予約2人。その2人の顔が、もう浮かんでる【カンヌへの道-15】
沖縄で俳優として活動しています。
いっちーこと伊藤駿一です。
このシリーズ「カンヌへの道」は、「カンヌ国際映画祭主演男優賞」というあまりに遠いゴールに向けて、「演劇は世界を平和にする」という信念のもと、俳優としてもがく日々を正直に綴っていくシリーズです。今日はその第15話。
予約2人。その2人の顔が、もう浮かんでる
本番まで、あと3日になりました。
今週の土曜日、6月6日。那覇の壺屋演劇場かさねで、舞台『にぬふぁぶし』に立ちます。13時からと16時からの、2回公演です。
今の予約状況を、そのまま書きます。
13時の回が、2人。16時の回が、18人。
会場に入れるのは、1回あたり40人ほど。だから13時の回は、40ある席に、2人です。
それでも、その2人の顔が浮かぶ
数字だけ並べると、ちょっと寂しい眺めに見えるかもしれません。でも、自分でも意外なんですが、僕の頭に浮かんでいるのは「38席も空いている」のほうじゃないんです。
「2人が、来てくれる」。
浮かぶのは、そっちなんですよね。
僕には「出張一人芝居」という活動があって、お客さんが1人でも、見たいと言ってくれたら、その人のためだけに演じに行く、ということをやっています。だからなのか、人数が少ないことより先に、その一人ひとりの顔のほうが立ってきます。
13時の回に来てくれる、その2人。どんな土曜日の昼を思い描いて、チケットを取ってくれたんだろう。劇場を出るとき、何を持って帰ってもらえるだろう。そう考えると、その2人のために、持っているもの全部を出したくなります。
毎日、予約状況がチームに届く
今回の舞台は、僕ひとりで立つわけじゃありません。チームで作っています。
仲間の一人が、この時期、毎日グループに予約状況を送ってくれます。「本番まであと○日。今の予約は△人です」。そこに、ひとことずつ、励ましが添えられている。昨日より増えた、と書ける日もあれば、変わらない日もある。
そして、みんなで声をかけ合っています。「一人につき、5人くらい誘ってみよう」と。派手な数字じゃないけれど、毎日、誰かが誰かに声をかけている。その積み重ねの途中に、今、僕たちはいます。
なんで「来て」と言うのが、こんなに怖いんだろう
少し前に、こんなことを書きました。
明日が勝負。「最高だから」を、言える自分まで【カンヌへの道-12】。それから、同じ景色を、隣で一緒に見たいだけだった【カンヌへの道-13】。
どちらも、「来てください」という一言が、なかなかまっすぐ言えない自分の話でした。
毎日のように声はかけている。SNSにも、LINEにも書いている。なのに、いざ「これ、すごくいいから来て」と言おうとすると、喉のあたりで詰まる。
たぶん、自分の作ったものを「見て」と差し出すのが、こわいんです。断られたらどうしよう、がっかりされたらどうしよう、と先に考えてしまう。
これ、僕だけの話じゃない気がしています。
自分が書いた文章、立ち上げた企画、作ったもの。誰かに「見てほしい」と差し出す瞬間は、たぶん多くの人にとって、こわい。うまくいくほど目立つし、すべったら自分のせいになる。だから、つい「よかったら」「お時間あれば」と、言葉をやわらかくしてしまう。
でも、こわいということは、それだけ本気だということでもあるな、と最近は思います。どうでもいいものなら、こわくもないので。
それでも、信じて動ける理由
ひとつ、自分を支えてくれている事実があります。
前回の公演も、まったく同じでした。3日前の時点で、予約はまだ一桁。「これ、本当に人が来るのかな」と、同じように胃のあたりが重くなっていました。
でも、そこから直前にかけて、ぐんと伸びたんです。前日には、両方の回を合わせて40人を超えました。最後の数日で、景色が変わった。
だから今回も、今が2人だからといって、これで決まったわけじゃない。怖さは消えないけれど、その怖さの隣に、「まだここからだ」という手応えも、ちゃんと置いておけます。
そもそも、なんで「にぬふぁぶし」なのか
ここまで集客の話を書いてきましたが、いちばん伝えたいのは、その先にあります。
「にぬふぁぶし」は、沖縄の方言で「北極星」という意味です。那覇にある、子どもの居場所の名前でもあります。毎週金曜日の夕方、子どもたちがごはんを食べに集まる。賑やかで、あたたかい場所です。
そこの代表の上地さんが、忘れられない話をしてくれました。靴をそろえない子がいると、その靴を、本当に蹴飛ばすそうです。「踏んづけてもいいってことね」と。子どもが「俺の靴が!」と怒ると、すかさず返す。「大事でしょ。大事だったら、ちゃんと直しなさい」。
沖縄に、「カナサルナーカーブチカキリ」という言葉があるそうです。愛おしいから、厳しくする。突き放すんじゃなくて、その子が自分の足で立てるように、そばで厳しくする。そういう意味だと教わりました。
迷った時に見上げれば、いつもそこにある光。北極星。
その場所のことを、僕たちは舞台にしました。
6月6日、同じ景色を
「最高だから来て」と胸を張って言える日には、まだ届いていません。それは本番の日に、自分で確かめます。
でも、これだけは言えます。13時の回に来てくれる2人にも、16時の回の18人にも、そしてこれからもし席を選んでくれる人がいたら、その人にも。土曜日、同じ景色を、隣で一緒に見たいです。
カンヌ主演男優賞なんていう、気が遠くなる場所を目指す道の途中で、目の前の40席と向き合うこの時間は、きっと無駄になりません。一人ひとりに届ける怖さを越えられない人が、もっと遠くの誰かに届けられるはずがないからです。
だから僕は、その2人の顔を思い浮かべながら、残りの3日を使います。
読んでくださり、ありがとうございました。
最後まで読んでくれたあなたへ
カンヌへの道も、演劇で世界を平和にする仕組み作りも、気が遠くなるほど先の話です。これからも今日のような分厚い壁に、数え切れないほどぶつかるはずです。
だからこそ、あなたが最後に押してくれる「スキ」の一つひとつが、「この熱のまま、もっと遠くへ行け」と僕の背中を押す最大の原動力になります。
もしよければフォローして、この長い旅の「一番の目撃者」になってくれませんか。いつか必ず辿り着くその景色を、一緒に見たいです。
活動の続きはLINEでも
noteには書けない稽古のうらがわや、迷っている途中の話。
ときどき「これ、どう思います?」と相談もする、いちばん近い席です。
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https://lin.ee/jbUrdeB
▼ 伊藤駿一 公式ホームページ
https://shunichi-ito-2003.github.io
【挑戦その1】「地域を応援する演劇」シリーズ、上演中
沖縄の食堂や自治会を舞台に、笑って、泣けて、ちょっと優しくなれる。そんな群像ハートフルコメディを連続で上演しています。地域の居場所やコミュニティを応援する取り組みでもあります。
直近の公演:『にぬふぁぶし』6月6日(土)上演
迷った時、上を見れば、いつもそこに光がある。
—— 金曜日の食堂で、子どもたちが見つけた居場所 ——
那覇の子どもの居場所「にぬふぁぶし」を舞台にした、01 ENTERTAINMENT、チーム恵比寿の俳優たちによる群像ハートフルコメディ。
ある金曜日の17:00〜19:30、居場所のない人たちが、沖縄のおばあの厳しくて温かい食卓で「帰る方角」を見つけていく物語です。
日時:2026年6月6日(土) 13:00開演 / 16:00開演(2ステージ)
※当初6月7日(日)で告知しておりましたが、6月6日(土)に変更となりました。以前の日程でご予定くださっていた方、あらためてご確認いただけたら嬉しいです。会場:壺屋演劇場かさね(沖縄県那覇市壺屋)
上演時間:約70分
料金:大人2,000円 / 学生1,000円 / 小学生以下無料
主催:01 ENTERTAINMENT / チーム恵比寿
脚本:伊藤駿一・金井優
演出:西平寿久
▼ チケットのお申し込み・お問い合わせは下記のいずれかから
・Googleフォーム:https://forms.gle/52R7Zjs6CWisFGk86
・公式LINE:https://lin.ee/jbUrdeB
次回公演:『自治会パンデミック!』
「地域を応援する演劇」シリーズの次の公演です。1100世帯を抱える自治会で、実際に動くのはたった数人。崩れかけた自治会に、1人の若者が現れる——SNSやビジネスの力で改革が進む裏で、長年支えてきた人たちの「居場所」が消えていく。「数字か、つながりか」。対立する価値観の中で揺れる地域の、笑って泣ける群像劇です。
日時:2026年7月4日(土) 14:00開演 / 18:00開演、7月5日(日) 13:00開演 / 17:00開演(全4ステージ)
会場:壺屋演劇場かさね(沖縄県那覇市壺屋2-23-26)
料金:一般2,000円 / 学割1,000円 / 小学生以下無料(当日券は一般・学割ともに +500円)
脚本:かないゆう
演出:西平寿久
主催:01 ENTERTAINMENT
メイン出演:チーム大黒天 / Special Thanks:チーム恵比寿、01 ENTERTAINMENT(土曜クラス)
▼ チケット予約・お問い合わせは公式LINEから
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【挑戦その2】「出張一人芝居」はじめます!
沖縄本島内であれば、どこへでも行きます。
観客が何名でも構いません。「たった1人」からでも、見たいと手を挙げてくださる方がいれば、あなたのためだけに、指定された場所へ伺って全身全霊で演じます。
「いっちーの一人芝居を見てみたい」「うちの場所でちょっと演じてみてよ」と思ってくださる奇特で温かい方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください!
▼出張一人芝居の詳細や、企画に込めた想いはこちらから
https://note.com/icchi_ito/n/ne9b0c1ef886f
▼出張一人芝居のご依頼・ご相談は公式LINEから(上のLINEリンクと同じです)
https://lin.ee/jbUrdeB
← 前の話| 「靴を蹴飛ばすおばあ」から書き始めてみた【カンヌへの道-14】
▼「カンヌへの道」マガジンはこちら
https://note.com/icchi_ito/m/md625d6052627
▼「カンヌへの道」連載記事一覧
・考えない、考えない、と考えている【カンヌへの道-01】
・気づいたら、演じる楽しさを忘れていた【カンヌへの道-02】
・美学・生き様・佇まい。ずっと探していた、魅力の正体【カンヌへの道-03】
・「えんとつ町のプペル 約束の時計台」を見て、自問が始まった【カンヌへの道-04】
・演じる僕の原点は、幼稚園の鬼ごっこだった【カンヌへの道-05】
・迷ったら、まず一言。それだけで道は広がる【カンヌへの道-06】
・いきなりpodcastデビューして、15年分の確信に触れた【カンヌへの道-07】
・「頑張る」をやめて、「かさねる」にした1週間【カンヌへの道-08】
・「助けて」って、言ってみようかな【カンヌへの道-09】
・頼るのが下手な僕が、少しずつ練習している話【カンヌへの道-10】
・任された。やりたい。でも、やり切れるか。【カンヌへの道-11】
・明日が勝負。「最高だから」を、言える自分まで【カンヌへの道-12】
・同じ景色を、隣で一緒に見たいだけだった【カンヌへの道-13】
・「靴を蹴飛ばすおばあ」から書き始めてみた【カンヌへの道-14】
・予約2人。その2人の顔が、もう浮かんでる【カンヌへの道-15】(本記事)
