だし。

ところが、アメリカ育ちの私の夫も、小学校のときはとても厳しかったそうだ。 合唱の練習中に先生が大声で、「あなたは音痴だからあっちのグループに行きなさい。そして、大きな声で歌わないこと!」と言い放ったらしい。夫はそれ以来、人前で歌を歌わなくなってしまった。音楽やダンスはあんなに大好きなのに、である。 私が、「アメリカは褒めて伸ばすから、息子がその中で育ったのは良かったかも」と言ったら、夫はびっくりしていた。夫の娘たちの学校もわりと厳しかったようだ。当たり前だが、同じ国でも場所や人によって教育方針が違うものでもある。

そんな夫を連れて日本で滞在するとき、私の友達がたまにカラオケボックスに一緒に行きたがる。はじめてそこに行ったとき、夫は英語の歌をとても気持ち良さそうに、嬉しそうに歌った。個室だし、私たちの前なので、安心して歌えたんだと思う。 すると、画面に「82点」というスコアが出た。

その数字を見た瞬間、かつて「音痴!」と叱られたトラウマが、ポロっと剥がれ落ちたらしい。 採点マシーンに認められたのがよほど嬉しかったのか、なんとも微笑ましい、ちょっと得意気な顔をしていた。


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