名詞の不可算・可算(単数・複数)⑨-5:"-ist&-ism"深掘り3[主義etc](GL借用語/外来語5)[英語史/単語史]
副題:可算不可算の理想と現実(英文法の理想と現実)
名詞の不可算・可算(単数・複数)[UC(SP)]の深掘り
この⑨GL借用語/外来語「"-ist & -ism"深掘り3」では、深掘り1&2に引き続き語源が共通の2つの接尾辞"-ist"と"-ism"を取り扱うことで、派生語が作られる仕組みを和英で比較してみます(単語が多様すぎるので複数記事に)。いわゆる「借用語」(日本では「外来語」とも)の応用でもあり原点回帰とも言える内容(ギリシャ語回帰ではなく英語の範囲内での原点回帰)。名詞の不可算U・可算C(単数S・複数P)問題ではなく、英単語の成り立ちを考え、さらには日本語との違いを再認識する教材としての面白さがお伝えできれば幸いです。
★今回の「"-ist & -ism"深掘り3」:検証内容(前記事とほぼ同じ内容に単語を追加し補強)
❶ ギリシャ語・ラテン語・その他言語から借用が発生する英語名詞の複雑さ
接尾辞"-ist"と"-ism"深掘り比較の第3弾(単語の多様さを反映)
"-ist"と"-ism"を含む語群の範囲をさらに広げてリストアップ
❷ 英語の派生語の複雑さ:語源が共通の"-ist"と"-ism"の原則と例外
語源が共通の"-ism"とセットで様々な"-ist"を分類・整理
原則["-ism"&"-ist"ペア成立]と例外[ペア不成立]の混在をさらに検証
❸ 新しい単語はどうやって作られる?:英単語の造語法を検証
単語を作る部品の最小単位の和英比較
英語はアルファベット(単独では原則意味を持たない文字)
意味を持つのは1〜数文字で構成される接辞(接頭辞・接尾辞)・語根
日本語は漢字(単独で意味を持つ文字:世界的には例外)
原則として1文字でも意味を有する漢字を活用して分類・整理
※引き続き"-ist"と"-ism"をセットにして深掘りすることで、語尾の違いで様々な派生語を作り出す英語の仕組みや単語変遷の歴史を辿るお手伝いができれば幸いです。
※辞書によって単語を掲載する基準や和訳の選択肢が違うようなので、ぜひ様々な辞書を引き比べしてみてください。(英英ならBritannica DictionaryやMerriam-Webster、英和・和英ならWeblioや英辞郎など)
※ふだん主に理系の学生に科学英語を教えている関係で、文法的に難しい項目を英語専攻ではない学生にどう説明するかということに日々心を砕いております。そうした工夫が伝われば幸いです。
この記事に対するコメントは不要です。ご質問はUNIPAのQ&Aからお願いします。
ある程度の予備知識が必要ですので、まず英語史部分については以下の専門サイトや専門家による記事をご参照ください。
★接尾辞"-ist"と"-ism"は語源が共通(スペルからほぼ自明):以下のetymonlineページは⑨-3,⑨-4記事で紹介済み
https://www.etymonline.com/word/-ist
https://www.etymonline.com/word/-ism
★接尾辞"-ist"の意味を理解するには接尾辞"-ism"と関連がある項目とない項目の2つに分類するのが実は鍵(それでも多様な意味を全て把握するのは困難):以下の Britannica Dictionary ページも⑨-3,⑨-4記事で紹介済み
https://www.britannica.com/dictionary/-ist
https://www.britannica.com/dictionary/-ism
★英単語として独立した接尾辞"-ism"
接尾辞"-ism"は"ism"という独立した英単語としても使われており、意味は「教義/教理、主義、学説/理論、イズム/芸術様式」など。いずれも接尾辞"-ism"の主要な用法であり、それをこの記事では「"-ism"の原則的な意味」としております(必ずしもギリシャ語の意味にまで遡って考察しているわけではありません、念のため)。:以下のWebページも⑨-3,⑨-4記事で紹介済み
https://www.etymonline.com/word/ism
https://www.britannica.com/dictionary/ism
★接尾辞"-ist"と"-ism"についてのWiktionaryページ(右上の"languages"をクリックすると日本語サイトも閲覧可能:英語サイトと日本語サイトで整理・分類法が微妙に異なる点にも要注目)。こちらでも、"-ist"の様々な意味を"-ism"と関連がある項目とない項目の2つに分類:以下、いずれも⑨-4記事で紹介済み
https://en.wiktionary.org/wiki/-ist
https://en.wiktionary.org/wiki/-ism
◉この問題の学術的な説明については慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生の以下のhellog~英語史ブログ記事もご参照ください(毎回勝手に引用させていただいて大変恐縮です)。:以下のhellog~英語史ブログページも⑨-3,⑨-4記事で紹介済み
★主義(経済体制&政治体制)・宗教・思想信条(哲学・主義主張)
◉今回の検証内容に関連する具体例の紹介と問題演習
復習問題:「~主義」 = "-ism"(原則と例外)
民主主義、全体主義、資本主義、共産主義、社会主義、帝国主義、保守主義、共和主義、自由主義
a. このリストの語群を英訳
「民主主義」の英訳語尾が"-ism"ではない理由を考察(正解はないかも)
b. "nationalism"を和訳:個人的に一番適切だと思う和訳は?
c. "racism"と"sexism"を和訳:「人種主義」、「性(別)主義」ではダメ?
d. 上記「~主義」リストの英訳語尾が"-ism"のものを"-ist"に変えて「~主義者」を意味する単語として成立するもの(=辞書に掲載)としないもの(あっても別表現が主流)に分類
e. dで成立しなかった語について該当の「~主義者」を意味する単語を記述
※和英それぞれに例外的な表現が存在し、原則通りのシンプルな整理は意外と困難
① "-ism & -ist"型の経済体制
~主義/~主義者
資本主義:capitalism/capitalist(capitalistは資本家とも)
共産主義:communism/communist(経済&統治の仕組み)
社会主義:socialism/socialist
※日本人も理解しやすい原則通りの「~(イ)ズム[主義]」と「~(イ)スト[主義者]」
問題1:「資本主義国」、「共産主義国」、「社会主義国」の英訳は?
問題2:「資本党」、「共産党」、「社会党」の英訳は?
(それぞれの問題で辞書にない/使われない単語があれば指摘)
②-1 "-ism & -ist"型の政治体制/統治体制
~主義/~主義者(一部、~(イ)ズム/~(イ)ストも)
帝国主義:imperialism/ imperialist(imperialismは帝政とも)
※同じく、原則通りの「~(イ)ズム[主義]」と「~(イ)スト[主義者]」②-2 非"-ism & -ist"型の政治体制(片方または両方が例外)
~主義/~主義者(一部、~(イ)ズム/~(イ)ストに加えて別表現も)
民主主義:democracy/democrat(両方非"-ism & -ist"型)
共和主義:republicanism/republican("-ismだが非-ist"型)
保守主義:conservatism/conservative("-ismだが非-ist"型)
自由主義:liberalism/liberal ("-ismだが非-ist"型)
全体主義:totalitarianism/totalitarian("-ismだが非-ist"型)
問題3:ニュース等で日常的に「〜主義者」より頻出する意味
a. 「民主主義者」より頻出の名詞"democrat"の和訳は?
b. 「共和主義者」より頻出の名詞"republican"の和訳は?(品詞に注意)
c. 「保守主義者」より頻出の名詞"conservative"の和訳は?(品詞に注意)
d. 「自由主義者」より頻出の名詞"liberal"の和訳は?(品詞に注意)
問題4:「民主主義国」、「民主国」、「共和主義国」、「共和国」の英訳は?
問題5:"democratism", "democratist", "republicanist", "conservatist", "liberalist"は単語として成立?(実際に見聞きしたことは?)
問題6:以下の政治体制関連語を和訳(辞書にない単語があれば指摘)
a. "aristocracy", "aristocracist", "aristocratism", "aristocrat"
b. "autocracy", "autocracist", "autocratism", "autocrat"
c. "bureaucracy", "bureaucracist", "bureaucratism", "bureaucrat"
d. "technocracy", "technocracist", "technocratism", "technocrat"
問題7:以下の政治体制関連語を和訳(辞書にない単語があれば指摘)
a. "monarchy", "monarchist", "monarchism", "monarch"
b. "anarchy", "anarchist", "anarchism", "anarch"
c. "oligarchy", "oligarchist", "oligarchism", "oligarch"
("oligarch"はロシア語「オリガルヒ」としてのほうが有名)
問題8:接尾辞"-ism", "-cracy","-archy"は意味がどう違う? 使い分けは?
(上の単語例を参考に)
③-1 "-ism & -ist"型の宗教
~教/~教徒
仏教/教徒:Buddhism/Buddhist
※原則通りの「~(イ)ズム[主義/教]」と「~(イ)スト[主義者/教徒]」
※意外と少ないことに驚き
③-2 非"-ism & -ist"型の宗教(片方または両方が例外)
~教/~教徒(教信者)
ユダヤ教: Judaism
ユダヤ教徒:Jew (民族宗教ならでは), Judaist (非掲載の英英辞典も)
ヒンドゥー教: Hinduism
ヒンドゥー教徒:Hindu (稀に"Hindoo"とも)
キリスト教: Christianity
キリスト教徒:Christian
カトリック教: Catholicism(旧教とも)
カトリック教徒:Catholic (旧教徒とも)
新教: Protestantism(プロテスタンティズムとも)
新教徒:Protestant(プロテスタントとも)
イスラム教: Islam(昔は回教・マホメット教とも)
イスラム教徒:Muslim(ムスリム、昔は回教徒・マホメット教徒とも)
(moslem:英英辞典では"sometimes offensive, should be avoided")
④-1 "-ism & -ist"型の思想信条(哲学・主義主張)
a. ~主義/~主義者(一部、~(イ)ズム/~(イ)ストも)
理想主義:idealism/idealist(観念論(者)とも)
現実主義:realism/realist(写実主義(者)、リアリズムとも:リアリストは稀)
個人主義:individualism/individualist
実存主義:existentialism/existentialist
伝統主義:traditionalism/traditionalist
合理主義:rationalism/rationalist
楽観主義:optimism/optimist
悲観主義:pessimism/pessimist
日和見主義:opportunism/opportunist(御都合主義(者)とも)
男女同権主義:feminism/feminist(フェミニズム/フェミニストとも)
この記事で追加
利己主義: egoism(エゴイズムとも)
利己主義者:egoist (エゴイストとも)
平和主義: pacifism
平和主義者:pacifist
完璧主義: perfectionism
完璧主義者:perfectionist
孤立主義: isolationism
孤立主義者:isolationist
経験主義: empiricism
経験主義者:empiricist
国家主義: nationalism(民族(自決)主義/国粋主義、愛国心とも)
国家主義者:nationalist(民族(自決)主義者/国粋主義者とも)
※原則通りの「~(イ)ズム[主義/教]」と「~(イ)スト[主義者/教徒]」
b. ~論/~論者(日本語は「論」と「主義」を区別:違いが曖昧な場合も)
唯物論: materialism(物質主義/唯物主義とも)
唯物論者:materialist (物質主義者/唯物主義者とも)
観念論: idealism(理想主義とも)
観念論者:idealist (理想主義者とも)
二元論: dualism(シンプルな単語なので他の意味も)
二元論者:dualist
運命論: fatalism
運命論者:fatalist
無神論: atheism
無神論者:atheist
有神論: theism
有神論者:theist
一神論: monotheism(一神教とも)
一神論者:monotheist(一神教徒/一神教信者とも)
多神論: polytheism(多神教とも)
多神論者:polytheist(多神教徒/多神教信者とも)
c. ~差別(主義)/~差別(主義)者(日本語は「主義」がない「差別」だけで通用)
(一部、~(イ)ズム/~(イ)ストも)
人種差別(主義): racism(主義不要)
人種差別主義者:racist (主義は必要)
性差別(主義): sexism(主義不要、セクシズムとも)
性差別主義者:sexist (主義は必要:セクシストは稀)
年齢差別:ageism(主義は余計? エイジズムとも)
※"ageist"は非掲載の英英辞典も、日本語「年齢差別主義者・エイジスト」は稀
※ギリシャ文明の時代にはなかった概念・単語も含まれているはず
※原則通りの「~(イ)ズム[主義/教/論]」と「~(イ)スト[主義者/教徒/論者]」
※「差別」を入れるのは日本語ならでは(英語とは違う分類・整理法)
④-2 非"-ism & -ist"型の思想信条(哲学・主義主張)(片方または両方が例外)
~主義/~主義者
功利主義: utilitarianism
功利主義者:utilitarian
懐疑主義: skepticism
懐疑主義者:skeptic
④-3 分類が難しい単語を追加
a. ~主義/~主義者(日本語で「主義(者)」とは訳しにくい"-ism", "-ist")
行動主義:activism
活動家: activist(行動主義者とも)
過激思想:extremism(過激主義とも)
過激派: extremist (過激主義者とも)
テロリズム:terrorism(和訳するなら「恐怖主義」?)
テロリスト:terrorist
ファシズム:fascism(和訳するなら「結束主義」?)
ファシスト:fascist
b. ~論/~論者(日本語は「(理)論」と「学」・「主義」を区別)
進化論:theory of evolution, evolution(ary) theory
進化生物学"evolutionary biology":学問としては生物学の一部門
進化論者:evolutionist(進化生物学者"evolutionary biologist")
創造論: creationism(通常は進化論との対比で分類・整理)
創造論者:creationist
※「論」vs「学」:進化学ではなく進化論と呼ぶのは昔の名残り?
⑤ 学者名語尾"-ist"は、"-ism"非対応が逆に標準(理由は自明)
「⑨-2」記事復習:学者名語尾"-ist"のペア相手は主に"-logy"等
改めて言うまでもなく"-ist & -ism"の原則から外れた例外
通常は「〜学」が先で「〜学者」が後に造語という順番
英語も原則として「〜学」と「〜主義/教/論」は単語で明確に区別
今回の「"-ist & -ism"深掘り3」記事では、具体例をさらに多く取り上げて例外的な語群について改めて詳しくご紹介してみました。日本語との対比という視点を通して、この2つの接尾辞をセットで理解することの重要性(とその限界)をお伝えできていれば幸いです。
授業では時間の関係でどこまで解説できるか分かりませんが、あちこちにヒントを散りばめてあるので、非受講生の方も辞書を引いたり自分で調べたりして考察してみてください。
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