見出し画像

名詞の不可算・可算(単数・複数)⑧-5:専門用語2(mitochondria)[科学英語](⑨GL借用語/外来語[英語史/単語史]とも関連)

副題:可算不可算の理想と現実(英文法の理想と現実)

名詞の不可算・可算(単数・複数)[UC(SP)]の深掘り

「可算不可算・単複で混乱が生じる英語の名詞」深掘りの自然科学版。日常英語ではややレアでも科学英語ではありふれた存在の「ギリシャ語・ラテン語名詞の英単語化」(いわゆる「借用語」:日本では「外来語」とも表現)の2回目です。「一般用語vs専門用語(≒業界用語)」という視点や英語で名詞を借用(輸入)する際の難しさ、英語化の程度の違い、単語別に事情が全く異なる等々の視点も必要。さらには形容詞用法にも注意が必要。英文法としては名詞の不可算U・可算C(単数S・複数P)概念のかなり高度な応用ですが、英語専門家とは別の視点からお伝えできれば幸いです。(⑨シリーズ「GL借用語/外来語[英語史/単語史]」で軽く取り扱った内容をさらに深掘り:※ナンバリングを⑩から⑨に変更)

この記事に対するコメントは不要です。ご質問はUNIPAのQ&Aからお願いします。

★今回の検証内容:前回の「専門用語1(bacteria)」と共通

❶ ギリシャ語・ラテン語から借用された英語名詞の作られ方の多様性
 作られ方に加えて英単語化の程度(≒英語らしさ)も多様
 単語ごとの事情の違い:専門用語(科学用語)を個別に深掘り
  今記事は"mitochondrion/mitochondria"について
❷ 一般用語と専門用語(≒業界用語)の違い
 知名度/出現頻度/使用頻度による名詞の単複・可算不可算分類の違い・変化
❸ 名詞の形容詞用法と形容詞

 英語で名詞の基本(代表的な形)は単数形か複数形か?
 他の名詞を修飾する際の第一候補は名詞の形容詞用法か形容詞か?

※単語ごとに事情が異なる点や一般用語と専門用語(≒業界用語)の違い等々を文法としてまとめることは実は非常に困難
「複数形か単数形か不可算名詞か?」問題mitochondrion/mitochondia版。単複のルールを厳密に守るか、守らないか?


★⑨-1から

復習問題bacteria, criteria, data, media, mitochondria, phenomena
 a. 上記リストの単語に単数形があるか否か?
 b. 単数形があるものはスペルを記入(前回記事で正解・ヒントを提供済)
 c. 他にもギリシャ語・ラテン語の特徴を残す英語名詞を探して列挙
 d. 逆にギリシャ語・ラテン語の特徴を残さずに完全に英単語化された名詞は?

★科学英語の面から深掘り

問題1"mitochondrion/mitochondria"について
 a. ヒト体内にもある「ミトコンドリア」は、どんな器官?
 b. この英単語はいつ誰によって作られた?(誰がどう発見?)
 c. こうした英語名詞が生み出される時に、単複変化は誰がどうやって決める?
 (当時も今も、科学の世界で新しい物や概念を命名する際の慣例は?)
 d. こうした英単語は本当のラテン語? ラテン語風の英単語?
 e. 単数形「ミトコンドリオン」が日本語として採用されなかった理由は?
 (私も正解は知りませんが)
※この単語も、誕生した年代がかなり明確に特定できる特殊ケース(それまでは存在しなかった単語が新規に作り出された例)

★医学・生命科学系論文検索サイトPubMedで検索数を比較

検討事項:「名詞(可算C単数形/不可算U・可算C複数形)」の形容詞用法 vs 「形容詞」
 各ケースで典型的な形は? なぜ単語毎にこんなにバラバラなのか?
 ※PubMed検索で比較:"≒"は差が2倍未満、"<"1つで約10倍(2~20倍)の差
①"XXX isolation "比較(iso- = isolation):「XXXの単離(XXXを単離)」
 a. "mitochondrion iso-" : "mitochondria iso-" : "mitochondrial iso-"
  = 0 : 98 : 1,262C単数形、C複数形<形容詞
 b. "nucleus isolation" : "nuclei isolation" : "nuclear isolation" 
  = 38 : 176 : 525(C単数形<C複数形<形容詞
 ※念のため、"nucleuses isolation"の検索数は0
 c. "cell isolation" : "cells isolation" : "cellular isolation" 
  = 4,212 : 326 : 40(C単数形>C複数形>形容詞)
②"XXX function"比較(func- = function + functions):「XXXの(もつ)機能」
 a. "mitochondrion func-" : "mitochondria func-" : "mitochondrial func-"
  = (35+6) : (959+139) : (32,804+4,422)(C単数形<<C複数形<<形容詞
 b. "nucleus function(s)" : "nuclei function(s)" : "nuclear function(s)" 
  = (50+31) : (0+1) : (913+1,014)(C複数形<<C単数形<<形容詞
 ※括弧内の「C単数形」と「C複数形」が他と逆になっている点に要注意
 ※念のため、"nucleuses function"の検索数は0
 c. "cell function(s)" : "cells function(s)" : "cellular function(s)" 
  = (55,955+16,336) : (1,939+597) : (11,785+28,680)(C単数形≒形容詞>C複数形)
 ※括弧内の「C複数形」と「形容詞」が他と逆になっている点に要注意
③"XXX membrane"比較(mem- = membrane):「XXXの膜(XXXを包む膜)」
 
a. "mitochondrion mem-" : "mitochondria mem-" : "mitochondrial mem-" 
  = 53 : 1,114 : 53,511(C単数形<<C複数形<<形容詞
 b. "nucleus membrane" : "nuclei membrane" : "nuclear membrane" 
  = 99 : 20 : 6,676(C複数形<C単数形<<形容詞
 ※括弧内の「C単数形」と「C複数形」が他と逆になっている点に要注意
 ※念のため、"nucleuses membrane"の検索数は0
 c. "cell membrane" : "cells membrane" : "cellular membrane" 
  = 273,039 : 831 : 5,371(C単数形>>形容詞>C複数形)
 ※括弧内の「形容詞」と「C複数形」が他と逆になっている点に要注意
④"XXX genome(DNA)"比較(ge- = genome):「XXX(中)のゲノム(DNA)」
 
a1. "mitochondrion ge-" : "mitochondria ge-" : "mitochondrial ge-"
  = 49 : 97 : 20,353(C単数形≒C複数形<<<形容詞
 a2. "mitochondrion DNA" : "mitochondria DNA" : "mitochondrial DNA"
  = 17 : 351 : 68,621(C単数形<<C複数形<<形容詞
 b1. "nucleus genome" : "nuclei genome" : "nuclear genome" 
  = 17 : 0 : 3,880C複数形、C単数形<<形容詞
 ※括弧内の「C単数形」と「C複数形」が他と逆になっている点に要注意
 b2. "nucleus DNA" : "nuclei DNA" : "nuclear DNA" 
  = 131 : 109 : 12,776(C単数形≒C複数形<<形容詞
 
c1. "cell genome" : "cells genome" : "cellular genome" 
  = 1,689 : 231 : 608(C単数形>形容詞>C複数形)
 ※括弧内の「形容詞」と「C複数形」が他と逆になっている点に要注意
 c2. "cell DNA" : "cells DNA" : "cellular DNA" 
  = (4,970) : (1,203) : 7,705((C複数形)<(C単数形)≒形容詞
 ※括弧内の「C単数形」と「C複数形」が他と逆になっている点に要注意
 ※"cell DNA"、"cells DNA"ともに想定外の単語がヒットしたので括弧表示

★以下の外部サイトで単語や語源をチェックしてみてください。

◉"MITOCHONDRION/MITOCHONDRIA":Britannica Dictionaryに未登録(検索できず)
※日本語は複数形版「ミトコンドリア」のみ

※前記事「⑨-1」で、Britannica Dictionaryに「複数形主語dataであってもbe動詞がis単数呼応」ケースが見られることをご紹介しました。前記事「⑧-4」で、同様に"bacterium/bacteria"に関してetymonlineに"A classical plural sometimes also erroneously used as a singular."という記述があることをご紹介しました。一方で、"mitochondrion/mitochondria"の記事には、そうした注意書きは見られません。
 主観的な説明で恐縮ですが、これはおそらく「ミトコンドリア」という単語が専門家以外に使われることが少ないという単純な理由だと思います。専門の研究者や自然科学者は単複のルールを厳密に守る傾向が強いようなので(もちろん例外はありますが)。

◉参照回数が今後多くなると予想されるetymonlineについてのWikipedia記事

"MITOCHONDRION":Wikipedia記事へのリンク
mitochondrion(バクテリアと異なり、単数形が英語版のタイトルになっている例):バクテリアとほぼ同じサイズなのに違う扱い(一方、日本語版Wikipedia記事では「バクテリア」と「ミトコンドリア」:タイトルはどちらも複数形ベース)
※ギリシャ語からの造語(学術用語の慣例):微生物学者カール・ベンダが1898年にギリシャ語の「ミトス(糸)」と「コンドリア(粒)」から「ミトコンドリア」を造語(Wikipedia英語版の記述を簡略化)
※雑学:映画「スター・ウォーズ」シリーズに出てくる"midi-chlorian(s)"(こちらは通常のs付加型複数形になる可算名詞)の着想源

"MITOCHONDRIA":etymonline記事へのリンク(Wikipediaと異なり、複数形がタイトルに:英語ネイティブの間でもコンセンサスが取れていない?)


 ギリシャ語・ラテン語から借用した名詞という特殊な単語群から、今回はmitochondrion/mitochondriaについて「不可算可算の理想と現実」問題を深掘り。「2語からなる名詞句」(広義の意味で複合語)という視点でも整理・分類してみました。

 いわゆる学校英語や学術英語で実は整理しきれていない英語の「名詞の不可算・可算(単数・複数)の理想と現実」問題を考えてもらうための教材。「実用科学英語」というタイトルにふさわしい解説になっていれば幸いです。

 授業でどこまで解説できるか分かりませんが、あちこちにヒントを散りばめてあるので、非受講生の方は辞書を引いたり自分で調べたりして考察してみてください。


以下をクリックして関連記事もご覧ください。


いいなと思ったら応援しよう!