世界シェアNo.1ルータはセキュリティ上問題あり?
みなさん、こんにちは!
株式会社カチカのリモート&コールドバックアップ業務担当の村島です!
いやあ、なんかまた物騒なニュースが飛び込んできてしまいました。
世界シェアNo.1のルーターが何やら細工されているらしいという話です。
あまりにもショッキングな話題ですが、これもひとつの勉強です。
というわけで、今日もレッツスタディセキュリティ!なのです。
一応シェアを確認しておきましょうか…
総務省の調査というのがありまして。
確認してみたところずいぶん長々しい文章らしく、1部分だけ出て来たのですが、それによりますと
ウ 企業向けルーター
2022年の世界市場の出荷金額ベースのシェアは、首位がCisco(66.3% )、2位がH3C(9.0% )、3 位がHuawei(6.0% )となっている。
2022年の日本市場の出荷金額ベースのシェアは、首位が Cisco(35.1% )、2位がNEC(26.6% )、3位がYamaha(23.3% ) となっている。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/pdf/n4500000.pdf
この資料、通信機器全般について扱っていまして、ルータ単体、しかも企業向けだけではないルータ全体については記述がないんですね。その他にもいくつか資料は見当たることは見当たるんですが、企業向けの資料がほとんどという感じなんです。
で、このたび私が問題としたいのは…

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/j-pcs-jp/180417リリース.pdf
TP-Linkなんです。

https://www.tp-link.com/jp/press/news/20584/
これは…一応IDC(International Data Corporation)の調査という出典は記してあるものの、あくまでTP-Linkが言ってることではあります。2023年4月10日ということで微妙に古いですし。
価格.comの無線LANルーター(Wi-Fiルーター) 人気売れ筋ランキングでも、これ多分日本国内のランキングなんでしょうけど、2024/12/26現在で10位まではBUFFALOとNECで占められていますね。TP-Linkの最高位は12位。
でも、同じく価格.comで、特に条件をつけず、値段の安い順で検索してみて下さい。TP-Linkが上位に占める割合はかなり大きくなってきます。とにかく、安い。というか、まあいい言い方をすればコスパがいい?と言えるかと思います。
問題と申しますのは
ここ↓に書いてあることなんですが
文章で引用しましょう。
米政府は中国で創業したルーターメーカー、TPリンクに対し、国家安全保障上の調査を開始した。事情に詳しい関係者が明らかにした。米ルーター市場で大きなシェアを占める同社の製品は、繰り返し中国のサイバー攻撃の標的となっている。
この調査は、米国のネットワークやデータへの潜在的な脅威と見なされる中国に関係するテクノロジー企業の取り締まり強化を目指す米政府の新たな動きだ。
(中略)
米商務省の調査担当者は今月、TPリンクに対し企業構造などに関する詳細な情報の提出を求めた。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。この調査は、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が18日に報じていた。
関係者によると、米下院の中国共産党に関する特別委員会の共同委員長が8月に送付した書簡を受け、今回の調査が着手された。
超党派の同委員会は、中国の法律では企業は国家の軍事・情報収集に協力することが義務付けられていると指摘。ルーターを悪用した中国による国家支援のサイバー攻撃が頻繁に行われていることにも触れた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-19/SOQ99TDWRGG000
ということなんですよ。
アメリカの下院の中国共産党に関する特別委員会が8月に送付した書簡を受けて、今回の調査が着手されました。
その書簡の1ページだけ貼ります。

まあ当然英語ですので、翻訳したいと思うわけなんですが、だいたい最初の2段落目までぐらいでいいと思いますんでそうします。
2024 年 8 月 13 日
ジーナ・ライモンド閣下
商務長官
1401 Constitution Avenue NW
ワシントン D.C. 20230
ライモンド長官様:
大統領令 13873.1 に基づき、商務省 (商務省) の情報通信技術サービス (ICTS) 当局のもとで TP-Link Technologies Co.,Ltd. (TP-Link) とその関連会社を調査するよう謹んでお願いする書簡です。TP-Link は中華人民共和国 (PRC) に拠点を置くテクノロジー企業で、Wi-Fi ルーター、Wi-Fi デバイス、メッシュ Wi-Fi ネットワーク デバイスのほか、ハードウェアおよびソフトウェア コンポーネント、その他の製品を製造しています。
TP-Link の製品は、米国の Wi-Fi ルーターおよび関連デバイスの市場の大部分を占めています。オープンソース情報によると、同社は米国の ICTS セキュリティに対する重大な脅威となる可能性があります。したがって、商務省は、ICTS 権限に基づいて TP-Link を調査し、同社が国家安全保障上のリスクをもたらすかどうかを判断するよう要請します。リスクをもたらすと判明した場合、商務省は ICTS 権限を使用してリスクを適切に軽減するよう要請します。
2023 年には、米国の成人の 95% がインターネットを使用したと報告しており、小規模オフィス/ホーム オフィス (SOHO) ルーターが米国居住者がインターネットにアクセスするための主な手段として機能しています。2 業界レポートとプレス リリースによると、2022 年現在、TP-Link は世界最大の Wi-Fi 製品プロバイダーであり、年間 1 億 6,000 万台を超える製品を 170 か国以上に販売しており、米国では有数の SOHO ルーター プロバイダーです。TP-Link 製品は米国の軍事基地でも使用されており、陸軍および空軍取引所と海軍取引所がこれらのデバイスを軍人およびその家族に販売しています。
この書簡を受けまして
アメリカ商務省の調査担当者はTP-Linkに対し企業構造などに関する詳細な情報の提出を求めました。
TP-Linkのアメリカ法人は、中国のTP-Linkとは別会社だと主張しています。これはちょっと無理がありますよね。
で、米下院の特別委員会は「中国の法律では企業は国家の軍事・情報収集に協力することが義務づけられている」という事実を指摘しました。さらにルーターを悪用した中国による国家支援のサイバー攻撃が頻繁に行われていることに言及しました。
Investing.comの報道
Investing.comというニュースサイトがあります。
ここの情報によりますと、アメリカの家庭や小規模事業者向けルーター市場でTP-Linkは約65%(つまり2/3ぐらい)のシェアを持っているということになるんだそうです。さらに個人や小規模事業者のみならず、国防総省や他の連邦政府機関のインターネット通信にも使用されているとのことです。
これって何もアメリカの対岸の火事ではありません。価格.comで売れ筋商品にこそ入っていないものの、これをちょっと見てみて下さい。

商品ラインナップ数では、BUFFALOに次いで2位、そして3位を大きく引き離しているんです。さらに言いますと、中継器(リピータ)でも商品ラインナップ数2位です。

うわ~、ルーターじゃないけどリピータは使っちゃってます、私…。
コスパだけ見ればすごくいいんですよね、TP-Link製品って。これ、替えた方がいいのかな…。
アメリカがTP-Linkルーターの使用禁止を検討しているということで、ライバルであるNETGEARの株が上がっているというニュースがあったり↓
アメリカ政府が国家安全保障上の懸念からTP-Linkを調査したというニュースがあったり↓
アメリカが安全保障上の懸念から中国のTP-Linkの禁止を検討しているというニュースをウォールストリートジャーナルが報じたりといろいろあるようなんですが↓。
とにかくTP-Link製品が「安価高品質」から「警戒すべき対象」へと切り替わってしまったことは間違いないようです。
アメリカ商務省、アメリカ国防総省、アメリカ司法省が(それぞれ独自にではありますが)TP-Linkに対する調査を開始しているようです。
最も早くことが進めば、来年にはTP-Linkルーターの米国内での販売が禁止されるようなことがあっても不思議ではないというような状況にまで至っているようですね。
このInvesting.comの報道によると、セキュリティの欠陥が含まれており、修正せずに顧客に出荷されている、とのことなんですが…それ、本当に欠陥ですませていいことなのかなあ?
もちろん、どこの会社の製品にも欠陥というのはあり得ます。ですので欠陥が見つかり次第セキュリティアップデートを行ったり、ソフトウェア的に解決が難しいものならば回収・交換とかそういう措置が講じられてしかるべきものなのにもかかわらず、という話なんですが…。
TP-Linkは問題を指摘するセキュリティ研究者との対話に応じていない、という報道がまたあるわけなんですよ。
TP-Linkと中国の反応
まずはTP-Linkの反応をまとめましょうか。
TP-Linkの広報担当は、箇条書きにするのならばこんな感じのことを述べました。
自社のセキュリティ対策は業界のセキュリティ基準に完全に準拠している
アメリカ市場とアメリカの消費者に対する継続的なコミットメントを示す
そのために、アメリカ政府と協力する機会を歓迎する
次にワシントンの中国大使館の報道官は、
アメリカが国家安全保障を口実に中国企業を抑圧している
北京は中国企業の合法的な権利と利益を断固として擁護する
というようなことを「付け加えた」そうです。残念ながら付け加えられた本文の方はちょっと見つからなかったんですが、まあおそらく「怪しいことはやってない」というような発言をしたんでしょうね。
TP-Linkが関係したと思われる主な事件
2017年11月
福岡大学NTPサーバーへ過剰なアクセスが発生。5秒に1回、かつ本来の用途ではない利用方法であった、ということなんですが…。
NTPサーバーというのは、要は時刻合わせのためのサーバーです。PCの時計が実際の時間と違っていてもネットに繋いでしばらくしたら正しい時間になってますよね。あれを実現しているのがNTPサーバーです。
時刻合わせのためのサーバーなんですから、仮にマザーボード上のバックアップ電池が切れていたとしても、1回PC起動のたびに1回アクセスがあるのが精々のはずで、5秒に1回とは明らかにおかしいです。
TP-Linkの説明によると、きちんとネットにつなげることができているかどうかの確認のためにこのNTPサーバーへのアクセスを利用したということらしいんですけど、なんでNTPサーバーを選んだかっていう話です。その設置の目的を考えるとはっきり言って迷惑です。何千台、何万台あるTP-Linkのルーターがそれぞれ一斉に5秒に1回のアクセスをするわけですからね。


TP-Linkが名指しされちゃってますが。
2022年3月
TP-Link製のルータがオフにしても、Aviraのサーバーに大量のトラフィックを送信した、ということなんですが…。
Aviraってご存じでしょうか。セキュリティソフトにお金を使いたくない、というお考えの方はご存じかも知れませんね。セキュリティ関係のソフトをリリースしている会社です。
どうやら提携していたらしいんですが、TP-Linkのルータの設定をオフにしても、Aviraに「なにものか」を送り続けていたらしいです。その「なにものか」がわからないというところが誠に不気味ですが。
2023年5月
中国政府が支援するグループが欧州外交機関へのサイバー攻撃でTP-Linkルータを使用しました。
2024年10月
MSは主にTP-Linkで構成されるボットネットからの攻撃があったと報告しました。詐取された認証情報が当日中に中国関連グループで使用されました。
ボットネットというのはネットワーク機器を組み合わせてサイバー攻撃する仮想的なロボットのことで、一般的にはトロイの木馬などマルウェアで他人の環境を乗っ取って、それらを組み合わせて使います。本件では、それが主にTP-Link製品から構成されており、しかも詐取された認証情報が当日中には中国関連グループで使用されたということで、無関係を言い張るには少し無理がありますね。
マイクロソフトも公式ブログでTP-Linkを名指しで批判しています。
日本におけるTP-Link
すみません、だんだん文字数が多くなってきたので駆け足で行きますが、あくまでも日本に向けての米国本社の声明で「昨今、TP-Linkに関するいくつか情報の偏った報道がある」と言っています。
そして日本でのシェアなのですが、まずWi-Fi 6Eでのシェアは48.9%とのことです。

これ、価格.comでWi-Fi 6E で検索した結果からなんですけど、これだけ飛び抜けて安ければ一番安いTP-Link買っちゃいますよね。

こっちはWi-Fi 7 です。まだ商品数が4つしかないんですけど一番高いエレコム製品と比べたら値段は1/4ぐらい。知らなければ歓喜して買っちゃいそうです。そしてこのWi-Fi 7 ではなんと約7割のシェアを持っているとのことなんですね。あくまでも日本国内の話ですよ。
小括
結構長くなってしまいましたが、重要なことをまとめますと…。
アメリカで圧倒的なシェアを誇るTP-Linkが関わっていると思われる不審な動きがある
アメリカでは問題視されつつあり、政府機関の調査も入っている
アメリカのTP-Link本社では、アメリカの調査に協力という姿勢を見せている
日本でも、TP-Linkが関わっていると思われる不審な動きがある
日本の政府機関等は、TP-Linkに対して特別な調査等は行っていない
最新規格のWi-Fiルータでは、日本国内でもTP-Linkのシェアは大きく、また成長中である
というようなところでしょうか。
TP-Link製品を使うには注意が必要なようです。
今回の「怪しい事件」の数々も、ランサムウェアを含むマルウェアを埋め込むのも難しくなさそうですし。
上に書きましたように、私、ルータは使ってないんですがリピータは使ってるんだよな…。
すみません、よく考えることにします。
というわけで、今後はこうした「セキュリティ小耳情報」も書いていきたいと思っている次第です。
いつまでもバックアップバックアップといっているのもどうかと思いますしね。
では、今回はこれでごきげんよう。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
目次
クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性
クラウドストレージのデータ消失に関する責任の所在
ディザスタリカバリ手順をあらかじめ決めておくべき理由
弊社でお取り扱いしておりますデータ・OSにつきまして
クラウドストレージのメリット・デメリット
Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex
バックアップの方法 オフライン・オンラインバックアップとは?
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その1
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その2
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その3
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その4
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その5
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その6
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その7
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その8
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その9
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! ラスト
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その2
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その3
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その1
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その3
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その5
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その6
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その7
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その8
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その9
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その10
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その11
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 1
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 2
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その12
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 1
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その13(最終回)
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います その2
オフサイトバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その1
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その2
中小企業のための簡単・安価なデータバックアップ戦略 その10
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その1
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その2
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その3
