心配性な藤枝先生の投資入門講座~こんにちは、ボラティリティ~ #07
(↑こちらが最初です。ぜひ、最初からお読み下さい。)
第6章 それぞれの過ごし方
2026年5月20日 水曜日夕方
「拓己さん、体調どう?」
ようやく体調が戻った藤枝は、久しぶりにオンラインで優佳と話していた。5日間、ほとんど何もできない状態が続いていたが、今日になってようやく人と話せるまでに回復した。
「ありがとう、ユウ。だいぶ良くなった。心配かけてごめんね」
優佳は安堵した表情を見せた。
「良かった!みんなですごく心配してたんだから」
「迷惑をかけて...ところで、皆の体調はどう?」
「それが...」優佳の表情が曇った。
「どうした?」
「実は、学生の間で感染者が多くなっているみたい。今、私もちょっと体調悪いし、岡田君と村上君も新型コロナ陽性でお休みに入っているの」
藤枝の手がマウスを握る力が強くなった。心配していたことが現実になりつつあると思った。
「え...? ユウも...」
「うん。おそらく私も感染しちゃったと思う。岡田君が先週末あたりから体調悪くなって、検査したら陽性だったの。その翌々日に村上君も同じような感じで検査したら、やっぱり陽性で。やっぱり流行ってるんだね〜」
優佳は少し疲れたような表情を見せながら続けた。
「私も今日検査受けてきたところ結果待ちなの。なんか喉が痛くて、微熱もあるから多分陽性かも」
藤枝は画面を見つめたまま、複雑な気持ちで呟いた。
「...そうか...で、皆の病状は?」
「少なくとも二人は軽症みたいだから安心して。でも1週間は隔離だから、今週いっぱいは大学にも行けないし...花音ちゃんだけが元気なの」
「ユウも無理しちゃダメだよ」
マウスを握る力はまだ強かった。
「うん、ありがとう。講座の再開だけど、私が最後だとすると6月に入ってからの方が良さそうだね。6月5日あたりになりそうかな?」
「そうだね。6月5日で調整してみよう」
優佳は画面内の藤枝がつらそうな表情をしているのを見た。そして、その画面内の藤枝は笑顔を作って質問してきた。
「そういえば、参加者とは仲良くやれてる?喧嘩とかしていない?村上は突っ走ってる?」
「拓己さんがお休みの間も、皆はどんどん仲良くなってきているよ!村上君も最初はちょっとドキドキ系の発言してたけど、岡田君が上手にフォローしてくれるし。みんなで勉強してて楽しいよ」
藤枝の表情が一瞬曇った。
「そっかぁ...」
「拓己さん、大丈夫?まだしんどそうだけど...」
「あ、うん、まだ少し疲れやすいだけ。今日はここまでにしてもらえる?」
「もちろん。お疲れさま。拓己さんも無理しないでね」
通話を終えた後、藤枝は椅子に座ったまま画面を見つめて長い間考え込んだ。
「参ったなぁ...」
部屋の外はいつの間にか土砂降りの雨となっており、藤枝の声を直ぐに打ち消した。
隔離期間中の個別やり取り
5月25日 月曜日 岡田と花音の個別チャット
岡田:「花音さん、連絡係をありがとう。大変じゃない?」
花音:「岡田君こそ、いつもみんなを気遣ってくれてありがとう!」
岡田:「花音さんの細やかなサポートのおかげで、みんなつながっていられるよ」
花音:「そんな風に言ってもらえるとうれしい!」
岡田:「感染が収まったら、みんなでお疲れさま会でもいかが?」
花音:「ええぇ~。それ、すごくいい!岡田君からの提案なら、みんな喜ぶと思う!」
5月26日 火曜日 岡田と村上の個別チャット
岡田:「慎也、体調はどう?」
村上:「岡田君、ありがとう。だいぶ良くなったよ」
岡田:「良かった。この前に慎也が言ってたハイリスク投資の件、参考になる記事を見つけたのでURL送るね」
村上:「覚えててくれたんだ!岡田君の記憶力、すごいな」
岡田:「慎也の好奇心こそ素晴らしい。でも、まずは基礎からということで」
村上:「はいはい。岡田君のアドバイス、いつも的確で助かります!」
5月27日 水曜日 岡田と優佳の個別チャット
岡田:「優佳さん、体調はいかが?」
優佳:「岡田君もお疲れさま。私も軽症だったし、もう少しで隔離期間が終わるので、まだちょっとだるいけど、大丈夫」
岡田:「無理しないでね。優佳さん、このオンラインの特集記事、隔離中の暇つぶしにいかが?」
優佳:「ありがとう!岡田君はいつも気遣いが細やかだね」
岡田:「優佳さんがこの前話してた投資の質問について、その記事に答えが載ってるので良いかなと」
優佳:「え、覚えててくれたの?嬉しい」
岡田:「優佳さんの質問はいつも核心をついてるから、印象に残るんだよ」
2026年5月29日 金曜日午前
「先生、お元気になられて良かったです!」
花音の笑顔がオンライン画面に映っていた。藤枝は完全に回復し、久しぶりに花音と個別に話していた。
「ありがとうございます。ご心配をおかけしました。感染した学生たちの様子はいかがですか?」
「岡田君も村上君も優佳ちゃんも、もうすっかり元気です!最後の優佳ちゃんも明日から大学に復帰できるみたいです」
「そうですか。軽症で済んで良かったです」
花音が詳しく報告した。
「岡田君は5月17日に陽性が分かって、村上君は5月19日、優佳ちゃんは5月21日でした!みんな1週間の隔離期間を終えて、もう大丈夫です」
「感染力の強いウイルスですから、誰がいつどこで感染するか分からないですよね。でも幸い、みんな軽症でした」
「本当に良かったです!」
「最近、みんなでグループチャットでよく投資の話をしてたんです。岡田君が色々と情報を教えてくれて、優佳ちゃんも先生から教わったことをシェアしてくれて」
藤枝はわずかに眉をひそめた。
「吉井さんは大丈夫でしたか?」
「はい、私は運良く感染しませんでした!みんなが隔離中は、私が連絡係みたいになってました」
「大変でしたね。ありがとうございます」
「全然問題ないですよ。人との接点の少ないコロナ禍なので、連絡という形でもコミュニケーションが取れてうれしかったです!6月5日の講座再開に向けて、みんなでまた勉強を始められそうですね。みんなもうれしいと思います」
「皆さん、勉強熱心ですね」
藤枝は力なく言った。
「はい!特に岡田君は回復してからも、新たに投資の本を読んだりして勉強してたみたいです。村上君も負けずに頑張ってましたよ。優佳ちゃんも岡田君からのおすすめ書籍を読んでいるみたいです。当然、私も負けませんけど...」
藤枝は学生たちの親密さが増していることに思わず、ため息をしてしまったが、花音にはただの深呼吸に聞こえた。
「それでは、6月5日の第5回講座で皆さんと再会しましょう」
「はい、楽しみにしています!」
通話を終えた後、藤枝は一人になった部屋で深く考え込んだ。
コロナからの回復により自身の体調への心配は減った。しかし、岡田が他の学生たちと親密になり、勉強し合うことを素直に喜べない自分がいて、このことで心配が増えていることを自覚していた。
花音の日記(5月29日)
連絡係でみんなの役に立てているといいな~。とにかく、みんな復調して来週から講座再開できそうなのがうれしい! 岡田君は元気になっているといいな。...そして、この気持ちはもう好きってことだな...。
#01, プロローグ, https://note.com/chokozai/n/n7c341cddedc4
#02, 1章, https://note.com/chokozai/n/n21181a368ec3
#03, 2章, https://note.com/chokozai/n/n0a68b769a8dd
#04, 3章, https://note.com/chokozai/n/n57828d00edb3
#05, 4章, https://note.com/chokozai/n/n21b8ac2af8be
#06, 5章, https://note.com/chokozai/n/n42cd7f162fde
★#07, 6章, https://note.com/chokozai/n/n2e058ee72421
#08, 7章, https://note.com/chokozai/n/nbb54d76f3a23
#09, 8章, https://note.com/chokozai/n/neda9d56fcf79
#10, 9章, https://note.com/chokozai/n/n74b172c91069
#11, 10章, https://note.com/chokozai/n/nacafa95d046b
#12, 11章, https://note.com/chokozai/n/n89af353420e1
#13, 12章, https://note.com/chokozai/n/n6e2b703b9166
#14, 13章, https://note.com/chokozai/n/n394f01a5e278
#15, 14章, https://note.com/chokozai/n/n3ee776f29d13
#16, 15章, https://note.com/chokozai/n/n44b39117da51
#17, エピローグ, https://note.com/chokozai/n/naf7a4ec3e2ac
