教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝|総合目次・リンク集
以前、アナトール・フランスの著書を『ローマ教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝』と題してnoteと外部サイトで連載してましたが、諸般の事情により中断しました。
なにせ、上巻だけで脚注1598件。
膨大な情報量についていけなかったのです……。
中断・放置状態を引け目に感じてましたが、再び読み直したおかげで、以前は意識しなかった「原著者が執筆した意図と、旧邦訳版の目的の違い」が明らかになり、ただの翻訳にとどまらず、完訳する意義を考えるきっかけになりました。
なぜ、21世紀に『ジャンヌ伝』を完訳するのか
本書は、吉江孤雁先生が大正6(1917)年に邦訳版を刊行しています。
ジャンヌ・ダルクを日本で初めて紹介した貴重な文献ですが、省略・簡略化されている部分が散見され、上下巻合わせてなんと4章分が全文未収録。
ページ数で換算すると、全体の10%が欠けています。
特に、ジャンヌ没後のフランス情勢と復権裁判について触れている下巻最後の二章は完全に脱落しており、日本で「シャルル七世はジャンヌを見捨てた」説が根強く残っている一因かもしれません。
また、吉江先生はラ・ピュセルを「乙女」と訳しましたが、この言葉は複数の意味を持っており、若い娘や未婚女性(あるいは召使い)のほかに、「神に捧げられた処女」という強い宗教的意味を含んでいました。
原著者アナトール・フランス氏は、この言葉がジャンヌの謙虚さと未成熟な体質(無月経症)をあらわすと同時に、彼女を「聖女」へと押し上げていく装置として機能したことを冷徹に描いています。
つまり、原著者フランス氏が、聖人化・美化されていない「ジャンヌの素顔」を描き出そうとしている(『英訳版・序文』を参照)のに対し、吉江先生の翻訳版は「聖人ジャンヌ・ダルク」の姿のみを抽出しているのです。
原著者と旧翻訳者の違いについては、本編前の「完訳プロジェクトの意義:序文の比較、原著者と旧翻訳者の大きな隔たり」で詳しく取り上げます。
ジャンヌ・ダルクを知らない日本人を対象に、彼女を紹介するという意味では致し方ないと思いますが、原著者の意図から乖離しているのは否めません。
現在の日本では、ジャンヌ・ダルクの名前と生い立ちがよく知られています。そろそろ、100年前に削ぎ落とされた人間らしいエピソードや埋もれたキャラクターを掘り起こし、光を当ててもいい時代です。
本シリーズでは、過去の邦訳版で省略した内容も含めて、全文を翻訳(完訳)します。
総合目次・序文・解説
総合目次・リンク集(このページ)
⚠️上巻「英訳版・序文」では、フランス語の原著が発表されてからの各界の反応について、原著者アナトール・フランスの率直な意見が書かれてます。
上巻(Volume I.)の目次
下巻(Volume II.)の目次
第十五章 ラ・ピュセルの死後/羊飼いの終焉/アルモワーズ夫人(旧翻訳版・未収録)
第十六章 続・ラ・ピュセルの死後/バーゼル公会議のルーアン判事と国事詔書/復権裁判/セルメーズのラ・ピュセル/ル・マンのラ・ピュセル(旧翻訳版・未収録)
本作の基盤となった文献について(上巻・イントロダクション)(旧翻訳版・未収録)
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