名詞の不可算・可算(単数・複数)⑨-1:外来複数形(GL借用語/外来語1)[英語史/単語史]
副題:可算不可算の理想と現実(英文法の理想と現実)
名詞の不可算・可算(単数・複数)[UC(SP)]の深掘り版
「単複で混乱が生じる英語の名詞」の中でも特に分類が困難な特殊ケース、まず「ギリシャ語・ラテン語名詞の英単語化」(いわゆる「借用語」:日本では「外来語」とも表現)を取り上げます。基本は名詞の不可算U・可算C(単数S・複数P)問題ですが、「一般用語vs専門用語(≒業界用語)」という視点や英語で名詞を借用(輸入)する際の難しさ、英語化の程度の違い等の視点でも考察。英語専門家とは別の見方をご提供できれば幸いです。
※ナンバリングを⑩から⑨に変更
この記事に対するコメントは不要です。ご質問はUNIPAのQ&Aからお願いします。
★今回の「GL借用語/外来語1」検証内容
❶ ギリシャ語・ラテン語から借用された英語名詞の単複変化の難しさ
元の名詞の単複がまず多様、英単語化の程度(≒英語らしさ)も多様
今回は複数形語尾が-aで終わる語群(その単数形語尾は?)
❷ 一般用語と専門用語(≒業界用語)の違い
知名度/出現頻度/使用頻度による名詞の単複・可算不可算分類の違い・変化
※単語ごとに事情が異なり、一般用語と専門用語(≒業界用語)の違いを文法としてまとめることが実は非常に困難だという問題もあり
※実例でそれぞれ検証
問題1:bacteria, criteria, data, media, mitochondria, phenomena
a. 上記リストの単語に単数形があるか否か?
b. 単数形があるものはスペルを記入(記事の後半で正解・ヒントを提供)
問題2:
a. 他にもギリシャ語・ラテン語の特徴を残す名詞を探して列挙
b. 逆にギリシャ語・ラテン語の特徴を残さずに完全に英単語化された名詞は?
◉この問題の正解については、慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生の以下のhellog~英語史ブログ記事もご参照ください。いつもながら大変勉強になります。
「#3586. 外来複数形」では丁寧に整備された借用語リストがご覧いただけます。(『「徹底例解ロイヤル英文法」に依拠』という記載がありますが、ロイヤルでは「外来語の複数形」と表記:hellogのほうが単語を数多く網羅)
「#121. octopus の複数形」と「#161. rhinoceros の複数形」を読んでいただくと、借用語の複数形が英語史の中でいかに技術的に難易度が高い問題である/あったかが、私が下手にご説明するよりも理解していただきやすいと思います。
僭越ながら少し私から補足させていただくと、単純に英文法と言っても単語ごとにルールが微妙に異なる事情がお分かりいただけると思います。英語名詞で複数形を作る難しさ(「語尾に-s/-esをつけるだけ」方式に徐々に収束が進んできてはいますが、未だ完全統一には至らず:完全統一が目標とも言い切れませんし、達成する必要もないとは思いますが)に加えて、英語が今でも変化の過程にある言語だということを実感していただければ幸いです(その点は日本語も実は同じだと思います)。
英語史部分は専門の先生にお任せして、私の得意分野である自然科学の世界に話を戻して考察してみます。正解・ヒントも書いてありますので、先に上の問題を解いてからご覧ください。
★医学・生命科学系論文検索サイトPubMedで検索数を比較
◉単語ごとの違いをデータでご紹介(「データム」ではなく「データ」、念のため)
検索数比で表示(単数形での検索数を"1"として複数形での検索数がその何倍か)
"bacteria" : "bacterium" = 6.64 : 1(複数形がほぼ7倍)
"criteria" : "criterion" = 7.80 : 1(複数形がほぼ8倍)
"data" : "datum" = 6040 : 1(複数形が6000倍以上!)
"mitochondria" : "mitochondrion" = 25.2 : 1(複数形が25倍以上)
"phenomena" : "phenomenon" = 2.35 : 1(複数形が2倍以上)
※複数形での使用が多く単数形が少ない点が共通:"data"は特に極端な例
※太字は複数形を日本語に借用したケース:日本語化する際にも複数形が基本になるのは興味深い点
("medium" : "media"のみ、 形容詞"medium"と区別できず検索断念)
★以下のBritannica Dictionaryで各単語をチェックしてみてください。
◉"BACTERIUM":ラテン語の単複が残存、日本語は複数形版「バクテリア」のみ
◉"CRITERION":ギリシャ語の単複が残存
◉"DATUM":ラテン語単数形の知名度/出現頻度が極端に低い語
◉"DATA":複数形が独立した辞書項目、日本語はこの複数形版「データ」のみ
※以下のBritannica Dictionaryでも「主語dataでbe動詞がis単数呼応」ケースの説明があり、「複数形か不可算名詞か?」が問題に
※"datum science"と言わず"data science":ということはdatumはほぼ死語?
◉"MEDIUM":ラテン語単数形の知名度/出現頻度やや低め、日本語「メディウム・メジューム」(単数形版)は生命科学用語「培地」や美術・印刷用語「溶剤」等の意味
("MEDIUMS"という複数形も可)
◉"MEDIA":複数形が独立した辞書項目、日本語「メディア」(複数形版)は「記録媒体・報道機関」等の意味
◉"MITOCHONDRION":Britannica Dictionaryには未登録(検索できず)
※mitochondrionが単数形、mitochondriaが複数形
※雑学:映画「スター・ウォーズ」シリーズに出てくるmidi-chlorian(s)の着想源
◉"PHENOMENON":ギリシャ語の単複が残存
今回は、ギリシャ語・ラテン語から借用した名詞という特殊な単語群の一部を例に挙げて「不可算可算の理想と現実」問題を深掘り。英語の名詞を使う際に毎回のように出てくる「文法的に可算名詞なのか不可算名詞なのか?」と「可算名詞の単数形か複数形か?」、さらには「複数形に見えて不可算名詞なのか?」問題は、日本語では発生しない英語特有の問題。具体的な例を通して、この問題をしっかりと考えてみてください。
いわゆる学校英語や学術英語で整理しきれていない点を考えてもらうための教材。英語の「名詞の不可算・可算(単数・複数)の理想と現実」問題が少しでも伝われば幸いです。
授業では時間の関係でどこまで解説できるか分かりませんが、あちこちにヒントを散りばめてあるので、非受講生の方も辞書を引いたり自分で調べたりして考察してみてください。
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