第百二十二回:【わわわ説明術】応用編その2:認知負荷を上げる
今日は2026年2月25日です。これから、しばらくの間…というほど「しばらく」ではないかもしれませんが、説明のコラムを連載します。連載する目的は2つあります。1つは本の販促&読者サービスです。すでに本を読んでくださった方に「本の内容の先」を楽しんでいただきつつ、未読の方に本に興味を持ってもらえたら嬉しいなーと思っています。もう1つは私のブランディングです。お陰様で「(初心者向け)IT用語解説の人」というイメージは定着してきたと思っています。そのイメージを拡張して「説明の人」というイメージを狙っていこう、というのが説明コラム連載の目的です。狙い通りにいくかは分かりませんけどね。そんな狙いです。……ってな感じで裏話を暴露しちゃったところで、今回もゆるく行ってみましょう。超不定期連載「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムでございまぁす。このコーナーでは、各用語の説明ページでは取り上げにくいIT関連のネタをテーマに、だらだらと思いついたことを書いていきます。みなさんが「あぁ、なんか役に立ちそうな気もするけど、役に立たないかなぁ。でも、もしかしたら役に立つかも」と思える情報を発信できるように頑張ります!
はじめに
栄えある百二十二回目のテーマは……ピヨピヨピヨピヨ(ぴよぴよ的ドラムロール)……じゃん!
【わわわ説明術】応用編その2:認知負荷を上げる
です。
今回もITと関係ないネタですが、どーんまい。
去年『「分かった!」と思わせる説明の技術 知識ゼロの相手にも伝わるようになる本』という本を出版させていただいたのですね。
その本の「はじめに」で、うんちゃらかんちゃら。
その1で書いた内容の繰り返しになるので、やめておきます。
気になる方は「【わわわ説明術】応用編その1:1文字削るな」を、ご覧ください。
コラムの体裁を取っていますが、今回は(も)私の「説明の技術」のご紹介です。
今回ご紹介するノウハウは
認知負荷を調整する
です。
何気に難易度が高い気もしますが、気が向いたら、やってみてください。
言葉の定義
最初に認識を合わせておきましょう。
今回のコラムでは「認知負荷」という単語を
記憶・理解のしにくさ
という意図で使います。
「認知負荷が高い」と言ったら「覚えたり理解したりするのが大変」という意味です。
「認知負荷が低い」であれば「覚えたり理解したりするのが楽チン」という意味になります。
辞書的な意味とは少しニュアンスが違うかもしれませんけどね。
今回は、そういう意味で使います。
本に書いたこと
『「分かった!」と思わせる説明の技術』の本では
分かりやすい説明=聞き手の負担が少ない説明
と定義し、分かりやすい説明をしたければ
聞き手に楽をさせよう
と主張しています。
「聞き手に楽をさせる」は、カッコ付けた言い方をすると
認知負荷を下げる
です。
本の中では、認知負荷を下げる工夫を(「これをやると認知負荷が下がるよ!」と明言はしていませんが)あれやこれやとご紹介しています。
ただし、です。
実は、これだけでは、まだ半分なのです。
本に書いていないこと
本の中では「認知負荷を下げよう」と書きました。
これは話を単純化しています。
その本質は
認知負荷を調整する
なのです。
私が説明するときには、必要に応じて認知負荷を上げる作業もやっています。
私は文章を書いて説明することが多いので文章を題材にして話しますね。
認知負荷を極限まで下げると起こることは「スラスラ読める」です。
これ自体は分かりやすい説明をする上で必要です。
ただし、あまりにもスラスラ読めてしまうと、覚えてほしい内容を素通りされるリスクが上がります。
「わー、読みやすいな~。……あれ?読みやすかったけど何が書いてあったか覚えていないぞ」になったりするわけです。
あるいは、読みやすいがゆえに「読みやすかったけど内容が薄いなー」と思われるリスクも上がったりします。
そのような事態を避けるために、ちゃんと覚えてほしいところでは認知負荷を上げて、一旦立ち止まってもらうのです。
すでに「分かりやすいな~。スラスラ読めるな~」の信頼を得られていれば、少しくらい認知負荷が上がっても頑張って読んでくれます。
その結果「分かりやすいけど記憶に残る」という状態を作れるのです……多分。
科学的な根拠とかは提示できませんけどね。
私は、そのように考えて実践しています。
いやー、それにしても我ながら良いことを書いていますね(自画自賛)。
どうして本に盛り込まなかったのでしょうか?
その理由は、やるのが難しいからです。
……というのもあるのですが「わざわざ言わなくてもできるでしょ(やっているでしょ)」と思っているからです。
大事な部分は一生懸命、説明するじゃないですか。
そうすると自然に認知負荷が上がりがちになります。
「あれも知ってほしい」「これも大事だよね」だからです。
わざわざ意識しなくても「ゴチャゴチャしていて理解するのが大変」になりがちです。
私の場合は認知負荷を下げる工夫が習い性になっています。
だから、意図的に認知負荷を上げているのです。
まぁ、正確には「認知負荷を下げる工夫を減らす」ですけどね。
認知負荷を上げようと頑張るのではなく、認知負荷を下げる頑張りを減らすことで、認知負荷に差が生まれるようにしています。
ですから、まずは
認知負荷を下げる
をマスターしてください。
私がやっている「認知負荷を下げるための工夫」は本の中に書いてあります(宣伝)。
「認知負荷を下げる」をマスターしたら、次は「認知負荷を上げる」です。
これは「認知負荷を下げる工夫を減らす」という形で実践します。
基本的には、何も考えずに好き勝手に書いたら分かりやすさが減って認知負荷が上がるはずです。
大丈夫です。自信を持ってください。
あなたが何も考えずに書いた文章は分かりやすくありません!……あれ?
まぁ「何も考えずに好き勝手に書け」は冗談ですけどね。
「認知負荷を下げる」と「認知負荷を上げる(認知負荷を下げる工夫を減らす)」をマスターしたら、おめでとうございます。
「認知負荷を調整する」ができるようになっているはずです。
認知負荷を調整できる、あるいは、認知負荷を調整することを意識できるようになると、説明の工夫の幅が一気に広がります。
例えば、本には以下のようなことが書いてあります。
"わわわIT用語辞典"では、その用語の説明で出てくる専門用語(予備知識)の意味を先に説明しています。
理由はいくつかありますが、そのひとつが「分かった」を積み重ねてもらうためです。
たとえば、ITの世界には「DNS」という用語があります。DNSは「IPアドレスとドメイン名の対応を管理する仕組み」です。
DNSの意味を説明するとき、"わわわIT用語辞典"では
(1)IPアドレスは「コンピュータさんにとっての住所みたいなもの」だよ
(2)ドメイン名は「IPアドレスに付けた人間様向けの名前」だよ
(3)DNSは「IPアドレスとドメイン名の対応を管理する仕組み」だよ
と段階を踏んで説明します。これは1回の説明の中で3回「分かった」と思ってもらうための工夫です。
(1)IPアドレスの説明を読んで「分かった」
(2)ドメイン名の説明を読んで「分かった」
(3)DNSの説明を読んで「分かった」
となることで「自分でも分かるかも?」と思ってもらえる効果を狙っています。
※『「分かった!」と思わせる説明の技術』P123-P124より引用
「理由はいくつかあります」の「いくつか」のひとつなのですが、予備知識の意味を先に説明するのは、認知負荷の低い情報を先に提示するためです。
予備知識の意味は軽めに説明しています。
ですから、比較的サクっと読めます。
ここで「読みやすい」「自分でも分かるかも」というイメージが作られることで、後の方でややこしい話が出てきても脱落しにくくなるのです……多分。
例えば、以下の2つの文章を読み比べてみてください。
提示している情報は同じです。
提示する順番が違うだけです。
前者の方が分かりやすい気がしませんか?
DNSっていうのはIT用語だよ。
DNSはIPアドレスとドメイン名を対応付けて変換する分散管理型のシステムであり、Webやメール等で利用されている。
DNSはIPアドレスとドメイン名を対応付けて変換する分散管理型のシステムであり、Webやメール等で利用されている。
DNSっていうのはIT用語だよ。
入口の認知負荷を下げることで「これなら読めそう!」と思ってもらいます。
「読めそう」と思えば、頑張って読んでくれます、多分。
頑張って読んでくれることで、認知負荷の高い情報でも理解できたりします。
頑張って読んでくれるからです。
それが「この人の説明は分かりやすい」という評価につながり、その「この人の説明は分かりやすい」という評価を持った状態で次の説明を読んでくださることで、ややこしい話が出てきても脱落しにくくなり、頑張って読んでくださることで本当に理解できちゃったりして、私に対する「この人の説明は分かりやすい」という評価が増すのです。
さらに、その「この人の説明は分かりやすい」という評価が強化された状態で次の説明を読んでくださることで、ややこしい話が出てきても脱落しにくくなり……(以下略)
見よ!この完璧なループを!ぐわっはっは!
……あっ、調子に乗って「ハッタリをかまして印象を操作する」の「私(話し手)は説明が上手い!」の裏テクまで書いちゃった。ドンマイ。
話を戻して、科学的な根拠とかは提示できませんけどね。
私は、そのように考えて実践しています。
本に書けなかった余談
最後に「さすがに、これは書かない方が良いかな」と思って本に書かなかった内容をご紹介します。
それは「認知負荷の低い文章を書けるようになるために私がやった練習方法」です。
認知負荷の低い文章を書けるようになるために私がやった練習方法、それは
自分が書いた文章を酔っぱらった状態で読んでみる
です。
お酒を飲むと、ややこしいことを考えるのが面倒くさくなるんですよね、私の場合。
長くて、難しくて、ゴチャゴチャした文章を読むのがイヤになります。
そんな状態で読んでも読める文章か?というのを自分でチェックするのです。
未成年の方やお酒が苦手な方、お酒を飲んでも酔っ払わない方には、できないやり方ですけどね。
気が向いたら、やってみてください。
あなたが書いたその文章、酔っぱらいでもストレスなく読めますか?
まとめ
今回は
【わわわ説明術】応用編その2:認知負荷を上げる
というテーマで好き勝手に語ってみました。
今回のコラムで、ご紹介したノウハウは
認知負荷を調整する
です。
ふんわりとした内容ですし、主張がブレるので本には書きませんでしたけどね。
気が向いたら、チャレンジしてみてください。
【わわわ説明術】応用編シリーズ
応用編その1:1文字削るな
応用編その2:認知負荷を上げる【このページ】
応用編その3:視覚効果を考える
応用編その4:誤解の許容範囲を設計する
応用編その5:正対しない
応用編その6:相手を憑依させる
応用編その7:説得の技術
応用編その8:その文字、いる?
応用編その9:「1文字削る」の実践例
応用編その10:優先順位を付ける
応用編その11:理解が大事
応用編その12:サンクコストを無視する
応用編その13:誰にとっての良い説明?
応用編その14:肩書で殴る
応用編その15:「体験」をデザインする
応用編その16:語らないで語る
応用編その17:説明は毒の沼
応用編その18:「正確な説明」は諦めるVer.2.0
応用編その19:たとえ話について語るよ(1)
応用編その20:たとえ話について語るよ(2)
応用編その21:たとえ話について語るよ(3)
応用編その22:繰り返すVer.1.1
応用編その23:質問に答える
応用編その24:アイを叫べ
応用編その25:補足の入れ方がメッセージになる
応用編その26:前提を決める
応用編その27:予備知識は「薄める」
応用編その28:点を丸に変える
思いつきで始めて惰性で続けている「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるITコラムですが、いかがでしたでしょうか。また何かネタがあったら、ちまちまと更新していきます。コンゴトモヨロシク。






