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第一章『倉庫の発見』

 春休みの午前十時、石塚大翔は祖父母の家の納戸を掃除するよう、母親から頼まれていた。家の北側にある古びた倉庫。鉄の扉は軋み、長年の埃が天井からゆっくりと舞い落ちてくる。
「うわ、これは……宝探しだな」
 大翔は誰に言うでもなく呟き、鼻をすすった。中は想像以上に広く、木製の棚や布にくるまれた箱が整然とは言い難い状態で並んでいる。その奥、積み上げられた段ボールの山を崩すと、彼は目を見開いた。
 そこには、大小さまざまな楽器が埃をかぶって眠っていた。バイオリン、トランペット、チェロ、ティンパニ……それらは明らかに壊れていた。弦が切れていたり、金属部分が錆びついていたり、鍵盤が抜け落ちていたり。しかし、それ以上に不思議な魅力があった。
「なんでこんなに……しかも、どれもバラバラな種類だ」
 すぐにスマホを取り出し、一つ一つの楽器の写真を撮りながら、メモ帳に名前を書き留めていく。全部で四十種類以上。彼はそれを、勢いそのままにクラスのグループチャットに送信した。
《見つけた。壊れてるけど、楽器の墓場って感じだ。写真見てくれ》
 数秒後、既読が次々とつき始めた。静かなタイムラインに、ポン、と一人のメッセージが現れる。
 岡島桃音:それ、直せば使えるんじゃない?クラスで音楽会とか……やってみない?
 一瞬の沈黙のあと、次の返信が続く。
 桜井啓利:ムリだろ。素人で修理とか。音楽会?失敗したらどうすんだ。
 啓利の返信にはいつもどおりの厳しさがあったが、大翔のスマホにはもう一つ、慎重な提案が届いた。
 黒崎明生:でも、計画さえしっかり立てれば……無理じゃないと思う。どれが修理できるか整理してみない?
 さらに、空気を一変させるような明るいメッセージが投下される。
 森本川めりあ:めっちゃ楽しそうじゃん!私もトロンボーン修理してみたい〜!
 坂本田一勤:電子キーボードある?あったら、改造できるかも……ふふ、燃えてきた。
 流れるように、チャットには参加の意思が書き込まれていく。
 大翔は、スマホを見つめながら小さく笑った。
「もしかして……クラス全員巻き込めるかもしれない」
 そしてその夜、チャットに新たなスレッドが立ち上がった。
 スレッド名:修復オーケストラ計画
 全員が賛同し、プロジェクトは静かに、しかし確かな熱量を持って始動した。
 終

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目次

第一章『倉庫の発見』

第二章『割り当てと計画』

第三章『修理の難関と工夫』00 01 (02) 03 (04) (05)

第四章『心の成長』00 01 (02) (03) (04) (05)

第五章『音楽会当日』 (00) (01) (02) (03) (04) 

終章『音が繋げたもの』 (00) (01) (02) (03) 


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