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第九十五回:相手に話を理解させないコツ


今日は2024年1月7日です。そろそろ正月気分も終わって日常が始まった感じですかね。そんなことを言っているうちに、あっという間に年末になりそうな予感があります。一日一日を大切に生きていきたいものです。それでは今回もゆるく行ってみましょう。超不定期連載「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムでございまぁす。このコーナーでは、各用語の説明ページでは取り上げにくいIT関連のネタをテーマに、だらだらと思いついたことを書いていきます。みなさんが「あぁ、なんか役に立ちそうな気もするけど、役に立たないかなぁ。でも、もしかしたら役に立つかも」と思える情報を発信できるように頑張ります!


はじめに


栄えある九十五回目のテーマは……ピヨピヨピヨピヨ(ぴよぴよ的ドラムロール)……じゃん!

相手に話を理解させないコツ

です。
今回もITと関係ないネタですが無理やりITと絡めて話します。

ITエンジニアをやっていると……ITエンジニアに限った話でもありませんが、いろいろと説明を求められる機会があります。
説明をするときには必ずしも「よし!相手にちゃんと分かってもらうぞー!」と思っているとは限りません。
「説明した」という事実は欲しいですが、説明の内容自体は相手に伝わらない方が嬉しい場合もあります。

そんなときは分かりにくく説明します。
相手に話を理解させないように頑張るのです。

今回のコラムでは、相手に話を理解させないコツを3つ紹介します。

なお、お忙しい人に向けて先に結論を書いておくと、今回のコラムで紹介するコツは

1.相手が知らない知識を3つ入れる
2.知らない方が悪い空気感を出す
3.理解を急かす


です。
最後まで読んでくださる方は、この結論を知らないことにして読み進めてください。


相手が知らない知識を3つ入れる


相手に話を理解させないコツ1つ目は

相手が知らない知識を3つ入れる

です。

大前提として、相手に「あっ、こいつは説明する気がねーな」と思われてはいけません。
「頑張って説明してくれてはいるけど、何言ってるか分かんねー」に持っていく必要があります。

理由は「説明する気がない」は怠慢だと判断されがちだからです。

能力が低いのは意外に怒られません。
でもサボるのは結構怒られます。

例えば、体育の授業で100メートル走の練習をしているとしましょう。
足が遅いのは怒られませんが、適当にタラタラ走っていたら「真面目にやれ!」と怒られますよね。

それと同じです。
「説明する能力が低い」ことには寛容な人でも「説明する気がない」人には結構ムカつくものです。

だから、頑張って説明することは必要です。
ただし内容をちゃんと理解されてはいけません。
「一生懸命説明しているけど、内容が分かりにくい」ことが求められるわけです。

そのために一番手っ取り早いのは、1つの話に相手が知らないことを3つ盛り込むことです。

あくまで私の肌感覚ですけどね。
話の中に出てくる知らないことが1つだと相手の心は折れません。
まだ頑張って理解しようとします。

知らないことが2つ出てくると、諦めの早い人は理解する努力を放棄します。
「何言ってるか分からん」となってくれます。
ただし、話を聞く必要に迫られている人の心は折れません。
まだ頑張って理解しようとします。

話の中に出てくる知らないことが3つになると、結構な割合で話に付いていけなくなります。
分からない部分は穴埋めにする必要があり、穴埋めが増えると話の筋も分かりにくくなるからです。
その結果、理解しようとする心が折れます。

例えば、そうですね。
IPアドレス」という用語について説明してみます。
以下の3つの説明を読んでみてください。

IPアドレスは、IPネットワーク上の機器を識別するための番号である。

IPアドレスは、IPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。

IPアドレスは、通信プロトコルのIPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。

※これらの説明はWikipediaの説明をお借りしてきて一部改変しました。

1つ目の説明は、理解できるのではないでしょうか。
「IP」の意味を知らなかったとしても「ネットワーク上の機器を識別するための番号だよ」というのは読み取れますよね。

2つ目の説明は1つ目より難易度高めです。
「IP」と「ネットワーク層」の意味を知らないと読み解くのに時間がかかります。
実際には「IP」と「ネットワーク層」を無視して読んでも「ネットワーク上の機器を識別するための番号だよ」というのは読み取れますけどね。
直感的に分かりにくく、そこにたどり着く前に挫折する人もいるはずです。

3つ目の説明は、さらに難易度高めです。
「通信プロトコル」と「IP」と「ネットワーク層」の意味を知らないと読み解くのに時間がかかります。
実際には「通信プロトコル」と「IP」と「ネットワーク層」を無視して読んでも「ネットワーク上の機器を識別するための番号だよ」というのは読み取れます。
とはいえ、そこにたどり着く前に挫折する人は多いはずです。
文章全体を眺めた時点で「知らない単語がいっぱいあって分かんねっ(-A-)」となるのではないでしょうか。

さて、ここで、ちょっと実験してみますね。

IPアドレスは、通信プロトコルのIPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。



IPアドレスは、通信するときに使うお約束事のひとつであるIPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。

に書き換えてみます。

いかがでしょう。
劇的に読みやすくなった気がしませんか?

変更前の文章には難しい単語が「通信プロトコル」「IP」「ネットワーク層」の3つありました。
変更後の文章には難しい単語が「IP」「ネットワーク層」の2つです。

もちろん個人差はあるでしょうが、1つの話の中に知らないことが3つ出てくると理解する難易度は劇的に上がります。

相手に話を理解されたくないときは

相手が知らない知識を3つ入れる

ことを意識してあげてください。

なお「知識」という言い方をしましたが、相手が知らないことなら何でもいいです。
例えば、場合によっては「前もって、それは把握しておいてね」な前提条件があったりします。
相手が知らなそうな前提条件を、さも知っていて当然かのように話に組み込むことで、相手を煙に巻きやすくなります。


知らない方が悪い空気感を出す


相手に話を理解させないコツ2つ目は

知らない方が悪い空気感を出す

です。
もうちょっと直接的な言い方をすると

質問させない

です。

先ほどのIPアドレスの説明を、もう一度見てみましょう。

IPアドレスは、通信プロトコルのIPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。

ハッキリ言ってですね。
ITエンジニアであれば「通信プロトコル」「IP」「ネットワーク層」なんて初歩的な用語の意味は知っていて当然です。
もし知らないのであれば勉強不足でしょう。

だからIPアドレスの説明は上記の説明で十分です。
この説明で理解できないのであれば、勉強不足なそいつが悪い!

そんな空気感を醸し出して相手に「分からない」と言わせないのです。
「当然、分かるよね?もし分からないなら君の勉強不足だよ?」という無言の圧力をかけてやりましょう。

そうすることで、相手は話を理解していなくても「理解していない」と言えなくなります。
相手に理解させることなく「説明した」という事実をゲットできます。

このときに大事なのは「さも当然」という顔をすることです。

冷静に考えると、結構強引な理屈をこねているのですよ。
「IPアドレス」という用語と「ネットワーク層」という用語を比べた場合、個人的な感覚では「IPアドレス」の方が初歩的な用語です。
「『IPアドレス』という用語は見たことがあるけど『ネットワーク層』という用語は見たことがない」という人は大勢いるはずです。
「『ネットワーク層』という用語は見たことがあるけど『IPアドレス』という用語は見たことがない」という人は、ほとんどいないと思います。

ということは、ですよ。

普通に考えて「IPアドレス」の意味を調べている人(=「IPアドレス」の意味を知らない人)が「ネットワーク層」の意味を知っているわけないじゃありませんか。
だから「IPアドレス」の意味を説明するのに「ネットワーク層」という用語を使うのは少し不親切です。

とはいえ、それを相手に悟られてはいけません。
「これくらいは知っていて当然ですよね?」な態度で押し通すのです。


理解を急かす


相手に話を理解させないコツ3つ目は

理解を急かす

です。

相手に話を理解させないためには、相手に深く考えさせないことが重要です。
そのためには、バレないように相手を急かし、考える余裕を与えないことが必要になってきます。

先ほどのIPアドレスの説明を、もう一度見てみましょう。

IPアドレスは、通信プロトコルのIPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。

これを

IPアドレスは、通信プロトコルのIPでネットワーク上の機器を識別するために指定するネットワーク層における識別用の番号である。データリンク層のMACアドレスを物理アドレスというのに対応して、論理アドレスとも呼ばれる。

にします。

文章構成として当たり前ですが、2文目は1文目を理解してから読む想定です。
1文目を理解していない状態で2文目を読んでも分からないことが増えるだけでしょう。

これは書かれた文章なので読み返せますけどね。
会話だったら、さらに大変です。

「はい、Aを説明したよ」「次はAを前提としたBについて説明するね」「次はBを前提としたCを説明するね」と畳み掛けられた場合です。
もしAの説明を理解できていなかったら、当然BもCも理解できませんよね。

だから、まずは、わざとAを分かりにくく説明します。
その後、間髪をいれずにAを前提とした話(B、C)を畳み掛けるのです。
Aを理解するための時間的猶予を与えてはいけません。

なんだったらBやCは、ことさら丁寧に説明してあげても大丈夫です。
前提となるAを理解できていなければ、どうせ理解できませんからね。


まとめ


今回は

相手に話を理解させないコツ

というテーマで好き勝手に語ってみました。

説明をするときには必ずしも「よし!相手にちゃんと分かってもらうぞー!」となるとは限りません。
「説明した」という事実は欲しいですが、説明の内容自体は相手に伝わらない方が嬉しい場合もあります。

そんなときは

1.相手が知らない知識を3つ入れる
2.知らない方が悪い空気感を出す
3.理解を急かす


ことを意識してあげてください。
きっと相手は「説明はされたけど、何を言っているのか理解できんかった(--;」となります。


蛇足ではないおまけ


今回のコラムは反面教師的な視点で読んでいただけることを期待して書きました。
本当に言いたかったこと、相手に話を理解してもらうためのコツは

1.相手が知らない知識をできるだけ入れない
2.質問させてあげる
3.段階を踏んで1つずつ順番に理解してもらう


です。

今の時代は知りませんが、私が育てていただいた時代のIT業界は基本的に「知らん方が悪い」文化でした。
ggrks」という言葉が流行ったように「自分がやれる最大限の努力をしてから相手の時間を奪え」が基本です。
打ち合わせの場でも知識マウントを取って知識と言葉で相手をタコ殴りにして屈服させることで自分たちの要求を通りやすくする、みたいな場面もあったりなかったりゴホゴホ(-q-)

そのため、私も同業者が相手であれば遠慮なく専門用語を使います。
曲がりなりにも技術者が「専門用語が多くて分からない!もっと分かりやすく説明して!」みたいなことを言っているのを見ると(口には出さないけど)「いや、仮にも専門職なんだから専門用語が多いのは当たり前でしょ(--)」と思ったりもします。

ただ、まぁ、それは業界の中だけでやっていれば良いと思うのですよ。

他業種のお客さまに説明するとき、趣味でプログラミングを楽しんでいる人と接するとき、IT業界に興味を持ってくださって片足突っ込んで……だとすでに入っている気がするからちょっと遠めに眺めているくらいの人と接するときは、もうちょっと寛容になってあげても良いのかな、と。
いわゆる「にわか」をはじめとした「ちょっと外側にいる人」をどれくらい中に引っ張り込めるかが業界発展のためには大事だったりするじゃないですか。

ということで、自戒を込めて今回のコラムを書いてみました。

……とか言いつつ、私は基本的に「自分のことは自分でやれ」派なんですけどね(^^ゞ
ということで、個別の(技術的な)質問とか解説とかは受け付けていません。
よろしくねっ(--)ノ



思いつきで始めて惰性で続けている「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムですが、いかがでしたでしょうか。また何かネタがあったら、ちまちまと更新していきます。コンゴトモヨロシク。

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