AIフェスティバルに50人の巨匠を招いてみた
ここに、一枚の写真を用意した。ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂を背景に、ゴンドラが水面に浮かんでいる。いかにも絵になりそうな写真である。

この写真をもとに、世界の画家が自分の画風で描いたらどうなるだろう。ほんの遊び心から始めた。それぞれの画家が、自分の作風で描いた同じモチーフの絵を持ち寄り、AIフェスティバルに参加してもらうことにした。
AIフェスティバルでは、AIが扮する画家50人に、総がかりで共演してもらう。オールスターが集うガラだ。
同じモチーフで、構図も同じである。色や筆致が違うだけのバリエーションになるのだろうと、たかをくくっていた。
ところがどうして、世界に名だたる巨匠たちである。曲者、もとい個性派ぞろいである。作風の違いは予想のはるか斜め上をいっていた。
例えば、
ターナーの眼を通すと、ゴンドラも聖堂も、光の中に溶けていく。形は残っているのに、世界そのものが霞んでいく。
ホッパーの眼を通すと、ヴェネツィアの夕暮れは、孤独な夜になる。水面に浮かぶゴンドラは観光地の風景ではなく、人と人との間に横たわる距離になる。
スーラの眼を通すと、水面は点の集積になる。光は面ではなく、粒になる。
ゴッホの眼を通すと、空も水もじっとしていない。静かなヴェネツィアの風景が、内側から渦を巻きはじめる。
AIで遊んでいるつもりが、いつの間にか、画家の眼に引き込まれていった。
よく見ると、扮しやすい画家と難しい画家があるようだった。
ゴッホの渦巻き。スーラの点描。ホッパーの孤独な光。ルソーのファンタジー。マグリットの不条理。
こうした、言葉で特徴を取り出しやすい画家は、AIもかなりよく再現する。プロンプトに要素を書き込めば、それらしい絵がすぐに出てくる。
では、難しい画家はどうか。
フェルメールの絵は、細かく描き込めばよいわけではない。かといって、大きな面で処理すればよいわけでもない。街並みも、人物も、光も、細部と省略の間にある。その中間にある、絶妙な密度が出ない。
ゴーギャンは一見すると、平らな色面に見える。だからAIは、平板な色で処理しようとする。すると、漫画のようになる。では複雑な色を入れればよいかというと、今度はゴーギャンではなくなる。
セガンティーニも気難しい。セガンティーニの描く涅槃のような空気は、単に明るければよいわけではない。神々しければよいわけでもない。セガンティーニの光は、明るいのに騒がしくない。微妙な均衡の上にしか成り立たない光なのだ。
セザンヌは形を描く画家である。林檎でも、山でも、家でも、そこにあるものの重みを描く。色で形を組み立て、形で世界を支える。ところが、ヴェネツィアの空と水面では、その形がない。そもそもこの写真をセザンヌに描かせること自体、間違っていたようだ。
思いもかけず、多彩な作風の違いが出てきたのは、収穫だった。そして、特徴のある画家はAIが扮しやすく、微妙な中間を描く画家は難しいこともわかった。
よく考えたら、昔なら、画家の画風を比較するには、美術館へ行き、画集を開き、模写を重ねるしかなかった。その作業を、AIは一人で数分でこなしてしまう。たらればの検証を行うには、AIは多大な力を発揮してくれる。
50人の巨匠の皆様、AIフェスティバルへのご参加、お疲れさまでした。

画像または画家の名前をクリックするとそれぞれの記事に繋がります。
Adam Elsheimer(アダム・エルスハイマー)

Frederic Edwin Church(フレデリック・エドウィン・チャーチ)

J.M.W.Turner(ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

Caspar David Friedrich(カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ)

Jean-Baptiste-Camille Corot(ジャン=バティスト=カミーユ・コロー)

George Frederic Watts(ジョージ・フレデリック・ワッツ)

Alfred Sisley(アルフレッド・シスレー)

Giuseppe Pellizza da Volpedo(ジュゼッペ・ペッリッツァ・ダ・ヴォルペード)

Arkhip Kuindzhi(アルヒープ・イワノヴィチ・クインジ

0Claude Monet(クロード・モネ)

Jean Dominique Antony Metzinger (ジャン・メッツァンジェ)

Armando Reverón (アルマンド・レヴェロン)

Maurice Utrillo(モーリス・ユトリロ)

Emile Claus(エミール・クラウス)

Georges Lemmen(ジョルジュ・レメン)

Vincent Willem van Gogh(ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ)

Anders Leonard Zorn(アンデシュ・ソーン)

Henri Rousseau(アンリ・ルソー)

Jean-Léon Gérôme (ジャン=レオン・ジェローム)

Pierre-Auguste Renoir(ピエール=オーギュスト・ルノワール

Emile Bernard(エミール・ベルナール)

Jacob Abraham Camille Pissarro(カミーユ・ピサロ)

Edvard Munch (エドヴァルド・ムンク)

Georgia O’Keeffe (ジョージア・オキーフ)

Emily Sargent(エミリー・サージェント)

Ferdinand Hodler(フェルディナント・ホドラー

René Magritte(ルネ・マグリット)

Franz Marc(フランツ・マルク)

Gustave Courbet(ギュスターヴ・クールベ)

Giovanni Segantini(ジョバンニ・セガンティーニ)

Ivan Konstantinovich Aivazovsky(イワン・コンスタンティノヴィッチ・アイヴァゾフスキー)

Odilon Redon(オディロン・ルドン)

Frantisek Kupka(フランティシェック・クプカ)

Edward Hopper(エドワード・ホッパー)

Hilma af Klint(ヒルマ・アフ・クリント)

Edgar Degas(エドガー・ドガ)

Pierre Bonnard(ピエール・ボナール)

Henri Le Sidaner(アンリ・ル・シダネル)

Leo Lesser Ury(レオ・レッサー・ユリィ)

Eugène Jansson(エウジェン・ヤンソン)

Joaquín Sorolla(ホアキン・ソローリャ)

Johannes Vermeer(ヨハネス・フェルメール)

James McNeill Whistler(ジェームズ・マクニール・ホイッスラー)

Vilhelm Hammershøi(ヴィルヘルム・ハマースホイ)

James McNeill Whistler(アクセリ ガッレン=カッレラ)

Nazmi Ziya Güran(ナズミ・ズィヤ・ギュラン)

Mahmoud Sa'id(マフムード・サイード)

Henry Ossawa Tanner(ヘンリー・オサワ・タナー)

Paul Gauguin(ポール・ゴーギャン)

Paul Cézanne(ポール・セザンヌ)

