三題噺ショートショート_韋駄天
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「韋駄天」まいりましょうか。

瞬はその名の通り、とんでもない瞬足だった。
高校野球の定石は、送りバントである。だが瞬が出塁すると、そんな選択肢は消え去った。
投手のフォームを見極め、捕手の肩を見透かし、抜群の出足と加速で、二塁、三塁、時に本塁までをも盗み獲る。
いくら牽制球を投げて警戒しようが無駄で。瞬は、ほぼ生還するのである。
あまりにも速いので、県の陸上競技連盟から短距離選手への転向を懇願されたが、瞬は見向きもしなかった。
小6の時、たまたま運動の出来ない仲間が集まったクラスで。瞬は自らアンカーを買って出て。圧倒的大差からコボウ抜きして、運動会のリレーで2位になった。
ゴール直後、歓喜の観客席から放り投げられたアクエリアスのペットボトルを見事キャッチして。それを天に突き上げながら叫んだ。
「私は最強!いや、私たちは、最強だ!」
瞬は、生まれつき心臓が弱かった。走れるのは、ごく短時間。
それでも人生を、全力で駆け抜けた。
でも瞬、いくらなんでも早すぎるよ。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、長生きしてね。マッサー(注1)、困るから」
マッサージすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。ムズい。ムズすぎる。笑


