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【ホラー小説】血道
※こちらは、創作大賞2024に投稿し、新潮文庫nex賞(メディア賞)をいただいた作品となります。
投稿当時のあらすじ等は現在、削除しておりますが、本文は当時のままです。
また、2026年5月28日に、受賞作が加筆・改稿の上、新潮文庫nexさまより刊行となります。

プロローグ
蟻を潰した音を、いまでも、せんめいに、おぼえて、いる。
あの日の絶叫も。私をみる、いくつもの目。私をしばりつけるいくつもの手。
深い深い闇。
絶望と伝統を織り込んだ、藍よりも深く闇よりも淡い色の布。
私は目かくしをする。
何も見えない。
ただ、覚えている。蟻を潰した音も、悲鳴も、喉の渇きも──血の臭いも。
私は目かくしをする。
ただのひとつの肉くれとして、ただのひとりの女として、ただの一滴の血の滴りとして。
この湿った、地獄の底のような孤独のなか。
指先に感じた、蟻を潰した音を、今でも鮮明に覚えている。

