【Advent企画】12/21:松ぼっくり(オーナメント)【410字小説】
「殴ってくれても良かったのに」
と、ホセが嘯く。
俺は拳を、ホセの顔面に届くスレスレで止めていた。
「いま殴った」
だから、これで何もかもチャラだ。
「当たってない」
「ほんとに当てたら俺の指が痛む。明日だって公演があんのに」
俺は、手袋をつけた手をグーパーと動かして見せる。古い黄色いミトン。
「ダサい手袋だね」
「気に入ってんだよ」
「知ってる。僕だって君の“元恋人”だったんだから」
ホセの視線の先を振り返ると、妹尾が足元の何かを避けようとして、たたらを踏むのが見えた。
「鈍臭い人だね」
「知ってる」
妹尾に蹴飛ばされて、彼が避けようとしたらしい小さなものが転がってくる。
ころころと転がって、止まったそれをホセが拾い上げた。
ツリーから落ちたのだろう、松ぼっくりのオーナメント。
「仕事は受けてくれるんだろ?」
こちらを窺うような声を出すホセに、俺は呆れてため息を吐いた。
「言っただろ、俺はバレエを選ぶんだよ」
そしてーー
「帰る場所はこいつの隣だ」
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本文410字。
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
注※ホセくんと美吉さんは英語で喋っている。
松ぼっくりのオーナメントにも意味があって、
ひとつは、「成功」とか「繁栄」。要は豊作祈願なんですよね。
で、それとはべつに、聖書における「勇者のもみ」という話があり、処女懐胎をした聖母マリアと婚約者(夫)ヨセフがヘロデ王から逃げる時に、もみの木が二人を守った(からイエスキリストは無事誕生した)という。
松ぼっくりは、もみの実に似ていることから、この「勇者のもみ」の実の代用品として、クリスマスオーナメントのひとつになっているそうです。
もみの木を持ち込んだ男に意図せず蹴とばされて転がった松ぼっくりを拾う別の男。
つまりそういうことです。
話のメインはこの二人。
ホセと美吉さんの間に何があったかみたいなのはこちら
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