心配性な藤枝先生の投資入門講座~こんにちは、ボラティリティ~ #05
(↑こちらが最初です。ぜひ、最初からお読み下さい。)
第4章 投資信託って何だ
2026年5月8日 金曜日 オンライン講座(第4回講座)
「皆さん、こんにちは。ゴールデンウィークはいかがでしたか?私は長谷川教授とオンライン飲み会という苦行がありましたけど」
藤枝の声がパソコンのスピーカーから響いた。画面には彼の顔が映り、右下に学生たちのニヤニヤした顔が並んでいる。優佳、花音、村上、そして岡田。
村上が明るく口を開いた。
「先生のオンライン飲み会の話、気になります」
藤枝は苦笑いを浮かべた。コロナ禍でのオンライン飲み会は、特に年配の教授相手だと技術的なトラブルも含めて本当に疲れるものだった。
「村上君、余計なことは聞かないように、本当に苦行なんだから」
村上が笑いながら答えた。
「すみません。でも先生に親近感がぐっと湧きました」
その場の空気が和やかになったところで、藤枝は気を取り直して、コロナの状況について説明を始めた。
「感染者数は残念ながら引き続き増加傾向にあります。大学からの報告では、全学で現在25名ほどの感染者が確認されており、先週から大幅に増加しています。全国的にも日々2万人を超える新規感染者が報告されている状況です。感染拡大防止のため家族以外との物理的な接触は避けることは継続してください。幸い皆さんは体調に問題ないようですね」
学生たちは画面内で体調面で問題なことを返事をしながら元気良さそうに頷いていた。
藤枝は学生たちの健康状態を確認できて安堵した。感染者数の増加は心配だが、この4人は今のところ大丈夫そうだ。
「それでは、今日のテーマ『投資信託の概要と銘柄選定の考え方』について学んでいきましょう」
藤枝は画面共有を開始した。カチカチとマウスを操作する音が聞こえる。
「前回、投資商品の種類について概要をお話ししましたが、今日は投資信託について詳しく掘り下げます」
「投資信託は、みんなでお金を出し合って、プロに運用してもらう仕組みです」
「みんなでお金を出し合う感じですね」という岡田に対して
「クラウドファンディングのような感じですか?」と優佳が合わせるように質問した。
「そう、それに近いです。少額からでも始められて、プロにより分散投資ができるのが大きな魅力です」
花音がメモを取りながら聞いた。
「最低いくらから始められるんですか?」
「投資信託は100円から購入できるものもあり、初心者の方でも気軽に始められますね。さらに基本的な質問があれば遠慮なく」
村上は手を上げて質問した。
「では、投資信託にはどのような種類があるのでしょうか?」
「投資信託には主に2つのタイプがあります」
藤枝は図を示した。
「アクティブファンドとインデックスファンドです。アクティブファンドはプロが積極的に銘柄選択をして市場平均以上を目指します」
村上が前のめりになった。
「プロが運用するアクティブファンドの方が良い結果が出そうですが...」
岡田が村上の方を見ながら穏やかに発言した。
「慎也、僕も最初はそう思ったんです。でも調べてみたら、意外にもインデックスファンドの方が良い成績を収めることが多いみたいで...先生、これって正しいですか?」
「え、そうなんですか?」
優佳が驚いた表情ですかさず言った。
「そうなんです。岡田君の言うように、インデックスファンドの方が良い成績を収める傾向があります。アクティブファンドは運用コストが高く、その分リターンが目減りしてしまうんです」
花音も驚いた。
「え?プロが運用しても、機械的に運用するファンドに負けちゃうんですか?」
藤枝は丁寧に回答した。
「花音さんの疑問はもっともですね。市場には多くのプロが参加しており、それらの個々のプロが市場平均を上回り続けるのは統計的にも困難なようです。プロでも市場の動きを長期間で正しく予測し続けるのは難しいんです。それに加えて高いコストがリターンにとって重荷になります」
村上は興奮気味に早口でまくし立てるように言った
「なるほど、そういうことなのですね。逆に言うと短期間であればアクティブファンドが上回ることがあるってことですよね。そういうファンド見つけられないですかね」
そして慌てたように手を振った。
「いえいえ、長期投資が基本だとは理解しているんですが...」
藤枝は少し微笑みながら回答した。村上のハイリターンへの関心は相変わらずだ。
「もちろん短期的にインデックスファンドを上回るアクティブファンドは多く存在します。しかし、どのファンドが上回るかを事前に予測するのは非常に困難なんです」
村上は少し残念そうな表情をしつつ、岡田に質問した。
「ちなみに、岡田君は詳しいですね。どこでそういう知識を?」
岡田は謙遜するように手を振った。
「以前から投資に興味があって、本やネットで少し勉強しましたが実践的なものではないです」
藤枝は画面上のスライドを進めて議論を続けた。
「では、投資信託を選ぶ際のポイントについて説明しましょう」
図表が表示される。
「運用コスト、運用会社の信頼性、投資対象、そして分配金の仕組みです」
「まず運用コストですが、信託報酬は年率0.3%以下なら低コストの目安です」
花音がペンを動かす音と共に質問した。
「分配金って何ですか?配当金みたいなものですか?」
「似ていますが少し違います。分配金は投資信託の運用による利益や元本から支払われるお金です。でも、高い分配金が出るファンドが良いわけではないんです」
「...えーっと、...分配金をもらうと損するんですか?」
岡田が画面越しの花音の反応を確認する間を取りながら丁寧に説明した。
「花音さん、分配金が支払われると、その分だけ基準価額が下がるんです。例えば100万円の資産があるファンドから10万円分配金が出ると、残りは90万円になります。だから、分配金が多いからといって得するわけではないんです」
花音が身を乗り出して興奮気味に言った。
「なるほど!岡田君の説明は具体的で分かりやすいです!」
村上も岡田を絶賛した。
「岡田君の知識はすごいですね。私も勉強して他の人に説明できるようになりたいです」
藤枝は学生間のやりとりを見て微笑みながら頷いた。岡田の説明能力の高さには感心した。
「分配金については、そのお金を再投資する仕組みもあります。分配金がでる投資信託を選択した場合は、こちらを採用するかどうかも検討してみてください。再投資をする設定とすると自動的に再投資してくれるので、複利効果を得ることができます」
「それは便利ですね!」
「注意なのですが、分配金を出さないで内部で再投資をしている投資信託もあります。NISA口座などの非課税でない限りは、分配金には税金がかかりますので、再投資できるから分配金ありものを選択しよう、という単純な話ではないです」
「税金分だけ損をする可能性があるのか」
「投資信託の内容をちゃんと理解する必要がありますね」
「似たような投資信託での比較も重要そう」
学生たちは理解をしてくれたようであった。
「次に、初心者におすすめの投資信託について説明します」
「全世界株式インデックスファンド、バランスファンド、米国株式インデックスファンドです」
「特に全世界株式インデックスファンドは、一つの商品で世界中の株式に分散投資できるので初心者にはおすすめです」
村上が質問した。
「具体的にはどのような商品があるのでしょうか?」
「例えば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のような商品ですね。これ1つで47カ国、約3000銘柄に投資できます」
「3000銘柄!それは確かに分散投資になりますね!」
優佳が画面上の岡田に向かって質問をした。
「岡田君はどう思いますか?全世界株式って良さそうですよね」
「そうですね、優佳さんの感覚は正しいと思います。単純に考えて分散効果は確かに高いので私も魅力的に思います。先生、メリットやデメリットなどを教えてください」
「岡田君の言うように、全世界を対象にしているので分散効果は高いです。他のメリットとして、低コストであること、市場変化にファンド側で迅速に対応してくれること等が言えます。一方、デメリットとしては、株式に偏っている、特定地域やセクターへの依存がある、新興国の成長が遅れて反映される等があります。詳しくは該当する資料を参照してください」
「株式のみに偏っている、という見方もあるのね」
「特定地域はアメリカですよね」
「後で、ちゃんと資料を読んでみよう」
学生たちの議論はしばらく続いた。
「次に、投資信託を実際に購入する際の注意点についても触れておきましょう」
藤枝は3つのポイントを示した。
「購入時手数料、値動きへの対応、分散投資と積立投資の重要性です」
「購入時手数料がかかるものもありますが、ノーロード(無手数料)のファンドを選ぶのがおすすめです」
岡田が質問した。
「手数料の違いは、長期的にはかなり大きな差になりそうですね」
「そのとおりです。例えば購入時手数料が3%かかる商品だと、最初から3%のマイナスからスタートすることになります」
花音が驚いて声のトーンが上がった。
「それは大きいですね!必ずノーロードを選んだ方が良さそう」
「そして重要なのは、短期的な値動きに一喜一憂しないことです」
優佳は心配そうに言った。
「でも、どんどん下がっていったら怖くなりそう...」
村上は興奮したようで高い声で早口で言った。
「逆に、すぐに利益が出る方法ってないんでしょうか?」
藤枝は村上へ諭すように話した。
「村上君の気持ちはよく分かります。でも、積立投資をしていれば、値下がり時はより多くの口数を購入できるので、長期的には有利になることも多いんです。ドルコスト平均法の効果ですね」
優佳は納得したのか微笑みつつ発言した。
「そう考えると少し安心できそうですね」
藤枝は時計を確認しながら、まとめに入った。
「今日学んだことを整理してみましょう」
「投資信託は少額から始められ、プロが運用してくれる分散投資の仕組みです。初心者は低コストのインデックスファンド、特に全世界株式がおすすめということです」
「そして長期・積立・分散を基本原則として投資し、短期的な値動きに惑わされないことが大切です」
花音が手元のノートを眺めながら振り返りつつ、回答した。ノートにはオルカンの部分に『岡田君もオススメ』という文字とタクノジャーデ・レッドの顔があった。
「先生と岡田君の丁寧な説明のおかげで、投資信託がだいぶ身近に感じられてきました!」
藤枝は少し複雑な表情を笑顔に戻してマイクに向かって話した。
「皆さんに理解していただけたようで良かったです。では、今日はここまでにしましょう。次回は株式投資について詳しく学習します。5月15日に再会しましょう」
学生たちが口々に「ありがとうございました」と挨拶した。
学生たちが講座の会議室から退出した後、藤枝は一人画面の前に残され、参加者のいなくなったオンライン会議アプリを見つめていた。
岡田は良い感じで馴染んでくれて、私のフォローをしてくれる形で講座の円滑な進行に貢献してくれている。『トラブル』が何かがわからないので、このまま岡田と他の学生たちとの間の親密度が上がることを単純には喜べない。そして直近の心配は村上か。
「キャラとしては面白いけど実は堅実、だといいんだけど...」
藤枝は顔を上げて窓の外を見た。心配事は減らない。いつの間にか小雨が降っていた。
優佳と花音の個別チャット
優佳:「今、大丈夫?」
花音:「大丈夫だよ〜。なになに?」
優佳:「実は岡田君のことなんだけど、私ちょっと気になってきて...」
花音:「えっ...? そうなの?」
優佳:「岡田君の既視感の話があったじゃない。アレの正解がわかっちゃった」
花音:「おぉ~すごい!何だったの?」
優佳:「イエローだよ。タクノジャーデ・イエロー」
花音:「ほほぅ...。なるほどなるほど...。確かに雰囲気がありますな。優佳ちゃんさすがです」
優佳:「でしょ?私も今日の講義中にずっと気になってて。推しに似てるって不思議な感じなのね~」
花音:「それで岡田君が気になってきたの?」
優佳:「うん...なんか親近感というか...」
花音の日記(5月8日)
岡田君の投資の知識、本当にすごい。説明も分かりやすくて助かる~。それにしても優佳ちゃんが岡田君のこと「気になる」だって。キャー。でも確かに素敵な人だよね。
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