心配性な藤枝先生の投資入門講座~こんにちは、ボラティリティ~ #15
(↑こちらが最初です。ぜひ、最初からお読み下さい。)
第14章 みんな投資家だよ
2026年7月24日 金曜日午後 経済学部セミナー室 講義開始30分前
セミナー室のドアがゆっくりと開いた。4時からの講座開始まで、まだ30分ある。
「吉井さん、早いですね」
村上が振り返ると、花音が資料を抱えて入ってきた。いつものように真面目な彼女は、講座の準備を入念にしている。
「村上君も早いね。久しぶりの対面講座だから、なんだか緊張しちゃって」
花音は席につきながら、少し緊張した様子を見せた。3ヶ月ぶりの対面授業。オンライン画面越しではない、リアルな空間での講座だった。
村上は対面での距離感の取り方に悩みつつ、花音の方へ顔を向けて、少し躊躇してから口を開いた。
「吉井さん、先週のこと...ありがとうございました」
「先週?」
「僕がパニックになったとき、みんなで助けてくれて...」
花音の表情が温かくなった。
「あー、そのことね。でも、村上君が最後に冷静な判断できて良かったよ」
「一人だったら、きっと売却してしまってました。本当に感謝してます」
「それが仲間でしょ?」花音が微笑んだ。
「別件ですが...。吉井さん、例の件...その後どうですか?」
「例の件?」
「岡田君との...」
花音の表情が一瞬固くなった。そして小さくため息をついた。
「あー...やっぱり気になる?」
「すみません、でも吉井さんが気になって...」
花音は資料をテーブルに置いて、椅子に深く座り直した。
「特に進展はないよ。というか、何もしてないし」
「そうですか...」
「でも...」花音は窓の外を見ながら続けた。「今日、久しぶりに直接会うでしょ?もしかしたら、私の気持ちも変わるかもしれない」
村上は首をかしげた。
「変わる、というと?」
「今まではオンライン越しだったから、勝手に理想化してたかもしれないし...実際に会ったら、案外普通だったりして」
花音は自嘲気味に微笑んだ。
「でも、それはそれで良いことなんじゃないですか?」
「そうね...重い気持ちから解放されるかも」
村上は花音の表情を見つめてから、穏やかに言った。
「吉井さんらしく、自然にしていれば良いと思います。僕は吉井さんを応援してますから」
「ありがとう、村上君」
花音は安堵の表情を見せた。こんな話ができるのは、村上だけだった。
「でも、余計なことはしないでよ?」
「もちろんです。僕は何もしません」
そのとき、セミナー室のドアが再び開いた。
2026年7月24日 金曜日午後 経済学部セミナー室(第12回講座・最終回)
午後4時、経済学部セミナー室。4月17日以来の3ヶ月ぶりの対面講座。
村上と花音が先週の話をしているところに、岡田が微笑んで現れた。
「わぁ、やっと対面で会えたね!」
花音が興奮気味に声を上げた。画面越しでしか見たことのなかった岡田を前にして、少し頬を染めている。
岡田の実物は、画面で見るよりもさらに整った印象で、自然な笑顔が印象的だった。
「花音さん、対面で会えて嬉しいです!」
「そして慎也!その後は大丈夫?」
「おかげさまで大丈夫!自分もFANG+の基準価額も落ち着いたよ」
少し遅れてセミナー室に入った優佳に岡田が気づいた。
「あ、優佳さん、久しぶりですね」
岡田が優佳に向けて言うと、優佳は自然に微笑んだ。
「岡田君、久しぶり!口座開設のときは手伝ってくれてありがとう」
「やあ」
藤枝がセミナー室に入ってきた。
3ヶ月ぶりに見る学生たちの表情は、確実に成長を感じさせるものだった。学生は岡田を中心に会話していたことが見て取れた。
学生は藤枝に明るい声で挨拶をしながら席についた。
「皆さん、お久しぶりです。ついに対面で最終講座を迎えることができました」
「まず、感染状況についてですが、全国的には日々3千人程度まで減少し、大学でも現在2名のみとなっています。完全な収束まで、もうあと一歩ですね」
「長いトンネルでしたが、皆さんと一緒に乗り越えることができました。そして何より、この困難な状況下でも、皆さんが積極的に学び続けてくれたことに心から感謝しています」
学生たちが嬉しそうに微笑んだ。
藤枝は学生たちの成長した表情を見つめながら、教育者としての充実感を感じていた。オンライン講座という制約の中でも、これだけ学生たちが成長してくれたことに深い満足を覚える。同時に、今日で講座が終わってしまうことへの寂しさも込み上げてきた。
「さて、今日は最終講座です。先週は予定外でしたが、村上君の実体験を通じて『投資初心者の失敗事例と学び』について貴重な学習ができました。今日は講義内でその後の状況を村上君に確認しようと思います」
「その前にまず、宿題の発表をお願いします。NISAのつみたて枠としてどのようなポートフォリオを組むかについて、それぞれ発表してください」
藤枝は手元の資料を確認しながら続けた。
「吉井さんから、いかがですか?」
花音が少し緊張した様子で立ち上がった。
「はい。ポートフォリオとしては、【eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)】のみとし、月15,000円の積立設定をしました」
花音は準備してきた資料を見ながら続けた。
「先生と岡田君がおすすめしてくれた王道の商品で安心ですし、分散効果が高くて手数料も約年0.05%と安いです。複雑にしないで、まずは基本からと思いました」
「素晴らしい選択ですね。模範的な投資家デビューです」
藤枝が微笑みながら評価した。岡田も大きく頷いている。
「岡田君はどうですか?」
「今までは花音さんと同じで、オルカン一本でしたが、この講座で皆さんと勉強したことを踏まえて、投資方針を見直しました」
岡田は少し間をおいてから続けた。
「これまでオルカンを月1万円積み立てでした。これを【eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)】で月15,000円に変更しました」
「若いうちはリスクを取ってもいいし、当面はアメリカ経済が強そうだと判断しました。皆さんと一緒に学んで、自分なりの投資観が固まってきたんです。慎也の影響も当然あります」
そう言うと岡田は村上の方を見て少し笑った。村上は少し照れたような表情を見せた。
花音が岡田を見つめながら感心したように言った。
「講座を踏まえた上で適切に検討したと感じられて、流石だと思います」
藤枝は岡田の投資判断を聞きながら、内心で感心していた。講座を通じて学んだことを基に、自分なりの投資観を確立できている。これこそ教育の成果だろう。
藤枝は岡田を起点として学生を見回した後で話しだした。
「皆さんご存知と思いますが、構成要素として、オールカントリーとS&P500は多くの共通がありますが、S&P500にはアメリカに偏るというリスクがあります」
一息ついて続けた。
「リスクを理解した上で、自身が若いということと、当面はアメリカ経済が強いだろう、という予測を立てて、S&P500を選択するのであれば信託報酬等の投資条件としても問題なく、良い選択かと思います」
学生たちは理解したように頷いた。特に村上は深く何度も頷いていた。
「では、藤枝さんはいかがですか?」
優佳が資料を手に立ち上がった。
「私は以前に話したように少し工夫してみました。【eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)】を月12,000円、【eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)】を月3,000円で、合計月15,000円です」
「なるほど、独自の工夫ですね」
「私は日本が大好きなので日本を『箱推し』したいと考えました。ただし、普通のオルカンだと日本株が5%しか入ってないので、20%くらいは日本株にしたくて。【除く日本】と【国内株式】を組み合わせれば、自分で日本株比率を調整できると考えました!」
「箱推しって何ですか?」藤枝が質問した。
「『推し』の表現として、特定のキャラクターやメンバーだけでなく、その属している単位全体を応援することです!」花音が説明した。
「なるほど。確かにTOPIXをインデックスにしたファンドであれば日本を箱推しできますね」
岡田も感心したように言った。
「すごいですね。優佳さん。僕には全く考えつかなかったです」
藤枝は優佳の成長を実感していた。叔父の教えを参考にしつつも、自分なりの価値観で判断できるようになっている。日本への想いを投資に反映させるという発想も興味深い。優佳らしい考え方だと感じた。
「最後に村上君ですが...どう検討しましたか?」
村上は少し申し訳なさそうに答えた。
「すみません...。先日のこともあり、まだ購入できていません。が...」
村上が少し頬を赤らめながら興奮気味に身を乗り出した。
「検討した内容を説明しますぅ。少し長くなるけど聞いてくださいっ!」
藤枝も含めて村上に注目した。
「分散投資ということであれば、オルカンだけでなく、S&P500もNASDAQ100もFANG+も分散投資ではないかと考えました。若いですし。ただし、先日の件もありFANG+は対象から除外しました」
「次に、NASDAQ100について考えました。NASDAQ100は分散数は約100とのことで十分だと考えました。ただし情報技術が約50%あり偏っていること、信託報酬が少し高いということがネックになると考えました」
「信託報酬について具体的には、つみたて投資枠でNASDAQ100に投資できるのは、【iFreeNEXT NASDAQ100インデックス】のみで、こちらの信託報酬が年率0.495%なので、講義において推奨される0.3%を上回っています」
藤枝は村上による矢継ぎ早の説明を聞きながら、その成長ぶりに目を見張っていた。先週のパニック売りを検討していた学生とは別人のような冷静で論理的な分析だった。失敗から学ぶという言葉の意味を、村上が体現してくれている。
「次に、S&P500について考えました。こちらは岡田君も選択したもので、分散数も多く、業種としての偏りも少なく、信託報酬も約0.08%と低いです。アメリカに偏ることと為替リスク以外はあまりないと思いました」
村上は一息ついてから、説明を続けた。
「NASDAQ100とS&P500の中間位があると良いのに、と考えて、S&P500を軸にして、NASDAQ100を少し持つということを考えました。先生の意図と異なることは理解しますが、信託報酬をそれぞれの割合で計算することで、0.3%よりも下がるのであればそれほどズレていないと思いました」
「S&P500を7割、NASDAQ100を3割で計算したところ信託報酬も0.205%でした」
「慎也、すごいよ。よく検討したと思う。...ただ、偏りが気になったかな。S&P500のみを選んだ僕が言うのもなんですが...」
花音も頷いた。
「NASDAQ100とS&P500って、GAFAMとか結構被ってませんか?」
藤枝も感想を伝えた。
「確かに重複銘柄が多く、地域分散、業種分散という観点では課題がありますね。ちょっと情報技術に偏りを感じます」
村上は素直に頷いた。
「あ...確かに偏ってますね...。うーん...」
村上は少し考えた後で、大きく目を見開いてから言った。
「じゃあ...オルカンとNASDAQ100の組み合わせはどうでしょう?」
岡田が考えながら答えた。
「それなら世界分散もできて、情報技術の比率も減るのでは」
「ちょっとまってください」
そう言って、村上はブラウザとExcelを行き来した。
「S&P500との組み合わせでは、情報技術の比率は37%ですが、オルカンとの組み合わせでは32%まで下がります。この組み合わせはいかがでしょうか」
そして少し照れながら付け加えた。
「基本は堅実に、でも若さに頼ってリスクをとって少しだけテックの成長にも期待したいと思いました。オルカンとの組み合わせで世界分散でリスク軽減もできると思います!」
学生たちが温かい笑いを漏らした。
藤枝は村上の熱心な検討ぶりを見て、教育者としての喜びを感じていた。データを駆使して論理的に検討し、仲間からのアドバイスを素直に受け入れて修正する。これこそ理想的な学習プロセスだろう。
「若さがあるからリスクは取れる、というのは正しいです。また、信託報酬の考え方は一定の論理はあります」
「投資は個人の判断なので、村上君が余裕資金の範囲内でこの組み合わせを採用するということであれば、それで良いと思います。学んだことを十分に活用し、我々のアドバイスを踏まえて考えた結果ということを加味しても。ただし、岡田君と同様にリスクをとっているということを理解して、定期的に見直すことを考慮してください」
「はい。わかりました!」
村上は清々しい表情で返事をした。
藤枝も晴れやかな表情で学生たちを見回して言った。
「皆さん、それぞれ個性的で素晴らしい選択をしてとても良いと思いました。良いスタートが切れたと思います!」
学生たちは歓声を上げて互いに拍手しあった。
「盛り上がっているところ、申し訳ないですが、先週できなかったので今日の本題に入りましょう。投資初心者の失敗事例について学んでいきます」
学生たちはすぐに藤枝に集中した。
藤枝はホワイトボードに「3つの失敗パターン」と書いた。
「あなた達のような投資初心者の失敗は大きく3つのパターンに分類できます」
知識不足による失敗
感情的判断による失敗
実践面での失敗です」
「まず、知識不足による失敗について詳しく説明します」
藤枝は具体例を挙げ始めた。
「例えば、リスクとリターンの関係を理解せずに『過去10年で年平均10%のリターン』という情報だけで全財産を投資してしまうケースです」
岡田が少し眉をひそめながら言った。
「確かに危険そうですね。でも10%のリターンって確かに魅力的ですね。ただ、過去の数値ですよね」
「そのとおりです。過去のリターンが高くても、将来も同じリターンが得られる保証はありませんし、高いリターンには必ず高いリスクが伴います。FANG+もこのパターンに当てはまる可能性ありますから留意してくださいね、村上君」
村上はペコリと頭を下げた。
花音がメモを取りながら質問した。
「他にはどんな知識不足の失敗があるんですか?」
「新NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を知らずに、特定口座で投資を始めて、後から『税金がもったいなかった』と気づくケースもよくありますね」
岡田が補足した。
「確かに、せっかく非課税で投資できる制度があるのに使わないのはもったいないですね」
「次に、感情的判断による失敗について説明します」
藤枝は表情を少し真剣にした。
「一番多いのは、先日の村上君やかつての岡田君のように短期的な値動きに一喜一憂してしまうケースです」
「ここで、先週の村上君の件について、改めて振り返ってみましょう」
藤枝は学生たちを見回した。
「村上君、あれから1週間経ちましたが、どうですか?」
村上が落ち着いた様子で答えた。
「はい。あの後、あらためて考えてみましたが、先生や皆さんの言うとおりであると思いました。関税の話も、もう市場では改善方向で織り込み出していて、基準価額も少し回復して昨日の時点で13%減となっていました」
「そして何より、『一人で抱え込まずに相談することが、客観的な視点を保つ意味でも大切である』ということを学びました」
「僕も慎也から学ぶことが多々ありました」
「みんなで支え合えて良かったです」
「仲間がいるって心強いね」
学生たちは村上の言葉に賛同した。
藤枝は学生たちの絆の深さを感じながら、教育者としての誇りを感じていた。単に投資の知識を教えただけでなく、困ったときに支え合える仲間関係を築けたことが、この講座の最大の成果かもしれない。
「この経験こそが、実際の投資で最も重要な学習でした。理論だけでは学べない、感情との向き合い方を皆さんで学ぶことができました」
「最後に、実践面での失敗について説明しましょう」
藤枝は3つ目のポイントに移った。
「家計基盤を整える前に投資を始めてしまうケースが多いですね。生活費や緊急時資金まで投資に回してしまって、急な出費があったときに投資を売却せざるを得なくなる。こちらも村上君は適合しましたね」
「はい。余裕資金をかなりオーバーして投資をしてしまいました。反省しています」
学生たちは微笑みながら村上を見た。
藤枝は授業を進めた。
「あとは手数料の高い商品を選んでしまって、長期的に見ると大きな損失になるケースもあります」
岡田が実体験を共有した。
「僕も最初は手数料をあまり気にしていませんでしたが、長期投資では大きな差になると知って驚きました」
花音が質問した。
「これらの失敗を防ぐにはどうしたらいいんですか?」
「まずは基礎知識をしっかり身につけることです。この講座で学んだような、リスクとリターンの関係、複利効果、分散投資の重要性などを理解していれば防げる失敗が多いんです」
「そして投資ルールを事前に決めて、自動化を活用することです」
村上が理解したように頷いた。
「自動積立なら感情に左右されずに投資を続けられますね」
「そのとおりです。特に余裕資金のみで投資することが重要です。生活に必要なお金で投資していると、ちょっとでも下がると『どうしよう』って不安になってしまいますからね」
村上は少し恥ずかしそうに言った。
「はい。その不安を実体験しました」
学生たちは自分たちが作り出した、温かい笑いに包まれた。
優佳が確認した。
「まとめると、基礎知識をしっかり学んで、ルールを決めて、余裕資金で自動化して投資する、ということですね」
「まさにそのとおりです。この講座で学んだことを忘れずに、着実に投資を継続することが一番大切です」
岡田が学生たちの方を見ながら言った。
「みんなで学んだ基礎があるから、きっと同じ失敗は避けられますね」
「そうですね。困ったときは、この講座で学んだ基本に立ち返ることが大切です」
「では次に、この4ヶ月弱で学んだことについて、時間を10分用意するので、これから各自で振り返ってください。そして一言で良いので簡単に発表してもらいます。では今から10分間で振り返ってみてください」
学生たちは思い思いに検討を始めた。
学生たちが検討している中、藤枝はセミナー室を歩きながら考えていた。
これまで心配してきたが、岡田と他の学生たちの間で『トラブル』的なことは起こっていないし、起こらないのではないか。
『仲の良い学生たち』
目の前にいる彼らにはその言葉がぴったりではないか。
花音の岡田への思いは見え隠れするがそれは一方通行なのではないか。
元々、全然大丈夫で杞憂だったのではないか。
(...そういう風に思いたいだけだ)
自分自身に苦笑した。
藤枝における、岡田の『トラブル』に対しての心配は晴れなかった。
時計を見ると10分が経っていた。
花音が最初に手を上げた。
「私は、投資って難しいものだと思っていましたが、基本をしっかり学べばそれほど複雑ではないということが分かりました。そして、長期投資の大切さと、仲間と一緒に学ぶことの価値を実感しました」
優佳が続けた。
「推し活と投資の共通点を発見できたのが一番の収穫です。応援する気持ちは同じで、企業を応援することで経済の一部になれるって素晴らしいと思います」
岡田が真剣な表情で話した。
「僕は、正直に話すことの大切さを学びました。失敗を隠すのではなく、仲間と共有することで、みんなで成長できるということを実感しました」
村上が深く息を吸って話し始めた。
「僕は、感情をコントロールすることの難しさと重要性を身をもって体験しました。そして、一人では絶対に乗り越えられなかったことを、仲間の助けで乗り越えることができました。投資は技術だけじゃなく、人とのつながりも大切なんだということを学びました。あと、余裕資金は今後は守ります!」
藤枝は学生たちの振り返りを聞きながら、深い感動を覚えていた。投資の技術的な知識だけでなく、人間的な成長も遂げてくれた。これほど充実した教育体験は久しぶりだった。同時に、今日で講座が終わってしまう寂しさも強くなってきた。
「皆さんの成長ぶりには本当に感動しています。投資の知識だけでなく、人として大きく成長されていますね」
「それでは、夏休み明けの予定について説明します」
藤枝は少し名残惜しそうに続けた。
「この講座は今日で終了しますが、10月に一度、皆さんの投資状況を共有する場を設けたいと思います。夏休み期間中の投資体験や疑問点などを話し合いましょう」
「それは楽しみです!」
「皆さんの成長を見られるのが今から楽しみです」
学生たちが期待を示した。
藤枝は学生たちの期待に満ちた表情を見つめながら、講師として、そして一人の大人として、彼らの将来への責任を深く感じていた。
「投資は長期的な取り組みです。今日がゴールではなく、新しいスタートです。皆さんの投資人生が豊かなものになることを心から願っています」
藤枝は最後に深くお辞儀をした。
「12回の講座、お疲れさまでした。ありがとうございました」
学生たちも立ち上がって拍手をした。4ヶ月弱の学習の成果と、新しい人間関係の構築、そして投資家としての第一歩。
すべてが今日、ひとつの区切りを迎えた。
#01, プロローグ, https://note.com/chokozai/n/n7c341cddedc4
#02, 1章, https://note.com/chokozai/n/n21181a368ec3
#03, 2章, https://note.com/chokozai/n/n0a68b769a8dd
#04, 3章, https://note.com/chokozai/n/n57828d00edb3
#05, 4章, https://note.com/chokozai/n/n21b8ac2af8be
#06, 5章, https://note.com/chokozai/n/n42cd7f162fde
#07, 6章, https://note.com/chokozai/n/n2e058ee72421
#08, 7章, https://note.com/chokozai/n/nbb54d76f3a23
#09, 8章, https://note.com/chokozai/n/neda9d56fcf79
#10, 9章, https://note.com/chokozai/n/n74b172c91069
#11, 10章, https://note.com/chokozai/n/nacafa95d046b
#12, 11章, https://note.com/chokozai/n/n89af353420e1
#13, 12章, https://note.com/chokozai/n/n6e2b703b9166
#14, 13章, https://note.com/chokozai/n/n394f01a5e278
★#15, 14章, https://note.com/chokozai/n/n3ee776f29d13
#16, 15章, https://note.com/chokozai/n/n44b39117da51
#17, エピローグ, https://note.com/chokozai/n/naf7a4ec3e2ac

