─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 2
加藤さんらによる調査が始まります

(AIで生成)
加藤さんは、再びWebミーティングで吉田さん、小林さんと話をすることにしました。

(AIで生成)
加藤「吉田さん、そちらでは何かわかりましたか?」
吉田「いえ、今のところ特に問題は見つかっていませんね」

(AIで生成)
加藤「小林さん、そちらはどうですか?」
小林「こちらも進捗はありませんね」
加藤「実は、トップページを置いているサーバー会社から、午前4時ごろにCPU負荷がわずかに上がっているという報告を受けました。状況を考えますと、このときにデータが全部消えたと考えていいと思うんです。このあたりから調べてみたいと思うんですが…。その前に確認として、B支所、C支所が契約しているサーバー会社からは、もう何もかも消えてしまっていることは間違いありませんか?」
吉田・小林「間違いなく、全部消えています」
加藤「本当に困りましたね。ホームページのデータだけではなくメールマガジンの送り先なんかも置いていましたからね」
吉田「まあ最悪の場合メールマガジン購読者の市民には再登録をお願いすることもできるとして、その他データの復旧が急務なんではないでしょうか?」
小林「私もそう思います」
加藤「そういうことでしょうね。とりあえず復旧を急ぎましょう。それで思うのですが『現在トラブルが起きておりホームページはご覧いただけません』なり『現在工事中』なり、そういった簡単なお知らせだけでも出しておいた方がいいかもわかりませんね。市のホームページにアクセスしたら404が出るのでは、あまりに信頼というものが損なわれそうですので」
吉田「そうですね。404エラーよりはマシかも知れません」
小林「私もそれは必要だと思います」
加藤「わかりました。トップページが置いてあるのはX社のサーバーですので、担当者に指示して早急に作らせます」
吉田・小林「よろしくお願いします」
加藤「では、今回はこれでミーティングを終わりましょう。それぞれ対応をお願いします」
吉田・小林「了解しました」
こうして何度目になるのかもうわからないミーティングは終わりました。加藤さんは、ホームページ更新担当の小鳥遊さんにとりあえずのトップページの作成とアップロードを指示し、ホームページが消えた件についても確認しました。

(AIで生成)
加藤「小鳥遊、ホームページが消えた件について何か心当たりはないかな?」
小鳥遊「いや、私には全く心当たりがありません」
加藤「まあそうだよなあ。小鳥遊は一昨日の更新担当で、昨日は問題がなかったわけだからなあ」
小鳥遊「いままでに何かわかったことがありますか?」
加藤「あまりないなあ。サーバー管理会社によると、今朝の4時ごろにCPUの負荷がちょっと上がっているらしい。早朝の4時に大々的な作業をする人なんて限られているだろうし、まあその辺に消えてるんじゃないかという予測はしているんだが」
小鳥遊「午前4時に手動操作でサーバーのCPU利用率を上げるほどの作業が行われることは滅多にないと思いますので、何かスクリプトが走ったと考える方がいいんではないでしょうか?」
加藤「それもそうか…それはB支庁とC支庁にも知らせておくことにするよ。よく言ってくれた」
4回目のシンキングタイムです
これまで上がった可能性は以下のとおりでした。
職員の誰かが誤操作した…可能性低い
旧B市、旧C市の職員の誰かが誤操作した…可能性あり
ウィルスが侵入した…可能性あり
クラッカーがふざけ半分に侵入して消去した…可能性あり
サーバーが動作異常を起こした…可能性あり
X社、Y社、Z社のいずれかが誤操作した。…可能性なし
問題のあるスクリプトが誤って実行された…可能性高い
悪意あるスクリプトがトロイの木馬などで注入された…可能性高い
使用しているサーバーが飛んだ…可能性なし
少しですが可能性がないもの・低いものが出て来ましたね。
B支庁にて
吉田さんは、B支庁におけるホームページ変更担当の郷原さんに確認を取りました。

(AIで生成)
吉田「郷原、ちょっといいかな?」
郷原「はい、何でしょう?」
吉田「郷原も知ってのとおり、ホームページを始めとしてサーバーに置いていたデータが全部消えた。これがとてもまずい状態だという事はわかるだろう?対応をいま行っているんだが、原因がわからないことには復旧もできないんだ。何か原因に心当たりはないか?」
郷原「そうおっしゃいましても…私にも全く心当たりがありません」
吉田「やっぱりそうか…。郷原が変更した内容は確認できるか?」
郷原「はい、一応テキストファイルにコピーしておいてありますので確認できますが…開きますね」
吉田「頼む」
郷原「これで開きますが…このとおり特に異常はないんですが…あっ!」
吉田「どうした!?」
郷原「コメントアウトしてある"schedule end"が"schedule en"になってます。dが抜けています」
吉田「コメントアウトしてある部分についてタイプミスがあったとしても全体に影響するとは考えにくいんだが…他に異常はないか?」
郷原「…他に問題は見られません」
吉田「そうか…わかった。ありがとう。一応本庁舎とC支所に知らせてみよう」
わずかですが、傷が見つかりました。
C支庁にて

(AIで生成)
小林「東雲、ホームページの件については知っているよな?」
東雲「サーバーから全部データが消えたという件ですよね?はい聞きました」
小林「今朝『今日の予定』の部分を変更したのは君だと思うんだが…何か異常に気付かなかったか?」
東雲「う~ん、特にありません」
小林「そうか、わかった。業務に戻ってくれ」
東雲「わかりました」
小林(一瞬表情が焦ったように思ったが…気のせいかな)
5回目のシンキングタイムです
というわけで各担当者に話を聞いてみましたが、目に見えた異常は発見できませんでした。
職員の誰かが誤操作した…可能性低い
旧B市、旧C市の職員の誰かが誤操作した…可能性あり
ウィルスが侵入した…可能性あり
クラッカーがふざけ半分に侵入して消去した…可能性あり
サーバーが動作異常を起こした…可能性あり
X社、Y社、Z社のいずれかが誤操作した。…可能性なし
問題のあるスクリプトが誤って実行された…可能性高い
悪意あるスクリプトがトロイの木馬などで注入された…可能性高い
使用しているサーバーが飛んだ…可能性なし
これには変化がありません。しかし、今のところはっきりとはしませんが、わずかな傷はいくつか見えてきました。
ここで加藤さん、吉田さん、小林さんはまたもWebミーティングで話し合います。
加藤「吉田さん、小林さん、何かわかりましたか?」
吉田「こちらは具体的なものは何も上がってきていませんね」
小林「こちらも同様です」
吉田「ただですね、昨日の予定変更担当の郷原が、"schedule end"を"schedule en"とミスタイプしていたことがわかりました。コメントアウトしてある部分ですので、これが全体に影響するとはちょっと考えにくいんですが…」
小林「こちらでもちょっと違和感のあることがありました。変更担当の東雲という者が、この件に話をしたらちょっと顔を曇らせたんです」
加藤「もしかしたら言いにくい何かを抱えているのかも知れませんね。小林さん、東雲さんをちょっと問い詰めていただけませんか?パワハラにならない範囲で」
小林「わかりました。もっと強めに押してみましょう」
加藤「よろしくお願いいたします」
小林さんと東雲さんの話し合い
小林「東雲、ちょっといいか?話があるんだ」
東雲「はい、わかりました」
ふたりは会議室に入ります。
小林「まあ、想像はついていると思うが、ホームページその他のデータが消えた件だ。さっき聞いたときにちょっと顔が曇ったように見えてな。もしかしたら言いづらい何かを抱えていないかと思って、それで話をじっくり聴いてみようかと思ったんだが」
東雲「…」
小林「言いにくいことなのかも知れない。だがとりあえず解決しない限りことが何も進まないんだ。処分対象にはなるかも知れないが、それはまずここでは措いておいて、知ってることがあったら話して欲しい」
東雲「…」
東雲さんはしばらく黙っていましたが、突然椅子から立ち上がり深々と頭を下げました。
東雲「申し訳ございません!」
小林「どうした!?」
東雲「日々の更新は勝手にスクリプト作ってやってました!」
小林「そうか…まあそれについてどう判断するかは上の判断だ。もしかしてそのスクリプトというのは4時ぐらいに実行されるようになっているか?」
東雲「はい、4時から自動実行されるようにしています」
小林「でも、これまでは何ともなかったんだよな?」
東雲「はい…何か環境の変化があったとしか思えないんですが」
小林「実はな…B支庁内の担当者が、"schedule end"というコメントを"schedule en"とミスタイプしたらしいんだ。これは何か関係ありそうか?
東雲「あると思います。"schedule"というコメントと"schedule end"というコメントを探して、その間をまず一回消して、わかっている限りまで登録してあるスケジュールを1日分引っ張ってきて記述し、確認のため"schedule"コメントと"schedule end"の間をもう1回チェックして、"schedule end"までの間に不必要な記述があったら削除するようにしています。"schedule end"が見当たらなかったという事態は想定していなかったのですが、おそらく"schedule end"が見つかるまでデータを消しながら行ける範囲を全てクロールすることになると思います。おそらくそれで…」
小林「そういうことか…それは君の一存でやったことか?誰かに相談したか?」
東雲「一応直属上司ってことになりますので、猪名垣さんに話してはいましたが…許可を取ってから行ったのではなく、始めてから猪名垣さんに話したという形になってしまったのですが…」
小林「いわば黙認か…処分は何かあるだろうが、それは受け入れろ、な?」
東雲「はい…」

(AIで生成)
原因判明!
というわけで、原因はこういうことで決着しました。
問題のあるスクリプトが誤って実行された
ルーティン作業は面倒くさいので自動化したいのはわかりますが、自動化するというのを関係する人々に知らせないまま行うのは極めて問題のある行為です。
データ全てにかかわってくることですので、一部の改変とは考えず全体の大幅な見直しという考え方で、関係する業務を行っている全員で情報を共有する必要があります。
さて、どうやって復旧するか
小林さんは加藤さんと吉田さんに呼びかけて、対策を考えました。
小林「…ということらしいです。大変ご迷惑をおかけしました」
加藤「まあ、起こってしまったことを今さらどうこうできるわけでもありません。これからのことを考えましょう」
吉田「そもそも、ホームページの維持管理の権限が分散しているところに根本的な問題があったと言っていいんではないでしょうか?」
加藤「それはありますね。私から上に進言しておきます。まあ何はともあれ、データをどうやって戻すかという問題がありますね」
小林「私が言うことではないかも知れませんが、X社、Y社、Z社それぞれ合併前のホームページデータしか持っていませんからね」
吉田「…そう言えば、毎月?定期的にデータを送って管理している会社がありませんでしたか?」
加藤「そうですね。確かありました…カチカ!株式会社カチカですね。ここにバックアップを預けている範囲の中にWeb関係データが入っていないかどうか、ちょっと確認してきます。しばらくお待ち下さい」
(数分後)
加藤「ありました!ホームページ関係のデータは確かに送っています。差分も送っていますのでだいたいのことは何とかなりそうです」
吉田「よかったですね。早速カチカに連絡してリストアの作業を始めましょう」
小林「でも…せっかくですから、この際3カ所に分散されているホームページのデータも統合し、予定も自動で書き換わる仕様にした方がいいのではないでしょうか?」
加藤「必要なことではありますが、それはまず原状復帰してからではないでしょうか?あまり長い間『工事中』にしておくわけにも行きませんし」
吉田「私もそう思います。部署そのものを統合して業務を一本化する必要があるでしょうが、結構な時間が必要になると思いますので、まずは元に戻してから取りかかるべきだと思います」
加藤「いやしかし、とりあえず解決して原因も判明してよかったですね。市の合併というのがこんなに大変なものだとは思っていませんでした」
小林「本当にそうですね」
吉田「全くです…」
後始末です
加藤さんから今回の事件について上長に報告がなされ、各部署の責任者は改めて行政サービスの統合の必要性を認識しました。
小林さん、東雲さん、猪名垣さんは責任があるとされましたが、そもそも旧3市の統合が中途半端で終わっていることが根本的な原因だということで厳重注意にとどまりました。
この後、この市は行政サービスの一本化に向けて作業を進めていくことになります。
長い話にお付き合いいただきありがとうございました
というわけで、事件が解決したわけですが、今回は登場人物が多くて話が込み入り、長めの文章2本ということになってしまいました。
この事件は実際に発生したセキュリティ事件のいくつかを下敷きにしたものです。ですので、同じことが起きる可能性は全くないかと問われるならそうは言いきれないのではないかと考えます。
重要データはバックアップ、それも複数のバックアップを取っておくのが安全です。バックアップの3-2-1ルール、バックアップの3-2-1-1-0ルール、バックアップの5-2-1ルールなどと称されるものですね。過去記事で説明していますのでぜひご覧ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
目次
クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性
クラウドストレージのデータ消失に関する責任の所在
ディザスタリカバリ手順をあらかじめ決めておくべき理由
弊社でお取り扱いしておりますデータ・OSにつきまして
クラウドストレージのメリット・デメリット
Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex
バックアップの方法 オフライン・オンラインバックアップとは?
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その1
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その2
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その3
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その4
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その5
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その6
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その7
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その8
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その9
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! ラスト
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その2
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その3
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その1
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その3
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その5
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その6
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その7
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その8
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その9
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その10
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その11
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 1
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その12
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 1
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その13(最終回)
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います その2
オフサイトバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その1
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その2
中小企業のための簡単・安価なデータバックアップ戦略 その10
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その1
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その2
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その3
