バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その1
皆様こんにちは。
株式会社カチカのオフサイト&コールドバックアップ業務担当の村島です!
なんか今朝もまた結構寒かったですね。起きてる間の温度調節も問題ですが、寝てる間がね…基本的に意識ありませんしね。何を着て寝ろというのか。
というわけで、今日も恒例(にしたい)関係ない話から始めたいと思います。
多くのギャンブルゲームで、確率について自分の直感を信用すると無一文になってしまうものです。
ここに3枚のカードを使ったシンプルなギャンブルの例を取りそれを説明してみましょう。
・スペードが両面に描かれたカード
・表がスペード、裏がダイヤのカード
・ダイヤが両面に描かれたカード
の3枚を使います。
親は、この3枚のカードを中が見えない箱の中に入れてよく混ぜます。次に、親はこのカードの裏が表のマークと同じであることに対して、対等の賭け率でお金を賭けます。仮にあなたがダイヤを引いたとしましょう。
「このカードはスペード・スペードのカードではありませんから、裏はダイヤかスペードです。つまり半々。勝ち目は同じです」
このギャンブルでは、あっという間に親に身ぐるみ剥がれてしまうでしょう。でも、なぜかわかりますか?
さて、今回はバックアップ戦略の失敗の実例を見ながら話を進めてまいりましょう。
現代の脅威とバックアップの役割
近年、サイバー攻撃は巧妙化かつ複雑化の一途を辿っており、企業や組織にとって深刻な脅威となっています。現在、もうバックアップとセットで語られるようになっているランサムウェア攻撃ですねえ。その被害の甚大さから最も懸念される脅威の一つであり、近年その被害報道が後を絶ちません。警察庁の報告によれば、ランサムウェア攻撃を受けた組織の約5割が復旧に1週間以上を要しており、事業継続に深刻な影響を与えています。

https://www.jpcert.or.jp/research/Ransom-survey.pdf
これはちょっと古くて2018年の情報なんですが、ランサムウェアの被害に遭ったことがある企業は1/3を超えているわけですね。
ちょっと年度が凸凹しますが、JPCERT/CCの報告では、2023年度の年間インシデント報告件数は65,690件に達し、前年度から22%増加しています。フィッシングサイトやWebサイト改ざん、標的型攻撃なども依然として多発しており、攻撃手法の多様化が見られます。これらの事象は、単なるデータ損失を超え、社会インフラや事業継続そのものに壊滅的な影響を与える可能性を示唆しており、情報セキュリティ対策が単なる技術的な問題ではなく、事業継続を担保する生命線であるという認識への転換が求められます。
バックアップが「最後の砦」である理由
サイバー攻撃、システム障害、人的ミス、自然災害など、データ損失の原因は多岐にわたります。これらのリスクからデータを保護し、事業を早期に復旧させるための「最後の砦」となるのが、適切に運用されたバックアップです。データが失われると、その復元には莫大な時間とコストがかかり、最悪の場合、ビジネスの存続にまで影響を及ぼす可能性があります。バックアップは、こうした悲劇を未然に防ぎ、業務を再開し、顧客への影響を最小限に抑えるための基盤となります。
特にランサムウェア攻撃におけるバックアップの標的化
ランサムウェア攻撃者は、被害組織が身代金を支払わざるを得ない状況に追い込むため、バックアップシステムそのものを標的とすることが常套手段となっています。米Veeam Softwareの2023年レポートによると、ランサムウェア攻撃の93%がバックアップを標的にしており 、そのうち75%が復旧を妨害することに成功しています。警察庁の調査でも、バックアップを取得していた企業の約8割が復元できなかったと報告されており、これはバックアップが攻撃者の主要な標的となっている現状を強く示唆しています。
攻撃者がバックアップを「最後の砦」と認識し、積極的に破壊・暗号化しているという事実は、防御側がバックアップを単なる「データのコピー」と捉えているだけでは不十分であることを示しています。多くの組織がバックアップを取得しているにもかかわらず復旧に失敗しているのは、バックアップ自体の保護、隔離、そして復旧可能性の検証が疎かになっているためです。これは、攻撃者の戦略が進化しているにもかかわらず、防御側のバックアップ戦略がその進化に追いついていないという認識不足、あるいは投資不足が根底にあることを示唆しています。バックアップはもはや「あれば良い」ものではなく「いかに堅牢に保護し、確実に復旧できるか」が問われる段階に入っています。
バックアップの不備が被害を拡大させた事例
A.ランサムウェア攻撃によるデータ破壊・暗号化事例
ランサムウェア攻撃は、企業のシステムを停止させ、データを暗号化することで事業継続を阻害します。特に、バックアップが不適切であったために被害が拡大した事例が近年多数報告されています。
1.ランサムウェア攻撃によるデータ破壊・暗号化事例
2024年5月31日、医薬品・医療機器卸売事業を行う株式会社ほくやく・竹山ホールディングスが不正アクセスによりランサムウェア攻撃の被害を受けたことを発表しました。この攻撃により、社内の全ネットワークが遮断され、メールサーバーも被害を受けたため、顧客など外部との連絡手段が一時的に電話・FAX・郵送に制限されました。最も深刻だったのは、バックアップサーバーにまで暗号化の被害が及び、復元が不可能であったことです。このため、結果として社内システム・サービスの全復旧までに約3ヶ月を要しました。この事例は、主要システムとバックアップシステムが同じネットワークセグメント内にある、あるいは同じ脆弱性を突かれてアクセス可能であった場合に、両者が同時に被害を受ける「共倒れ」のリスクを明確に示しています。バックアップが「最後の砦」であるはずが、その砦自体が攻撃の対象となり、機能しなかったことで、復旧に極めて長期間を要し、事業継続に甚大な影響が出たという因果関係が読み取れます。
2.県立精神科医療センター
2024年5月19日、県立精神科医療センターの電子カルテを含む病院情報システムがサイバー攻撃により完全に停止しました。攻撃者はActive Directoryサーバーへの初期侵入後、ネットワークスキャン、AD構成情報の窃取、共有フォルダーやバックアップデータの探索を連日実施し、最終的に基幹システムを含む各サーバー、端末を暗号化しました。復旧作業は困難を極め、特に、病院のバックアップデータがすべて攻撃者によって破壊されており、オフライン・バックアップが不完全であったことが大きな問題となりました。そのため、暗号化を免れたデータウェアハウス(DWH)からの復元を余儀なくされ、新規サーバーの手配とデータの再入力が必要となり、完全復旧には約3ヶ月を要しました。初期侵入経路として、保守用VPN装置への接続元IPアドレス制限がなく、インターネット上から誰でも攻撃が可能だったとされています。この事例は「バックアップがある」という事実だけでは不十分であり、その「質」と「隔離」が極めて重要であることを示しています。攻撃者がバックアップを探索し破壊したという事実は、バックアップが攻撃者の標的になることを改めて浮き彫りにします。さらに「オフライン・バックアップが不完全であった」という点は、バックアップの取得範囲や頻度、そして復旧可能性の検証が不十分であったことを示唆しています。
3.CloudNordic & AzeroCloud
2023年8月、デンマークのクラウドホスティングプロバイダーであるCloudNordicとAzeroCloudがランサムウェア攻撃を受け、顧客データの大部分を壊滅的に失いました。攻撃者はシステムをシャットダウンし、企業および顧客のウェブサイト、メールシステムを消去しました。重要なことに、バックアップも本番データと同様に影響を受けました。データセンター移行中に、以前は分離されていたサーバーが企業の内部ネットワークに接続され、攻撃者が中央管理システムとバックアップシステム(プライマリおよびセカンダリバックアップ)にアクセスできるようになったことが原因とされています。両社は身代金(約15.7万ドル相当のビットコイン)の支払いを拒否し、顧客データの大部分は復元不可能となりました。この事例は、データセンター移行という変更管理のプロセスにおけるセキュリティの不備が、バックアップシステムを含む全データ損失という壊滅的な結果を招いた典型例です。以前は分離されていたネットワークが接続されたことで、攻撃者がバックアップにまで到達できたという事実は、バックアップの「エアギャップ」の重要性を再認識させます。
4.春日井リハビリテーション病院
2022年1月、春日井リハビリテーション病院の電子カルテシステムがランサムウェア攻撃を受け、患者約5万人分のデータが暗号化されました。バックアップは存在したものの、オンラインサーバーに保管されていたため、こちらもランサムウェアに感染し、暗号化されてしまいました。VPNの脆弱性を突かれたことが原因とされ、復旧までに4ヶ月間を要しました。病院は身代金支払いを拒否し、手書きカルテで対応しました。この事例は、バックアップがオンラインで本番システムと同じネットワーク上に存在する場合、同時に攻撃の標的となり、その「最後の砦」としての役割を果たせなくなることを明確に示しています。また、VPNの脆弱性に関するベンダーからの情報が病院に届いていなかったという点は、情報セキュリティにおけるサプライチェーンリスク管理の重要性を浮き彫りにしています。

B. その他のシステム障害・データ損失事例とバックアップの課題
バックアップの重要性は、ランサムウェア攻撃に限定されるものではありません。人的ミス、ハードウェアやソフトウェアの障害、自然災害、そしてサプライチェーン上の問題など、多岐にわたる要因がデータ損失やシステム停止を引き起こし、その際にもバックアップの有無と質が復旧の成否を分ける鍵となります。
人的ミス、ハードウェア/ソフトウェア障害によるデータ損失
データ損失の原因はランサムウェアだけではありません。人的ミス(誤削除、上書き保存など)、ハードウェアの故障(経年劣化、物理的損傷)、ソフトウェアのバグや互換性の問題なども、重要なデータ消失につながります。例えば、2024年に報告されたあるデータ消失事故では、ベテラン担当者のマニュアル無視が黙認されていたことが原因でデータが消失し、その後想定外の場所に復元される「第2事故」まで発生しています。この事例は、技術的なバックアップが存在しても、運用上のヒューマンエラーやマニュアル無視がデータ損失を引き起こし、さらに復旧プロセスで新たな問題を生じさせる可能性を示しています。これは、バックアップ戦略が単なる技術導入だけでなく、厳格な運用手順、定期的な訓練、そして組織全体でのセキュリティ文化の醸成が不可欠であることを意味します。
災害によるデータ消失と遠隔地バックアップの重要性
地震、火災、結露などの自然災害や物理的な事故も、サーバーやディスクの破損を通じてデータ消失を引き起こします。OVHcloudのデータセンター火災(2021年)では、火災報知システムの不備に加え、一部の顧客がオフサイトバックアップを実装していなかったため、壊滅的なデータ損失に見舞われました。この事例は、単一のデータセンターに依存することの危険性と、遠隔地へのバックアップの重要性を浮き彫りにしました。OVHcloudの事例は、サイバー攻撃だけでなく、火災のような物理的な災害もデータ損失の主要因となることを示しています。この事例から得られる教訓は、バックアップ戦略が地理的な分散、すなわち「オフサイトバックアップ」を必須とすべきであるという点です。これは、いわゆる「3-2-1ルール」の「1(オフサイト)」の重要性を強調するものであり、単一障害点のリスクを物理的な側面からも排除する必要があることを示唆しています。
サプライチェーン攻撃や第三者起因の障害
自社だけでなく、サプライチェーン上のベンダーやサービスプロバイダーのシステム障害が、自社の事業に影響を及ぼすケースも増加しています。日本電子計算の自治体専用IaaSサービスでは、クラウドサーバーのディスク装置のファームウェア不具合により、全国53自治体の業務システムに影響があり、一部の自治体はバックアップデータの回復が困難な状況となりました。また、Change Healthcare(米国、2024年)のランサムウェア攻撃では、米国医療請求処理の主要プロセッサーが被害を受け、全国的な医療サービスに甚大な混乱をもたらしました。これらの事例は、自社が直接攻撃を受けなくても、サプライヤーの障害やセキュリティインシデントが自社の事業継続に直接的な影響を与えることを示しています。特に、サプライヤーのバックアップ戦略や災害復旧計画が不十分であった場合、その影響は連鎖的に拡大します。これは、自社のバックアップ戦略を策定する際に、主要なサプライヤーや依存する外部サービスのBCP/DRP(事業継続計画/災害復旧計画)を評価し、そのリスクを考慮に入れる必要があるという、より広範な視点での対策の必要性を示唆しています。

というようなところで結構長くなってしまったのでここで1回切りましょうか。続きはちょっと長めのお話になるかと思いますので、それはそれで1本の記事になるかと思います。
Geminiに描いてもらった絵の答え
というところなんですが、昨日出しました「これは誰?」の1と2なんですが、答えだけ書いておきましょうか。実は2枚の絵があるというところもヒントだったんですが。
答えは…
このふたりでした。まさか画像拾ってきてここに貼るわけにもいかないのでリンクにします。
まだGeminiにもあまりデータがなかったんでしょう「キュアズキューンを描いて」とお願いしたら「Cure Zqun」と書かれた紙が丸められている絵が描かれました。いくらなんでもこれは酷い。
というわけで「プリキュアのキュアズキューンを描いて?」と言ってお願いしたらだいぶプリキュア寄りの絵にはなりましたね。
でもまだ、人間の代わりをするのには頼りないなあと思います。
今日もやってみましょうか。
これ↓は誰でしょう?

ヒントです。
小説に出て来るキャラクターです
バイクのライダーです
恋人と同棲しています
というようなところにしましょう。
では、また次回にお目にかかりましょう。
よろしくお願いいたします。
目次
クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性
クラウドストレージのデータ消失に関する責任の所在
ディザスタリカバリ手順をあらかじめ決めておくべき理由
弊社でお取り扱いしておりますデータ・OSにつきまして
クラウドストレージのメリット・デメリット
Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex
バックアップの方法 オフライン・オンラインバックアップとは?
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その1
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その2
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その3
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その4
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その5
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その6
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その7
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その8
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その9
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! ラスト
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その2
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その3
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その1
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その3
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その5
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その6
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その7
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その8
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その9
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その10
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その11
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 1
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 2
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その12
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 1
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その13(最終回)
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います その2
オフサイトバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その2
中小企業のための簡単・安価なデータバックアップ戦略 その10
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その1
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その2
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その3
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