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心配性な藤枝先生の投資入門講座~こんにちは、ボラティリティ~ #04

(↑こちらが最初です。ぜひ、最初からお読み下さい。)

第3章 新しい仲間

2026年4月24日 金曜日 オンライン講座(第3回講座)

「皆さん、こんにちは。音声は聞こえていますか?」

藤枝の声がパソコンのスピーカーから響いた。画面には彼の顔が映り、右下に小さく花音と村上の顔が見える。しかし、優佳の姿はまだない。

初回のオンライン講座だから皆も慣れないだろうし、ユウは遅れているし、大丈夫かな。藤枝は画面を見回しながら色々と心配していた。

「はい、聞こえています!」花音が手を振りながら答えた。画面越しでも彼女の真面目な性格が伝わってくる。いつものように丁寧にノートの準備をしている様子だった。

「僕も大丈夫です」村上も頷いた。初のオンラインのためか少し緊張気味に見えた。

藤枝は画面を確認しながら言った。

「藤枝さんがまだ参加されていませんね。時間になったら始めますが、もう少し待ってみましょうか」

花音がチャット機能で「優佳ちゃんから連絡来ました。ネットワークトラブルで少し遅れるそうです」と入力した。彼女はいつもこうして気の利いたフォローをしてくれる。

「なるほど、分かりました。では藤枝さんが参加されるまで、少し雑談をしていましょうか」


藤枝は背景を整えながら続けた。

「それにしても、ついにオンライン講座になってしまいましたね。皆さんの周りでは新型コロナの影響はいかがですか?」

「僕の周りでは、まだ感染者は出ていません。でも、ニュースを見ていると感染力がかなり強いみたいで...少し心配です」

「そうですね。大学からの報告では、全学で現在5名ほどの感染者が確認されている状況です。まだそれほど多くはありませんが、用心に越したことはありませんね」

「私の家族も大丈夫です!でも、バイト先では客足が少し減ってきています。皆さん外出を控えているみたい」花音も頷きながら答えた。

「それに推しのライブも延期になっちゃったんです」花音が少し残念そうに付け加えた。「でも、みんなの安全が最優先だから仕方ないです」

「今回の新型コロナは重症化率は低いと言われていますが、感染力が強いのが特徴のようです。1週間の完全隔離が義務付けられているのも大変ですね」

村上は少し考えてから言った。

「なるほど。確かに、前回のコロナウイルスの経験があるからこそ、今回は迅速にオンライン体制に移行できているのかもしれませんね。そして、不謹慎かもしれませんが、こういう状況だからこそ投資について学ぶ意味もあるのかもしれません。経済が不安定な時だからこそ、お金について考える機会になるというか...」

花音が明るく付け加えた。

「それに、投資の勉強であればオンラインで十分ですよね。実際の投資もネットでやることが多いようなので」

「そのとおりです。ある意味では実践的かもしれません」

藤枝は時計を確認した。優佳がまだ参加できていないことと、その間に待ってもらっている岡田のことが気になった。

「そろそろ藤枝さんも参加してくれるとうれしいのですが。今日は新しい参加者の紹介もありますし」

その時、画面に「優佳が参加しました」という通知が表示された。


「あ、優佳ちゃん!」花音が手を振った。

優佳の顔が画面に現れた。少し慌てた様子だったが、いつもの前向きな雰囲気は変わらない。

「すみません、遅れました。ネットワークの調子が悪くて...」

「大丈夫です、藤枝さん。ちょうど雑談をしていたところです。音声とビデオは問題ありませんか?」

「はい、大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」

ユウも無事に接続できた。藤枝は安堵した。画面越しでは学生たちの微細な表情や反応が読み取りにくい。特に新メンバーの岡田とのやり取りでは、お互いの距離感が掴みづらいので注意が必要だ。

「それでは、皆さん揃ったところで、予告していた新しい参加者を招待したいと思います」

彼は画面操作をしながら続けた。

「岡田君、招待リンクをお送りしますので、参加してください」

しばらくして、「岡田が参加しました」という通知が表示された。新しい顔が画面に現れた。

整った顔立ちの、人当たりの良さそうな青年だった。画面越しのその青年は、自然な笑顔で画面を見回し参加者に軽く会釈をした。

「皆さん、こちらが新しく参加される岡田君です」

藤枝は皆に岡田を紹介した。

「岡田君、簡単に自己紹介をお願いします」

岡田佑真は画面越しに丁寧にお辞儀をした。

「初めまして、岡田佑真(おかだゆうま)と申します。堀内教授のゼミに参加していましたが、諸事情により長谷川教授のゼミに移ることになりました。その流れでこちらにも参加させて頂きます。投資については初心者ですが、しっかりと学ばせていただきたいと思います。皆さん、どうぞよろしくお願いします」

落ち着いた話し方で、謙虚な姿勢で他の学生たちの反応を見守っている。

花音は画面に向かって丁寧にお辞儀をした。

「よろしくお願いします、岡田君!私は吉井花音です」

その声はいつもより少し高く、頬がほんのり赤くなっているのが画面越しでも分かった。

村上も丁寧に挨拶した。

「よろしくお願いします。僕は村上慎也です。僕たちも初心者なので、一緒に頑張りましょう。個人的には男性が増えてすごく嬉しいです」

「よろしくお願いします。私は藤枝優佳です」

優佳の挨拶は簡単であった。ただ、その画面内の優佳は、非常に興味深そうな表情で正面を向いていることに藤枝は気づいた。

学生たちからの挨拶を受けて、岡田は微笑みながら発言した。

「この講座について大変興味があり、参加させていただくことになりました。途中参加ということもあり、藤枝先生、花音さん、慎也さん、優佳さんの皆さんにご迷惑がかかって申し訳ございません。私の方で皆さんをご支援できることがあれば積極的に対応しますのでよろしくお願いします」

対面なら自然に感じ取れる空気感も、オンラインでの画面越しでは分かりにくいものだ。しかし、このようなオンライン環境においても、中性的で柔らかな物腰の岡田に、学生たちは不思議な魅力を感じていることが藤枝には理解できてしまった。

「では、岡田君も参加されたところで、今日の講座を始めましょう。岡田君は途中参加なので、これまでの資料は共有していますが、分からないところがあれば遠慮なく質問してください」

皆が岡田を自然と受け入れてくれている様子を見て、藤枝は安堵した。岡田のトラブルについては、先日の堀内教授とのサシ飲みでは、はぐらかされてしまい詳細は結局分からなかった。そのこともあり、女子学生二人の反応が良すぎることに一抹の不安は感じていた。


「今日のテーマは『投資の種類と特徴』です。株式、債券、投資信託、不動産、FXなど、主な投資商品について学んでいきます」

藤枝は画面共有を開始し、資料を表示した。

「まず、主な投資商品の種類と特徴について説明しましょう」

彼は図を示しながら説明を始めた。

「投資商品には色々なものがありますが、次の8つをまずは理解すればよいとお見ます。株式、債券、投資信託、ETF、不動産、REIT、FX、そして暗号資産です」

「まず株式投資から説明します。これは企業の所有権の一部を購入する投資で、ハイリスク・ハイリターンが特徴です。企業の成長による値上がり益と配当金が得られる可能性がありますが、企業業績や市場環境により大きく価格変動します」

花音が積極的に質問した。

「すみません、基本的なことなんですが、これらの中で初心者にはどれがおすすめでしょうか?」

控えめな口調だが、講座の核心を突く質問だった。

「良い質問ですね、吉井さん。初心者の方には、まず投資信託やETFから始めることをおすすめします。特に、世界中の株式に分散投資できるインデックスファンドが良いでしょう」

「インデックスファンドって前回も出てきましたよね!」

「そうです。投資信託は多くの投資家からお金を集めてプロが運用する商品で、少額から分散投資が可能です。例えば、全世界株式のインデックスファンドなら、一つの商品で世界中の主要企業に投資できるんです」

村上が理解したように頷いた。

「なるほど、分散投資が簡単にできるということですね」

「そのとおりです。次に債券について説明します。これは国や企業などへのお金の貸し付けで、ローリスク・ローリターンが特徴です。定期的な利子収入が得られ、株式より価格変動が小さいですが、インフレに弱いという面もあります」

優佳が手を挙げた。

「ETFって何ですか?投資信託と似ているのですか?」

「ETFは上場投資信託のことで、投資信託を株式のように取引できるようにした商品です。投資信託の分散効果と、株式のリアルタイム売買の良いところを組み合わせたものですね」

岡田は優佳の質問に感心しながら言った。

「なるほど、優佳さんの言うように投資信託との比較は良い観点ですね。僕には思いつきませんでした。その観点で考えると、コスト的には2つのはどうなんでしょうか?」

「ETFは一般的な投資信託より信託報酬が安く、年0.1〜0.5%程度です。ただし取引手数料がかかる場合があります」

藤枝は続けて不動産投資について説明した。

「不動産投資は土地・建物など実物資産への投資で、ミドルリスク・ミドルリターンです。家賃収入が得られ、インフレに強いですが、初期投資額が大きく、すぐに現金化できないという流動性の問題があります。これは皆さんもイメージつくと思います。」

「一方、REITは不動産投資信託のことで、不動産を証券化して投資できるようにした商品です。少額から不動産投資が可能で、比較的高い配当利回りが期待できますが、不動産市況や金利の影響を受けます。こちらは馴染みがないと思いますが、別の回で詳しく説明予定です」

村上が身を乗り出した。

「次のFXって、ハイリスク・ハイリターンのやつですよね。聞いたことあります。なんだかワクワクするなぁ!」

藤枝は、村上の様子を見て、ハイリスク投資に対する興味をどこかでうまく整理・昇華させる必要性を感じた。

村上を落ち着かせようと岡田が微笑みながら返してくれた。

「慎也君の気持ちも分かります。でも、まずは落ち着いて学びましょう。先生、どういうものですか」

「FXは外国為替証拠金取引のことで、為替の変化に対してレバレッジをかけて通貨を売買する投資です。レバレッジの掛け方によっては超ハイリスク・ハイリターンとなり、少額から大きな取引ができ24時間取引可能ですが、損失が投資額を超える可能性もあります。初心者にはおすすめできません」

村上はあからさまに失望した表情を見せたが、すぐに平静を装った。そんな村上を見つつ、また岡田が発言した。

「確かに、大きなリターンが期待できる分、リスクも相応に高いということですね」

藤枝は最後に暗号資産について触れた。

「暗号資産は新しい技術に基づく資産で、ボラティリティが高い傾向があり超ハイリスク・超ハイリターンとみなしてよいでしょう。高いリターンの可能性がありますが、価格変動が激しく、規制の変化などによる影響も大きいです。また、現在の日本においては税制面でデメリットがあります」

村上が前のめりになって目を輝かせて聞いていたが、『デメリット』という言葉を聞いた途端に普通の目になった。

花音が質問した。手元のノートには本日の講義の内容がいつものようにきれいに整理して書かれていた。『岡田佑真』という名前の脇にはタクノジャーデ・レッドが描かれていた。

「さっきとは逆に初心者が避けるべき投資商品というのはありますか?」

「個別の株式投資で言えば、業績が不安定な企業、財務状況が悪い企業、値動きが激しすぎる銘柄は避けた方が良いでしょう。また、FXや暗号資産のような超ハイリスク商品も、十分な知識と経験を積んでからにすべきです」

村上は少し残念そうな表情を見せた。


「では、今日はここまでにしましょう」

藤枝は時計を確認しながら言った。

「次回はゴールデンウィーク明けなので5/8ですね。投資信託についてより詳しく学習します。共有した資料にはもう少し詳しい説明があるので、岡田君も含めて、皆さん復習をお願いします」

学生たちが口々に「ありがとうございました」と挨拶した。

「それでは失礼します」岡田が丁寧にお辞儀をして、画面から退出した。最後に全員に向かって軽く手を振り、自然な笑顔で去っていく姿が印象的だった。


岡田が退出した後、残った学生たちは少し雑談を始めた。

「岡田君、感じの良い人ですね」花音が少し遠くを見て言った。

「頭も良さそうだし、質問も的確でした。それに、みんなの名前もすぐ覚えてくれて」村上が感心したように付け加えた。

普段は内向的な村上にとって、岡田のような自然なコミュニケーション能力は羨ましく映ったようだった。

優佳は少し考え込むような表情を見せた。

「そうですね...どんな人なのか、もう少し知りたいですね。あと、私は何かどこかで会ったことあるような、見たことあるような気がするんですよね。既視感?他の人はありますか?」

花音は微笑みながら言った。

「何だろう?確かに私も見たことあるような...。岡田君自身は知らないのは確実なんだけどなぁ」

「僕は全くないですね。初めて見るイケメンです」村上はニヤっとした。

「堀内教授のゼミ生なのでどこかで見たのかもしれませんね。ともかく、岡田君は途中参加なので引き続きフォローをしていただけると助かります」

藤枝は、皆が岡田を好意的に受け入れてくれてるようで安心した。この点での心配は減ったようだ。

「では、皆さんも今日はお疲れさまでした。また来週お会いしましょう。あ、そうだユウ、少し残れる?」

「はーい、残れまーす」優佳が応え、花音と村上は「おつかれさまでした」と退出した。


「拓己さん、何の話?」

藤枝は真剣な面持ちで言った。

「あのさ、これは内緒の話なので本当に口外しないでね。岡田君、ちょっとだけ対人トラブルの噂があってね...。ユウはカワイイから、ちょっかい出されると嫌だなぁと思って」

「拓己さん~、叔父バカなんだから。全然大丈夫だよ~。私モテないよ。そして岡田君も私に興味ないだろうし...」

「そうか、そうならいいんだ。引き止めてゴメンな。用件は以上だから、もう退出してもらっていいよ」

「はーい」

優佳の画面が消え、最後に藤枝の画面だけが残った。彼は少し首をかしげてパソコンの電源を切った。

新しい参加者を迎えた第3回講座は終了した。

学生たちは岡田に不思議な魅力を感じていて、特に女子学生二人については彼女らの反応から、少し気をつけないといけないと思った。ただし、オンライン環境に移行したため、学生間のコミュニケーションはより容易になり、かつ教える側からはそれらは把握することはできないため、『気をつける』と言ってもできることに限界があることは藤枝も理解していた。岡田のトラブルの内容も不明なことも気がかりだ。

少し考えた後で、藤枝は、スクリーンセイバーが働いて黒くなっているディスプレイに向かって呟いていた。

「ユウ、大丈夫だろうか...」

部屋の窓からは、黒い雲が多く見えていた。今にも雨が降り出しそうだった。


花音の日記(4月24日)

心配したけどオンライン講座も思ったより話しやすくて安心した。それにしても、新しく参加された岡田君。とても感じが良くて見た目もよい。そして既視感が気になる...。


#01, プロローグ, https://note.com/chokozai/n/n7c341cddedc4
#02, 1章, https://note.com/chokozai/n/n21181a368ec3
#03, 2章, https://note.com/chokozai/n/n0a68b769a8dd
★#04, 3章, https://note.com/chokozai/n/n57828d00edb3
#05, 4章, https://note.com/chokozai/n/n21b8ac2af8be
#06, 5章, https://note.com/chokozai/n/n42cd7f162fde
#07, 6章, https://note.com/chokozai/n/n2e058ee72421
#08, 7章, https://note.com/chokozai/n/nbb54d76f3a23
#09, 8章, https://note.com/chokozai/n/neda9d56fcf79
#10, 9章, https://note.com/chokozai/n/n74b172c91069
#11, 10章, https://note.com/chokozai/n/nacafa95d046b
#12, 11章, https://note.com/chokozai/n/n89af353420e1
#13, 12章, https://note.com/chokozai/n/n6e2b703b9166
#14, 13章, https://note.com/chokozai/n/n394f01a5e278
#15, 14章, https://note.com/chokozai/n/n3ee776f29d13
#16, 15章, https://note.com/chokozai/n/n44b39117da51
#17, エピローグ, https://note.com/chokozai/n/naf7a4ec3e2ac

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