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ゴッホ展で流れてほしい歌?


日本でゴッホ展が開催されているようで、サイトには「家族がつないだ画家の夢」。とあった。まさにそう!と、キュンとした。

ゴッホという画家を語るとき、家族の存在は決して欠かせない。

アムステルダムのゴッホ美術館を訪れたときも、フランスにある彼の最期を看取った村に足を運んだときも、その“つながり”がひしひしと伝わってきた。


フィンセントの画業を支え、その大部分の作品を保管していた弟テオ。テオの死後、その妻ヨーは膨大なコレクションを管理し、義兄の作品を世に出すことに人生を捧げます。テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムは、コレクションを散逸させないためにフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し、美術館の開館に尽力します。

ゴッホ展のサイトより





この記載から分かるように、ゴッホの成功は、まさに「家族がつないだ夢」そのものだ。

つい最近、私はその“終着点”とも言える場所を訪れた。ゴッホが自ら命を絶とうとしたとされる、フランスの小さな村。夕暮れどき、彼は麦畑でピストルを撃ち、血を流しながら自らの宿へと戻った。命が尽きるまで、二日かかったという。

夫と一緒に、麦畑に立ち、そこから教会を通って、ゴッホの宿まで歩いてみた。村は静まり返っていて、100年前の風景がそのまま残っているようだった。家々の庭に咲くバラや夏の花、鳥のさえずり、風に揺れる麦。6月のその日、世界は美しく、悲しかった。(インスタリールへ

墓地には、ゴッホと弟テオの墓がひっそりと並んでいた。



てっきり一人ぼっちで眠っていると思っていたので、驚いた。
どうしてパリに住んでいた弟のテオが、ここに眠っているのだろう?

ゴッホの死に深く打ちのめされたテオは、持病が悪化し、精神的にも急激に弱ってしまう。そしてわずか半年後、妻子を残してこの世を去った。

テオは最初、パリに埋葬された。でも、「ふたりは一緒に眠るべき」と願い、実際に行動を起こしたのは、その兄弟愛に深く理解を抱いていたテオの妻ヨハンナだった。その後の、ゴッホの絵画を売ったり守ったりする彼女の生涯を知り、心の底から感動した。


去年訪れたアムステルダムのゴッホ美術館は、テオとヨハンナの息子であるフィンセントが創立した。そこにも愛が溢れていた。

ゴッホが、当時はまだ赤ちゃんだった甥のフィンセントの誕生祝に贈ったアーモンドの花の絵画も飾ってあった。大好きなその絵を前に、私は思わず涙ぐんでしまった。




ゴッホが滞在し、息を引き取った小さな部屋は今も保存されている。その宿の1階はレストランになっていて、店の前には彼が好んだというワインが飾られていた。

でも実際に彼が愛飲していたのは、もっと刺激の強い酒——アブサンだった。中毒になるほど飲んでいたとも言われている。


パリ滞在中、夫と歩いたモンマルトルの丘。かつてゴッホが通った酒場があったようで、そうした歴史を案内するツアー一行と鉢合わせした。19世紀末、この界隈には無数の芸術家が住み、モンマルトル全体がアブサン文化の中心地だったという。ゴッホもまた、しばしばこの緑色の酒を口にし、やや中毒気味だったと伝えられる。

今ではアブサンは再解禁され、「ゴッホ・ラベル」のなんちゃってアブサンまで売られている。ゴッホの宿の斜め前にあるレストランのバーにこれがあり、思わず笑ってしまった。

Absente Van Goghは、伝統的なアブサンを現代風にアレンジしたリキュール


実は私は、昔はそれほどゴッホのファンというわけでもなかった。イギリスのラファエル前派などが大好きで、ロンドン留学中はテートやナショナル・ギャラリーに何度も通った。フランス人なら、ドガやロートレックのほうがしっくりくる。

1980年代、日本の大企業がゴッホの《ひまわり》を落札して世界を驚かせた。あのニュースのインパクトは強烈で、私にとってゴッホといえば“ひまわり”——それくらいしか知らない画家だった。

そんな私に変化をもたらしたのが、ある一曲だった。

1990年代、海外で暮らしていた頃。インドネシア人の友人が「アメリカのオールディーズ」のカセットテープを作ってくれた(なんと懐かしい響き!)。
1950〜70年代のポップスがぎっしり詰まっていて、どれも当時の私には耳慣れなかったが、聴けば聴くほど味わいが増していく曲ばかりだった。

その中に《Vincent》という曲があった。メランコリックで、まるでレクイエムのような旋律。"Starry, starry night..."と始まるその歌を、私は特に意味を深く考えず、ただBGMのように流していた。

それから何年も経ったある日、ふとしたきっかけでこの曲を聴き直した瞬間、衝撃が走った。
──これは、あの《星月夜》のことではないか?
そして、この歌はゴッホに捧げられたものではないか?

改めて耳を傾けてみると、それは「誰にも理解されなかった彼」への、優しくて深いレクイエムだった。星たちがゆっくりと動き出すような、美しく静かな旋律。彼の孤独と苦悩、愛と美しさが、まるで絵画のように浮かび上がってくる。

知らなかった人にも、ぜひ一度聴いてみてほしい。この曲はかつて世界中で大ヒットしたらしい。今でも、ふとした場所で流れてくることがある。心をわしづかみにされるような名曲だから。


ドン・マクリーン –
ヴィンセント(星降る夜)和訳

星降る夜
パレットに青とグレーをのせて
夏の日を見つめてごらん
魂の闇を知るその瞳で
丘に落ちる影
木々と水仙のスケッチ
風や冬の冷たさを捉えて
雪に覆われた白い大地に色を描く

今ならわかる
あなたが私に伝えようとしたこと
正気を守るためにどれほど苦しんだか
人々を自由にしようとしたこと
でも彼らは耳を貸さなかった、どう聞けばいいか知らなかった
もしかしたら今なら、耳を傾けるかもしれない


時を越えて、ようやく私も、少しだけ理解できた気がした。

ゴッホはひとりではなかった。その絵は、家族の支えと、見る者の心で、いまもちゃんと生きている。




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