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「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖 1

あらすじ

 FIRST・CONTACTでは雑誌『考都』の取材から、以前取り扱った、相続に隠された真実を暴いた。
 これは、どこにもある相続による一族の争いが、偽造遺言書に端を発し、遺言者を殺害してしまったところから始まった事件である。当初は病死であると思われていた為、その死因に疑いを掛けることはなかったが、自筆証書遺言と公正証書遺言の二つの遺言書を調べる内に、不可解な死の真相を付き止めた早乙女であった。しかし、この時点では、既に真犯人を確定していたが、その証拠がなく、泳がせていたが、犯人自ら墓穴を掘り、証拠を自ら差し出してしまった結果、真犯人を逮捕することができた、論文の話であった。
 そして、その続編となる、SECOND・CONTACTが始まる。
 FIRST・CONTACTのエンディングで警視庁に呼ばれた早乙女と助手の伊藤は、捜査会議の物々しさに委縮する。会議が進むにつれ、なぜ呼ばれたかを認識した。早乙女の名刺が被害者の身体から発見されたのである。そして、既に、早乙女の無実は立証されており、それを踏まえて捜査の参加を依頼されたところから、この物語が始まる。
 犯人は、大胆にも、被害者を奥青梅ダムの堤頂部に遺棄し、すぐに発見された、捜査本部は早々に解決がつくと思われていた。しかし、防犯カメラがハッキングされ、半日近くもループ映像になっていたことから、捜査員は困惑する。ただ。早乙女は、遺体の不自然さに着目し、そこから解決へと導いていくのだが、今回は並行して助手の伊藤との恋を、伝書鳩が繋ぐ物語でもある。

登場人物
 早乙女弘樹(さおとめ ひろき)・帝央大学心理学教授
 伊藤真奈美(いとう まなみ)・・早乙女教授の助手
 佐々木優(ささき ゆう)・・・・警視庁刑事部捜査一課一係刑事
 加藤早紀(かとう さき)・・・・佐々木の相棒(刑事)
 早乙女百合(さおとめ ゆり)・・早乙女の妹


第1章 第1話 挑戦者

 
 私たち三人は大学を出て、一路、警視庁へ。
 伊藤さんは、警視庁が初めてなので、かなりの緊張度である。佐々木刑事も車の中では私にしか話さない為、伊藤さんの緊張度がどんどん高くなっているようだ。

 私はといえば、一応、少しは今回の依頼の内容を知っておく必要から佐々木刑事に尋ねた。

 すると、今回の遺体は、死亡後すぐに見つかっている。それは、奥多摩の奥青梅ダムの堤頂部。つまり、ダム上部の道路の真ん中に横たわっていたそうだ。

 ダムの関係者が、本日朝方に点検作業車で通りかかった時に見つけている。初めは寝ていると錯覚するほどであったようだ。
 スーツ姿であり、衣服に乱れもなく、安らかな顔をしていたらしい。

 起こそうと揺り動かしたが、反応は無く、手を持ち上げ脈を確かめると脈がなかったため、慌てて警察に電話したとのことだ。

 警察が到着した時にはまだ、身体に温もりがあったので、死亡推定時刻も割と正確に出たらしい。
 ということは、早く警察に見つけてもらうという犯人自身の自己顕示欲の表れか、それとも・・・と、考えている間に警視庁の前に着いた。

 佐々木刑事は地下駐車場入口で手帳を見せ、そのまま車を進める。指定場所に止めて降りた三人は一階の受付へ向かった。

 私と伊藤さんは、厳重な手荷物検査を受けた後、佐々木刑事に連れられて、エレベーターで十階に降りる。そして、右へ進んだ所の会議室へ案内された。

 ドアの右側には【奥青梅ダム死体遺棄事件】と戒名が貼られていた。

「教授、こちらが、捜査本部です。今日は、午後五時から始まります」と、佐々木刑事から聞かされる。

 すると、伊藤さんが話し掛けてくる。
「教授、私は玄関ホールでお待ち致します」

「伊藤さん。貴方は教授の大変重要なアシスタントなので、警視庁に来るだけじゃなく、捜査会議にも参加できるように、捜査一課長に許可を頂いております。一緒にお入り下さい」と、佐々木刑事から返事が返って来た。

「参加してもよろしいのですか」と、未だばつが悪そうに話す伊藤さんがいる。

「ところで、佐々木刑事。伊藤さんは、今年から単なるアシスタントではなく、講師になりました。今年は私の代わりに何回か講義をしてもらうことになると思います」

「そうですか。伊藤さんこそ出世されたじゃないですか」

「いいえ。まだ、講義日も決まっておりませんし、学生が出席してくれるかどうか。もしも、まばらな人数だったらと思うと、頭が真っ白になっております。今から不安でたまりません」

「大丈夫ですよ。天才早乙女教授の教えを一番引き継いでいる方は、伊藤さんの他に誰もいませんから」と、佐々木刑事が笑顔を向けていた。

「ありがとうございます」

「いつも、外野からの観戦でしたから、捜査会議って一度見るのもいい経験ですよ。それでは伊藤講師、許可されているのであればいいのではないですか」

「教授、講師だけはやめて下さい。緊張して何も手につかなくなります」

「分かりました。では、入りましょうか」

 中に入ると、数人の制服警官が、机の拭き掃除をしている。前の机には、上席のネームプレートが置いてあり、いざ出陣という感じだ。
 佐々木刑事から前の席にと勧めていただいたが、伊藤さんのことを考えて後ろの席でとお願いした。

 私は、席についた後、高まる胸騒ぎを抑えきれなくなっていた。

「何か緊張します。テレビで見るように殺気だっているのでしょうか」と、少し不安な物言いの伊藤さんがひとり言を話す。

 それを聞いていた佐々木刑事が、優しく説明する。 
「そんなことはないですよ。刑事ドラマのようなことはありません。ただ、報告はほぼ毎日上席に上がってきます。しかし、全体会議は全員が同時に有する必要性のある時だけであって、上司が上がってきた報告を本部に伝えます。そして、上司同士で意思の疎通を図った後、下へ伝達されます。だから、常に顔を合わせているわけではありません」

「そうだよ。淡々と報告している感じかな。そうだ、セクハラって言われるかもしれないけれど、長くなるから、お手洗いは済ませた方がいいよ」

「はい、そのように」と言って、敬礼して出て行った。こんなお茶目なところもあるのかと思った。
 
 午後5時前になり、捜査員が続々と集まって来る。奥多摩で死体が出ただけで、どうして本庁に帳場が立つのかと話している。見ると、鑑識、コンピュータを抱えたサイバー班らしき人や女性刑事に制服警官と、ありとあらゆる人材が呼ばれている。

 これはもしかしてと思っていると、午後5時ちょうどに前の席に四人が立って並んだ。先に入っていた刑事さんが規律の掛け声の後、上席に礼という言葉で同時に全員がお辞儀をした。

 とうとう捜査会議が始まる。

「本日、午前7時10分頃、奥多摩の奥青梅(おくおうめ)ダムの堤頂部で発見されたご遺体について、殺人であると断定された為、本帳場が立てられた。しかし、この事件は管轄の署長指揮事件ではなく、部長指揮事件となった。今日は、箕島刑事部長、後藤一課長、長内(おさない)検視官、崎島管理官が出席されておられる。そして進行として係長の水野、私が今後進めていくことになった。何故、西青梅署ではなく、本庁に立ったかというと、本日アドバイザーとしてお越し頂いている、帝央大学の早乙女教授に関連があるものと思われるからだ」

 一斉に振り向き、私達を見た。
 やっぱり訂正する。すごい殺気を感じる。

「死亡推定時刻を判断すると、教授は、入学式の打ち合わせで学内におられた。その時間から、到底現場から戻ることはできないことが判明しており、殺人については無関係であると判断された」

 伊藤さんが、小声で呟く。
「先に、教授のアリバイを調べていたなんて、失礼極まりないですね」

「これが日本の刑事捜査だよ。一応、先に、無実を証明してくれているので、今後の協力がスムーズにいくと思うから、いいのではないかな」

「教授は、心が広いですね。協力して欲しいなら礼儀というものがないのですかね。私ならカンカンです」と、少しおかんむりの伊藤さんであった。

第三話:https://note.com/glossy_human6092/n/n581f54e7f9e1

第四話:https://note.com/glossy_human6092/n/n35093a91f62d

第五話:https://note.com/glossy_human6092/n/nccd5b1487427

第六話:https://note.com/glossy_human6092/n/n039b4ba80076

第七話:https://note.com/glossy_human6092/n/ndde073029e2d

第八話:https://note.com/glossy_human6092/n/n0c2a8d4d6790

第九話:https://note.com/glossy_human6092/n/n0171c16cc046

第十話:https://note.com/glossy_human6092/n/n4897db46f75f

第十一話:https://note.com/glossy_human6092/n/n503533d60788

第十二話:https://note.com/glossy_human6092/n/ne945705735dd

第十三話:https://note.com/glossy_human6092/n/nea28b9474c5a

第十四話:https://note.com/glossy_human6092/n/n21fa04239c1f

第十五話:https://note.com/glossy_human6092/n/naf9e2abd47bf

第十六話:https://note.com/glossy_human6092/n/nd3897fed1f09

第十七話:https://note.com/glossy_human6092/n/n810e6d8746d6

第十八話:https://note.com/glossy_human6092/n/n1cc360c11b53

第十九話:https://note.com/glossy_human6092/n/nefcb612cf650

第二十話:https://note.com/glossy_human6092/n/n18c8bc94f900

第二十一話:https://note.com/glossy_human6092/n/n9cb39f0eeeea

第二十二話:https://note.com/glossy_human6092/n/ne18c50f4c730

第二十三話:https://note.com/glossy_human6092/n/n51b45556b0ba

第二十四話:https://note.com/glossy_human6092/n/n764ed566e5d0

第二十五話:https://note.com/glossy_human6092/n/n764ed566e5d0

第二十六話:https://note.com/glossy_human6092/n/n87dc03d681fa

第二十七話:https://note.com/glossy_human6092/n/n4ea3d4f41e4a

第二十八話:https://note.com/glossy_human6092/n/n143c4445a33d

第二十九話:https://note.com/glossy_human6092/n/n1ed54c024475

第三十話:https://note.com/glossy_human6092/n/n8481ef384874

第三十一話:https://note.com/glossy_human6092/n/n2c34f098f41e

第三十二話:https://note.com/glossy_human6092/n/ned17434bc51c

第三十三話:https://note.com/glossy_human6092/n/naead194db700

第三十四話:https://note.com/glossy_human6092/n/na9d0f8af95cf

第三十五話:https://note.com/glossy_human6092/n/n3aab34af61f6

第三十六話:https://note.com/glossy_human6092/n/nfc9370eff7b7

第三十七話:https://note.com/glossy_human6092/n/n6ee68d51183b
(最終話)

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