三題噺ショートショート_サヨナラ
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「サヨナラ」まいりましょうか。

龍と、出張帰りの広島駅で、バッタリと会った。
俺は東京だから飛行機と迷ったのだが、でも、なんとなくゆっくりと帰りたかったのである。
缶チューハイとナッツのおつまみ缶詰を買い込んで自由席に座り。夏の地方予選に話が及んだ。
相手は4番。俺たちは深めに守っていた。
そして。
打球は右中間ど真ん中に飛んだ。
2人とも瞬足を飛ばしてギリギリ、交錯しそうになったが、俺は龍に声をかけて譲り、龍もまた俺に譲って……。
俺たちの、短い夏は終わった。
珍しく車掌が検札に来た。
そしてその手が、龍の500ml缶に当たってぶっ飛び、龍と俺のスーツはずぶ濡れになった。
車掌は平謝りだったが。
「どうせ週末だし。クリーニングに出すつもりだったから、いいよ」と、ふたり、正に同じ言葉で慰めた。
こんなお人好しだから、出世もできかったんだな。
二人で大笑いした。
俺たちの鞄には。
おふざけで記念に作った、40年前の「後逸サヨナラ負け」の缶バッジが、古びながらも光っていた。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、三題噺はいいけど。マッサー(注1)、まさか、忘れてない?」
マッサージすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、これで31作。俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。これ、どこまで続くのだろうか?


