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16本の小説BL小説を読んだレビュー

毎月開催中! #noteでBL 企画に投稿してくれた作品のレビューです!お題はこちら↓

「地獄」「土壇場でキャンセル」「オタク×オタク」
この3つのお題を使った3000〜5000字のブロマンス〜BL小説

全17作品中、私の作品を抜いて16作品です

個人的な読みどころはお題にある「オタク」です。
ここの扱い方が2分してました。

一般的に思い浮かぶアイドルや、ゲームなどの虚構性の高いものを好む“オタク“を人物像として設定するか。
恋愛対象の人物や打ち込む競技などへの情熱や固執をそうとするか。

前者は一見、人物設定だけそうすれば書きやすそうですが、オタク度のリアリティのための書き込みが必要になるし、後者は対象者やもの、競技への心理描写が軽いとただの恋愛や熱血だけになる。
他のお題は比較的扱いやすいですが、BLにおける必須事項のカップリングの工夫が物申してくる上に、そっちに夢中になると恋愛部分が弱くなる。
これを読了約5分にまとめるのは至難の業です。
みんな、すげぇやで。

ここから書くレビューは参加してくださった作家さんに向けて書いていますが、これを読んで作品が気になった人のために、タイトルをクリックすると小説に飛べるようにしています。

小説だけ読みたい方はこちらのアンソロジーへどうぞ

火炎』コメディ?ナンセンス?

鳩野公園さん!

地獄行きの特等席かもしれない。
私は鳩野さんの小説を読み始めて30秒ほどの“狂言綺語“の一言から視線を外した。
思い当たる節しかない自分の書いたエロ小説を走馬灯のように巡らせて、ふわぁ〜おぅ💕な描写の中でも、特にけしからん描写シーンを個人的ハイライト、慌てて口端のよだれを吸い上げ液晶と向き合った。
これから読む人にも一応共有しておこう。
鳩野さんの小説の冒頭に書かれた“狂言綺語“とは、妄執をテーマに嘘の話を書いたものの罪(鳩野さんの小説より抜粋)らしい。
追記するなら「無い事を装飾して表した作り事」小説や物語をいやしいものと見下す意味も込められている。
架空の男の娘たちを紙の上で好きにしてきた、同人作家の藤野は、極楽行きのエレベータの手前でぴしゃりと改訂され、獄卒の鬼に地獄へ連行される…ここまで読んで虚無になる。
まずいな、今回は1本目から他人事にできないのが来たぜ。
だがまだ小説はAメロ程度だ早まるな、何か打開策があるはずだ。
そんな藤野の前に現れたのは生前1番の友人灰田、こちらは男性を好きになっちゃった罪で他苦悩処いき。
ここから小説はくんずほぐれつ怒涛のドンデン返し!読了後の余韻に浸った後に、たった一つの真実に気がつく。

生前に創作したエロ小説は、この世でデータを消去しても、あの世のデータに残っている。

私は地獄直通の新幹線のグリーン車だ、もう席を確保したも同然。
だが、この企画内に仲間はきっといるはず!よし、おめぇら!幕の内弁当とカッチカチのアイスも買おうぜ!
結局は、何処にいるかより“誰といるか“なのだ。
赤信号も皆んなで渡れば怖くないし、地獄だってみんなで住めば都やろ!


粘着質アイドル突撃系』コメディ

トウジョウトシキさん!

ブログでもエッセーでも小説でも「タイトル」は書く人を悩ませる。
例えば小説を本屋やネット上で作品を選ぶ時、知らない作家の作品をタイトルも見ずに即買いする人は少ないだろう。
つまりそこが秀逸でないと、ひねり出した一行目どころか続く何時間もかけた本編も無かったことになる。
タイトルは“小説の顔“と言っても過言じゃない。
バンドのヴォーカル、アイドルで言うところのセンター!それがタイトルである。

すいません私、音楽は曲からなんで。と腕を組むあなたも一度考えてほしい。
私のこと昔から知ってるの?と勘違いするような歌詞、胸に抱かれて呼吸を合わせたようなブレス、まさに今この瞬間に欲しい心地のメロディ…を、歌い上げる見まごうことなき剛田武、公式のニックネームはジャイアン。
すいません私、音楽は曲からなんで。言わずもがな、この一言の意味が180度変わる。

ルッキズムだなんだと規制されども、やっぱり顔も大切だ。
個人の好みで美醜を利用し、攻撃しなければ私は素直でいいと思う。だって顔は、たかがきっかけであり、されどきっかけにもなるから。
入りが顔で中身も好き、タイトルに惹かれて本編も好き。
中身から入ったら顔も好みだった、あらすじ読んでタイトル見たら好みだった。
どちらかが好みで自分の琴線に触れたら、1週間以内には全てが好きになれる気さえする。
それで言うと、タイトルに並ぶ言葉を欲しいがままにした内容の作品は、一目惚れどころか唯一無二になるかもしれない。
さて、ここまで読んだら。
この小説のタイトルを一読後、ワンクリックで小説にどうぞ。あらすじなんか野暮ですよ、このタイトルが作品と登場人物の愛の全てです。


デッキの中の地獄』ファンタジー

ナルさん!

もしかして…コナンの映画のタイトル考えてるの、青山剛昌先生やなくてナルさんじゃね?
今回はお題の一つである『オタク×オタク』がピリリと効いて、投稿された小説はいささか頭を使ったり記憶を掘り起こす作業が多発する中、この作品だけは懐疑的な視点で読んだ。
劇場版・名探偵コナンのタイトルと言えば「絶海の探偵プライベート・アイ」など、漢字部分の読みをギリギリ読めなくもない外国語の当て字した絶妙なネーミングが毎回話題になる。
抜群のセンス…かどうかは好みにもよるが「ブラックコーヒー」と書いてみて「ブラックホールの泉」と読むのが限界の私には難しいことこの上ない。
さて、本題のナルさんの小説はカードゲームオタクカップルの愛と冒険の話だ。
こいつは世界感の書き込みがかなり大切になるぜ、ナルさん!どちらかがオタクの設定のほうが逃げ場がまだある。
だが、キーになるカード「急拵えの地獄インスタント・インフェルノ」をあらすじで見た時、かっこいい!と同時にナルさん、実はやっとるな?と勘繰る。
だったらそこそこ楽勝じゃね?と椅子にもたれかかって頭の後ろで腕を組んだ瞬間、目に入った「カードゲーム初心者」の一言に驚愕。
正直、ゲームのルールは少し調べたら出てくるし、どれも似たルールだから引用できる。
小説内で発動するカードのネーミングはそうもいかないし、ここが下手くそだとしたらどんなに内容がエモくても総崩れになること将棋崩しのごとし!
そんな昨日の今日で習得する技能ちゃうで!
そんな私の心配など不要も不要のリアリティとカッコ良さ!てかもう恋愛要素いる?カードバトルする?ってほどのカードのクオリティ!

案外私も出来るんじゃないか?とカードスキルのネーミングについて本気出して考えてみたが「一枚剥の秩序シームレス・パンティ」でターンエンドでした。


Do it Mysel』ホラー風味コメディ・ブロマンス

木野山キノさん!

ババァの私は根強い人気の“たまごっち“ブームの第一世代を生き抜いた女だ。
当時のブームは半端なくニュースやワイドショーでも連日取り上げられたが、大阪の片田舎まで供給は追いつかず「そうはいうけどマジもんはホンマにあんのか?」の都市伝説レベルだった。
今になって思うが、田舎や片田舎など僻地に都市伝説が多いのは、私達のような取り残された人々の訝しみからも少なからず出来ていると思う。
「イズミヤのおもちゃ売り場にあるらしい」「トイザらスやって!」噂だけが一人歩きするが、誰も実物を見ずに振り回されていた。
「ぎゃおっぴ」なるバッタもんが出たまでは良かったが、持っていると嘘をついた人の家に泥棒が入ったり、市内に務める親が苦労して買い与えたたまごっちを「こんなのあるはずがない」と不審に思って捨てた子までいた。

都市伝説が出来るまでの経緯もこれに似た同調圧力的なものがある気がする。
キノさんの小説のキーになる“リンフォン“も元は2chから出てきたポッと出の都市伝説で、密やかなブーム到来と共に半信半疑のまま人は求めた。
承認欲求からそれらしいものを見つけた!と写真付きでアップする人も現れたり、知人が手に入れた!と人を謀る噂を捏ち上げたり、拡散され続ける事で“リンフォン“は歪に実態を持って世間を一人歩きし、有るはずの無いものが、無いはずの有るものになり突然それが、自分の同級生の手の中に現れたら…
本当に怖いのは、無いものをあると信じて作り出す人間の豊かな創造性。
たまごっちは実在するから安心だが、本当に怖いのは人の脳内にしかないものだ。
ちなみに私は最初読んだ時「獄門疆」かな?と渋谷事変をしました。


地獄で君と待ち合わせ』サスペンス

かし子さん!

“待ち合わせ“は時に地獄よりも地獄的である。
私は先日、この作品の作者のかし子嬢と表参道で待ち合わせ、地獄を見たのだ。
当日、青山学院へバスケの試合観戦に赴いた私は、試合前に会場のすぐ近くの「青山ブックセンター」で待っているかし子嬢落ち合い、簡単に挨拶をする予定だった。
表参道で下車し、青山ブックセンターに向かったが全く見当たらない。Googleマップに入力しても「目的地に到着しました」と言われるばかり。
人通りも少ない視界も良好な道で迷い用もないし、確認のためにかし子嬢にDMしてみると「地下で見えにくいかも」との返信あり。
だが見渡す限りのテナントの地下も探したがショップと結婚式場だった。
仕方なく式場のコンシェルジュに尋ねると対応してくれた女性が「青山ブックセンター」関する不穏な話をし始めた。

「青山ブックセンター」はこの周辺では有名な本屋だ。
「Googleマップで調べて皆んなここのたどり着くが、だが誰も見たことがない」
「持っている情報もあなたと同じだ」
んなアホな、私の友達今現在そこおんねんて。
「皆んなあのレンガの壁の路地に入っていく、あそこに秘密があるかも」

言われるがままに路地を覗いたがフォトスタジオ、むしろお前の職場の式場と連携してないか?と疑問がわく始末。
直ぐそこにいるはずなのになぜか会えない地獄をさまよい、結果的に私達は出会えたのだがそれにしてもなすれ違いだった。

この約2週間後、私は「地獄で君と待ち合わせ」を読みながら既視感を覚える。
あの時の地獄ももしや作者のかし子嬢の…?


基本型きほんがたの精度』アオハル(武道サークル)
地獄に咲くは純白の、』和風耽美(メリバ)

月は東にさん!

失恋おじさん捜索中…失恋おじさん捜索中…失恋おじさん…

小説に限らず、ドラマや映画でも3人組は無敵のバランスである。
そして3人で恋愛をすると必ず1人あぶれてしまう、そう三角関係が勃発するからだ。
3という数字の魔力なのかなんなのか、それとも作者が好きなのか、どうしても3人で話を展開して結ばれない1人を量産する、作家の手癖なのかもしれない。
まずは1本目の空手道に精を出す3人の男女の話。
今回はおじさんやないからセーフと思てるけど、OGをあててきましたね…まぁ、おじさんの略でOGやないからよしとしましょう。
2本目はなんだか最近凝ってらっしゃる和風の話。
地獄花に憑かれた兄さまと、それに従順な付き人の亨介の話だが、この家の主人、おじさんやないですか?はっきりとは書かんかったけど、我が子を押しのけてまで親をなくして引き取り、付き人とした子を跡継ぎにしようとする意図はなんぞや?

…騙されないぞ!!

出でよ!今まで月さんが量産した失恋おじさん達!
あの家の主人を徹底的に調べろ!絶対になんかやましい下心があるはずだ!なに?主人公達の恋路を見届けたい?え?わしも絵画好きなんだが?自分、前回のふと振り返るとそこには失恋おじさんやな!
ちょっと闇当主ぅ!家の品定めしてないでこの家の家主を…は?この辺りは坪単価いくら?ってなんのマウント?知るか!
月さんの小説内の失恋おじさんパトロール24時は終わらない。


地獄はこの世の中にある
世界は地獄でできている』人間ドラマ

岡埜 由木古(偏光)さん!

「デスゲームと、センシティブな設定はのど越しで書け!」これは私の自論で、“のど越し“とは、言わずもがなうどんのことである。
センシティブな設定(いじめ、宗教、殺人)を入れた小説を書く場合、作品内の説明書きやルールを手打ちのうどんのようにこね過ぎるより、とっとと名店に行って茹でたてをのど越しで食うように、思いつきの勢いで書き進んだ方がいい。
この手のことは勢いで書き切るのが一番なのだ。
なぜなら、込み入ったルールやセルフレタリングの付け過ぎや、読む人を慮りすぎた遠回しな書き方は、大事な部分が読者に伝わりづらいし、作者は作品に込めて伝えたい意図を見失ってしまう。
岡埜さんの作品には“ある理由から“髪が真っ白になった新興宗教の2世である拓海が出てくるが、彼は田舎から出てきた真一郎の、濃密な距離感や助け合う考えに救われる。
真一郎も田舎特有の閉鎖的な距離や風習に辟易しているが、拓海の特殊な家庭で育ったが為に培った人称掌握スキルに助けられる。
どちらの育った環境も繊細に扱うべきではある部分だが、全てが悪い方向に作用するのでなく、彼らは上手く補い合っている。
簡単に扱えない部分だからこそ軽視してはいけないが、腫れ物に触るように隠しているより、勢いででも書き切って世に出すことも私は大切に思う。
私はこの一見残酷なテーゼでありつつも、優しい語彙に尽くされた岡埜さんのほとばしる熱いパトスに敬意を表したい。
企画の参加表明の時すでに2話書いていた事には驚いたが、その勢いだからこその、つるりとしたのど越しで読めて、余韻に浸れたし考えさせられもした。
少年達よ、決して腐らず神話になれ。


午前四時から五時のあわい』ヒューマンドラマ

藤間さん!

「オタクの早口」とは、自分の興味があることを熱量最高出力で一気に話し切ってしまう状態を主に意味し、今ではすっかり市民権を得た言葉。

国際空港に務めていた時、連日ジャパニーズオタク文化を楽しむ外国人の多彩なメッセージTを見かけた。
『ビーチの侍』『無駄無駄無駄無駄』など、決め台詞や作中のネタのものが多い中、不穏なTシャツを見つけた。
ぱっと見ティーンの金髪のお嬢さんだが、Tシャツのバックプリントは毛筆の縦書きで禍々しい言葉がびっちり!海外の人からすれば縦書き漢字はかっこいい、だがあまりにも内容が過激すぎる!
知らずに着ていたら事故だと即判断してお節介を承知でTシャツについて聞くと、彼女は急にうつむき手で口元を隠した、そして…
「ご存知ないですか?ないんですね?これは“地獄少女“というアニメで…」と圧巻の早口で日本のアニメをワンブレスで語り切った。
圧倒されつつ私は学んだ、オタクの早口って万国共通なんやなって。

だがこの早口現象はオタクに限った事でもない気がする。
たまたま枕に「オタクの」がついただけで、誰しも「聞いて欲しいこと」を語れるターンがくると誰でもやってしまいがちだ。
そしてこの切実な早口を面倒がらずしかと聞き受け入れ、さらにレスポンスまでくれる人は本当に少ない。
だから聞いてもらいたくて早口になると言う地獄のループが発生するのだけれども。
この小説も3人のオタクが各々の思いを「オタクの早口」で吐露する形式で展開されているが、ずば抜けてアニメオタクの平坂さんは失恋した林くんに対し「伝えたいこと」をオタクの早口で切々と話す、その誠実さったら!
傷心やなくても平坂さんに惚れるて、全くヒューヒューだぜ。


この出会いは僕に笑顔をくれた』ヒューマンドラマ

syo⭐︎さん!

さて、そろそろ時間かな。
月は東にさんの小説で失恋おじさんは回収できなかったが、ここには同じく困ったお父さんがいるぜ。
DVにネグレクト、挙げ句の果てに子供を使って金を稼ぎ、挙げ句の果てに嫁を…こんな困ったおじさんが物語に現れた時、私の中の「お節介な関西のおばちゃん」が颯爽と君臨する。
どないしてんあんた?おばちゃん話聞こか?
加害者が振るった暴力は擁護しないが、人間誰しも生まれつきの悪人はいない。
問題を抱えるきっかけや経緯があるはずで、過害してしまう人だって過去には被害者だった可能性があるからだ。
そして、物語においてのこの手の役どころを抱えたお父さんを、私の中のおばちゃん魂は黙って見過ごさない。
夏は濃いめのカルピスとチューペット、冬は熱めのココアと毛布で包んでやり話を聞いてやりたくなる。

あんた、なんでそんな息子のエイクにキツく当たるんよ?ほんで、仕事どないしたん?ご飯はちゃんと食べてんか?
今日は月さんとこの失恋おじさんも仕事(失恋事項)がなくて来てるから、話一緒に聞いたるさかいな。

なんや振り返りおじさん?…絵はないのかって?家狭い?アホいいな、自分らの心が狭いんや!そんなんやからエェ年こいてまだ失恋引きずった上にお家問題で息子に出し抜かれんねん!ちょっとはエイクのおとんの図太さを見習…ったらあかんけど、爪の垢くらいは煎じとき。
え?エイクを保護して匿ったこのおじさんも、失恋おじさんパーティに参加させるて?ちゃうちゃう、この人失恋してないから!
ほんましゃあないやっちゃな、そや、今度キャンプでもする?朝まで語り明かそうぜ?
心の傷はなかなか癒えないし、なかなか言えない。聞いてあげる場所が必要っておばちゃん、思うんや。


予告篇』現代

星屑さん!

メトロノームをぼんやり見ている感じ、この小説はそんな時間軸で動いている気がする。
漫画にしろ小説にしろ“時間軸“を前後させる作品は多いが、この手法は作家が少しでもミスをすると物語全体がわかり辛くなる。
そこを上手く書くために作家は、ドラえもんの四次元ポケットみたいに色んな手法を駆使して書き切る。
タイムテレビのように第三者を使って客観視する書き方をしたり、タイムマシンに乗って章の切り替えで過去に向かう、もしもボックスで「もしも僕と彼が出会っていなかったら」と回想する。
そうやって時間軸を活用することで人物像や現在の状態が明確になり、物語により厚みが出るのだが。
問題は過去と現代のトランジション、つなぎ目だ。
よく使われるのが章で過去と現在を分断する手法、短編連載のように過去だけを書き切れて楽だし「予告篇」もそれを活用して、不純異性交友が学校にバレた蓬田と、四月一日の出会いから現在の状態を描いている。
だが、この過去と現在の文章は、一見分断されているようで章の終わりと始まりの情景描写で絶妙に繋げている。
星屑、やっとるな。
初参加の時から散文的な書き方をしつつも上手く話を繋げているな、と思っておったが、ついに読者の脳内に作品の意図や時間軸の切り替えに不自然さのないエフェクト(編集効果)を加えつつ、継ぎ目を消しおった。
そして映像がはっきり見えるように、関係性の変化による背景描写にもエフェクトをかけている。
そのおかげでメトロノームがただ揺れているみたいに同じテンポで時間軸を難なく読み進められる。
時間軸の…魔術師、か。


サタネラ』現代劇(バレエ)

四四田 鹿辰(ヨシダ ナレシカ)さん!

お腹がすくなぁと思いながらこの作品を読んだ、この欲求は懐かしい。
バスケ観戦中にルカ・パヴィツェビッチHCの指揮するフォーメーションを見るとよく唾と共に湧いた欲求だ。
コート上の芸術とまで称された彼の戦略は、完成すると美しい噛み合わせでボールをバスケットに落とさせる。

ルカが許した精鋭しかコートには立てず、全ての布陣を把握したハンドラーが、選手を巧みに定位置に誘導させて始まる。
私はそんな彼の布陣が好きだった、勝つ勝てないを無視すれば完成された確かな芸術性があった。
ルカは時に、美しいフォームと微細なズレも容赦しない1人の選手を際立たせるための戦略を作り、彼のシュートが放たれた瞬間、会場中に感動が連鎖する場面を演出していた。
ぎゅうぎゅうに紐で締め付けた爪先が床を蹴り上げ、最高到達点でゴールを見据える。
まっすぐ伸びた右足の重心、開いた左足を開いてバランスをとり、屈強な体幹でボールを手放したフォロースルーの指先、会場中が彼に飲まれる圧巻の瞬間を作る。
だが、現代のバスケは3秒あれば戦況が変わり、時間をかけて錬成する彼の芸術は理解されなくなり日本を去った。

監督は自分の脳内を演者に落とし込み、己が信じる芸術の完成に近付ける。
演者はそれを完璧に理解し、監督の作る世界に花を添えながら、これでどうだ?と挑戦し続ける。
どちらが魅入られ、どちらが誘導したのか分からないあの2人が作るコート上の演出は畏怖でしかない。
「サタネラ」を読んで、振付師とダンサーの美への枯渇や、題材である悪魔の娘のサタネラが、なぜ人間のカールを選んだか?を考えつつ彼を思い出した。
でもバレエの話なんだから例えはバレーボールの方がよかったかもと、食パンで満たされた腹を撫でて反省している。


十年分の拗れた矢印』現代恋愛(オフィスラブ)

凪砂いるさん!

今月もやってきました、いるさんの赤楚衛二タイム!実際に役者の赤楚衛二はこの小説に出ていないが、私の中の勝手なキャスティングです。
だってね、当て馬×当て馬の話ですよ?昨今のドラマの名当て馬役者といえば赤楚衛二ですよ。
もうな、どっちが赤楚衛二かなんかどうでもいいレベルまで私はきているんですよね、それを証拠にいるさんの小説を読む前は、おやつなんか準備してコーヒーも淹れるんだから!
今回はローソンで買ってきたイチゴのエッグタルト。
朝一にnoteを開けて通知を見た時すでに「甘さは控えないほうがいい」と脳がはじき出していたから諸用のついでに購入した。
タイトルに「拗れた」が入っていると、不穏な雰囲気がしないでもないが、私はもう学習している。
不穏の後にくる激烈な甘いラブシチュエーションがきっとどこかにある!だって、恋愛ドラマの主人公は決まって恋愛に対して不器用で、当て馬の上手い戦略や無難なフリして押しの強い人柄に翻弄される。
そう、当て馬は恋愛が上手い奴が多い。だが、上手すぎるから主人公に外される!
当て馬の不器用さは、器用さなんですよ。
ソツがなくて恙ない、褒め言葉なのにナイナイのオンパレード。全員スパダリで器用貧乏、それが当て馬の美学です。
2人の関係性がすすんだ夜の余韻を引きずりつつも、真尋がさりげなく聞く初めての朝のメニューに対し、答えを的確に打ち返す紘也のやりとり。

「――朝、トーストと目玉焼きでいい?」
 「真尋の作るものは何だって美味しいよ。……ってか耳まで赤いぞ」
 「――っ! からかうな!」

男子らしい素朴な朝ごはん、シンプルで分かりやすいシチュエーション、それを褒め言葉と受け取れない人も中にはいますが、私はそれでもいるさんに言いたい。
さっと頭に入る文章は、書き手の思い遣りです、今月もいい赤楚衛二をありがとう。


知里くんと蘭名さんー地獄のオタク訪問編』日常

木たこさん!

お願いだ、知里くん。蘭名さんにそばは打たさせないでくれ!
切実なのかふざけているのか分からない感想かもしれないが、ふざけていたとしても今伝えないといけないと思ったから切実に違いない。
少し前に読んだ独身貴族の男性のエッセーに書かれていた一言。

「男はコーヒーで孤独を知り、そばを打って孤独な人生の終止符を打つ」

独身でなくてもコーヒー好きはいるし、初老になると嫁を伴い田舎に渡って蕎麦を打つ人もいる。
コーヒー、そば打ち、十徳ナイフ。何が男子をそこまで惹きつけるのかは知らないが、この三種の神器は確実に男心を捉えて離さない。
それに今の時代、独身でいることに特に大きなお咎めもないし、たかが小説の登場人物の人生だ、私がとやかくいうことでもない。

不意打の雨に自分の家で雨宿りすること知里くんに許しつつ、「家に来たってそうゆうことでしょ?」とさりげなく、余裕をかます、実際これが言えるのってかなり自分を弁えた上級者だ。
さらに蘭名さんはランニングとコーヒー、知里くんはTシャツ。
お互いに、お互いのこと意外にも好きな趣味とこだわりを持ち、それで自分の機嫌を保てる2人は、きっと1人でもそれなりに楽しく生きていける。
じゃ、あかんねんて!!
蘭名さんの大人の言葉を遮り寝室の扉の前に立つ知里くんに、私は最大出力のエールを送る!
君は早とちりの天才!そのままとちれ(?)知里くん!!
その決意を押し通して決して蘭名さんにそば打ち用の長尺のし棒を握らせるな!
握らせるのは、(以下自主規制)


天空列車』ヒューマンドラマ

一吾さん!

今月の頭、私は羽田空港にいた。
大阪発のANAが運行する東京行きの飛行機は定刻で離陸し、快適な空の旅を終えて着陸、さぁてこれからが大変だ。
飛行機はまっすぐ目的地に飛ぶが、複雑に入り組んだ列車はそうもいかない。
人の流れは止められない、人の思いも止められない、その中でも一番止められないのは、鉄道を愛する人たちの熱き血潮と情熱だ。
オタクは強い、信じたものを信じ抜く鋼の精神とどこまでも推しを求めてさまよう続ける鋼の肉体を持つ最強の戦士だと思う。
ひたすら乗りたい乗り鉄、写真取りたい撮り鉄、廃線路を渡り歩く廃線鉄。
模型収集の模型鉄に、運行ダイヤのスジ鉄から、運行会社の経営や株が好きな会社鉄、キリがないほど種類がある。
列車の走行音を好む音鉄の響を突然亡くした弟の晶は、兄から引き継いだ音鉄仲間の司から届く「一目でいいから会いたい」というDMを、キャンセルし続ける。
物語はこの後「天空橋」をキーワードにすでに廃車になった列車に積載されたドレミファインバーターの音階のように、残された晶と司をのせて流れていく。
オタクが趣味にのめり込む理由は様々だが、その一つに確実に社会で生きる辛さがあるはずだ。
現実逃避の一環でもあるし、生きる糧でもある、それは地獄にするりと落とされた蜘蛛の糸のようなものかもしれない。
響はの糸はプツリと切れたけど、カンダタのように独り占めせず、遺った晶と司に繋いだ。
2人の心境はまだ都心の路線のように複雑だが、古いモーターを新しいモーターが引き継ぐように思いは確実に繋がっていく。

ちょうどその頃、東京駅に滑り込む地獄行き新幹線のグリーン車では「まだ東京かいな」とチーム“狂言綺語“が管を巻きながらアタリメでビールを飲んでいる。(鳩野さんのレビュー参照)


次回のお題発表は4月の27日(月)です。

参加希望の方は、「挑戦者求む!」記事の方に、やってやんよ!と参加表明をしてください!
次回はフリーダムなお題1つに、馬鹿みたいな縛りが付いてくる拷問お題になります。
まだ全然考れてませんが、宣言したのでやります。

あかん、なんか脳みそと腕が筋肉痛…

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