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【エントリ御礼】灯火杯5th 全作品感想文

先日クリスマスイブに結果発表が行われた、自主企画コンテスト「灯火杯5th Re:クリスマス」。

▽結果発表のnoteはコチラ▽

今回は、ご参加いただいたお礼も兼ねて、全作品感想文をお届けしたいと思います!


①うめこさん「サンタフル・ワールド」【灯火杯 特別賞】

ニヒルな観測者が訴えるのは

うめこさんの作品は、斜に構えた視線が非常に刺激的です。
ですが、ただやさぐれているのとは違う。捨て鉢になっているわけでもない。だからこそ、その皮肉的ではあっても冷静な視点に惹かれ、「共感」している自分がいました。

「本当にこれでいいのか?」
そんな漠然とした不安というか、黒い感情が出てきた際に肌が触れているわけではないけれど、ちゃんと近くにいてくれる。そんな感覚をくれる作品でした。

②つるさん「クリスマス・イヴのエール」【HIKOさん選出 こういうのが良いんだよ賞】

書くは誰がため

3年間新人賞のような「登竜門的な賞」に応募し続けて、憔悴した美帆。
自信を無くした美帆に、「普通」の田助がかけた言葉にハッとしました。

わたしは美帆のような動きをまだまだ始めたばかりですが、早くも究極的なこの問いをずっとグルグル考えています。

その答えは人それぞれ違うとは思いますが、自分自身がなぜ書くのだろうと思ったときに、また田助と美帆の世界に戻ってきたいと思えるような作品でした。

③乃井さん「サンタさんがくれた最高のプレゼント」 【極夜さん 最高のプレゼントで賞】

本当に大切なもの

昨年の作品では、しっかりとサンタさんの世界に対して「説明」をしてくれた乃井さん。でも、それはいわゆる「論破」みたいなテンションではなく、諭すようにやさしく、そして、メッセージ自体もあたたみのあるものでした。

そして、今回はそれを実際に行動に移したら…というお話です。

人と比較しやすくなった世界。一方で、本当に大切なものは案外比較の土俵には上がってきません。比較して落ち込んでいるときや身近な人に対して思うところがあるときになどに読んでみると、改めて自分の本当の心に気づきやすくなるかもと思いました。

④ふぁいさん「トリミングファイターさくらさん、クリスマスの嘘つき編 」

誰かを追った、あなたを追う

完璧に見える憧れの人も、誰かに憧れて今の姿になったというお話。
考えてみれば当たり前なのですが、誰でも最初から完璧ではない、誰でも初心者から始めたということを、改めて感じさせてくれるお話でした。

これから何か始めたいと思っているけど、ちょっと不安もある。そんな方の背中を優しく、でも、力強く押してくれる気持ちになりました。

⑤ ゆづさん「ヤドリギの下できみを待つ」

この二人に幸せになってほしい

すみません、完全にわたしの願望と趣味趣向です。
イタズラっぽい女の子が逆手に取られるというのが好き過ぎて。
しかも、歩夢くんもなんだんかんだでちゃんとしてる。
*前作では男のコ視点だったので、初めて名前が判明しました。

ゆづさんも主役のコが「めっちゃ好き」と書いている通り、キャラが完全に自分で動いている感というか、弾むカンジが物凄く伝わってきます。
とにかく、ポップな恋愛モノが好きな方はぜひ!

⑥はれるやさん「ハレルヤ!アーメン!」

Re:クリスマス

昨年の作品を越えるストーリーがどうしても越えれないとれないと、リメイク作品でエントリいただいたはれるやさん。

昨年の作品と見比べてみると、加筆された部分にお姉さんに対しての感情や描写が増えていて、お姉さんの人物像や主人公がどう思っているか、より解像度が上がりました。

投票制のエール賞でも人気が高かった作品です。

⑦りんちゃん「ことばの贈り物、クリスマスの夜に」

お金で買える物・買えないモノ

『賢者の贈り物』をオマージュしたお話。
個人的な話ですが、文化祭の出し物の9割以上が劇という高校にいたわたしにとって、同じバスケ部のメンバーが主演していたお話で、非常に印象に残っているお話です。

今回、現代版のお話として、お互いにお金を工面して贈り合うものとは…。

本作の一番伝えたかったこととは少しズレてしまうとは思うのですが、断捨離やフリマアプリなど、手放そうかどうか悩んでいるものがあったとき、改めてその基準を思い出す話として戻ってきたいと思いました。

⑧てみさん「クリスマスの灯りの下で」

その世界が、広がっていく

べったりでも遠距離でもない距離感。付き合って3ヶ月のふたり。
言うなれば、それはどこにでもある光景であり、誰もが経験していてもおかしくない状況。

そして、たまたま見てしまった光景に疑念を抱く美智子。よくある日常ではないけれど、日常としてよくある話かもしれません。

ですが、個人的に美智子のプレゼント選び。疑念から移した行動。そして、何よりも返し方。背伸びはせずに、それでもごまかさずにちゃんと正面から向き合う姿勢に胸打たれました。

固まっていた胸の氷をゆるやかに溶かしていく。

帰り道、ふたりの歩幅は自然とそろっていた。

こうした表現の巧みさからくる、浮かぶ情景や言外の気づかいに、ずっと浸っていたくなる世界が広がっていました。

⑨あおいさん「三人のサンタと二人の灯火」【灯火賞・エール賞W受賞】

なんでこんなに苦しいんだろう

記念すべき初のW受賞作品に、ネガティブなコピーをつけてしまってすみません。
作品を振り返って、色々考えた結果出てきたのは、読了後最初に思ったことでした。

子どもに”してあげられなかったこと”のほうが、親には辛く感じる。
それが最初に現れるのは、比較とのファーストコンタクトです。

少し困った顔をしたり、黙って見ていた母親も。
心なしか食事がすすまないように見える妹も。
ちぎれた人形の頭を見て、飛びかかかってかなわかった「僕」も。

でも、辛いのはそこじゃない。
酔っぱらって暴力を振るったことはないが、わたしも近いことをしていなかったか。

無理やり言うことを聞かせたり、個人事業主としてうまく稼げない中で子どもたちに無理をさせていなかったか。

もちろん、父親を擁護したい気持ちはありません。
ですが次章の子どもたちを思いやる姿を見ると、余計にやるせない気持ちが止まりません。

その後の展開も、構成の妙と相まって、終始心を強く掴まれっぱなしでした。それぞれの事情。それはこの物語でも語られていない部分もたくさんありますが、そのなかで変わりゆくものと、状況に応じて変わってしまうものを鮮明に焼き付けてくれた作品でした。

創作の裏話については、受賞インタビューで色々伺わせてもらいたいと思います!!

⑩なみあさむさん「静かなる華」【みくまゆたん賞】

雄弁な寡黙

全体的な静かな雰囲気と、確かに展開されていく月日と物語。
わたしが思う理想の喫茶店そのもののイメージでした。

また、手芸の雪だるまコレクションは幼少の「共有知」を呼び覚まします。
わたしにとっては、紐を引っ張る形式は駄菓子屋の飴を思い出したり、コレクションが揃わなかったり友だちのものを羨むのは、ガチャガチャや食玩に想いを馳せていました。

まさに、あたたかいコーヒーを一杯いただくような安らぎと、ゆったりとした時間感覚に包まれた作品でした。

⑪波さん「【かき氷シリーズ】初めてのクリスマスをもう一度」

いつか想いを汲めるようになるだろうか

ちょっとポジショントークというか、一方的な視点になってしまうのですが、語ることが少ない男子や誤解を生みそうな男のコの話は、メチャメチャ不安になります。

もちろん、だからこそ、どんどん読み進めてしまうのですが、「せっかく想ってくれている人がいるのに、ちゃんと伝えないと誤解されたまま離れちゃうよ」というのが、本当に自分のなかで避けたいこと、最大の悲劇としてわたしのなかでは位置づけられている気がします。

ただ、ふと思いました。同様に、ヒロイン側の気持ちがわからずにモヤモヤしている男性目線の話も、わたしは物凄く惹き込まれますが、女性から見たらまた違った風に見えそうです。

いや、性差で語ってしまいましたが、一緒にいたいとか人間的な好意を持つということ、ひいてはコミュニケーションそのものもそうしたものなのかもしれない。

大事な日に限ってのアクシデント。声色から伝わる誠実さ。
改めて、伝えたいことをちゃんと伝える大切を噛み締めさせていただく作品でした。

⑫迷言さん【“好き”の続きを何度でも】

応援の刃

一丸となって応援することへのネガティブな部分もしっかりと掬い上げてくれた作品。

個人的に、この部分は結構大きいテーマとして考えていました。特に作中のような「告白を応援する」というのは、どこか嘲笑や失敗を願うような見世物的な感覚も大いに含まれている気がします。

あるいは、最近の「推し活」についても、個人的には少し穿った視点で見ている自分もいたりしまして、こうした感情はわたしも小説のなかでしっかり表現していけたらと思います。

ジェットコースター的ドタバタラブコメの作品。
アニメとかになったらハマりそうだなと思って読ませていただいていました。

⑬しょうこさん「君が私にくれた手のひらの中の一番星」

「制限」がくれる視点

ダイチ君のやさしさにハッとする物語。

自分の話で恐縮ですが、俯瞰的な視点を得た経験は、いつもこうした「制限」があったように思えます。

幼稚園の頃に頬を縫ったとき、わたしは玄関の窓から、遠くで遊ぶ友人たちを見ていました。初めて緊急入院したときも、周りの大人やおなじく入院している小学生たちと話しながら、どこか冷めた目を持っていたように思えます。

ダイチ君が幼いながらもここまで人の心の温度を「わかる」ようになったのは、もちろん、本人の性格もあるとは思いますが、それだけ重度な容態だからというのもある気がして胸がザワつくような感覚もどこかにあるのかもしれません。

頑張らなくても報われる世界であってほしい。
でも、きっとこうした医療現場ではきっとその気持ちを手放してしまったら本当に帰ってこられなくなる場面もあるのだと思うほど、その状態で相手への思いやりを持ったダイチ君を抱きしめたくなる作品でした。

⑭さちさん「謎めいたサンタクロース」

回遊魚の成れの果て

ミステリアスなゼミの先輩の話。
こういう謎めいた男子が人気なのはイケメンだからで、もし非イケメンがこんな風貌で現れたら批難轟々でしょうというのを書かずにはいられないあたりに、非モテの器の小ささを感じずにはいられません。

そんなことを書いている場合ではありませんでした。
作中の一言にドキッとしたのです。
「俺は回遊魚だから、動いてないと落ち着かないんですよ」

これ、言われた側でした。わたしはミステリアスでもないですし、非モテでしたが。

ただ、むしろそれは言外に非難めいた意味もあったんだと思いますし、結果的に適応障害で休職したわたしとしては、大学生時代からその片鱗はあったのだと色々考えていました。

すみません、自分の話ばかり書いてしまいましたが、手紙をちゃんと覚えていてお礼を言ってくれる、そして、エールを送る。なかなかできないことをしっかりとこなす先輩が眩しい作品でした。


さいごに

今回の5thは、第1回目の再演という形で、非常に思い入れが強い回となりました。
みなさんの作品もお気に入りの作品の続編が多く、世界を紡ぐきっかけになれていたらうれしい限りです。

改めて、ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!!


2026年の灯火杯はシーズン2というか、1年+1回を走り切ってみて、少しやり方などを見直していこうと考えています。

次回の春ではエッセイ限定で、そして、共催で行わせていただきますので、ぜひぜひまたご参加いただけたらうれしいです!
詳細が決まって行き次第、情報を公開していきますので、乞うご期待です!


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