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病院幹部のための令和8年度診療報酬改定 人工透析編 第36回

第36回 透析部門の管理会計フォーマットと透析部門「見直し初期90日プラン」

透析部門の管理会計フォーマット

透析部門は「収益部門」であると同時に「設備産業」です。 そのため、一般の診療科よりも 固定費・更新投資・人件費・送迎コスト の影響が大きく、管理会計の精度が経営判断を左右します。
ここでは主に外来透析についてみていきたいと思います。

以下は、透析部門の利益構造を正確に把握するためのフォーマットです。

① 収益構造フォーマット(患者一人当たり)

ポイント

  • 患者数ではなく「患者一人当たり収益」を必ず見る

  • 透析部門の利益差は患者構成(合併症・加算)で大きく変わる

② 稼働率フォーマット(時間帯別)

透析室は「時間帯別稼働率」が最重要です。

ポイント

  • 午前だけ満床でも「稼働率は高い」とは言えない

  • 午後・夜間の稼働が利益構造を左右する

  • 人材不足で夜間が止まると利益が急落する

③ 人件費フォーマット(生産性分析)

ポイント

  • 人件費は「削減」ではなく「生産性」で見る

  • 人件費率が高い理由は「配置の歪み」であることが多い

④ 材料費フォーマット(購買分析)

ポイント

  • 材料費は「1%の改善」で年間数百万円変わる

  • 契約見直しは透析部門の最重要テーマ

⑤ 設備更新フォーマット(5年・10年計画)

ポイント

  • 「利益が出ているように見える透析室」は更新投資を含めると赤字のことがある

  • 更新投資を見ない損益は経営判断を誤らせる

⑥ キャッシュフロー(透析部門専用)

ポイント

  • 「黒字でもキャッシュがない透析部門」は危険

  • 設備更新と送迎費がキャッシュを圧迫する

⑦ 患者構成(地域シェア分析)

ポイント

  • 患者構成が利益構造を決める

  • 高齢化が進むほど「送迎・合併症対応」が利益を圧迫する


透析部門「見直し初期90日プラン」

(事業見直しの現場で使う実務版)

透析部門の見直しは「削減」ではなく「構造の見える化」から始まります。

◆ 第1フェーズ:0〜30日(現状把握)

1. 数字の収集

  • 患者一人当たり収益

  • 時間帯別稼働率

  • 人件費率(職種別)

  • 材料費率

  • 送迎費

  • 設備更新計画

  • キャッシュフロー

2. 現場ヒアリング

  • 看護師

  • 臨床工学技士

  • 送迎担当

  • 医師

  • 事務部門

3. 問題の「事実」を整理

  • 午前だけ満床

  • 夜間が止まっている

  • 送迎が過剰サービス化/患者不満化(または外注か自前か)

  • 技士のシフト偏り

  • 材料費が高い

◆ 第2フェーズ:31〜60日(原因の特定)

1. 稼働率のボトルネック分析

  • 午後が埋まらない理由

  • 夜間が止まる理由

  • シフトの偏り

2. 人件費の構造分析

  • 過剰配置か

  • 残業の原因

  • 委託の妥当性

3. 材料費の契約分析

  • 契約単価

  • 使用量

  • 他院比較

4. 設備更新の影響試算

  • 更新後のキャッシュ

  • 償却負担

  • 「保守契約の見直し」や「リースか購入かの判断基準」

5.増患と維持

  • 紹介元(近隣クリニック)の分析

  • 入院透析の受け入れ体制

◆ 第3フェーズ:61〜90日(改善案の決定)

1. 優先順位の決定(3つに絞る)

  • 午後稼働率の改善

  • 材料費の契約見直し

  • 送迎体制の再設計(送迎は「コスト」であると同時に「集患の武器」でもあります。「送迎範囲の最適化(ルート効率)」「患者一人当たりの送迎コスト」をより詳細にみていく必要があります。「自前送迎の限界と外注化の損益分岐点」の視点でもチェックしてみてください。)

2. 具体的な行動計画

  • 誰が

  • いつまでに

  • 何をするか

  • どの数字で評価するか

3. 経営会議での意思決定

  • 稼働率改善案

  • 人件費最適化案

  • 材料費削減案

  • 更新投資計画

◆ 90日後に必ず得られるもの

  • 透析部門の「本当の利益」が見える

  • 設備更新後のキャッシュが分かる

  • 稼働率改善の打ち手が明確になる

  • 人件費の最適配置が分かる

  • 材料費の改善余地が見える

  • 送迎の採算が分かる

  • 経営判断ができる状態になる

最後に──透析部門は「利益部門」ではなく「戦略部門」へ

透析部門は、これからの病院経営において
「安定収益」ではなく「戦略事業」 になります。

そのためには、

  • 患者数

  • 診療報酬

  • 稼働率

だけでは不十分です。

利益構造・更新投資・人材戦略・地域連携を一体で見る管理会計 が不可欠です。

その先に「スタッフへの利益還元」や「最新設備への投資による患者満足度向上」など、数字の先にある医療の質向上が見えてくるはずです。


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病院幹部のための令和8年度診療報酬改定

「病院選別」シリーズ

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第3回 物価対応料では足りない──病院経営が迎えた静かな限界
第4回 賃上げできない病院から人が消える──令和8年度改定が突き付けた現実
第5回 地域包括医療病棟で病院格差が広がる──伸びる病院、苦しくなる病院
第6回 医療DX加算に目を奪われる病院が見落としていること
第7回 看護師が採れない時代に病院はどう生き残るのか
第8回 AIを使う病院と使わない病院──5年後に開く経営格差
第9回 紙文化が病院を苦しめる──令和8年度改定が求める病院運営
第10回 「手術ができる病院」が生き残る時代へ──外科機能が分岐点になる
第11回 高齢者救急を受けられない病院は取り残される
第12回 地域包括ケア病棟の経営が突然苦しくなる理由
第13回 2040年まで残る病院、消える病院──「特に中小病院の院長に読んでほしい」今回改定はその予告編だった
第14回 急性期病院であり続けることが最大のリスクになる日
第15回 病床は満床なのに利益が出ない──犯人は“出口渋滞”だった
第16回 回復期リハ病棟は「成果」で選ばれる時代へ
第17回 DPC標準病院群1・2で何が変わったのか──係数差が収益格差を生む
第18回 介護連携できない病院は選ばれなくなる──退院先を持つ病院の強さ
第19回 病院完結型医療の終焉──令和8年度改定が在宅へ舵を切った理由

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第26回 病院経営に「予算」がないのはなぜか──毎年同じ失敗を繰り返す本当の理由
第27回 その経営会議、本当に必要ですか──数字を報告するだけの病院が変われない理由
第28回 「数字はあるのに決められない病院」──意思決定が遅い組織の共通点
第29回 病院再生で最初に変えるべきもの──削減より「構造」を見る
最終回(第30回) 令和8年度改定後、病院経営はどこへ向かうのか──30回書いて見えた「生き残る病院」の条件

病院幹部のための令和8年度診療報酬改定追記 慢性期:療養病棟編

第31回 療養病床は本当に必要なくなるのか──令和8年度改定が示した「長期療養」の未来
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病院幹部のための令和8年度診療報酬改定 人工透析編

第34回 人工透析は「安定収益」ではなくなった──令和8年度改定で問われる透析医療の経営戦略
第35回 人工透析部門は本当に利益を生んでいるのか──管理会計で初めて見える「儲かる透析」と「苦しい透析」


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