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ドイツ・ブンデスリーガ上位クラブの監督を紹介! 2025/26シーズン FOKUS Bundesliga!!! #83


前書き

近年のドイツサッカー界は、顕著な若返り傾向にある。2016年、TSG 1899 ホッフェンハイムが弱冠28歳のユリアン・ナーゲルスマンを監督に起用して以来、最新の戦術に精通する若手監督たちが一挙に台頭したのだ。選手としての実績は限られながらも、若くて聡明であり、選手たちとより近い目線でコミュニケーションを取ることができる監督たちの存在は、ドイツサッカーの進化を早めるきっかけとなった。

若手監督たちを取り巻いた環境も良かった。ペップ・グアルディオラFCバイエルン・ミュンヘンの監督となって「ポジショナルプレー」をもたらし、ユルゲン・クロップラルフ・ラングニックが「ゾーンプレス戦術」でリーグを席捲したことで、ドイツサッカー界に戦術的な革新が起きた。その影響で、ドメニコ・テデスコフローリアン・コーフェルトなど1980年以降に生まれた若手のドイツ人戦術家たちが台頭し、リーグ全体で彼らへの期待が急激に高まったのだ。レネ・マリッチのような戦術オタクが台頭したことでも話題となった。

なかでも絶大な影響力を誇る若手監督は、ナーゲルスマンであることに変わりない。「密集」を活かしたゲーゲンプレスと狭い幅の攻撃、ロングボールとポジショナルプレーをハイブリッドした戦術は、リーグ内における戦術の新たなスタンダードとなった。直近では、ナーゲルスマンの影響を受けた新世代の監督たちが注目を集めている。ディノ・トップメラーサンドロ・ヴァーグナーのように直接的に影響を受けた人物に加え、ファビアン・ヒュルッツェラーなど間接的に影響を受けた人物も現れ始めている。

グアルディオラ、ナーゲルスマン、ラングニック。ドイツサッカー界に大きな影響を与えた人物たちに触れながら、2025/26シーズンのドイツ・ブンデスリーガの上位クラブを率いることになる9人の監督を紹介していく。




Ⅰ.ヴァンサン・コンパニ

Vincent Jean Mpoy Kompany
FCバイエルン・ミュンヘン 監督
生年月日:1986年 4月10日(39歳)
出生地:ブリュッセル, ベルギー

ヴァンサン・コンパニがバイエルンにもたらした変革は、チームを再びドイツ王者の座に返り咲かせるには十分なものだった。「グアルディオラの愛弟子」であり、スター揃いのチームを掌握できる人格者であり、なにより生粋のリーダーであるコンパニは、敵陣で攻撃を展開し続けるサッカーでクラブを躍進させ、シャビ・アロンソ率いる難敵バイエル・レバークーゼンとの首位争いに勝利したのだ。

相手を押し潰すかのようなハイラインのプレッシング、敵サイドを攻略するポジショナルプレーなど、コンパニはバイエルンの戦術を大きく改善させたが、なかでも優れていたのは、前任のトーマス・トゥヘル政権下で冷遇された選手たちを復活させたことだろう。「陰のMVP」級の活躍を見せたダヨ・ウパメカノ、6番、CB、右SBとして活躍したヨズア・キミッヒ、攻守に躍動したA・デイヴィスの成長ぶりは著しいものだった。

今季、コンパニが期待されるのは、何よりもリーグ連覇、そして直近5シーズン連続で逃しているDFBポカール王者の座に返り咲くことだろう。予算問題で戦力の補強こそ限られるものの、陣容と選手層はシーズンを戦い抜くうえで十分といえる。監督就任1年目で十分な結果を残したコンパニが、2025/26シーズンのバイエルンをどのように導くのか、手腕が期待されている。

今季のバイエルンのスカッド一覧
今季のバイエルンの予想フォーメーション


Ⅱ. エリック・テン・ハーグ

Erik ten Hag
バイエル・レヴァークーゼン 監督
生年月日:1970年 2月2日(55歳)
出身:ハークスベルケン, オランダ

シャビ・アロンソ監督を招聘し、巧みなスカウト戦術でブンデスリーガでの無敗優勝を手繰り寄せたジモン・ロルフェスが、新たなチームを作り出そうとしている。アロンソの後任として招聘されたのは、エリック・テン・ハーグ。2017年から2022年にかけて率いたAFCアヤックスを躍進に導いたことで知られる名将だ。テン・ハーグは、実はペップ政権下のバイエルンのセカンドチームを率いた経験があり、ドイツサッカーにも精通している。

ピサとの親善試合では、3バックと疑似的な4バックを使い分け、後方からのビルドアップを丁寧に行うサッカーを披露したテン・ハーグ監督率いるWELKSELFだが、スカッドの状況は決して良くはない。チームの絶対的な中心だったフロリアン・ヴィルツに加え、ヨナタン・タージェレミー・フリンポングラニト・ジャカを引き抜かれ、全く新しいチームを作りあげなければいけないためだ。

移籍市場での立ち回りは見事で、守護神にはテン・ハーグ監督の望んだオランダ代表GKマルク・フレッケンを、ヴィルツが退団したトップ下の位置には、マリク・ティルマンイブラヒム・マザという2人のトップ下を迎えた。ただ戦術上のキーマンとなるのは、恐らくロベルト・アンドリッヒアレハンドロ・グリマルドの2選手だろう。この2人が運動量で数的優位を生みだし、前線の才能ある選手の個の能力で違いを作り出す。これがレヴァークーゼンが勝利するのに必要不可欠な要素となるだろう。

2025年夏 バイエル・レヴァークーゼンの移籍情報


Ⅲ. ディノ・トップメラー

Dino Nicolas Toppmöller
アイントラハト・フランクフルト 監督
生年月日:1980年 11月23日(44歳)
出身:ヴァーデルン, ザールラント州, ドイツ

現在、アイントラハト・フランクフルトでスポーツディレクターを務めるマルクス・クレーシェの慧眼は伊達ではない。クレーシェは才能ある若手選手を見出すエキスパートで、オマル・マルムシュウーゴ・ラーションウーゴ・エキティケなどを獲得し、若くて運動量あるスカッドを作り上げた。クレーシェは、そんな優れたチームの監督にユリアン・ナーゲルスマンのアシスタントだったディノ・トップメラーを起用したのだ。

かつてレヴァークーゼンをチャンピオンズリーグ決勝に導いた名将クラウス・トップメラーの息子であるディノは、2023/24シーズンを11勝14分9敗の6位で終えると、翌2024/25シーズンは17勝9分8敗の3位に導いた。とくに2024/25シーズンは冬にクラブの絶対的エースだったマルムシュを引き抜かれたにもかかわらず、フォーメーションを「2トップ」から「1トップ+2シャドー」に変更することで好調を維持してみせた。

固定されたフォーメーションには拘らず、4バックと3バックを使い分けながら若手選手の個性を引き出し、そのときにいる陣容で最適な戦い方を見出す「戦術眼」は、まさに新時代のドイツ人監督らしい「発想力」と「柔軟性」といえる。ディノが今季のフランクフルトを率い、どのような戦術、フォーメーションでシーズンを過ごしていくのか要注目だ。

今季のフランクフルトのスカッド一覧


Ⅳ. ニコ・コヴァチ

Niko Kovač
ボルシア・ドルトムント 監督
生年月日:1971年 10月15日(53歳)
出身:ベルリン, ドイツ

伝説のスポーツディレクターであるミヒャエル・ツォルクの後釜に、まだ若いセバスティアン・ケールを招聘するという人事は、ドルトムント以外のファンから見ていても素晴らしい決断に映った。それだけにいまのBVBの状況には、驚きを禁じ得ない。既定路線だっただろうとはいえ、クラブをチャンピオンズリーグ決勝にまで導いたエディン・テルジッチを更迭してまで招聘したヌリ・シャヒンが失敗。シーズン途中にニコ・コヴァチを招聘してCL出場権を獲得するも、補強が遅々として進んでいないのだ。

ケールはもちろん、ラース・リッケンマティアス・ザマーなど様々なBVBの首脳陣に矢が向けられているが、問題の元凶が彼らでないのは明らかだ(誰かはここでは言及しない)。夏の移籍期間も残りわずかだけに早急な対応が必要である。とはいえ、ドルトムントのスカッドは、リーグ内でいえば間違いなくバイエルンに次ぐNo.2。絶好調時には凌ぐ可能性すらある。

セール・ギラシカリム・アデイェミマクシミリアン・バイアーの3トップはどの対戦相手にとっても脅威なうえ、中盤にはジュードの弟、ジョーブ・ベリンガムを獲得。コバチといえばチーム内にスケープゴートをつくることで有名だが、その候補筆頭とされたマルセル・ザビッツァーもシーズン終盤には活躍した。昨季終盤同様、コバチは十八番の「3-4-2-1」の布陣を中心にチームづくりをするだろう。2年目を迎えるコバチのもと、バイエルンと優勝を争えるシーズンにすることがクラブの目標だろう。


Ⅴ. ユリアン・シュスター

Julian Schuster
SCフライブルク 監督
生年月日:1985年 4月15日(40歳)
出身:ビーティッヒハイム=ビッシンゲン, ドイツ

2024/25シーズンのドイツ・ブンデスリーガで最も評価を上げた監督をトップメラーとするなら、次点は間違いなくユリアン・シュスターだろう。クラブの偉大な元選手であり、引退後はユースとトップチームを繋ぐ特殊な役割を担っていた彼は、名将クリスティアン・シュトライヒの後任という難題を見事に乗り越えてみせたのだ。

シュスター監督の素晴らしいのは、シュトライヒ前監督のスタイルを引き継ぎながら、うまくアップデートして見せた点にある。シュスター監督率いるSCフライブルクの基本布陣は「4-2-3-1」。ヴィンチェンツォ・グリフォ堂安律という2人のウインガーの打開力を最大限に引き出しつつ、守備ではプレスとブロック形成を使い分けた。若手の能力を引き出す力も見事で、マックス・ローゼンフェルダーヨハン・マンザンビは昨季に台頭した若手選手の代表だ。

今季のSCフライブルクは、右ウイングの堂安を引き抜かれたとはいえ、ヘルタ・ベルリンからデリー・シェアハントを獲得するなど、精力的な動きをみせている。ヨーロッパリーグ出場にむけて充実した選手スカッドを擁しており、不安は大きくない。とはいえ、トップリーグでの2シーズン目というのは簡単な仕事ではない。シュスター率いるSCフライブルクが、ヨーロッパのコンペティションが加わったシーズンをどのように戦い抜いてみせるのか、楽しみでならない。


Ⅵ. ボ・ヘンリクセン

Bo Henriksen
FSVマインツ05 監督

生年月日:1975年 2月7日(50歳)
出身:ロスキレ, デンマーク

FSVマインツ05は2024/25シーズンのリーグ戦で好調を維持し続け、シーズンを望外の6位で終えてみせた。見事というほかない。最大の功労者はボ・ヘンリクセン監督だろう。前任のボ・スヴェンソン監督の戦術を踏襲しながら、より安定した戦い方をチームに落とし込み、勝利を目指すチームを作り上げた。特筆すべきは失点数で、リーグ最小のバイエルンに次ぐわずか28失点の堅守を誇る。

ではマインツはどのような戦い方を見せるのか。「3-4-3」の布陣を基調とするマインツは、「可変式4バック+2MF」を中心にショートパス主体で前進を目指す。SBを務めることもできるフィリップ・ムウェネアンソニー・カシの両WBが、ビルドアップ時に下りて4バックを形成するうえ、ナディーム・アミリ佐野海舟の2人のMFがポジションを変えながら中央へのパスコースをつくる。両WBが前に前進したところで中央にクロスを供給し、ストライカーのヨナタン・ブルカルトがフィニッシュする、運動量を活かした重厚感ある攻撃を見せるのが特徴だ。

今夏の移籍市場でブルカルトをフランクフルトに引き抜かれてしまったものの、その後任として1.FCウニオン・ベルリンから快足のFWベネディクト・ホラーバッハを獲得したうえ、ユース出身のストライカーであるネルソン・ヴァイパーもU-21ユーロで活躍するなど好調だ。昨季と異なり、シーズンを戦い抜くための陣容が充実する今季のマインツがリーグ戦でどのような戦いぶりを見せるのか、注目したい。


Ⅶ. オーレ・ヴェルナー

Ole Werner
RBライプツィヒ 監督
生年月日:1988年 5月4日(37歳)
出身:プリッツ, シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州, ドイツ

近年、若手のドイツ人指導者が欧州中から注目を集めるが、オーレ・ヴェルナーほどの「奇才」は今のドイツに存在しないだろう。今年5月に36歳を迎えたばかりの同氏の転機は2021年、当時2部のホルシュタイン・キールを率い、DFBポカール2回戦で欧州王者のバイエルンに勝利したのだ。2021年にはブレーメンの監督に就任し、1部昇格に貢献。主砲フュルクルクを引き抜かれた2023/24シーズンには11勝9分14敗を記録し、前シーズンから順位を4つ上げた9位でシーズンを終えた。

「5-3-2」の布陣を基調としながら、気を見計らって高い位置でブロックを敷き、相手を閉じ込めてることを狙う場面が見られるなど、ヴェルナ戦術は少なからずナーゲルスマンの影響下にある。またキール時代に「戦術家」ティム・ヴァルターの影響を受けるなど、細かな戦術面で独自解釈が見え隠れするのはヴェルナーの独特な部分だ。ヴェルナーの戦術では「ジョーカー(ウイングバック)」が大外から中央に侵入してくる。ミッチェル・ヴァイザーデリック・ケーンは、ファイナルサードではハーフスペースでプレーする姿が散見された。興味深い戦術だ。

2025/26シーズン RBライプツィヒのスカッド


Ⅷ. ホルスト・シュテッフェン

Horst Steffen
SVヴェルダー・ブレーメン 監督
生年月日:1969年 3月3日(56歳)
出身:メーアブッシュ, ドイツ

SVヴェルダー・ブレーメンは、RBライプツィヒへと去ったオーレ・ヴェルナー監督の後任として、SVエルフェアスベルクからホルスト・シュテッフェン監督を招聘した。シュテッフェンは1969年生まれの56歳で、ブンデスリーガ1部のクラブを率いる経験はこれまでにない。近年のドイツが若手監督に挑戦機会を与えているトレンドとは逆行しているようにも映る監督人事だが、シュテッフェンの実績は十分といっていい。

シュテッフェンは以前に率いたエルフェアスベルクで、ニック・ヴォルテマーデエリアス・バウムなどの若手選手の才能を見事に引き出したうえ、2018年の次点で4部にいたクラブを昨季2部3位と昇降格プレーオフを争えるチームに作り替えてみせたのだ。彼が志向するのは、攻撃的サッカー。「4-2-3-1」の布陣をベースとしながら、よりボールを持ち、ハーフスペースを攻略して戦うサッカーを重視している。

ただ最大の障壁となるのは、「ヴェルナー監督の後任」だということだろう。シュテッフェン監督は、クラブのインタビューでも答えているように4バックを好むが、前任のヴェルナーは3バックの使い手なうえ、守備を度外視した、独特なビルドアップと崩しを嗜好している。実際、プレシーズンの試合でシュテッフェン監督は3バックで戦うも、ビルドアップと守備面どちらにも難を抱えていた。

更に苦しいのは、チーム最大の要ともいえたマーヴィン・ドゥクシュがイングランド2部チャンピオンシップのバーミンガム・シティへ移籍したことだろう。ポストプレーやケヴィン・デ・ブライネを彷彿とさせるようなスルーパスなど、チーム内で圧倒的な違いを作れる選手だっただけに退団は大きな痛手だ。戦術面とスカッド面の両方で苦しい状況下にあるブレーメンだが、今季のリーグ戦をどのように戦い抜くのか注目だ。


Ⅸ. セバスティアン・ヘーネス

Sebastian Hoeneß
VfBシュトゥットガルト 監督
生年月日:1982年 5月12日(43歳)
出身:ミュンヘン, バイエルン州, ドイツ

有望でありながら、燻っているドイツ人選手を開花させるという手腕に関して言うならば、セバスティアン・ヘーネスの右に出るものは世界中のどこを探しても見つけるのは不可能だろう。2023/24シーズンにはデニス・ウンダフクリス・フューリッヒマクシミリアン・ミッテルシュテットアレクサンダー・ニューベルを復活させ、2024/25シーズンには大器ニック・ヴォルテマーデを覚醒に導いたのだ。

実績に関しても申し分ない。2023/24シーズンにはクラブをリーグ2位へ導いてチャンピオンズリーグ出場権を獲得、2024/25シーズンには28シーズンぶりとなるDFBポカール優勝を成し遂げたのだ。クラブとは2028年まで契約を延長するなど、ファビアン・ヴォルムゲートSDからの信頼も厚い。それも当然だろう。本来のスポンサーであるメルセデス・ベンツに加え、ポルシェ社からもサポートを受けた負けられないシーズンで再び結果を残して見せたのだ。

4-2-3-1」の布陣を基本に、サイドから相手の攻略を狙うのがヘーネス監督のスタイル。昨季はそこに中央のヴォルテマーデへ預ける形が加わったことでバリュエーションが増加した。エンツォ・ミローの退団は打撃とはいえ、攻撃陣の陣容は十分。DFBポカール王者はリーグ戦とカップ戦に加え、ヨーロッパリーグと三足の草鞋を履くことになる。どのような采配をみせるのか、ヘーネス監督の手腕に要注目だ。

2025/26シーズン VfBシュトゥットガルトの選手一覧


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