「Solaria 2nd Stage 第十七話|その先の頂へ(前編)」

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」
「Solaria 2nd Stage 第三話|はじまりの朝」
「Solaria 2nd Stage 第四話|揺れるスタートライン」
「Solaria 2nd Stage 第五話|見えない距離」
「Solaria 2nd Stage 第六話|すれ違うリズム」
「Solaria 2nd Stage 第七話|雨に溶ける声」
「Solaria 2nd Stage 第八話|雨の再会」
「Solaria 2nd Stage 第九話|重なりはじめる音」
「Solaria 2nd Stage 第十話|東京南地区予選」
「Solaria 2nd Stage 第十一話|覚醒」
「Solaria 2nd Stage 第十二話|君がいるから」
「Solaria 2nd Stage 第十三話|その先のステージへ①」
「Solaria 2nd Stage |顧問紹介」
「Solaria 2nd Stage 第十四話|その先のステージへ②」
「Solaria 2nd Stage 第十五話|その先のステージへ③」
「Solaria 2nd Stage 第十六話|その先のステージへ④」
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「第十七話 | その先の頂へ(前編)」
夜。
部屋の明かりは落とされているのに——
ひなたは、まだ眠れていなかった。
布団の中で、何度も寝返りを打つ。
(……眠らなきゃ)
そう思えば思うほど、意識が冴えていく。
天井を見つめる。
静かなはずの部屋に、自分の鼓動だけがやけに大きく響く。
——思い出す。
あの体育館。
あの光。
あの歓声。
(……あそこから、ここまで来たんだ)
胸が、少しだけ熱くなる。
でも同時に——
(……明日)
ぎゅっと、シーツを握る。
「……ダメだ」

小さく呟いて、スマホを手に取った。
少し迷ってから、通話ボタンを押す。
数コールの後——
「……もしもし?」
落ち着いた声。
あかりだった。
「ごめん、こんな時間に」
「別にいいけど」
少しだけ間。
「どうしたの?」
ひなたは、少しだけ笑う。
「なんかさ……緊張しちゃって」
正直な言葉。
「寝られそうもないや」
電話の向こうで、小さく息を吐く気配。

「何言ってんのよ」
少し呆れたような声。
「正月に一緒に願かけたの、もう忘れたの?」
「あ……」
ひなたが目を瞬かせる。
神社。
あの時の空気。
交わした言葉。
「……そうだったね」
小さく笑う。
「でもさ……やっぱり緊張するよ」
素直な本音。
その言葉に、あかりは少しだけ声のトーンを変えた。
「——誰でも、緊張してるでしょ」
静かに、でもはっきりと。
「ひなただけじゃない」
一呼吸置いて。
「あのEternalのメンバーだって、同じ」
「……そうかな」
「そうよ」
即答。
「でもね」
少しだけ強くなる声。
「それを理由に止まる奴はいない」
その一言が、まっすぐ胸に届く。
ひなたは、しばらく黙ったまま——
やがて、ふっと息を吐いた。
「……うん」
「そうだよね」
少しだけ、肩の力が抜ける。
「ありがと、あかり」
「はいはい」
軽く流すような返事。
でもその奥に、確かな信頼があった。
「じゃあ、もう寝なさい」
「うん」
「明日、寝坊するんじゃないわよ?」
「しないってば!」
少しだけ笑い合う。
そして——
通話が切れる。
静寂。
さっきまでと同じはずなのに、少しだけ違って感じる。
ひなたは、ゆっくりと目を閉じた。
(いよいよ明日)
胸の奥で、言葉が浮かぶ。
(やることは一つ)
深く息を吸う。
(——当たり前のことを、当たり前にやるだけ)
そのまま、意識はゆっくりと沈んでいった。

朝。
澄んだ空気。
まだ少し冷たい風。
集合場所に、次々と集まるメンバー。
「おはよー!」
ひなたが元気よく手を振る。
「おはようございます」
さくらが微笑む。
「ちゃんと寝れた?」
あかりが少しだけ意地悪そうに聞く。
「寝れたよ!」
ひなたが胸を張る。
「ほんとに?」
「ほんとほんと!」
そんなやり取りに、ゆいがくすっと笑う。
「よかったね」
その横で、しおりは静かに全員を見渡していた。
「お前ら、昨晩ちゃんと寝たか?」
少し遅れて現れたのは顧問の五十嵐。
「そういう先生こそ、寝てないんじゃないの?」
あかりがすぐに返す。
「バレたか?」
五十嵐が苦笑する。

「俺さ、こういうイベントって初めてでさ」
頭をかきながら言う。
「なんか妙な気分なんだよな」
「大丈夫ですよ」
ゆいが柔らかく言う。
「私たちも、同じですから」
その言葉に、全員が少しだけ笑った。
電車の中。
揺れる車内。
それぞれが、それぞれの時間を過ごしている。

ひなたは、窓の外を眺めていた。
流れていく景色。
(……来たな)
静かに、そう思う。
さくらは、ぎゅっと手を握っている。
あかりは、イヤホンで音を確認。
しおりは、目を閉じて何かを整理しているようだった。
ゆいは、そんな全員の様子をそっと見守っている。
やがて——
「次は——」
アナウンスが流れる。
最寄り駅。
電車がゆっくりと減速する。
扉が開く。
一歩、外へ。
その瞬間——
「……!」
空気が変わった。
ホームにいる人の多くが、同じ方向へ向かっている。
見知らぬ制服。
個性的な衣装。
緊張感のある表情。
(……すごい)
ひなたが思わず呟く。
「これ……全部?」
さくらも圧倒されていた。
「出場者、関係者、ファン……全部混ざってるんでしょうね」
しおりが冷静に分析する。
でも、その声にもわずかな緊張が滲んでいた。
改札を抜ける。
人の流れに乗る。
そして——
視界の先に、それは現れた。

大きな会場。
掲げられた看板。
「第一回 東京スクールアイドルジェネレーション」
その文字が、朝の光を受けて輝いていた。

会場入口。
足が、少しだけ止まる。
(ここが……)
その時だった。
「あの……!」
後ろから声。
振り返る。
「あゆみちゃん?」
小さく息を弾ませながら、立っていた。

「あの、先輩がた……これを」
差し出されたのは、小さなリボン。
「これは……?」
さくらが受け取る。
「あの……お守りみたいなものです」
少し照れながら言う。
よく見ると、それぞれ色が違う。
メンバーのイメージカラー。
ひとつひとつ、丁寧に作られていた。
「……ありがとう」
しおりが静かに言う。
「これ、付けて歌おうか」
ゆいが優しく提案する。
「いいね、それ」
ひなたが笑う。
「いい後輩を持ったなぁ」
あかりが、少し嬉しそうに言った。
全員が、それぞれのリボンを手にする。
小さな存在。
でも——
そこには、確かな想いが込められていた。
ひなたが、一歩前に出る。
振り返る。
全員の顔を見る。
頷く。

「——さあ、行こう!」
会場ゲート。
スタッフの声が響く。
「出場者の方はこちらへ!」
一歩。
また一歩。
進んでいく。
そして——
その光の中へ。
第十七話 その先の頂へ(前編) (終)
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― その先の頂へ(中編) ― へ続く
