警察発表の資料を見ていきましょう!その2
皆様、こんにちは!
株式会社カチカのリモート&コールドバックアップ業務担当の村島です!
寒い~!
もうこたつから出たくないって感じですね。
タイピングをするにも手が冷えて…。
さて、いきなりですが、皆様はこんな話をご存じでしょうか?
あるところに、優秀な脳外科医がいた。
難しい症例の手術に幾度となく成功し、そして研究でも優秀な成績を残しており、講演のために海外に行くこともしばしばあった。
ある日、その脳外科医のところに緊急の患者が運ばれてきた。
朝、父親が車で出勤すると同時に、息子を学校まで送り届ける途中での事故だったという。
父親は即死、息子も頭部に深刻なダメージを負っておりすぐに手術が必要だった。
当然のようにその脳外科医のところに患者が持ち込まれたが、脳外科医はこう言って手術を断った。
「私には怖くてこの手術はできない。これは私の息子です」
さて、この緊急手術を要する患者と脳外科医の関係は?
なるべくシンプルに考えて下さい。
このお話の答えは最後に書きましょう。
というわけで、今日も警察発表の資料を見ていきたいと思うのです。
それでは今日も、レッツスタディセキュリティ!なのです。
警察庁サイバー警察局発表の資料を今日も見ていきましょう!
今日もこの資料ですね。

令和6年9月 警察庁サイバー警察局
(以降特記なき場合同資料ならの引用とします)
今日は概ね「第2部 サイバー特別捜査部の活動状況」を見ていきたいと思うんですね。
まあ、インターネットは簡単に国境を越えますから、以下にサイバー特別捜査部が各国と協力しているかという話が主なんですが、正直バックアップが全く関係ない話をつらつらと引用してもしょうがないので、関係ありそうなところだけ抜き書きしていきたいと思います。
第2部 1 (1) イ 「Ragnar Locker」によるランサムウェア攻撃事案
第2部でランサムウェアに関わるといえばまずここですね。「Ragnar Locker」というのはランサムウェア攻撃グループの名前です。ついでながらちょっと調べてみたんですがRagnarというのは北欧神話に出て来る人の名前みたいですね。
国際共同捜査において情報共有などが行われた結果、Ragnar Lockerの開発者であると考えられていた被疑者が逮捕されたとのことです。と同時に、同グループが使用するサーバ等の犯罪インフラが機能停止されたそうです。
さらに、同グループが使用していたリークサイト上に、機能停止の実施を告げる「スプラッシュページ」が表示されたとのことです。

ちょっと画像が小さいですがかっこいいですね。
いずれにせよ、きちんと捜査すればきちんとつかまる、それがランサムウェアを含むサイバー犯罪ってことではないでしょうか。私はそう思います。
第2部 2 令和6年上半期の活動状況
このセクションでは特に「LockBit」について文面が割かれています。各国の捜査機関との協力により、令和6年2月に関係国の捜査機関がメンバーと見られる被疑者2名を逮捕、同グループが使用するサーバ等が機能停止され、流出した情報等が掲載されていたリークサイト上に機能停止を告げるスプラッシュページが表示されたとのことです。


SIMスワップのやり方
さて、ここでランサムウェアからちょっと話がそれますが、前回にもお話しいたしましたSIMスワップについてお話ししたいと思います。と言っても、図をご覧いただければもう一目瞭然だとは思うのですが…。

まず不正送金の指示役が正規の利用者Aさんの識別符号情報を持っていることが前提ですね。その識別符号でログインして登録情報を確認。そして、Aさんと年代・性別が一致する人を募集、その応募者の顔に差し替えたAさんの身分証を偽造、SIMの再発行を受ける。こんな流れです。
これ、個人の話だよね?と思われるかも知れません。実はそのとおりなんです。この手口をランサムウェアに使用するとすれば個人をターゲットにしたものにならざるを得ないと思います。
しかし、いまは普通に個人の被害者も出しているのがランサムウェアなんです。決して他人事とは思わないで下さい。そしてまた、企業をターゲットにするときにも、小道具の用意は個人の持ち物が狙われることが非常に多いんです。
犯罪に使われる、正規の契約者とは違うところで利用される携帯は一般に「トバシ携帯」などと言われます。そしてまた同じように作成され使用される金融機関の口座を「板」といい、さらに運転免許やマイナンバーカードはICチップが入っていてそこまで閲覧可能な環境があれば偽造であるか否かは容易にわかります。ですので、身分証としては申し分ないのに単なるプラスチックカードで偽造がすごく簡単、なんていうものもあるんで使われることもあるんですね。何とは言いませんが。
そもそも偽造なんてことをしなくても、アブナイ所から借金をしてしまって首が回らなくなり、金貸し屋の言うことを聞くしかなくなっている人、通称「奴隷」というような人を使えば電話も口座も手に入れるのはすごくたやすいんです。
上の図で「SIMスワップ役」と書かれた人なんて、SNSで引っかければあっという間に見つかるんですよ。「高額バイトやりたいんですけど」なんて連絡を取ってきた人物に対して、悪い連中はどうすると思います?
自宅最寄り駅から自宅まで、スマホのカメラで実況中継させるんですよ。それだけ情報があればどこに住んでる誰なんて特定は容易です。そしてアブナイ指示を聞いて青ざめて、辞めさせて下さいなんて言ってもとき既に遅し。抜けられない沼に入ることになります。本当にお気をつけください。
ランサムウェアに関係する様々なグラフ
ここからは「資料編」に入っていきたいと思います。

ここですね。いささか不安になるようなグラフがたくさん出て来ますよ。
グラフを全部抜き書きしてもしょうがないと思いますのでお話ししたいことが現れているグラフのみ抜粋していきますが。

まずは手口です。単に身代金を要求する従来型より、身代金&「バラ撒かれたくなければ~」型の2重恐喝が圧倒的多数を占めていますね。当然だと思います。もし私が犯人でもそうすると思います。こうやって、犯人の気持ちをシミュレーションするのも、重要な防衛策のひとつです。

ちょっと母数が少ないんですが、直接的な対価要求があったケースですね。現生を寄越せと言ってきたのはわずかに1件。犯人がドル経済圏にいると考えるよりは、世界のどこに行ってもそこの通貨と交換できる容易さでしょうね。そして6件は暗号資産。これは追跡が難しい。犯罪行為を行う連中にとっては誠に使い勝手のいいツールでしょう。

これを見ますと、中小企業の被害がいかに大きいかわかります。まあ日本は中小企業の割合が大きいから、で片付けることもできなくはないんですが、やはり中小企業は情報セキュリティへの対応が後手に回っているということもあるんだろうなと思います。

今度は業界別のグラフです。製造業が多いですね。
日本の産業界というのはやはり製造業というのが有力なところなんだろうなと思います。まあこういう言い方をしては語弊があるかもしれませんが、情報を右から左に流す仕組みさえ作っておけばあとは勝手にそこからチャリンチャリンと利益が上がる、みたいな業務は日本人にはあまり好かれないのでしょう。

次は感染経路(侵入経路)です。VPN機器とリモートデスクトップで大半を占めます。つまり「怪しいメールは開かない」と言った対策ではどうにもならない場合の方がはるかに多いということです。もちろんそういうことが無駄だと言っているわけではありませんが、セキュリティソフトのインストールなど日頃からの対策が大事だということです。

これが復旧にかかった時間ですね。このグラフ、時間の区切り方がおかしいと思うのですが、普通の企業なら1日止まっただけで大問題だと思いますよ。先日、デリバリーサービスを展開する「出前館」が2~3日ぐらい止まりましたけど、そもそもUber Eatsに対して劣勢なビジネスを強いられている出前館ですから、この業務停止は最悪サービス終了にまで至るんじゃないかなんて言われてましたからね。
まあおおよそ致命的なダメージを負うものと考えておいた方がいいような気がします。

これが被害額なんですが…まあおよそ半分がなんとか8桁の金額は免れたといった所でしょうか。
上でも見ましたように、日本は中小企業の割合が多いからなのか中小企業の被害件数が多いということでした。
というと、このグラフなんかも犯人グループが「中小企業の払えそうな金額」を値踏みしたというような印象を受けます。
ここからが日本の危機的な所です!
というわけで状況を見てきたわけですが、ここからですよ。日本の危ないところは。
まず、バックアップの取得状況をご覧いただきます。

はい、だいたいの会社様ではバックアップは行っているんです。
ただ、これはほとんどデータをクラウドに上げて良しとしているんじゃないかなあというふうに思います。なぜかと言うと下のグラフがあるからです。

なんと3/4が復元できなかったと言っているんです。普段から復元のテストを行っていますか?と強く強く申し上げたいです。

有効回答数が若干少ない気もしますが、まあセキュリティパッチの適用はある程度浸透しているものと見えます。しかしそれでも半分じゃまだまだだなあ。
そして私が「クラウドに上げた?じゃーオールOK!」っていうことになっているのではないかという考えを持つにいたる理由が次のグラフです。

見事にバックアップもやられちゃっているわけですね。
そりゃやられますわ。だって同じネットワーク上にあるんだから。私が犯人でもそうしますよ。

うん…まあ、セキュリティソフトのインストールは皆さんなさってるんですね。
ところがです。その結果が↓こうなっちゃうんです。

3/4近くは検出していない…まあウィルス対策ソフトの類が無意味だとは言いませんが、決して万全の策ではないということですね。
情報セキュリティの強化・向上に向けて…特にランサムウェアを中心に
というわけで、日本においてランサムウェア対策は、控えめに言っても「ものすごく上手く行ってはいない」ということですね…。
以前に申し上げたように思いますが、私がこの業務を始めようと思ったきっかけは東日本大震災で「バックアップごと流されてしまってはバックアップの意味がない」ということがクローズアップされたからでした。
というわけで当初はディザスタリカバリ=ディザスター・リカバリー=DRを念頭に置いていました。
まあランサムウェアの爆発的な発生もディザスターと言えば言えなくもないと思いますが、とりあえず日本人というのは災害慣れしてしまっていて東日本大震災のことも忘れられがちだと思います。
ランサムウェアを含むマルウェアのことも考え、そして自然災害のことも考えた上で事業継続計画(BCP)を練っていただければと思います。
バックアップの3-2-1ルール
バックアップの3-2-1-1-0ルール
バックアップの5-2-1ルール
この辺の言葉はもうこのnote常連ですから意味するところは繰り返しませんが、とにかく稼働していない、もしくは書込/変更ができないバックアップをひとつ作っていただきたいんです。
そこまでがセキュリティの基本だとお考えいただきたいんですね。
普段お使いのクラウドストレージにプラスして弊社をお使いいただくだけでオンラインバックアップ(ホットバックアップ)とオフラインバックアップ(コールドバックアップ)を組み合わせたハイブリッドバックアップ(複合バックアップ)が完成します。さらに弊社でお預かりすることでリモートバックアップ(遠隔地バックアップ)も実現できます。
さらに、弊社をご利用いただける場合は、世代管理オプションの利用も強くおすすめしております。
この図↓は前にも出しましたが

これをご利用いただきますと、直近のバックアップから数世代遡ってバックアップからリストアできます。直近のバックアップも何らかの事情で利用できないということであれば、順次遡ってリストアすることも可能です。保存管理は完全オフラインで行っておりますので、ネットワーク感染の可能性もほぼゼロです。定期的なリストアテストも可能です。
ぜひご検討いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
小括
というわけで、前回と今回、2回に分けて警察発表の資料を「バックアップが有効である部分を中心に」読み込んでまいりました。
ある意味、東日本大震災より恐ろしい災害、それも人災が、世界中で起こっているということです。自分の身や自分が勤務する会社のことは、自分で守ることが肝要ということになっているのだと思います。
ところで冒頭に掲げましたちょっとしたクイズですが。答えはおわかりになりましたでしょうか。
答えは「母子」です。
いろんな文脈で用いられるこのクイズなのですが「優秀な脳外科医」云々という文章から、男性を思い浮かべてはいませんか?ということを炙り出すためのものです。
私は、この話を「自分が何らかの立場に立ってものをいう事は誤りではない。なぜかと言うと何の立場にも立たないでものを言うことは人間には不可能であるから。しかし、自分がその立場に立ってものを言っていることは自覚しなさい」という話とともに学びました。
「できれば何の問題も起きないで欲しい」という願望が「多分問題ないだろう」という現状認識を引き起こしていませんか?
そこは良くご確認下さい。
ちょっと長くなりましたが今日はこれで。
今日もありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
目次
クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性
クラウドストレージのデータ消失に関する責任の所在
ディザスタリカバリ手順をあらかじめ決めておくべき理由
弊社でお取り扱いしておりますデータ・OSにつきまして
クラウドストレージのメリット・デメリット
Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex
バックアップの方法 オフライン・オンラインバックアップとは?
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その1
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その2
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その3
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その4
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その5
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その6
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その7
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その8
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その9
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! ラスト
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その2
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その3
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その1
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その3
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その4
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その5
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その6
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その7
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その8
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その9
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その10
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その11
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 1
─事件を解決せよ─ CASE2:Webサイトのデータが消えた Part 2
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その12
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 1
─事件を解決せよ─ CASE3:火事でオフィスが焼失 Part 2
ランサムウェア・インシデント発生時の組織向けガイダンスを見ていきましょう!その13(最終回)
今日はバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います その2
オフサイトバックアップに関する最近の話題をつらつら語りたいと思います
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その1
バックアップがきちんとしていれば起きていなかった情報事故 その2
中小企業のための簡単・安価なデータバックアップ戦略 その10
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その1
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その2
大企業における物理的媒体による遠隔地バックアップの重要性 その3
