三題噺ショートショートvol.43_足跡
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「足跡」まいりましょうか。

何年か経ってから突然気付くことって、あるものだ。
俺はいい加減な男だ。だが不思議に、日記だけは毎日つけている。
高校3年の時。決定的に嫌なことがあって不貞寝していたところへお袋がお面を渡してきて、こう、言うんだ。
「今日節分だから、鬼になってみてよ」
俺は嫌々起き上がり、パジャマのまんま面をつけて茶の間に忍び入り。弟、妹たちに、後から声を出した。
「ウオー!」
お袋が言った。
「鬼は外!福は内!!」
さんざん豆を投げつけられたが、弟も妹たちも大喜びだった。
自分の部屋に戻り、俺の日記の上に消しゴムが置かれているのを見かけた。
お袋の葬儀で。色々と思い起こした。
何度もやめろと言ったのに、お袋は俺の部屋や机を片付け続けた。
そして、気付いたんだ。
あの消しゴムは、日記を読んだお袋の、感情の足跡だった。
俺はあの時、野球を辞めなかった。今、小さな独立リーグチームのオーナーをしている。
涙が次から次へと溢れ出て、人目を憚らず、何時までも泣いた。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、女房は、大事にしなきゃね。誠心誠意のマッサー(注1)、頼むね!」
……。
マッサージすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、43作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書いたは書いたが。これ、どこまで続くの?
いつまで書くの?
お題を発してくれるヤスシさんとの根競べだ。

