見出し画像

旅の重力はふわりとずしりと

これは、瀬戸内をめぐる「1日」の旅の
記憶を56の断片に分割し、56日間かけて
再生した、言葉と形と時間の記録である。
56のリンクが揺れ動く深度のその先へ。


繰り返す瀬戸内の旅


旅に引き寄せられている。ずしりと沈み、ふわり
と浮かぶ旅の景色。寄せてはかえす波に立つ泡
と重量を帯びる石の塊。旅に置かれた色と形は
空間を作り、静かな音を立て旅の風景に現れる。



旅の始まりの港を抜けて



夜の海を渡り



空が白みを帯び始める頃



街の隙間に沿っては



旅の重力を感じて進む



ずしりとした石に引き寄せられるように



船を待つ間の高松の街の



風景に浮かぶ言葉をたどる



空に光が広がる港の片隅で



どしりと構える石の彫刻



街と港の間を抜けて



瀬戸内海の島をたどる



光が揺れる海を越え



赤と白の線を帯びる船は



男木島へとたどりつく



旅の振幅に言葉が揺れる



足元のタコツボから、遠くの屋島へ



前後する視点を、アートが揺らす



色と形は折り重なり



寄り集まっては全体を作る



鮮やかな色と沈む色に



旅の手ざわりを感じては



現実と想像の間に身を委ねる



いつかの空へと視点をつなぎ



カタカタと響く音が時を紡ぐ



古きものから新しきものへ



時とともに移りゆく風景に



並ぶ素材が島をつむぐ



男木島に描かれた風景が



折り重なっては今を彩る



路地から路地へ、猫と猫の隙間を抜け



めおんがつなぐ島をたどる



男木島を後にした船は



同じく祝祭の気配を帯びる女木島へ




幼かった長男と旅した景色を懐かしみ



ぐるぐると円を描く旅路を思う



境界をあいまいとさせる光



転じては変わりゆくもの変わらぬもの



幾重に連なる色が旅を彩り



回り続ける日常の上で、遠心力を増す旅で



心にひっかかるものを拾い



言葉は重なり物語となり



色や形は空間に動きを与える



おぼろげな形とあせゆく色を



芸術家は今に重ね



素材が放つ音に耳を澄ませ



時の流れを定着させるように



見えないものに形を与える



確かな手ざわりを頼りに、風景に身を沿わせる



様々な形を帯びる世界に目を向けて



そっと境界の上に立つ



石の上を吹き抜ける風に



かもめのアートが音を立てる



女木島を後にして 、せとしるべを右手に



船は高松港へと進む



風景に浮かぶ屋島のシルエットを



横目にペダルを漕ぐほどに



四国の地の結び目となる場所へ



積み上げられた石を落ちる水の音と



石の重力に引き寄せられながら



質感の異なる素材をたどる



この場所を形作った人々の思いを感じ



旅を綴り、日々を振り返る



静かに旅を見守るもの



心をふわりと軽くするもの



繰り返される円の軌道と



体に感じる振動と



積層する線の重なりに



旅の感触を深めては



船の時間に間に合うように



高松の港を後にして



瀬戸内への旅をまた閉じる


めくるめく光景が繰り返される。光と影は混じり
合い、色は層をなして、帯びる線は緩急をつける。
視線は空へ、足元へと往復し、水平線の先に続く。
旅の重力がふわりと軽やかに、ずしりと響く。神戸
の港から、また神戸の港へと瀬戸内海をめぐる旅。


いいなと思ったら応援しよう!