いま一度、賭けてみるか――。 明智光秀を裏切った筒井順慶に仕えるを良しとせず、 一度は武士を捨てた島 左近だったが、 石田三成の志を意気に感じ、その参謀役となる。 豊臣秀吉亡き後、天下取りの野望をむき出しにする徳川家康を打倒すべく、 三成と共に立ち上がった左近。 あらゆる手をつくし、ついには家康を関ヶ原へと誘い出すことに成功した――。 13万部突破のベストセラーが新装復刊! 主君のために義を貫き、敗戦必至の戦いに挑んだ名将、 島 左近の壮絶な生涯を描いた長編歴史小説。 (本書より) 左近は配下の士卒へきびしい口調で命令を下した。 「わしの戦う相手は、目前の黒田や細川ではない。奴等なぞ問題ではないのだ。 本当の敵は、その背後に控える徳川内府だ。 いまから敵陣を突破して、家康の本陣へなだれ込む。覚悟してついて参れ」 「はっ」 配下の面々が、いっせいに緊張をみなぎらせた。 確かにこれは決死の覚悟がなければ、できぬ戦いだ。 「それっ、進め」 左近の号令一下、およそ二千の部隊が、真っ向から黒田勢めがけて突進した。
※2026年7月13日 10:32時点
石田三成が家禄の半分を差し出してスカウトしたという島左近は、武勇、知略ともに優れた戦国屈指の名将だった。そんな名高い左近が、いまなお我々を魅了するのは、下克上があたりまえだった戦国の世にあって、「義」を重んじた稀有な武将だったからだろう。特に三成と左近の関係は、「三国志」の劉備と諸葛亮の関係にもたとえられるように、単なる主従関係を超えた絆で結ばれていた。本書の冒頭では、そんな二人の絆を漫画によって表現した。こうして「三成に過ぎたるもの」とまで称えられた左近のもうひとつの魅力は、やはり才気あふれる智謀ぶりであろう。杭瀬川の戦いでは、巧妙な計略により、関ヶ原の合戦を通して唯一の勝利を西軍にもたらした。また、秀吉の死後、三成に徳川家康暗殺計画を進言したとも、会津の上杉景勝らと家康討伐の計画を練ったともいわれている。本書は、こうした逸話を集め、その魅力を余すところなく引き出した左近の入門書である。
※2026年7月24日 19:32時点